2監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
1998年10月に公認会計士第2次試験に合格し、中央監査法人の国内部に入所しました。今でこそ合格者は毎年1,000名を超えていますが、私が合格した1998年は合格者が700人弱と少ない時代でした(受験者数は約1万人)。このように合格者が少なかったからか、当時の監査法人では、国内上場企業、非上場企業、学校法人、上場準備など幅広く監査等の業務を行うことができ、将来につながる経験ができました。
人が少なかったからこそできた経験といえば、入所2年目でのインチャージです。J1のときから行っていた上場準備会社があったのですが、そこのインチャージをしていたマネージャーがパートナーに昇格することになり、「インチャージをやらないか」と声を掛けてもらいました。マネージャーの次にメインで行っていたので会社のことはよく分かっていましたが、J2という若さでインチャージを任されたことにはかなり驚きました。その会社は、私がインチャージになった2年後、ちょうど公認会計士第3次試験論文式試験の直前に店頭登録(IPO)し、年次が浅いながらも色々と経験が積めました。
他には、一部上場企業、そのグループ子会社、業界最大手のメーカーなど大小様々な企業や組織に往査に行き、そのうちの数社はインチャージとして係わることもできました。監査法人にいたのは約4年間でしたが、非常に濃厚な時間を過ごすことができたと思っています。
キャリア選択に対する迷いは受験生時代からありました。当初は大学生で会計士試験に合格して、大学院に進学してから監査法人に行こうと計画していたのですが、受かったのは大学卒業1年目の年でした。大学院を受験するか監査法人に行くか悩みました。すでに監査法人から内定をもらっていて「休職は1年間のみ」と言われていたので、迷った挙句、監査法人に入所してまずは実務経験を積むことにしました。
監査法人に入ったものの、大学院で勉強したいという気持ちは消えませんでした。「公認会計士第3次試験に合格したら、海外のMBAあるいは日本の大学院でビジネスセオリーを学んで専門性を養いたい。そのあとは金融機関で専門性の高い業務に係わるのもいいし、独立や学者の道もあるな」と考えていました。そして監査法人の先輩や知人の紹介で、監査法人以外のフィールドで活躍している会計士の方に会い、自分の考えを深めていきました。その結果、最終的には大学院に行きながら独立する道を選択して、監査法人を退所しました。
監査法人退職後、ご縁があってTAC講師をしていました。また独立した当初はバリエーションをしており、2004年頃からはIFRS導入コンサルも行うようになりました。独立しながら慶應義塾大学大学院商学研究科修士課程にも通っていましたので、午前中は大学院で授業に参加し、午後は自分の事務所かクライアントに行き、平日夜と土日はTAC講師業を行うという、監査法人時代よりも多忙な日々を送ることになりました。といってもやりたい事を存分にやっていたので、毎日が充実していました。そして、満足いくまで大学院で勉強したこと、大学院で教授や院生たちと会計について話したこと、TACで同僚だった会計士試験合格者や公認会計士と議論できたこと。それらの経験を積んだことでより深い知識や知見を持つことができ、その後のキャリアにも生かされています。
3今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
現在は、株式会社ブイキューブの経営企画本部本部長として、経理・販売管理・購買管理・経営企画といった数値関連の業務を担当しています。また2016年より、株式会社ブイキューブの社内事業からカーブアウトして設立された、ドローンサービスを行っているベンチャー企業、株式会社ブイキューブロボティクスの取締役も兼任しており、財務経理を管掌しています。
ブイキューブは私が入社した2013年の12月10日にマザーズに上場し、2015年7月22日に東証一部に市場変更しました。この時に行った上場準備作業や市場変更作業、上場後も必要となる監査法人対応では、監査法人にいたときのIPO経験や監査経験が生きています。
また、会社の成長を見ながら業務フローの整備や改善を行っています。会社の規模が拡大すれば現行の業務フローは実態と合わなくなりますし、新しいサービスを始めれば新たな業務フローと旧来の業務フローとで整合性が取れていないところも出てきます。現場の社員が業務フローに違和感があると感じることもありますが、長年やってきたことをどう改善すれば良いのかわからなかったり、新しい業務フローを思いつかなかったりすることが多いです。そのような場合、監査法人や自分で会計事務所を営んできた経験を活かして解決策を検討・実行しています。
現在のような企業内会計士になったのは、大学院を修了しIFRS導入コンサルとTAC講師をしていた頃、IFRSコンサルの領域に大手監査法人も徐々に入り始めたのがきっかけでした。競争力を考えると次のビジネスを考えないといけない状況でした。そこで、会計士の先輩に相談すると「会社の中の論理を知っていると役立つ」と助言を貰いました。その時は36、7歳だったので事業会社に転職するなら今のタイミングしかないと思い、企業内会計士にキャリアシフトしました。実際に転職してみると、先輩のアドバイス通り、会社の中に入らないと知りえないことにも気づくことができました。また会計士としての知識と経験を如何なく発揮することもでき、自分に合った仕事だと感じています。