桜井和哉(さくらいかずや) | ページ 2 | 会計士の履歴書 | 活躍する会計士たちの仕事やキャリアを紹介

Global Gateway Advisors Pte. Ltd.

クロスボーダーM&Aアドバイザリー部門

アシスタントマネージャー

桜井 和哉 さくらい かずや

数字で世界をつなぐ、挑戦のゲートウェイ
先生タイプ
先生タイプ

1994年5月17日生まれ(31歳)
福井県出身 ・ シンガポール在住
中央大学商学部会計学科

4あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

私の強みは、困難な状況でも諦めず、粘り強く物事を前に進める実行力である。クロスボーダーM&Aの現場では、予定通りに進まないことや、文化・言語のギャップから生じる摩擦が日常的に起こる。その中で必要なのは、一度決めた責任を途中で投げ出さず、状況に応じて工夫を重ね、解決策を見出し続ける姿勢だと考えている。
例えば、タイで担当した「片道切符DD」と呼ばれる案件では、対象会社の経理体制が脆弱でBSの貸借が合わず、オフィスの賃料さえ払えない状況だった。さらに、現地スタッフがタイ語しか話せず英語での意思疎通が困難であったり、帰国予定のフライトがシステム障害で飛ばなかったりというトラブルまで重なった。それでも現場に足を運び、差し押さえ寸前のオフィスから必要な資料を一つひとつ確実に押さえ、最後まで責任をもって報告をやり遂げた。この経験は、忍耐と行動力を両輪として進めていくことの大切さを改めて実感させるものだった。
また、私は「同じ方向を向いて仕事をしたい」という価値観を大切にしている。日本語で行われる会議では、参加者全員が母語という高度な言語能力を駆使しているにもかかわらず、細部へのこだわりや枝葉末節の議論に時間を費やし、結局「この会議は何のためだったのか」と振り返ってしまうことが少なくない。一方で、海外の現場では第二言語同士の限られた単語でのやりとりであっても、“One hundred dollars. That’s it.” といったシンプルな確認で十分に意思が通じ、全員が同じ目的に向かって動き出す。言葉としては不完全でも、方向性が一致していることの方がはるかに価値があると実感している。
この「粘り強くやり遂げる力」と「同じ方向を向く意識」を基盤に、M&Aの現場で日本企業と現地企業をつなぐ橋渡し役を担っている。単なる取引成立ではなく、統合後の持続的な価値創出を見据え、最後まで責任をもって関わり続けることが、私の使命であると考えている。

5仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

クロスボーダーM&Aに携わる中で最も心が動いたのは、プロジェクトが実際にクロージングに至った瞬間である。特に、海外進出の経験がなかった企業がシンガポールでの案件を成約させたときには、自分自身が交渉の窓口を担ったという実感とともに、言葉にできないほどの達成感を味わった。監査法人時代にも達成感を得る場面はあったが、「自分がいなければ成立しなかったかもしれない」と思えるほどの手応えは、このM&Aの仕事ならではの醍醐味である。
一方で、M&Aの現場はすべてが順調に進むわけではない。交渉が破談に終わることも少なくなく、直前まで「いけそうだ」と思っていた案件が一瞬で消えてしまうこともある。なぜ失敗したのか答え合わせができないまま終わることも多く、そのたびに悔しさと無力感に襲われる。成功したときの喜びと、破談したときの落胆―その振れ幅の大きさは、まさに「0か100か」のM&Aの世界の厳しさであり、同時に大きな魅力でもあると感じている。
特に印象に残っているのは、売り手側のFAとして交渉をリードした案件である。買い手とのやりとりでは、わずかな言葉や条件の違いが全体を左右する緊張感がある。監査時代は重要性で切捨てていた、単なる数字の10億円が、今はクライアントの挑戦を左右する、重みのある現実の10億円として目の前に立ちはだかる。ひとつの判断を誤れば案件そのものが吹き飛んでしまうという恐怖と常に隣り合わせだった。最終的にクロージングに至ったときには、監査時代に見ていた取締役会資料が、自分の仕事を通じて「投資を決める判断」に直結していることを肌で実感し、これまでの経験が一つにつながった感覚があった。
M&Aの現場では、自分が知らない事情や当事者の判断によって物事が覆ることもある。しかし、だからこそ自らが関わったプロジェクトがゴールまで走り切った瞬間の感情は何にも代えがたい。成功と失敗の両方を経験しながら、その振れ幅に振り回される感情こそが、いま自分がこの仕事に本気で向き合っている証だと強く実感している。

6公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

監査法人時代に最も悩んだのは、努力すればするほどクライアントに負担を強いるという監査特有の矛盾した構造に直面したことである。経験の浅い頃は、見つけた誤りをどう伝えるか分からず、正しいことをしているはずなのに、相手から警戒や不快感を示されることが多かった。努力に比例して喜びが返ってこないことに葛藤を覚え、「自分は何のためにこの仕事をしているのか」という問いが頭を離れなかった。
もちろん監査が好きで取り組む人にとってはやりがいがあるのかもしれないが、自分はそうではなかった。20代の自分には視座を高く持つ余裕もなく、パートナーになれば違う景色が見えたかもしれないとは思うものの、当時はどうしてもそうは考えられなかった。
「どう乗り越えたか」という問いに対する正直な答えは、「乗り越えられなかった」である。監査の枠組みそのものを変えることは不可能だと悟った。だからこそ、発想を転換し、自分がフィールドを変えるしかないと考えた。転職という選択を通じて新しい環境に身を置き、自分のキャリアを切り開く道を選んだのである。そうして選んだのが、クライアントと同じ方向を向いて、共に挑戦し成長できるアドバイザリーの道だった。悩みを「完全に乗り越えた」とは言えない。ただし、監査での葛藤は決して無駄ではなかった。その経験があったからこそ、自らのキャリアを見直し、前向きに力を発揮できる場へと踏み出すことができたのだ。そしていまの自分の覚悟や価値観を形づくった大切な礎となっている。

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