2監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
私の20代におけるキャリア形成は、慎重に検討して決定した結果というよりも、流れに身を任せているうちに形成されたと思っている。
私のキャリアは、会計士二次試験(現:論文式試験)合格後、多くの合格者が辿る監査法人勤務ではなく資格予備校の講師からスタートした。人に何かを分かりやすく伝える、ということは人と協同で仕事をしていく上では絶対に必要な条件で有ることから、講師という仕事に魅力を感じてはいたが、他の合格者と差がつくのではないかという懸念から講師になる機会を頂いたものの、講師はやめておこうと思っていた。しかし、勉強仲間の一人が講師になるための面接を受ける際にひょんなことから一緒に受けることになり、そのまま合格し講師として予備校に就職した。
二年目からは大手監査法人に非常勤スタッフとして実務要件を満たす範囲内で監査業務に従事させていただいた。しかし、受け入れる側も戸惑いがあったようで、毎回異なるクライアントに1日だけアサインされるようなことも多く、監査の面白さが分からないままであった。講師という仕事は魅力ある素晴らしい仕事ではあるが、それに従事するだけで本当に公認会計士としてはいいのか、という葛藤も抱えていた。
何とか修了考査等も合格し公認会計登録が可能になった頃に、 IPOコンサルティング会社に所属していた予備校の先輩からその会社の代表を紹介された。その会社は、IPOのためのコンサルティングをしつつ、クライントにCFOや管理部長のようなIPO推進責任者を紹介する会社であった。初めて代表に会ったときに、「IPOする会社のCFOに自分と関係のある会計士や税理士のような専門家集団を送り込めれば、日本経済を押さえられる」というような壮大な夢を語られ、「やれたら面白そうだ」と話したところ、それが「やる」と捉えられたのか、翌週から著名なマーケターが経営する会社に財務部長として勤務することとなった。これが私のIPO支援の最初の会社であり、IPOに進むきっかけとなった。
その会社はカリスマ的なオーナーが経営をしており、そのオーナーに依存をしない体制を整えることが必須であったがそれが当時は上手くできなかった。また、コンサルティング会社とクライアントの間に挟まれるような場合にバランスをとることができないこともしばしばあり、残念ながらIPOを実現するだけのステージまで行く支援ができなかった。
それでも何とかできるのではないか、という気持ちで勤務はしていたが、このまま在籍しても価値を付加できないと考え、退職を決断した。退職の挨拶にIPOコンサルティング会社に行ったとき、その会社のクライアントではなかったが、たまたまIPOに向けて経験のあるスタッフを求めている公認会計士のCFOがいて、その日中に返事をすればまだ応募に間に合うということを聞いた。そこで、その公認会計士に会ったことも何かの縁と思い、会社の概要も分からないままではあったが、とりあえずやってみようと思い、それに応募した。その夜にはじめて先方の方に会って採用が決まり、IPOを志向する会社への入社が決まった。その会社が株式会社モブキャストである。
株式会社モブキャストでは、上場準備の全業務と資金調達やIR業務等、ベンチャー企業のCFOとして最低限必要な経験をさせてもらった。IPO達成後に、当時のCFOから「自分もCFOとしてのキャリアを積んだ方がいい」というアドバイスを頂き、自分で一からIPOに向けて携われる会社として株式会社トランザスに転職をした。そのアドバイスがあったからこそ今の自分がいると思っている。
3今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
現在は、株式会社トランザスの取締役経営管理部長として、経理・財務・税務、人事・総務、広報、IR等守りの部分であるバックオフィス業務や対外的な会社のアピールやニュース配信全てをマネジメントしているが、これらの中の一部には自ら作業するものも含まれている。ただし、それ以外にも当社が製造業であるため、品質管理業務の一部や在庫管理業務も担当している。また、小さい組織であるため、新たに生じた業務については担当を最初からつけられないことや部門間で漏れてしまう業務もあり、そのような場合には自分がまず担当するケースが多い。そのため、プレイングマネージャー的な要素がかなりあると思っている。
それ以外にも、当社の場合、海外展開の拠点としてシンガポールに子会社を設けており、代表取締役がそちらに在住して陣頭指揮をとっている関係で、日本を不在にしていることが多い。そのような場合には、組織構成や人員配置等の組織に関連する事項や顧客との対応は私に判断や対応が任されるケースや、特命事項を代表取締役の代わりとして遂行することが多い。そのため、管理部長からステップアップしてCFOの役割を担ってはいるが、現在は国内の業績達成責任も負っているため、COO的な役割もこなしていると実感している。