久納裕治(ひさのうゆうじ) | ページ 2 | 会計士の履歴書 | 活躍する会計士たちの仕事やキャリアを紹介

株式会社キュア・アップ

コーポレート部

コーポレート部 マネージャー

久納 裕治 ひさのう ゆうじ

“治療アプリ”を開発するMedtecベンチャーで経営管理とIPO準備を担当
アイディアマンタイプ
アイディアマンタイプ

1984年(40歳)
佐賀県出身 ・ 東京都在住
早稲田大学 商学部 卒業

4あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

私の強みは“様々な業務を通じて得た経験を有機的に結合した形で落とし込めること”だと考えています。会計士、コンサルタントは世の中にたくさんいますし、コンサルタントとして働いている会計士も多いです。ただ、両者をそれぞれ高いレベルで遂行できる方はそう多くはいません。コンサルティング会社にいる会計士は、プロジェクトの中でどうしても数値周りを重点的に担当することになりがちです。財務諸表を読む、財務シミュレーションを作るといった、会計士に親和性のある能力をお持ちの方はたくさんいらっしゃいます。他方で、ビジネス面の分析や、施策の実行へ向けた浸透へのアクション等の、コンサルタントとして現場で奮闘して身につく能力を身に付け、高いレベルで融合出来ている方はあまり多くはいらっしゃらないのです。その人のキャラもありますが、どちらかと言うとコンサルティング会社でも会計士は職人的な立場になる方が多いような印象です。私もFMIに参画した当初は財務モデルの構築などが中心で、事業の分析に関しては非常に恥ずかしいレベルでした。この点を振り返ると、会計士の素養があまり活きない分野も成長のための経験をさせていただき、会社と上司にも恵まれたと感じています。

上記の強みは現職のキュア・アップでの日々にも直接的に役立っています。スタートアップなので、革新的なプロダクトを世に出すための機能を強化することが先決で、経理財務や総務などのコーポレート面での業務は、どうしても走りながら追いつかせるという形になります。そこでは、「経理なので…」「会計的には…」等と言いながら立ち止まることは適切でなく、守らなければならない領域を見極めつつ、粗くてもいいので進めていくことが求められます。また、他部署が拾えない機能を拾う最後の砦でもあり、未経験の分野でも何とか論点を潰していく必要があります。もちろん、まだまだ修行中の身ですが、様々な観点から会社組織、事業運営を見た経験が骨格となり、ちょうどいいバランス感覚が持てていると感じます。

5仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

私が会計士試験の勉強をする中で一番面白いなと感じたのは、会社組織と事業を、会計、法務、税務、経営学、経済学的など、それぞれの視点から見た時の違い、またそれが社会に拡大した時の影響など、観点が変わったときに見える景色の違いでした。社会は各分野のプロが考え抜いた制度を通じて様々な観点から方向づけられ、しかも相互に影響しあっているということを感じた時に、世界の奥深さを感じたのです。同時に、会計士は特定分野のプロフェッショナル職でありながら、直接的な会計・監査に限らず多様な観点を資格試験の段階から学ばなければならず、奥深い業務なのだろうとも感じました。

仕事を振り返ると、金融、事業再生、それぞれの局面で、それぞれの立場の方が、どんな観点で何に重きを置いて評価・判断をするのかを目の当たりにしてきました。それは経済・社会が、様々な要素が相互に関連・影響しあいながら、全体として成り立っていく複雑系であることを私に想起させました。その結果として、様々なバックグラウンドを有する個人がどのような情報に基づいてどう意思決定をするか、個人の集合体である組織がどう意思決定をするかという過程に触れ、理解できた時に、掴みどころのない社会の仕組みを理解できることこそ働くことの醍醐味であると感じるようになりました。そして、会社をはじめとする組織がどう動いていくのか、各機能がどう相互に作用するのか、全体としてより良くしていくにはどうするべきかを仕事で追求していこうと考えるようになったのです。

6公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

会計士という仕事に関して悩んだのは、監査法人入所後3、4年目ごろに監査の全体像が朧気ながら掴めてきた時です。監査を山登りに例えると、最初は頂上も見えない中でも必死で足を動かしますが(会計士補の期間)、しばらくしてふと周りを見回したときに、登りだした山が相当に高い山だと理解できるようになります(会計士補の期間が終わったころ)。この山は非常に高く険しい山で、登り続けるには相当の覚悟が必要です。会計・監査に熱意を持ち、本気で突き詰めようとしている会計士と戦えるほど自分は情熱を持っているか(将来持てるか)、本当にこれが一番チャレンジしたい山なのか、という疑念が湧いてきました。

その頃の私は、悩むと同時に主に事業再生とM&Aアドバイザリーの分野に興味を持っており、どちらの分野についても実務家の方が読むような本も含めて時間を投資し学んでいました。ただ、学べば学ぶほど感じたのは、やはり会計実務の経験は直接ではなくても相当活用できる場面が多そうだということです。そして会計・監査を突き詰めるのではなく、テコとして、ビジネス・社会を理解するために使うことが、自分にとっての会計の活かし方なのではと考えるようになりました。

2009年頃は今と比べると、監査法人外で会計士が働くのは一般的ではありませんでした。会計士という名前は残りつつも、実質的に会計士を辞める決断をしたという、後ろ向きなとらえ方がされる時代でした。ですが、監査法人をやめてコンサルティングの現場に飛び込んでみると、その判断は間違っていなかったなと改めて感じました。事業損益、財務三表のシミュレーションのみならず、事業を理解するための第一歩として財務諸表を理解できることは、非常に強みになりました(もちろん学ぶべき事項はそれ以上に数多くありましたが)。また、外に出て違う考えに触れてみると、パートナーの過去の指導に含まれていた深意が理解できる等、新たな発見もありました。

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