宮内謙一(みやうちけんいち) | ページ 2 | 会計士の履歴書 | 活躍する会計士たちの仕事やキャリアを紹介

株式会社HiLOソーシャルクリエイト

代表取締役

宮内 謙一 みやうち けんいち

”非営利組織におけるCFO”の必要性を痛感。難病を乗り越え、ソーシャルベンチャーの持続的成長を支援する会計士
参謀タイプ
参謀タイプ

1983年10月24日生まれ(40歳)
鹿児島県出身 ・ 東京都在住
神村学園専修学校 理学療法学科 卒業

4あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

私の強みはふたつあります。

ひとつは「芯の強さ」です。
公認会計士を目指すと決めた時は、両親からかなり反対されました。既に理学療法士という資格があり、また難病を発症したというハンディがあるため、当然と言えるかもしれません。

しかし、私には医療介護の現場経験のある公認会計士はこれからきっと必要とされるという想いがありました。病気については私自身とても悩みましたが、それ以上に「一度きりの人生を後悔したくない」という気持ちが強かったため、行動に移すことを決めました。

決断したのは良いものの、当時私の地元である鹿児島には公認会計士の講座はありませんでした。そのため、通信講座を受講することにしました。そして、仕事を退職し自室でひとり勉強する日々が3年ほど続きます。

しかし、3年目の論文式試験の1か月前にクローン病による栄養不足と脱水症状により自宅で倒れてしまい、その日から入院して絶食することになりました。精神的にショックを受けましたが、同時に同じ病気の人のロールモデルになるためにも、自分は「努力は必ず実る」ことを証明しなければならいと言い聞かせました。

次の日から、病室に教材を持ち込んで勉強する日々が始まりました。なんとか試験3日前に退院することができ、その年の論文式試験は絶食の状態で受験しましたが、幸い合格することができました。このことが自信につながり、その後のキャリアアップや転職の際も地道に努力を積み重ねる力がついていると感じています。

もうひとつの強みは「協調性」です。
元々医療職がベースである私には、自分が公認会計士であるという意識はあまりありません。先述の通り公認会計士合格後は、ベンチャー企業に入社しましたが、当時その会社は上場準備の段階であり、経理責任者として経理業務はもちろんのこと、証券会社・監査法人対応、営業社員と一緒にテレアポも行いました。

文字通り「なんでも屋」でした。むしろ、公認会計士の専門外の業務の方が多かったと言ってもいいかもしれません。他部門からの相談も多く、「ここからここまでが自分の業務範囲」というような線引きができない状態でした。

会社の事業内容はシンプルであったため、私の場合は、会計・税務そのものに高度な知識は求められませんでした。それよりも、他のメンバーと力を合わせて一つの目標に向かって努力するという一体感を醸成する、これが自分に与えられた役割だと感じました。

その役割を果たすために努力した結果は後述しますが、膝を突き合わせて同じ立場で一生懸命仕事をすると共感してくれる人が現れます。それは次第に「この人なら重要な仕事を任せられる」という信用に変わります。また、そんな人は他の人に依頼しにくいことでも、「あの人の言う事なら聞いてみよう」と言われる人間になります。同じ事を話していても話す人次第で納得感が異なる、ということは誰しも経験していると思います。

それは、経験に裏打ちされる部分もありますが、普段からコミュニケーションが取れているかといった点も案外重要だったりします。

5仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

私が仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間は監査法人に入所して初めて往査に行った時です。ベンチャー企業で働いていた頃は、作業マニュアルや規程も未整備な部分が多く、何から手をつけていいか分からないという状態でした。いわば0から1を作る作業の大変さを痛感した時でもありました。

それが、監査法人ではクライアントの書類がきちんと整備されており、数多の企業のベストプラクティスに触れることが出来ます。また、監査調書も定型化・細分化されているため、誰が担当しても一定以上の水準で作業ができる仕組みがあります。

それまでは質問できる相手がいなかったので、分からないことはひとりで調べていましたが、正解に自信がないということもありました。しかし、監査法人はその道のスペシャリストの集団であるため、分からないことは先輩に聞くことができます(もちろん自分でも調べますが)。

初めにベンチャー企業を経験したからこそ、監査法人の当たり前にとても感動しました。こんな仕事に携わることができてうれしくて、あまりの感動に初めての往査の帰りに両親に感謝の手紙を書いたほどです。

また、パートナーやマネージャーからの経験談もとても貴重でした。私の場合は、中央省庁の機関が独立行政法人になった時の現場でのやりがいと大変さを聞くことができました。会計処理ひとつ取っても、会計基準の根拠に照らし合わせてあるべき姿について深夜まで議論が行われることもあったそうです。その時は、まさしく情報の信頼性を確保し、利害関係者を保護し、国民経済の健全な発展に寄与するという公認会計士の使命に通じるものを感じました。

6公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

公認会計士という「資格」に考えがとらわれていた時期がありました。ベンチャー企業で働いていた頃、私は立派な上司になりたいと考えていました。いろんな人から頼られて忙しくも誇りある仕事がしたい、それが当時抱いていた上司の理想像でした。

しかし、仕事に追われるにつれてその事を忘れてしまい他人の気持ちを汲み取る事もおざなりになってきました。そのうち、「どうして自分の専門外の仕事をしなければならないんだ」「この仕事は自分でなくてもできる」というフラストレーションが溜まってしまい、気がついたら自分が一番なりたくない上司になっていて愕然としたことを覚えています。

「他の人が自分の仕事の重要性について理解してくれない」という考えが中心になると、自分の専門外の仕事は「雑務」として片付けられがちです。しかし、ある人にとっては雑務であっても、別の人にとってはそれが立派な仕事になっていることに気づきました。そのように考えるとある意味雑務という言葉はとても失礼な言葉かもしれません。

そのことに気づいてからは、他の部署の人とも積極的にコミュニケーションを取るように心がけ、悩んでいる社員に対しては気持ちを汲み取りつつ本来のやる気を引き出すように努力しました。

そんな努力が実を結んだと感じたエピソードがあります。
当時、社内では「ありがとうカード」という制度がありました。これは、日頃言えない感謝の気持ちをカードに書いて渡すというものです。在職中は、幸い私もいくつかカードをもらうことができました。その中で印象に残っているカードが2つあります。

ひとつめは、人事部社員からのカードです。

「宮内さんは私の業務や仕事の取り組み方を一番しっかり見ようとしてくれた人だと思います」

元々人事部は複数人いたのですが、退職者が出て担当が一人になった時がありました。配置転換で一時的に私の部下になった人です。人事とは業務の評価を数値で表すことが難しい仕事のひとつだと思います。採用活動はもちろんのこと、いち早く内定者の個性を見抜き、もっとも適している配属先を決める必要があります。

また、入社後のケアも必要です。私はその人に対して毎日業務内容を報告してもらい進捗を確認していました。業務の成果が見えにくいからこそ、同じ目線で仕事をしてくれる人が必要だったのかもしれません。

ふたつめは経理課社員からのカードです。

「宮内さんが入社してから経理の仕事にやりがいを感じて楽しく仕事をすることができるようになりました。辛いことがあっても、宮内さんとなら乗り越えられると思います」

私が入社したとき経理担当はひとりでした。その人は簿記の知識がゼロであったにも関わらず、ひとりで経理総務業務をこなすとても優秀な社員でした。ただ、ひとりであるが故に業務内容がルール化されておらず、ダブルチェック等のミスを防ぐ対策が不足している部分がありました。

そのため、業務内容を洗い出し、標準化するという作業を行いました。また、チェックリストを作成し、ミスが早い段階で発見できる仕組みも構築しました。

さらに、ベンチャー企業は資金繰りの予測が重要なのですが、入社当初はそのシステムがなかったため、エクセルにて資金管理表を作成しました。管理する口座が多く、それぞれの口座から入出金がある場合は、預金の配分次第では資金ショートしてしまう可能性があるため、予算と実績の比較もグラフでシミュレーションできるようにしました。

結果的に、「公認会計士が当たり前でない職場」で働けたことは大きなステータスになったと思います。それによって公認会計士という資格ではなく、その環境でどういった役割が求められているかということを強く意識することができました。

おそらく公認会計士としての最初の就職先が監査法人であったなら考えなかったことだと思います。監査法人は周りのほとんどが公認会計士であり、同じ職業の人だからです。でも、社会全体で見ると同じ職業の人たちだけで成り立っている企業というのは稀であり、ほとんどの企業では職業の異なる人たちがそれぞれの強みを活かし日々活動しています。

さらに、この経験は、現在のSCでの仕事にもつながっています。社会的課題を解決する企業と伴走するには、共感することではじめて相手の立場に立って行動することができます。SCの設立の根底には理学療法士として働いている頃から考えていた「支援している人を支援したい」という想いがあります。

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