大塚俊秀(おおつかとしひで) | ページ 2 | 会計士の履歴書 | 活躍する会計士たちの仕事やキャリアを紹介

大塚俊秀公認会計士税理士事務所

代表

大塚 俊秀 おおつか としひで

経理と教育を支える未来志向の会計士
チームビルダータイプ
チームビルダータイプ

1976年9月27日生まれ(47歳)
茨城県出身 ・ 東京都在住
中央大学経済学部産業経済学科

4あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

 独自の強みとして私が思っていることは、いい意味で人柄や考え方が「会計士っぽくない」ところです。
 会計士というと、会計士という職業を知らない方からは、お堅い、気難しい人のようなイメージを持たれていることが比較的多いように感じます。そんな中、私に対する印象を聞くと、そういった印象とは真逆のやわらかい、親しみやすい雰囲気で安心感があると言ってもらえることが多く、そういったところが一つの強みかと思います。
 また、心理学や脳科学、コーチングスキルを活用して、コンサルティング、経営者向けのコーチングを提供していたり、より理解しやすい、楽しめる講座を提供することに役立てていることも強みです。最近では士業の方も心理学を学ばれる方が増えていると思いますが、ビジネスは人と人のつながりからもたらされるものであり、人の心理という本質に強く関心を抱き、学び続けています。
 キャリアの観点で言うと、私は監査法人実務と事業会社の経理実務の両方を経験していることから、それぞれの立場、心理等を理解しています。多面的な視点からコミュニケーションを取れるのは強みだと感じています。
 少し話しは変わりますが、特に事業会社経理の現場は、今、超人手不足です。実務はおろか、新しく人が入ってきてもゆっくり教えてくれる先輩や同僚がおらず、そこからくる不安や多忙なこともあって、すぐに人が辞めていくという負のスパイラルが起きています。そういった実態を経理部員として間近で見ていた立場から、私ができること、これから更にやっていきたいと考えている大きな一つの事が経理人材の育成です。経理人材の育成を通して経理業界に貢献したいと考えていますし、経理の仕事をもっと魅力的にして、経理実務に携わる人を増やしたり、経理現場の負担をもっと楽にできたらと考えています。それにはもちろん人材育成だけでは十分ではなく、他にもやることはたくさんあると思いますが、まずは私がすぐにできることから取り組み始めているところです。
 自分らしいかたちで、業界へ貢献していくためにはどうしたらいいか、常に模索しています。

5仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

 たくさんありますが、ここでは2つお話します。
 一つ目は、監査人への信頼と責任の重さを認識した出来事です。
 監査法人時代に、ある大手企業の会計相談で、数百億円規模の会計処理の相談を受けました。当時、監査チームの副主査を務めており、クライアントから直接相談を受ける立場にいた私は、主査とも話して、クライアントが提示した案で進める方向で調整していました。ところが、パートナーにその件を事後的に相談したところ、クライアント案がNGになってしまい、結果としてクライアントに迷惑をかけることとなってしまいました。クライアントの担当課長からは、「大塚さんが“いい”と言っていたからその方向で社内調整を進めていたのに、ひっくり返ってしまった、どうしてそんなことになるのか」と、涙ながらにお叱りをいただきました。その方はその後、体調を崩してしまわれました。
 私の監査チーム内でのコミュニケーション不足が原因でした。多忙なパートナーに遠慮して、相談を後回しにしてしまったのもありますし、クライアント案でおそらく大丈夫だろうという甘い認識を持ってしまっていたのです。この結果、クライアントの信頼を失ってしまったばかりか、担当課長の体調まで崩させてしまったかたちとなり、私はただひたすら頭を下げることしかできませんでした。同時に、それまでクライアントから大きな信頼をいただいていたことと、責任の重さを痛感し、監査人としての発言の重大さを大きく認識させられる、身が引き締まる出来事でした。

 二つ目は、海外出張を通して直接コミュニケーションを取ることの大切さと面白さを感じた出来事です。
 ジェーシービー経理時代に、とあるプロジェクトの関係で海外拠点に出張する機会がありました。当時、海外拠点は国際部門が統括していたので、本社の経理が海外拠点に行くことはほぼなく異例のことでした。海外拠点からすれば、特に招いてもいない本社の経理が何しに来るんだと構えられるのではないかと、私は緊張して拠点に訪問したのを覚えています。
 しかし、私の予測はいい意味で裏切られました。拠点の現地駐在員は私を歓迎してくれ、現地の様々な事情を惜しげもなく話してくれました。そして、電話ではぶっきらぼうな対応をする方だなと感じていた海外現地担当者とも直接対面することで、現地の苦労や思いを直接知ることができ、印象が180度変わりました。
 また、別の海外拠点では、拠点長がわざわざ時間を1時間以上割いて私にその国の事情や、抱えている課題、本社への要望などを、本社の一経理部員に過ぎない私に直接熱心にお話してくださいました。今考えると現地の事情をじっくり聴いて、理解しようとしてくれる本社の人や機会が少なかったのかもしれませんが、机上で仕事ばかりしていた私にとってはどの体験も貴重で刺激的な内容ばかりであり、心がとても揺れ動きました。本社の経理として現地のためにできることはなんでもやろう、そんな想いを抱いて帰国したのを覚えています。
 この体験を通して、現地に行き、五感をフル活用して直接見たり、聞いたり、感じたりすることの大切さを痛感しました。また、リアルに現地駐在員と会う前と後で、お互いの信頼関係が劇的に変わることも身をもって体感しました。
 現在はコロナ影響の後で、リアルとオンラインとでコミュニケーションの効果は大きく異なることはみなさんよくご認識かと思いますが、それを当時の会社員時代から体験させてもらえて、貴重な経験でした。

6公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

 深く悩んだこととしては、公認会計士という仕事の責任の重さについてです。
 これは、今も向き合っているし、乗り越えようと継続して努力していることでもあるものですが、もしかすると乗り越えるというよりは、うまく付き合っていくべき問題なのかもしれないとも思っています。
 公認会計士の仕事は、数字と向き合う仕事ですので、監査上の失敗や不正発覚により、少なからず損害賠償請求をされたりすることは周知の事実だと思います。私は監査法人のパートナー(社員)経験まではないため、監査の結論に対して責任を負う立場ではありませんでしたが、担当者・主査・副主査の立場を通して、仕事上でたくさんのミスを経験し、そのたびに過剰な責任感を感じ、自分を責めてきました。その結果、だんだんと監査業務を行うことがしんどくなり、必要のない過度の責任感を大きく感じて、いつしか監査の仕事が好きではなくなりました。
 事業会社に転職して監査業務から離れたおかげで、監査人としての責任感を感じることはなくなりました。一方で、当時の事業会社内で唯一の会計士であった私は、すぐに社内から様々な会計相談を受けました。時には社長から直接電話をいただき質問を受けたこともありました。これは社内から信頼されている結果でもあったので、とてもやりがいを感じていた一方、専門家として適当なことは言えない、間違ったことを言ってはいけないというプレッシャーや責任感を感じるようになっていきました。
 今思えば、結局監査法人時代でも、会社員時代でも、似たような責任感を感じ、自分でどんどんしんどくなっていったように思います。公認会計士である、会計のプロである、ということを過剰に意識してしまった結果、感じる必要のない重さの責任感を自分で勝手に作り出し、しんどくなっていったのです。
 そんな責任感に押しつぶされそうだった私が、今、また監査の仕事や、クライアントからの会計相談を受けて仕事をしています。ではどう克服したのかというと、ものごとに対する考え方を学び、時間をかけてゆっくり自分自身を変化させることができるようになったことで、少しずつ克服できるようになったのです。
 正確には、今も鋭意克服中ではありますが笑、それまで経験したことのない心理学の学びや、これまで出会わなかったような世界の人とたくさん交流することで、例えば監査の仕事に対する私の中のとらえ方を変えてみたり、当時のしんどかった感情や複雑に絡み合ったマイナス感情を一つずつひも解いていったりすることができました。その結果、あらためて私は素晴らしい仕事をさせてもらえていたことに気づき、そしてこれからもその仕事をしていけるチャンスがあることに気づけたのです。
 自分の気持ちの持ち方次第で物事はいかようにもとらえ直すことができるし、そうすることで自分のまわりの世界を変えることができるということを学んだのは大きかったと思います。

1 2 3

性格診断テストをやってみよう性格診断テストをやってみよう

会計⼠の履歴書とは
世代、職場、地域などのさまざまな垣根を超えて、
会計士が気軽に立ち寄ってコミュニケーションしたり情報収集できる場を目指しています。
また、当サイトをきっかけに会計士に興味を持ってもらえると幸いです。

会計⼠現役会計⼠・会計⼠

会計士の方はこちら
More
『会計士の履歴書』に掲載している“会計士”は、“日本の公認会計士試験(旧2次試験)に合格している人”を対象としています。そのため、修了考査(旧3次試験)の合否や日本公認会計士協会への 正会員 又は準会員(会計士補)の登録有無とは関係なく掲載しています。