土屋英希(つちやひでき) | ページ 2 | 会計士の履歴書 | 活躍する会計士たちの仕事やキャリアを紹介

株式会社シャンディガフ

代表取締役

土屋 英希 つちや ひでき

経営者に寄り添いアイデアを実現するためにサポート役に徹する。管理実務全般を究めた職人気質の専門家
プロデューサータイプ
プロデューサータイプ

1974年1月28日生まれ(50歳)
神奈川県出身 ・ 東京都在住
武蔵大学 経済学部 卒業

4あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

一つの業務に関する知識や経験という武器をずっと磨いてきたわけではない。いわゆる管理系業務について一通りの実務を経験しているし、現在も網羅的に管理系業務のアウトソースを受けて実務を行っている。銀行にいたので銀行のやり方や考え方という間接金融のことはだいたい分かっているし、スクウェアでIR担当として機関投資家や個人投資家と接してきた経験、ガンホーでのIPO実務、これらで直接金融の仕組み等も一定範囲で理解はした。そして、マスチューン(みんかぶ)では株式市場を取り扱ったサービスを提供していたことから株式市場を鳥瞰図的に見る視点を経営者として経験し、さらに事業会社の一員として管理系実務をこなし、統括してきた。このように、金融系・ファイナンス系を中心とした会社業務実務・経営の一通りのキャリアは積んできた。そこから得られた業務知識と経験と流れが全て頭に入っている。

事業会社で組織的に業務を推進しようとすると、各部署・各担当者間の情報伝達の過程で非効率が発生するのだが、私の場合はほとんどの管理系実務を経験しているので一人で業務を完結することができる。また、多くの事業会社に在籍し、外部から支援し、を繰り返した結果、他の人より異常に手が早くなったようだ。「初めに何を動かさないと後から手詰まりになったり手持ち無沙汰になったりする」等の業務の優先順位や段取りが頭に入っているのが大きい。これまでも1年契約でお仕事をいただくことが多いのだが、当初より「長くても半年、短ければ3か月、4か月で終わる」といった想定期間をお伝えした上で半年後に契約の見直しの条項を入れていただくようにしている。契約先は「本当に終わるのか?」と半信半疑。結果として、想定通りに業務を終えてしまい、途中から実務のお手伝い等も含めた残務処理や土台作りをして半年が経過するまではご支援を継続する。そして「また次のステージに移る前だったり、新たな課題感があったりしたらお声かけしてくださいね」とお伝えした上で契約条項通りに半年で見直しを行い円満に契約解除、というパターンがそれなりの数ある。

経営計画や投資家向け説明書を経営者とディスカッションしながら作り始めて、基礎情報を出してもらったり、KPIやビジネスモデルの議論をしたりしながら数字周りのロジックを作り、投資家に説明する資料に落とし込んで、さらにそれを投資家が受け入れやすいようにブラッシュアップしていく。一般的なコンサル会社であれば数人がかりで数か月かける業務を、一人で何役もこなしながらそれよりも短期間で作成する。それは全部のことが頭に入っていて、実務として経験しているベースがあるからできていることだと思う。

経営者の方から、将来の相談をされることもある。そんなときは「じゃあ、まずはここから手を付けておきましょう。それにはお金必要だから銀行に事前相談等も行なっておきましょう」と、一足飛びに議論を進めるのではなく、アクションプランをお話ししている。「やる時間が今はない」と言われれば「名刺さえもらえれば、私が行って前振りしておきますよ」ということもある。アクションプランを提示でき、場合によっては自ら体を動かせるのは、今までの実務経験からくる強みだろう。実際に、取引をさせていただいたクライアントからは、「業務対象範囲外だと思って話をしてみただけなのにリアクションが返ってきた」と驚かれることもある。

他にも、実務担当者から経営まで、組織の上層から下層までを実際に経験しているせいか、どのプレイヤーの人とでも比較的話が合わせられるのも強みになっている。そのため、社長から「自分が話すと大上段から放った言葉になってしまうので、あの子たちに分かるように伝えて欲しい」とか、実務担当者からは「経営陣に刺さる言い方や表現があるはずだから教えてもらえますか(言ってもらえますか)」と個別ミッションをいただくこともある。

5仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

どちらかと言えば、「それ面白そうだから一緒にやろうか」と流れの中心に自ら乗り出すタイプではなく、「それ面白いね。ぜひ、やってみてよ。それを進めるための支援をするから」というタイプ。無責任に映るかもしれないが、自分ができること、やるべきことをしっかりと自覚しているためかと思っている。

ガンホーでIPOを達成したときも、特に心は動かなかった。経営陣からは「上場日当日は取引所のセレモニーに一緒に行こう」と誘ってもらったのだが、「いやいや、事務所にいます」とお断りした。セレモニーは周囲が期待するメンバーが行けば良いので、経営陣が行くのは必須。あとは「行きたい」とか「行ってみたい」と本心から思っている人が行けば良い。自分はあくまで実務担当としてミッションを成し遂げただけなので、そんな表舞台に立つ立場ではないと思っていたし、今でもそう思っている。

「事務所にいます」と言ったのにも理由があり、上場したとなれば初値次第ではマスコミが来て取材対応が必要になったり、投資家からの問い合わせがあったりすることが想定されたので、社内が混乱する懸念があった。「必要な儀式だし、滅多にできる経験ではないので、どうぞどうぞ行ってきてください。ただ、私は興味ないし、社内にやることありそうだから残りますよ」と。ただ単に日常の一個一個をイベントごとにして、それに労力を費やすのがすごく苦手で、嫌なだけかもしれないが。

6公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

公認会計士の資格がなければできない仕事はしていないし、監査をやりたいと思ったこともない。そういう意味では公認会計士という仕事に関連して、深く悩んだという経験はない。

公認会計士試験で勉強した監査論等の一般生活では学ばないであろう知識を活かすことはあり、これがなかなか面白い。例えば、監査法人側と事業会社側という立場があるとすると、自分は事業会社と同じ側に立って、勉強した監査論の知識やこれまでの経験を活かして事業会社をサポートすることができる。「監査法人から言われたけど、何でこんなことやらないといけないんだろう」という疑問や不満が、多かれ少なかれ事業会社にはある。監査法人で働く公認会計士にとっては説明するまでもない当然のことかもしれないが、事業会社の立場からすれば背景等も説明してもらわないと分からないこともある。

「監査法人はこういう考えで、こういう目的でこの手続きをしているんですよ。例えば、実査という手続きはその瞬間にしかできない手続きなのはわかりますよね。だから、実施するタイミングや実施した事実にこだわるんですよ」と、監査法人の考え方を説明できる。そこまでお話できれば、「年度末を挟んで遡及監査を依頼するくらいなら、年度末前の段階で『遡及監査の可能性を検討して欲しい』と監査法人に相談すれば、監査法人だって無下に断れないので実査に来てくれますよ」とアドバイスすることもできる。

監査法人の説明が十分でないことが要因で、事業会社が不思議に思っていたり、不満に思っていたりする部分を、「まあまあ、そう言わないで」と言いながら説明することは、公認会計士の仕事と意外と近しいのかもしれない。

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