坂本大輔(さかもとだいすけ) | ページ 2 | 会計士の履歴書 | 活躍する会計士たちの仕事やキャリアを紹介

株式会社農業総合研究所

経営企画室

取締役 経営企画室長

坂本 大輔 さかもと だいすけ

農業ベンチャー初の上場達成。俯瞰的な視点から農産物流通システム拡大に貢献
先生タイプ
先生タイプ

1978年5月17日生まれ(45歳)
茨城県出身 ・ 東京都在住
上智大学 経済学部経営学科 卒業

4あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

監査法人での会計・監査の専門家としての経験と、事業会社でのIPO準備からIPO後の実務まで経験を持っていることは、やはり強みになると感じている。リスクアプローチを前提とした監査実務を知っているということは、会計の勘所を見抜くことができ、より効率的な経理処理や開示業務を推進することができるということだ。J-SOX監査の経験も、事業会社で業務フローを整備・運用する際に、押さえるべきポイントがどこにあるのか直観的にわかるので、大変役に立っている。また、IPOにしても、誰かが作成したものをチェックすることと、自分が主体的に作成するのでは、当然だがまるで違う。監査範囲の内外含め、IPO監査時の浮ついた知識が実務の中で腹落ちした瞬間は数知れない。IR活動では、会計・財務と事業・環境の視点を半々で持つことが理想的で、バランスよく投資家にアピールしていくことが肝要であるが、この点においても監査法人時代の経験が存分に活きている。

それに加え、担当業務の割当てはありつつも、取締役の一員として組織体制、営業活動、新規事業、労務人事、開発、広報・IR、業務提携・M&Aなど広く企業運営に関与していることも、自分の強みだと思う。会計士はついつい会計的視点が強くなりがちで、もちろん会計の専門家として当然の視点であるものの、企業運営を進めていくうえではより俯瞰的な視点での判断が求められるし、検討すべき事柄や論点も幅広い。30代からそのような経営層の仕事ができたことは幸運である。また、強みとは少し異なるが、実績の乏しいベンチャー会社では、社内に士業ホルダーが在籍しているだけでも会社の信用力や牽制力を上げるネタになるので、入社当時は特に、何かと積極的にアピールするようにしていた。

5仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

2016年6月に東証マザーズ上場を達成した時、会社全体が大きな達成感に包まれていた。「さぞかしIPO準備には苦労したのでは?」とよく質問されるが、自分が手を動かす分にはさほど苦労はなかった。二人三脚で準備を推進したCFOや主幹事証券などサポート会社の方々に恵まれたのは間違いない。他方、人にやってもらう・変えてもらうというところでは大変だった。出退勤をつけること、稟議申請をあげること、契約書を漏れなく取交すること、予算管理をすること等々、会社として当たり前にやることではあるが、これまでやらずに済んでいたことを社員に説明してやってもらうことは、根気と時間が要る。

上場準備の最初の頃に社内に向けて話したことだが、「上場して会社が変わることはないです。逆です。会社や皆が変わらなければ上場はできません」。その言葉どおり、徐々に会社全体が変わり、役員からスタッフまで一丸となってまとまっていく様を肌で感じることができるのは、IPO準備担当者の役得だと思う。

株式上場ほどの全社的プロジェクトなんてそうそうない。上場そのものも大変素晴らしいが、そこに向けて会社が一体となって変革していくプロセスを目の当たりにし、自分もそのひとりとして加われたのは、とても幸福で貴重な経験であった。

6公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

年度決算はもちろん、四半期決算やJ-SOXなどの監査業務は、決算発表という時間的制約もあり、監査意見形成のためにタイトなスケジュールの中で手続きをこなしていかなくてはいけない。決算期の異なる企業を複数担当していると年中切れ目なく仕事がある状態である。

特に年次が低いほど雑務・作業系が多く、専門性が求められる仕事は少ない。近年は慢性的に人手不足となり、中堅クラスでもその傾向は続いているように思える。公認会計士監査の目的は、“被監査法人を取り巻く利害関係者に対し、当該被監査法人の財務報告の信頼性を担保すること”とあるが、本当にそれだけをこなすのに精一杯になってしまう。本来は、監査業務を通じて、クライアント先の業務改善や経営管理に対するアドバイスなどもできるはずなのに、そんな余裕などない。しかも、きっちり期限内に監査意見を出しても、利害関係者からはもちろん、会社からも大して感謝されない。これは案外つらい。誰のために仕事をしているのかわからなくなるからだ。作成している調書も、万一訴訟になったとき監査法人や自分には責任がないことを証明するためだけに作成しているかのような感覚になる。こうなると、いよいよ目的を見失ってしまい仕事がつまらなくなってしまう。

そういうときほど、クライアントとの関係構築に心を砕いた。監査は、対応をする会社からすれば、監査意見をもらうためのコストという意識が強く、時間をいかに抑えて済ませるかという点もポイントとなる。会社担当者と日頃からコミュニケーションをとって、例えば、欲しい資料を早めに共有したり、知りたい情報を事前に項目出しするだけでも監査が短縮化され喜ばれた。元々煙たい存在の監査人であっても、しっかり関係構築ができ、「あの人なら聞いてあげよう」から「あの人に聞いてみよう」となり、「あの人の話をぜひ聞いてみたい」となれば、監査人としては一人前である。業務改善や生産性分析などの仕事に繋がることもある。監査に来るのを心待ちにしていると言っていただいたクライアントもあって、これは嬉しかった。

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