2監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
公認会計士試験に当時最年少(大学3年在学中)で合格し、在学中にあずさ監査法人に入所。いわゆる国際部に配属となり、主に上場企業や海外企業の日本法人の会計監査・内部統制監査等の監査業務、IFRS導入コンサルティング等を担当。4年間の勤務を経て、昔からの夢であった司法試験を受験するため、中央大学法科大学院へ進学。法科大学院修了後、司法試験に一発合格し、“弁護士”としての活動を開始した。現在は、“弁護士・公認会計士”という資格の枠組みにとらわれることなく、紛争回避に特化したコンサルティングサービスを展開している。
大学受験では法学部を志望し、司法試験を受験するつもりだった。そのため、毎日必死の思いで勉強に励んだのだが、結果は法学部にすべて不合格。そんな経緯もあり、大学入学当初、実は、かなりやさぐれていた(笑)。そんな折、高校時代の友人から誘われて、商学部の“簿記”の授業を受け、人生が変わった。こういうと、かなり大げさに聞こえるかもしれないが、簿記という学問(技術)に感動し、簿記を勉強したいと考えるようになった。元々、ビジネス書好きな父の影響で大前研一氏の書籍を読んでいたこともあり、“経営”に非常に興味があった。企業の経済活動をすべて“数字”で表現するという世界に、興味を惹かれたのだと思う。
大学の授業は、簿記3級を1年かけて勉強するという、“ありえない”カリキュラムであったため、独学で日商簿記を勉強し、半年後の秋には簿記2級を取得した。そんな折、バイト先で元会計士受験生に出会い、公認会計士という世界を知った。簿記への興味から、そのまま大学1年の秋から大原簿記学校に通い、大学3年在学中に合格することができた。
当時、ちょうどロースクール制度が創設される頃であったため、大学卒業と同時にロースクール進学も検討したが、実務補習所の指導担当の先生から「監査実務を積むべき」とのアドバイスを受け、結局監査法人へ就職することとした。監査法人に入ってから、会計士の延長線上にあり、かつ、もともと経営に興味があったことから、経営コンサルティングというキャリアパスも考えることになった。「司法試験受験をしたい」という考えと、「経営コンサルティングサービスを提供したい」という考えが、頭の中で混在していた。次のキャリアパスが見えていたので、監査法人は早々に退職しようと考えていた。あずさ監査法人の国際部に就職したのも、他の国内企業向けの監査を提供している部門よりも、より多くの企業を短期間で回ることができると聞き、経験を早く積むことができると聞いていたからであった。
監査業務経験を積むなかで、より親和性の高い経営コンサルティングへの興味が勝り、こっそり経営コンサルティングファームへの転職活動をしていた頃、転機が訪れた。突然、上司から「新規クライアント(東証一部上場企業)のインチャージ(現場責任者)」の打診を受けてしまったのだ。ある意味では、会計士冥利に尽きる良い話ではあったが、経営コンサルティングへの興味との狭間で心が揺れた。
結局、インチャージのお話を受けることにし、監査法人にとどまることとなった。初年度監査の年は、四半期レビュー制度、内部統制監査制度がスタートする時期と重なり、非常にハードワークな日々であった。毎日充実していたものの、一方で、一サラリーマンとしての立場に限界等を感じ、急激に“経営コンサルティングファーム”への熱意が薄れていった。そして元々の司法試験受験への想いが反比例する形で燃え上がり、結局ロースクール受験を決意することとなった。
なお、現在では、一周回ってというべきか、結局、経営コンサルティングのサービスを提供する結果となっている。もちろん、今の自分だからこそ提供できるコンサルティングサービスであり、もし会計士試験合格後そのままロースクールに進学していたら、そしてもし監査法人時代にインチャージの話がなかったら、今のコンサルティングサービスはこの世に存在しなかったと思う。過去、自分を支えてくれた諸先輩方、先生方の御縁に感謝したい。
3今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
(1)はじめに(活動の特徴)
監査法人退所後、ロースクールに進学し、2015年より弁護士・公認会計士として活動している。弁護士業務に多くの時間を割いており、公認会計士として会計監査等を担当しているわけではなく会計士業務は少ない。弁護士というと“紛争解決型”、すなわち、紛争が起きてからその紛争を解決するのが仕事と思われがちである。もちろん、紛争解決型の業務が大半を占めるケースが多い。しかし私自身は“紛争回避型”、すなわち紛争が起きてからではなく、紛争を回避するよう事前に対応する活動を中心に行っている。誰も揉めたくて揉めるわけではない。“紛争を事前に防ぐこと”、ひいては“紛争を0にすること”こそ、弁護士としてあるべき活動と考えている。ある意味、会計士出身の弁護士の特徴かもしれない。
(2)主な活動内容
ア.弁護士・公認会計士としての業務
弁護士の一般的な業務として、企業法務、一般民事から刑事弁護まで一通りの業務を行っている。会計士時代の経験が生きる業務としては、コンサルティングに絡んだ企業法務やM&A(特に、法務・財務の一括デューデリジェンス等)を中心に行っている。
イ.相続関連業務
ロースクールの頃から、家族間における“想い”が複雑に絡み合う“相続”に興味があり、現在では、“終活弁護士”として、相続対策や事業承継を中心にコンサルティングを提供している。相続は、日本人であれば誰もが一度は経験する法律問題である一方で、事前の対策による紛争回避が可能である。そのため、「相続で苦しめられる人を0に」というミッションを掲げ、特に力を入れて活動をしている。
また、“デジタル終活”の普及のため、日本デジタル終活協会を設立し、デジタル終活専用エンディングノートの企画・制作からセミナーコンテンツの企画・開催まで、幅広い活動を行っている。デジタル終活については、あさイチやWBS(ワールドビジネスサテライト)等のテレビやラジオ、雑誌等のメディアにも取り上げられ、手ごたえを感じている。
さらには、終活に絡み、“争族体験セミナー®”“老後破産体験セミナー”等といったセミナーを企画し、多くの方に“争族”や“ライフプラン”に関する“気付き”を得てもらうコンテンツを提供している。
ウ.経営コンサルティング業務
2018年に株式会社Beyond Consultingを設立し、BCP(事業継続計画)と事業承継を掛け合わせた、全く新しいスタイルのコンサルティングサービスを提供している。中小企業に対し、最大のリスクである“事業活動停止”リスクに対する訓練実施を呼びかけ、中小企業の事業承継を、“気付き”の面からサポートする取り組みを行っている。なお、2033年までに全国の中小企業の2割に当該訓練プログラムを導入することを目標としている。
エ.セクシャルマイノリティー(SOGI)支援活動
セクシャルマイノリティーの支援活動の一環として、埼玉県で開催されている『虹色の式典in彩の国さいたま』(LGBT成人式@さいたま)の実行委員として、第1回から運営のサポートをしている。
(3)キャリアパス
そもそも、個人事業主となった時点で、キャリアパスなる概念は存在しないが、自分が“何をしたいのか”については日々考えるようになった。組織内の構成員とは異なり、ある意味では何でも自由にできることから、“やりたいこと”と“やりたくないこと”を明確に線引きするようにしている。すべてが自分に跳ね返ってくるという点で責任は重いものの、刺激的な毎日だと思う。今でも、次々にビジネスアイディアが浮かんでくるが、そういったアイディアを形にしていった道のりが、将来のキャリアパスになるのだと思う。