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佐々木博章公認会計士事務所

所長

佐々木 博章 ささき ひろあき

100%のパフォーマンスができなくなれば、自らバットを置くべき
革命家タイプ
革命家タイプ

京都府出身
同志社大学商学部 卒業

4あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

私のキャリアを振り返ると、監査から税務、日本から海外、実務から経営へと、様々な環境で変化を遂げてきた。一見すると、行動力があるように見えるかもしれないが、実際はそういうものではない。自己分析すると、私は単に同じことを長く続けていると飽きてしまい、次第に他のことに興味を持つ性格なのだと気づいた。好奇心が旺盛で、負けず嫌いであり、忍耐力も多少はある。新しいものに興味を持つと、それに飛び込んでみたくなり、入ってしまうと簡単には辞めたくないという気持ちが湧き上がる。そして、何とかしてその環境で生き抜く方法を考える。その結果、特定のスキルが身につき、それを発展させることができるようになるのだ。
また、自己否定の気持ちが強く、自分の能力に自信を持てないというところがある。自分の能力は所詮限られたものだと認識しているので、周りの人たちをリスペクトし、頼りにして、チームとして乗り越えてきた。自分でも周りの人たちに負けない技量を身につける努力をし、その上で周りに頼ることができたというバランスを保つことができたと思う。
人と同じことをするのが嫌で、常に独自の道を歩もうとした。その例としては、馬術部に所属していたり、ジャズピアノのバイトをしていたりしたことが挙げられる。人と同じことをするのが嫌で、いつも自分の道を探していた。しかし、英語についてだけは避けて通りたいという気持ちがあった。英語を使わずに済む人生があればいいと思っていたが、結局、それを避けることはできなかった。腹をくくって飛び込むしかないと感じ、英語の業務にも取り組んでいった。
私のキャリアの中でも、特に印象深いのはやはり、監査法人から税務に転職した時である。税務については全くの素人だったが、そこで諦めずに一から学び直すことを決意した。周囲からのリスペクトもなく、辛い時期もあったが、それでも負けずに努力を続けた。その結果、後から入ってきた人たちは、すでに私が身につけた知識や技術を見習うこととなり、私が一つのロールモデルとなった。

5仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

M&A関連の業務では、日経新聞の一面に載るような案件に携わることが少なくない。こうした大きな仕事に関わることで、密かな満足感を感じることができ、モチベーションにもつながる。そして何より、クライアントから感謝され、信頼を獲得したと実感することができる。
とある大きなM&Aの案件では、クライアントからの要望に対する解決策がなく八方塞がりで、いよいよ案件自体が流れてしまう(不成立となる)可能性が高い状況に陥っていた。そこに急遽呼ばれた私は、その場で「中間配当をすれば解決できるのではないか?」と一言提案をした。このアイディアが、「そんな手があったのか!」とクライアントや同僚に感動とともに受け入れられ、案件が無事に成立したという出来事があった。その一件以来、このクライアントは、弁護士や会計士など他のアドバイザーがどこの事務所であっても、税務のアドバイザーだけは必ず我々をパートナーとして選んでくれるようになった。やって良かったという達成感とともに、大きな誇りを感じた。
また、別の案件では、アメリカのファンドによる事業統合に関わることになり、その重要な交渉の場で、私は社長からの指名を受けて、社長の隣に座ることを求められた。この時も、最も信頼できるパートナーとしての地位を勝ち得ていたことを実感し、非常に嬉しかった。これらの経験は、苦しい時期を共に乗り越えたクライアントとの関係を丁寧に積み上げ築いた結果だと思っている。
税務への転身を決めたのは、感謝されるような仕事をしたいという気持ちからであり、その夢が実現する瞬間も、まさに心が大きく動く瞬間であった。どれだけ困難な状況でも、この道を歩み続けたいという強い気持ちが湧き上がるのである。
税務裁判に携わる機会においても大きな感動があった。特に、会社間で金銭が絡む税務裁判では、何億円という巨額の還付加算金を含め、全額勝訴したことが印象深い。さらに、私が退任後も続いた別の裁判では、税務調査の根拠を聞いた時に「これは勝てる」と確信し、最終的に控訴・上告を経て最高裁判所まで行き、すべての裁判で勝訴する結果となった。
税務の世界は、どのような指導者につくかによって、育ち方が大きく変わる。私が東京に赴任したときに影響を受けた所長の存在は偉大であった。彼は、常にクライアントファーストの精神を持ち、積極的にアドバイスを行う姿勢が印象的な人であった。彼の教えの一つに、税法の条文を読むだけでなく、その背後にある「税務の常識」を理解することの重要性があった。細かい条文と向き合っていても、その「常識」にはたどり着けない。クライアントに接する接し方についても、たとえばM&Aの案件で、相手側のアドバイザーとクライアントの言い分が食い違うような場面では、「そうなんですね」で終わるのでなく、「じゃあ私が直接話しに行きましょう!」と、クライアントの期待を超える対応をする。自分がお客さん側の立場になると、契約以上のことをしてくれる人に、今後もお願いしたいと思うのは当然だろう。信頼は、そのようにして築かれていくのだと学んだ。

6公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

大阪の監査部門からシニアというポジションで東京の税務部門に移った当時、監査部門から税務部門への移籍は前例がなかった。また、私の場合、当初は3年間の出向後は大阪に戻って税務部門を立ち上げるというミッションを負っていたため、上席者からは客人扱いされることが多かった。しかし、税務の経験が全くない中で、経験豊富な同僚や部下とどのように仕事を進めていくべきか、非常に悩む毎日であった。その時、「自分には監査経験があるから、税務の細かい部分は知らなくても、ビジネスや経営の視点を踏まえた大所高所からチームを指導すればよいのだ」と考えることもできたが、もしその選択をしていたなら、失敗していたと思う。その時の私は、「税法に立ち返ればすべての答えがある」と考えることを選び、税法、施行令、施行規則、通達、さらにはその解釈や判例に目を通し、徹底的に法律を読み込むことに時間を費やした。(これ自体は至極当たり前のことのように思えるかもしれないが、実務家の中には法律を読み込まない者も少なくない。)税務の世界では、法律の勉強が実務経験を上回ることは容易ではない。しかし、この習慣が後に非常に役立つこととなる。税制が大きく改正された2000年前後、持株会社の解禁や組織再編成税制の導入、連結納税制度の導入といった新しい税制が毎年登場し、実務家であってもゼロから勉強する必要があった。その中で、難解な条文を読み解く習慣がついていたことが、大いに役立ったと実感している。
東京に移って2年が経過した頃には、海外赴任の要請が来た。行き先はアイルランドのダブリンであり、英語には苦手意識があったものの、このチャンスを逃せば次はないと感じ、赴任を受け入れることに決めた。さらに、監査業務ではなく税務業務での赴任だったため、再び税務の知識ゼロからスタートすることとなった。アイルランド事務所では、私以外に日本人がいなかったため、日系クライアントへの対応、新規顧客の開拓が求められた。日本では上司から仕事が降ってくることが多かったが、アイルランドでは自分が仕事を持ってこなければならず、その辛さを痛感した。この時、最も強く実感したのは、仕事があることがいかに幸せかということである。日本にいた頃は、仕事が多すぎて困ることもあったが、アイルランドでは仕事がなければ本当に何もできず、その辛さを身をもって理解した。毎日、自分にできることを考え、実行に移し続け、クライアント訪問を繰り返し、徐々に忙しくなっていった。そして、2年後には現地でマネジャーに昇進することができた。
アイルランドでの経験を通じて、海外での仕事の厳しさを感じる一方、個人の努力と実力が最も重要であることを再認識した。特に、初めは顧客を持たず、すべて自分で仕事を作り出さなければならないという状況は非常に厳しく、時には挫けそうになることもあった。しかし、その厳しさを乗り越えることで、大きな成長を遂げることができた。
パートナーに就任する直前期は、アメリカ全土を回り講演を行った。前日に突然講演が決まり、500人を前に30分間スピーチすることもあった。
スピーチに際しては専用のトレーナーが付き、厳しく指導された。これも厳しさの中に成長の喜びを感じられる経験だった。スピーチでは「句読点で区切る」ことを意識し、簡潔に伝える重要性を学んだ。言葉を整理し短く区切ることで、思いを明確に伝えられるようになる。この方法を他者に教えることもあった。また私自身、原稿を読みながら話す人の言うことは信用できない。そのため、原稿を一切使わず、聴衆の目を見て話すことを徹底した結果、講師陣から高い評価を受けた。「日本にもこういう人がいるんだ」と言われ、信頼を得られる喜びを感じた。
それ以来、さまざまな国を訪れ、日本人や日本の文化をテーマに話す機会が増えていった。元々スピーチは苦手だったが、経験を通じて徐々に得意になっていった。ニューヨークでの厳しい初体験は良い経験だった。

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