【インタビュー】コンサルティングファームで会計士が結果を出すために必要なものは? | 会計士の履歴書
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コンサルティングファームで会計士が結果を出すために必要なものは?

株式会社経営共創基盤(IGPI) / 豊田 康一郎

コンサルティングファームで会計士が結果を出すために必要なものは?

株式会社経営共創基盤(IGPI) / 豊田 康一郎

今回の特集は、株式会社経営共創基盤(IGPI)のディレクター 豊田康一郎(とよだ こういちろう)さんをご紹介します。豊田さんは東京大学大学院工学系研究科に在籍中に会計士試験に合格し、有限責任あずさ監査法人でインチャージ業務などに4年間従事したのち、IGPIに入社しました。学部、大学院時代に2度にわたり論文で受賞し、研究の功績を認められたのに、なぜ会計士の道に進んだのか。そして、コンサルティングファームに入社した当時の失敗や苦労談についてもお聞きしました。

株式会社経営共創基盤(IGPI)
長期的・持続的な企業価値・事業価値の向上を目的とした常駐協業(ハンズオン)型成長支援を行う。成長支援や創業段階での支援あるいは再生支援等、企業や事業の様々な発展段階における経営支援を実施。 プロフェッショナル約200名、グループ合計約5,100名。東京都千代田区丸の内に本社を構える。

キャリアサマリー
平成16年10月 公認会計士第二次試験合格
平成17年9月 東京大学大学院工学系研究科修了
平成17年10月 現有限責任あずさ監査法人入所
平成20年7月 公認会計士登録
平成21年12月 株式会社経営共創基盤(IGPI)入社
平成28年10月 同社 ディレクター就任

1経営者の視点に立ち、多様なコンサルティングサービスを提供

IGPIで求められるのは総合的な経験とスキル

株式会社経営共創基盤(IGPI)での仕事内容について、教えていただけますか?

2009年12月にIGPIに入社して、2016年10月にディレクターに就任しました。

現在は常に複数の案件が同時進行していて、午前は再生フェーズにあるクライアントの経営会議に出席し、午後は投資先のベンチャーで新規市場開拓に関するディスカッションを行い、夜は社内ミーティングでIGPIがファイナンシャルアドバイザーを務めるM&Aのスキームの検討を行うといった働き方が日常になっています。

関与する仕事の幅は広く勉強すべきことが無限にありますが、私は元来飽きっぽい性格なこともあり、日々様々な挑戦があるこの仕事は結構性に合っていると感じます。

コンサルティングファームといってもそれぞれ特徴があると思うのですが、IGPIの特徴について教えていただけますか?

IGPIはクライアントの事業面と財務面に対して、戦略コンサルティングとM&Aおよび財務アドバイザリー業務を、常駐ハンズオン型で提供するのが特徴です。また、ファンド的な活動もしており、自社の資金で投資活動を行っています。

大手企業から非上場の中小企業・ベンチャーまで、クライアントごとに最適なサポート体制を見極めながら、成長のお手伝いをしています。

IGPIは戦略コンサルティングから投資まで、幅広い手法で企業の成長をサポートしているということですが、どのような専門知識を持った方が働いているのでしょうか?

メンバーは、公認会計士や税理士、弁護士以外に、外資系戦略コンサルティングファームや金融機関、事業会社出身者などさまざまな分野のプロフェッショナルによって構成されています。

伝統的なプロフェッショナルファームでは、事業、会計、法務など各分野が切り離されていて、各自が専門分野の支援を行います。ですが、どの規模の会社も経営者はすべての領域を見たうえで責任を負います。

IGPIではプロフェッショナルが真の意味で経営者と同じ視点で伴走できるようになるために、メンバー自身の専門分野だけではなく、各分野を横断した経験とスキルを身に付けることが求められます。

そのため、公認会計士出身者だからといって会計や財務だけを支援するわけではなく、経営全般の総合的な視点が求められます。

転職の判断は、仕事内容5割と人物5割

転職を決めるときに大切にしている価値観があれば教えてください。

転職のときに最も重視したのは仕事内容で、幅広い業種に関与できる経営コンサルティングファームを希望していました。またプロファームの財産は人のみなので、「人とカルチャーにフィット感があるか?」ということが何より重要でした。判断軸としては仕事内容5割と人物5割で見ていました。

経営コンサルティングファームを中心に転職活動をされたのですか?

私が転職活動していた2009年はリーマンショック直後で、投資銀行の若手が次々とリストラされる厳しい時代でした。

ただ、転職活動は、普段は高いお金を払わないと話を聞けないような人が無料で会ってくれる、“高級社会科見学”だと思っていましたので、せっかくの機会だからとコンサルだけでなくファンドやM&Aアドバイザリーなど興味のあった5つの業界から2社ずつピックアップして話を聞きに行きました。いろいろな話が聞けて、訪問して良かったです。

先輩やどなたかに転職の相談はしましたか?

関心のある業界にいる先輩や人づての紹介のほかに、3社の転職エージェントに話を聞きにいきました。エージェントはサポートの仕方も説明もそれぞれ違います。紹介して終わりというところもあれば、面接対策まで手厚くサポートしてくれるところもあります。

これも普段聞けない話を無料で聞くことできるので、相談してみて良かったと思います。

働く人たちの優秀さを面接で実感

IGPIは採用試験がとても難しく、会計士の資格があるというだけではほとんど受からないイメージなのですが、実際はどういう感じでしたか?

最も印象深いのは3回目の面接です。45分間で15問の時事ネタに関する非常に難しい質問を受けました。説明したらすぐ次の質問に移るので考える時間が3秒くらいしかなくて、終わったら汗ビッショリでした。

ただ、面接官の方が難解な質問を切れ味よく次々と浴びせてくるので、これだけ優れた人が面接を担当している会社なら間違いないという判断もできました。

別の回の面接では私の方から面接官の方に、仕事をする上でのモチベーションについて質問をしたのですが、「クライアントの役に立って感謝されたときです」という回答を聞いて、当時の自分は自己能力の研鑽にしか興味がなかったので、そんなものかなと思いましたが、今は良く分かるようになりました。

10社転職活動した中からIGPIを選んだ理由について教えてください。

外資系の戦略コンサルティングファームからもオファーを頂いていて最後まで迷いましたが、最終的には仕事内容5割、人物5割で判断しました。

IGPIは他の特化型ファームと比べて、やれることの幅が圧倒的に広いのが魅力でした。またCEOの冨山の著書はたくさんを読んでいましたし、面接で会った人たちが皆優秀で人間的にも優れた人たちだったので、人の面でもIGPIで働きたいと思いました。

2コンサルティングという仕事

ハンズオン支援型コンサルティングでできること

コンサルティングが成功するためのポイントは何ですか?

綺麗な戦略を描くだけではなく、クライアントが経済的なインパクトを得られるところまでクライアントと並走して戦略の実行を支援し、結果にこだわるのがIGPIの理念です。

今は事業会社にもMBAホルダーやポストコンサル人材は沢山いるので、レポートだけ出して終わりという仕事のやり方ではクライアントは満足しません。戦略を実行して結果を出して、はじめてクライアントに付加価値を提供することができます。

ハンズオンでの支援はIGPIの特徴だとお聞きしていますが、実際にどこまで会社に入り込むのでしょうか?

戦略を実行するときには、組織のポリティクスや人心の掌握、詳細な分析、粘り強く変革を説く姿勢など、泥臭い活動が必要です。

今、自分がプロジェクトマネジャーを担当しているチームの一つは、IGPIの中でも一番会社に入り込むスタイルで、コンサルティングだけではなく上場企業であるクライアントへの投資も行っています。

私は非常勤役員ですが他の2名は100%常駐で、うち一人は会計士資格を持つマネジャーです。もともと技術力のある会社なので、販売戦略とマネジメントを見直して利益を出せるようにすることが主な課題です。私を含めたIGPIメンバーはクライアントの名刺を持ち、クライアントの顧客やサプライヤーとの交渉にも参加しています。ここまで入り込むプロジェクトはIGPIでも一部ですが、PL上の成果を上げるために必要なことはすべて実行しています。

IGPIはクライアントにかなり入り込むスタイルをとっているので、プロジェクトメンバーがそのままクライアントに残り、経営側になるケースもたまにあります。経営者ネットワークができることはIGPIの基盤にもなるので、外に出る人を応援するのが弊社のスタンスです。

失敗はつきもの。そこから何を学ぶかが重要

コンサルティングファームで戸惑ったことや苦労されたことはありますか?

失敗談や苦労話は、過去も現在進行形でもたくさんあります。チームも自分も100%やれるだけのことはやっていますが、すべての局面で結果が出るわけではないので、自分として満足のいく案件ばかりではありません。

非凡な才能を持つヒーロー選手と比べるのはおこがましいかもしれませんが、全盛期のイチローだって6割以上の打席は凡退です。ミスを形式化して、失敗からいかに学ぶかが重要だと考えています。

転職して1年目が一番大変でしたか?

転職して1年目で初めて担当した投資案件で、営業部の平均年齢が60歳という老舗企業の営業改革を担当しました。なかなかバリューを出すことができず、作成した報告資料は1ページ目の1行目から上司のダメ出しを受けるなどスキルの不足を露呈し、毎日クビの恐怖と戦っていました。

1行目からダメ出しされる経験は、監査法人ではないですよね。

資料作成はコンサルティングワークの基礎ですが、事前のリサーチやロジカルシンキング、アンサーファーストの表現、分かりやすい見せ方など学ぶべき事項が山ほどあります。上司からやっと、「だいぶ資料のセンスが良くなってきた」と言われたのは入社して半年も経った頃でした。

2年目ではM&AとPMIのプロジェクトを担当したのですが、4カ月ぐらいM&Aの交渉が進んでそろそろクロージングという難しいタイミングでチームに合流しました。

膨大な資料と情報量にキャッチアップしなければならず、マネジャー昇格がかかった時期ということもあり、ストレスとプレッシャーで突発性難聴になってしまいました。

乗り越えたというよりも、壊れずにめげずに生き残ったというのが実感です。コンサルティングファームでは、失敗してもめげないことが一番大切です。

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