原都志也(はらとしや) | ページ 3 | 会計士の履歴書 | 活躍する会計士たちの仕事やキャリアを紹介

警察庁

警察大学校

助教授(警部)

原 都志也 はらとしや

公正な社会の実現を目指す
研究者タイプ
研究者タイプ

1970年2月12日生まれ(54歳)
愛知県出身 ・ 東京都在住

7人生の目的と公認会計士という資格

私にとっての人生の目的は、仕事を通じて社会に貢献することです。言い換えれば、「世の中のためになる仕事がしたい」ということであり、その中で大義とするところは、「公正な社会を実現させること」です。
健全な経済の発展のためには、「不公平なことをする人」「ずるいことをしてお金を儲ける人」などの不正を許してはいけません。特に、「会計」「会社」などの専門的知識を悪用して、犯罪を行う人たちを許すことはできません。
公認会計士の業務は独立した立場で公正性が求められ、会社等の公正な事業活動を担保することがその使命の一つです。私自身が公認会計士という資格を取った理由も前に述べた「公正な社会の実現」というところにあり、金儲けのためではありませんでした。
私は学生時代には、「公認会計士」に合格して会計監査の仕事をすることや独立開業することに憧れて勉強を始めたのですが、資格を取得して高給を求めるというよりも、むしろ、社会に役立ち、自らのスキルを磨けるという面に魅力を感じていたほか、当時、自分自身は組織で働くことに向いていないという思いがあったからでした。
学生時代には「警察」にお世話になるようなこともなく、まったく自分には縁がないものと考えておりましたし、人の人生を左右するような刑事事件の裁判に絡むような仕事は責任が重いのでとても無理だと考えており、まさか自分が「警察官」という職業につくとは思ってもみませんでした。
そんな私が、今、不思議な縁で警察という大きな組織で働いています。
考えてみると、今働いている県警で1999年に「財務捜査官」という採用試験が行われなければ警察に入ることはなく、「公認会計士」という資格がなければ、私が一般の警察官採用試験を受けることはありませんでした。そういう意味では、「公認会計士」という資格取得が新たな仕事のチャンスを与えてくれ、私の人生を大きく変えたものであると言えます。
結果的に、今の「財務捜査官」という仕事は、「公正な社会の実現」という自分自身の人生の目的達成に直結しており、やりがいのある仕事だと感じています。
公認会計士の試験は、試験科目もたくさんあり、単に簿記などの計算ができるかどうかだけではなく、「会計・監査」という専門知識を身につけているかどうか、経済、経営や法律といった総合的な目で企業のことを見ることができるかどうかという試験だと思います。
公認会計士には「国民経済の健全な育成」という重大な使命があり、公認会計士としての業務は、そのとても公共性の高い、やりがいのある仕事です。また、公認会計士という資格そのものに公正性への信頼があると言えます。
その意味では、財務捜査官に限らず、公務員のような公的な部門でも、もっと公認会計士の方が活躍の場を広げていただけるとよいと思っています。
公認会計士の資格は、人生の可能性を大きく広げるもので、さまざまな分野で活用できるものと言え、人生を大きく変えるものになるはずです。

8これから成し遂げたい事、将来の夢

これから成し遂げたい事は、これまでの経験を活かして、引き続き、会社等の不正が起こらないような「公正な社会を実現」するための活動をすることです。
現在考えている具体的な活動は4つあります。
一つ目が、警察組織の「財務捜査力」を向上させ、警察組織全体として「財務捜査」が必要な経済的不正事件を一件でも多く検挙することです。財務捜査が必要とされる経済的不正事件等は手口が巧妙化しています。社会の構造変化に伴い、贈収賄事件を含めた企業犯罪や財政を巡る不正事件は今も多数発生していますが、検挙に至らないだけで、多数の事件がより潜在化していると考えられます。こうした中、「財務捜査」を元にした経済的不正事案を摘発することが重要となっています。
一方で、捜査全般においても「財務捜査」の重要性が高まっています。これまでの経験を踏まえて、研修等を通じて捜査員一人一人の財務捜査力を向上させることで、警察組織全体の捜査力を高める指導・育成に力を注いでいきたいと考えています。組織全体の人的基盤の整備により「財務捜査」の方法だけでなく、その精神を浸透させたいのです。
さらに、警察組織内での自分の役割を考え、今後は現場で自分自身が専門性を活かして捜査するというよりも「財務」「公認会計士」という観点から「公会計」の考え方も含めて人事・企画を含めた組織管理的な業務にも参画したいと考えています。
二つ目以降は、警察を定年退職した以降にできたらと考えている事になります。
二つ目は、不正防止や不正調査等の方法を研究する活動をすることです。これまで経験した税務調査での不正事例や警察での経済的不正事件等の捜査経験等を活かして、不正調査や不正防止の仕事もしたいと考えています。昨年公認不正検査士(CFE)の資格も取得しましたので、企業の不正対応や不正防止に関する業務に携わっていきたいと考えています。
三つ目は、これまでの「会計不正」に関する事件捜査の経験を活かして監査や会社の役員の仕事を行いたいと考えています。いまだやったことのない監査法人で監査の仕事は機会があれば一度はやってみたいと思っています。また、社外取締役や社外監査役等としての勤務も経験してみたいです。生の上場企業の現場がどうなっているか知り、実際の企業において直接的に会計不正を含めた業務をしたいと考えています。あわせて公会計など地方公共団体や各種団体の公的部門の会計や監査についても興味があり、担当してみたいと思っています。
四つ目は、会計に関する教育・研修活動です。現在は「財務捜査」に関する研修の仕事を行っており、大きなやりがいを感じています。現在担当している警察組織での職場研修だけでなく、公認会計士向けの研修や大学や企業等でも「財務」「企業不正」に関係する教育・研修を行いたいです。論文や書籍の執筆も行いたいと考えています。
  
私の人生の目的である「公正な社会の実現」のために、まずは、現在の警察組織において「財務捜査」が発展するための研修や後任者の育成という形で貢献したいと考えています。そのうえで、警察組織を変えていけるような業務につけたらと考えています。
また、警察外部に目を向けて、大学や企業対象の研修等で経済的不正の防止に役立つ講義・研修を担当させてもらうなどして、大会社の監査役・顧問、コンサルタントなどとしてコンプライアンスに強い企業を作ること、政策実現のための活動を行っていきたいです。
財務・会計・監査の力を使えば、警察の捜査力はまだ大きく向上できますし、企業はもちろん官庁等の不正を減少させることができるはずです。これまでの国税・警察での経験を活かして、『不正を追及』するとともに、『不正が起きにくい社会』作りの活動をしていきたいと考えています。

9キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

私が公認会計士試験に合格した約25年前は、日本が世界有数の経済大国でバブル経済に浮かれていた時代で、スマートフォンやインターネットすらない時代でした。しかし、現在は、低成長が続き景気は低迷する一方、SNSや仮想通貨があたりまえになり、小学生がスマートフォンを使い、AIの技術が活用される時代になり、新型コロナウイルスの流行で働き方、生活様式も大きく変化しつつあります。
時代の変化が一層激しくなり、会計士という職業将来性も不透明なものとなっており、資格を取ったもののキャリアを模索する方も多くなっていると思います。
約25年前は公認会計士試験に合格すると監査法人に入る方がほとんどで、「監査」の仕事以外にあまり選択の余地はありませんでした。しかし、最近は、組織内会計士を含め資格取得後にさまざまなキャリアを積む方が増えています。
私は、これからも会計士を目指すことは、「人生を豊かにするもの」ではないかと考えます。公認会計士の資格は、「会計の専門家」という自分の強みを持つことで自分自身の人生の可能性を広げるものだと思うからです。
私自身のことを少しお話ししますと、私自身は財務捜査研修センターに勤務するようになった一昨年まで「会計士」ということはまったく意識しないようにして警察官として仕事を行ってきました。しかし、現在の職場で助教授として研修を担当するようになって会計士を名乗り仕事をしてみることにしました。
会計士ということを外部に名乗ることで、自らのアイデンティティとして会計士としての自覚を持つことができるようになり、組織内会計士などのネットワークにも参加して視野を広くもつことができるようになりました。
もちろん会計士という肩書きそのものが大事なわけではありません。しかし、監査など専門的な分野でなくても、「会計士」としての専門知識や有資格者としての信頼感を活かせるだろうと感じています。
会計・監査という専門知識・経験の上で、さまざまなフィールドにチャレンジすればよいのではないでしょうか。どのようなキャリアを積むかはその人個人の資質ややりたいことによるでしょう。
私が思うのは、会計士としての資格があることで、監査以外にもさまざまなキャリアを積むことができる可能性が広がるという意味で、人生が豊かになるということです。
キャリアを模索する会計士、会計士受験生の方には財務捜査官という仕事も選択肢の一つです。もし、正義感が強く、社会の公正実現のための仕事がしたいのであれば、法の執行者である警察組織の一員として悪と戦う財務捜査官の仕事はおすすめできる仕事です。公務員の仕事は「国民(県民)のため」という、お金では得られない「やりがい」を感じられる仕事です。特に警察の仕事は「悪い人を捕まえて、安全・安心を守る」というシンプルで公共性の高い仕事ですから、やりがいが実感できる仕事だと思います。
財務捜査官になるための具体的なアクションとしては、まずは公認会計士試験に合格した上で、監査法人などで一定の実務経験を積み、財務捜査官採用試験に合格することです。また、「財務捜査官」は警察官として採用されますので、健康で一定の体力が採用条件となりますので、一般的な基礎体力づくりが必要です。
さらに、事件捜査の現場では、人には言えないような厳しい場面に遭遇することもありますので何事にもへこたれない強い精神力を有することも大切です。
また、事件捜査では「人」が対象となり、「人」と接することが多い仕事なので、コミュニケーション能力が求められることになります。
一人でも多くの会計士や会計士試験を勉強している受験生が、将来、「財務捜査官」に応募していただき、財務捜査官試験に合格後は一緒に同じ財務捜査官として仕事ができればと思います。また、財務捜査官にならなくても、無事に公認会計士試験に合格した後は、皆様が社会正義の実現に向けて活躍していただくことを楽しみにしております。
   
 

※なお、愛知県警で20年ぶりに募集をしている財務捜査官は私のように財務捜査以外の仕事に従事することは基本的にないとのことです。

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