2監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
■監査業務からのスタート(6年間)
公認会計士試験に合格後、すぐに大手監査法人の監査部門に就職した。当時、あまり深く考えていなかったが、監査法人業界を知るという意味ではよい選択だったと思う。監査部門では、多くの法定監査業務やIPO支援業務に関与した。業種も幅広く、製造、小売、卸売、IT、コンテンツビジネスなど、多様な業界に接することができた。IPO支援では監査の立場を維持しつつも、クライアントと一緒に考えたり、勉強会を開いたり、非常に頼りにされる機会も多く、やりがいも感じることができた。
主査業務も一通り経験し業務に慣れてきたころ、監査業務以外に、会計士としてできる業務の幅を広げたいとの思いが募ってきた(監査法人入所の会計士にありがちなことではあるが)。ちょうどそんな時分に、業務でご一緒したことがあるアドバイザリーチームから、異動の打診を頂いた。監査からアドバイザリーへ立ち位置を変えることで、クライアントの息遣いをより直接感じる仕事をしたいとの思った。そして今と違う世界を見たいとの好奇心から、迷わず異動を決めた。
■アドバイザリー業務へ(2年間)
異動先のアドバイザリーチームでは、中国進出企業支援を主な業務としており、上場会社の中国現地子会社の財務調査支援、決算体制・内部統制構築支援等に従事した。当時は、中国に進出したものの、管理が思うに任せず、苦労している会社が多かった。日本親会社の目線から、中国子会社の課題を整理し、解決策をクライアントと一緒に検討した。中国で発生する粉飾、不正事例は、従来の日本の常識をはるかに超えたもので、思考の枠組みが大きく広がった。当時のチームメンバーとは、今でも組織を超えて仕事を一緒にすることも少なくない。
■トランザクション業務に軸足(10年超)
2007年に、勤務する監査法人解散決定を受けキャリアを見つめなおした。中国関連の支援業務は、刺激に富んでいたが、幅が広く、自分が専門家として関与できる範囲は日本の会計や内部統制に関連する領域に限られた。中国の会計・税務は、現地の中国人会計士にかなわず、中国人に行動を促せるほどの中国語力もない。コーディネーターとして業務を続けているうちに、自分が会計専門家としての領域から離れつつあることに気が付いた。業務の軸をもつ特徴のある会計士を目指すべきと考えた。
これまで関与した業務で面白いと思ったのは、いくつかのM&Aでの財務DD(デューデリジェンス)業務だった。クライアントの大きな経営判断に関わる案件が多く、いずれもクライアントの真剣度合がそれ以外の業務と格段に違っていた。専門家としての力量が試される緊張感も高いが、的確な助言ができれば、クライアントと同じ向きで案件に関与し、クライアントと一緒に案件の成功を分かち合うことができた。中国の旗は一度おろして、トランザクション関連サービスを深堀りすることに決めた。
トランザクション関連サービスを何処で深堀りしていくか様々な選択肢を考えたが、最終的には、お世話になった監査法人の事業開発チーム(M&A、IPO等)の上司と共に中堅監査法人で新たに作り上げていくのはやりがいがあって面白いと思い、中堅監査法人への移籍を決めた。
移籍した中堅監査法人では、多くのM&A、再編の仕事に恵まれた。M&A再編関連のDDや評価、会社更生法の管財人補助、支援協議会スキームによる事業再生、再生会社のM&Aなど、多くの局面でのM&Aに関与できた。とにかく、一つ一つのプロジェクトで成果を出したい一心で、チームメンバーとハードワークをこなし、研鑚を重ねた。
幸運なことに、沢山のクライアント、優秀なチーム、信頼できるプロフェッショナルに出会い、支えられ、仕事の幅が広がっていく実感が日々得られた。一方、仕事の幅が広がっていくにつれて、監査法人の枠組みを超えて、よりクライアントとしっかり向き合って仕事ができる環境でトランザクション業務に専念したいという思いが強くなった。
こういう中で、ご縁があって、2015年10月にクリフィックスFASに移籍することになった。
3今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
■クライアント・ファースト
現在、クリフィックスFASというクリフィックス税理法人のグループ会社で、M&A、再編の支援業務を行っている。クリフィックスFASの“Clifix(クリフィックス)”には、基本理念である“クライアント・ファースト(Client First)”の思いが託されており、クライアントにとって最善の解決を求めることを最優先に業務に取り組んでいる。
■会計のプロによるM&A、再編支援
会計系サービスは多様だが、クリフィックスFASは、M&A、再編等をコア領域として支援業務を行っている。現在、①トランザクションアドバイザリー(ストラクチャリング、財務DD、モデリング等)、②バシュエーション(株価算定、PPA、公正価値測定等)、③リストラクチャリング(再生支援等)等を主な業務領域としている。
クリフィックスFASでは、業務別の縦割組織ではなく、案件ごとにクライアントのニーズに応えるプロジェクト編成で対応している。クライアントは、上場企業あるいはファンド等が中心のため、買収後の開示、監査上の論点は常に関心事であり、監査法人での監査経験を生かすことができる業務でもある。
■再編税務に強い
クライアントは、得てして暗黙のうちに税務の助言に期待を寄せてくることが多い。クリフィックスFASは、税理士法人の再編税務の専門家と同一オフィスにあり、気軽に意見交換できる恵まれた環境にある。会計も税務も、条文や書物の理解だけで課題は解決できず、現実に起こる課題の解決は、行間の理解と実務経験がないと難しい。この環境は、クライアントサービスだけでなく人材育成のうえでも、クリフィックスFASの大きな特色の一つと感じている。
■キャリアパス
クリフィックスFASの最大の資産はチームメンバーであり、メンバーの成長をファームの成長と位置付けている。
監査法人で監査実務を積まれた方であれば、初日からプロジェクトに参画し、これまでの経験も活かしつつM&A等の実務の理解を深めていく。次の目標は、プロジェクト・マネージャーとして、チームをまとめ、クライアントサービスをリードできるようになること。コンパクトなプロジェクトでも、クライアントと向き合い解決に導くことができれば、会計のプロフェッショナルとして、磨きがかかった実感が湧いてくる。具体的なプロジェクトをリードするなかで、クライアントあるいは他の専門家(弁護士、戦略コンサル、バンカー等々)との直接のやりとりが増えると、会計領域以外の視界が広がり、自身の成長を更に実感できる。