三冨正博(みとみまさひろ) | ページ 2 | 会計士の履歴書 | 活躍する会計士たちの仕事やキャリアを紹介

株式会社バリュークリエイト

代表取締役

三冨 正博 みとみ まさひろ

「ダメ元」を大切に人生をワクワクと切り開く
開拓者タイプ
開拓者タイプ

1964年2月13日生まれ(60歳)
神奈川県出身 ・ 東京都在住
青山学院大学 経営学部 卒業

4あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

19歳以降の僕の意思決定が常に「ダメ元」だったのは、これまで説明した通りです。そして、この「ダメ元」こそ僕の独自な強みを形成する源泉だったのだと思っています。
自分がワクワクすることに出会う→「ダメ元」でチャレンジする→できるようになって成長を実感する→そのうち退屈する→次に自分がワクワクするテーマに出会う→「ダメ元」でチャレンジする・・・、という一連の経験を20代の後半から30代そして40代とすることで自分に独自の強みが醸成されてきました。

このような強みはどのように図で表すことができるのでしょうか?
縦軸にワクワク軸、横軸に強み軸を取ると、「ワクワクとできる」の2軸のマッピングという図になります。この中で図の第二象限(左上)は、ワクワクしているけど、できない領域です。第二象限から第一象限(右上)へ向かうことで人間は成長を実感することができます。第一象限はワクワクしていてできる領域で、ある意味理想的な領域ですが、人間はそれでは物足りなくなり、そのうちに退屈してきます。これは図では第一象限(右上)から第四象限(右下)へ向かうことを意味しています。第四象限は、ワクワクしていないけどできる領域ですが、もしこの領域にいることに物足りなさを感じてくると、その領域を離れる決意を問われ、僕はそれを「ダメ元」と言っています。つまり今までできていたことを捨て、新たなワクワクするけどできない領域に飛び出すことを意味します。
これは勇気が必要となります。実際その多くは失敗するからです。幸い僕の場合は絶望からスタートしていますので「ダメ元」へ振り切ることができました。これは図では第四象限(右下)から第二象限(左上)へ向かうことを意味しています。そしてまた第二象限(左上)から第一象限(右上)に向かうという流れになります。
ここまでくると図の中に三角形が出来上がることに気づきます。つまり第二象限(左上)から第一象限(右上)、第四象限(右下)、そして第二象限を結ぶ三角形です。この三角形を意識して動いていくことが自分のワクワクを大切にしながら独自の強みを形成していく秘訣だと思っています。
これを僕は「個人の価値創造のフレームワーク」と呼んでいます。バリュークリエイトでは創業からずっと半年に一度全社員がこの「ワクワクとできる」をアップデイトし、みなで共有し、各人のプロフェッショナルとしての成長をサポートするツールとして活用しています。また僕がキャリア相談に乗る際にも活用しています。

5仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

「仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間」なんてあったかな〜とふつふつと考えていて、「自分の方向性を大きく変えた決断」という意味で一つ思い出したことがあります。

先に書いたように僕はもともと海外が大好きで実際にアメリカに赴任してからもアメリカの拠点を転々としていました。アーサーアンダーセンはグローバルな会計事務所で世界中に拠点がありました。ですから僕は漠然とアトランタの次はニューヨークあたりに転勤する。そのあとはヨーロッパの拠点をどこか行ってみてもいいな。そしてそのあとはアジアの拠点を転々としてみたら面白いかもしれない、なんていう考えを半分冗談ででも半分は本気で思っていました。

ところが東京から数えて4拠点目のアトランタでの仕事も3年が過ぎてくるとそろそろまた他の拠点に転勤してみてもいいなというワクワクが動き始めました。でもその時はワクワクを感じながら何か違うな〜と思っている自分がいました。
さらに月日が経った1999年のある日のこと。いつものオフィスで働いてふと考えている自分がいました。

そして突然「東京に帰ろう!」という気分になりました。自分でも意外でした。なんていっても日本を離れて海外の生活を謳歌していました。子供もアメリカで生まれ、現地の学校に行き楽しく遊び学び現地の生活に溶け込んでいる。家は大きな一軒家で、グリーンカードも会社に取っていただき何不自由なことはない生活を送っていたのですから。

ところが「このような生活を送っている自分が最大のリスクに違いない」という気持ちになったのです。
さらには「いま世界で一番面白い国は日本に違いない。これから日本は大きく変わっていくのでこのタイミングで日本に帰らないなんてありえない」とさえ思いました。

これまでの方向性とはまったく違う方向性に向かうとは自分でも思っていなかったので正直自分でもビックリです。でもいつもと同じように自分のワクワクする気持ちに素直にこの決断を「ダメ元」でしてしまったのです。

36歳のあの時に「自分の将来の方向性を変える」決断をしたからこそ、その20年後の今の自分があるのですから不思議です。

6公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

「公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと」は、特にないと思ったのですが、駆け出しの頃はかなり悩むことが多かったことを思い出しました。

僕が監査法人に入って最初の仕事は外資系の銀行の東京支店の監査でした。しかも初度監査。監査調書はパートナーがアメリカ人で日本語がわからないというので英語で書かないといけないということ。しかも現場のインチャージの方はインチャージになったばかりでとても厳しい方でした。銀行の財務諸表はよくわからない、初度監査なので過去の監査調書もなくどう書いたらいいのかわからない、しかもそれを英語で書かないといけない。インチャージに相談してもインチャージも忙しくそれどころではない、という環境が続いていく中で、僕は会計士という業界に心底自分が合っていないと感じるようになりました。またアンダーセンは仕事ができないと実際クビになるような事務所だったので、自分も早々にクビになるではないかと思う始末。まあ、でも「ダメ元」で入社したわけですからそれほど気にしていませんでした。このような苦労を入社当時はよくしていました。
たとえば、アーサーアンダーセンに入って3年目ぐらいになって、ある大企業の監査を担当していたときのことです。ここは1年目から担当していた会社でしたが、毎年担当する勘定科目が変わっていき難易度が上がっていました。そして、難易度が上がるたびによく悩みました。特に困ったのは、昨年の監査調書を参考にしたくても何をやっているのかよくわからないという始末だったことです。

ここで僕はそれまで自分はなんとなく仕事をしていたことに気づかされました。
そしてここでも思ったのは「ダメ元」。
まず自分で考える。大企業で大きな数字になると分かりにくので、シンプルは簡単なモデルに置き換え数字の関係性を考えました。またそれでも自分に自信が持てない場合には、上司のマネージャーに相談しました。正直恥ずかしかったですが、「ダメ元」で覚悟を決めていたのでそんなことを言っている場合ではありませんでした。そして学んだことをベースに仕事をし、自分が学んだことを翌年度やる自分の後輩が理解しやすいように図解を交えてメモにしていきました。そしてまたわからないことが出れば同じように行い上司に聞く。このようなことが日常になると上司も僕の扱いに慣れたもので、しかもこのような行動を通じて信頼していただけるようになったようです。後年になりますが、実際に僕の後に僕の作ったメモを参考に仕事をした方から「あのメモは本当に分かりやすかった」と言っていただいたことがありました。僕自身は既に忘れていましたが、嬉しい思い出です。

いくつかの事例を書きましたが、社会人としての最初の数年はこのような苦労が多かったです。そして、このような経験を乗り越えていく中で気づいたことがありました。

それは目の前の課題あるいは問題は、できたら目を背けたいのが正直なところですが、目を背けているとどこまでも同じ課題あるいは問題が起こり続けそれに悩まされるのです。また自分が成長して乗り越えてしまうと、そのレベルの同じ課題あるいは問題は二度と起こらないということに気づきました。
また自分の目の前の課題あるいは問題は、自分にとっては初めてで戸惑うことが多いものですが、社会人としての最初の数年で起こるような課題や問題は、おそらく既に先輩が同じような経験をして乗り越えているのでそうであれば、ある程度自分で考えれば、先輩の知見を積極的に取り入れることでより早くよりスムーズに成長することができるということです。

このような経験を通じて、自分の仕事を常にプロセスで考えて継続的に改善していく、また自分が直面する課題や問題については自分で考えた上で、その分野に一番長けている人を見つけて教えを乞い、その知見を自分のものにするという習慣を身につけることに繋がりました。

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