会計士の履歴書
吉居 大希

株式会社ecommit 他

経理部、人事部 取締役 兼 人事部長 兼 経理部長

吉居 大希

よしい ひろき

上場支援・会計コンサルティングを行う会計事務所を開業。業務効率化・システム導入など得意分野で勝負

1984年3月23日生まれ(42歳) 長崎県出身 福岡県在住

九州大学大学院 工学府化学プロセス・生命工学コース 中退 2008年合格

吉居 大希

01

キャリアサマリー

2008

有限責任 あずさ監査法人福岡事務所に入所。一般事業会社の法定監査業務に従事。

2011

有限責任 あずさ監査法人東京事務所に異動。一般事業会社、国立大学法人、私立学校の法定監査業務に従事。

2014

有限責任 あずさ監査法人を5年9か月で退職し、Yotsuba Accounting (Thailand) Co.,Ltd.に転職。タイに進出する日系企業の、法人設立、税務業務、監査業務に代表として従事。

2016

ベンチャー企業である株式会社ecommit(本社 鹿児島県薩摩川内市)の取締役に就任するとともに、個人の会計事務所を開業し、上場準備支援、会計コンサル業務を複数社に対して提供している。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

高校までを長崎で過ごした後,福岡の大学に進学したため、将来は九州で働きたいと思い、会計士試験二次試験に合格した後は、あずさ監査法人福岡事務所に入所した。
50名程度の小さな地方事務所であり、東証一部上場会社は数える程しかなかったが、幸運にも上場会社の担当となった。また、東京事務所のチームにもアサインされ、監査チームメンバーも10名を超えるような誰でも知っているような会社の業務にも従事した。

大規模クライアントでは業務フロー、内部統制がしっかりと整備・運用されていて、社会人経験も無い私にとっては学ぶことが多く、知の欲求が満たされて行く感覚があり、とても楽しく仕事が出来ていた。
また、これらの経験は、後々、独立して中小企業に対して業務支援を行う場合にも非常に役立つものであった。
監査法人3年目には東京転勤となり、福岡事務所と東京事務所で仕事の進め方、文化、人間関係の全てが異なることを肌身で実感し、これまで九州以外のことを知らずに九州が一番良い所だと思っていた自身がいかに世間知らずだったかと思うに至り、それ以後はイメージで話すことはせずにまずは経験してみて、経験に基づいて判断をすべきだと考え、行動するようになった。
監査法人での経験も非常に楽しいものであったが、毎期繰り返される監査業務から得られるものが経験年数が増えるにつれ減っていっていたため退職を決断した。

退職後は独立か、海外で働くかの2つの選択肢で考えていたが、独立後に海外で働くことは難しいと考えたことや福岡と東京のような違いが日本と海外でも必ずあり、その経験が自身のキャリア形成にも、とても重要なものとなるであろうと思い、Yotsuba Accounting (Thailand) Co.,Ltd.に転職した。

Yotsuba Accounting (Thailand) Co.,Ltd.は日本人は私含めて2名(ほどなくして1名退職したので、私1名となった)、タイ人10名程度の小さな組織で、タイに進出する日系企業に対して、税務、会計、監査や会社設立、清算の業務を行っていた。会計基準はほぼIFRSに準ずるものであったため問題はなかったが、税制は国により全く異なるものであり、また、日本語による文献等も少ないため非常に苦労したが、タイ人スタッフ、現地の日本人の友人のサポートもあり業務は徐々に回せるようになっていった。

そんなタイでの経験も、タイ人と日本人の考え方の違いだったり、文化の違いを学び、また、現地での友人が出来たことはとても良かった。日本人とタイ人の考え方の違いで興味深いなと思ったのは時間に対する考え方で、タイ人は朝の通勤時に電車が多かったら無理して乗らずに、次の電車を待つことだ。これは“マイペンライ(何とかなるさ)”という考えが根底にあるのだと思う。

タイでの経験が1年経過し業務を一通り回せるようになり、家族が日本にいたこともあり退職を決めたタイミングで大学時代の友人から連絡があり、“本当に世の中に役立つ環境ビジネス”を経営理念としている株式会社ecommit(※)が上場を目指すので経理部の体制構築を手伝って欲しいと話があった。帰国後、特にやることが決まっておらず、面白そうだという思いと、以前から環境問題に問題意識を持ち、独立後は何かしら環境に関することもやりたいと思っていたので願ったり叶ったりという思いで話を聞きに行き、すぐに参画することになって今に至っている。

※株式会社ecommitのHP(http://ecommit-kandk.com/)

吉居 大希さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

株式会社ecommit(以下、エコミットという)の取締役経理部長を任されている。非上場の中小企業、ベンチャー企業の多くは同様だと思うが、職務分掌、規程は整備されておらず、Excel管理のデータが多く、アナログな業務も多い非常に効率が悪い状況であった。また、エコミットは全国に営業所を4拠点、リユースショップを1店舗もっており、それぞれ拠点間で人や物のやり取りが多いが、損益が適切な部門に計上されておらず、部門損益が実態を反映していない状態だった。
私に与えられたミッションとしては、「数字に強い会社にして欲しい」ということだった。
まずは部門損益が実態を反映し経営判断に資するような情報を提供するために、部門への計上ルール、勘定科目の改訂を行い、不採算部門のリストラクチャリング、不採算取引への対応を主導して、損益改善に努めた。

次に売上高の50%程度を占める海外売上高に目を付けた。衣類や家具、食器、農機具等のような商品を海外に販売する場合、販売先はほとんどが東南アジア、中東、アフリカのような発展途上国であり、得意先は狡猾かつタフなメンバーばかりであるため、品質に対するクレームをつけるなどして、回収に至らない債権が散見されるよう状況であった。このような状況に対して、着金後の商品の引き渡しの徹底、売掛金年齢表の整備、運用、債権管理システムを導入し、滞留債権の適時把握、定期的な確認業務を行えるような仕組みを作ることで、回収漏れが発生しないようになった。
そして現在取り組んでいるのは、システム化だ。劇的な業務効率化を行うにはシステム化が必須であると感じたため、会計システムをクラウド会計システムに変更し、極力、手作業を排除していった。

これらの業務を通じて、会計士が中小企業、ベンチャー企業で業務改善に携わることで会社を良くすることに大きく寄与することができ会社からも感謝され、とてもやりがいを感じることができた。
今ではエコミット以外の数社でも業務改善、上場準備支援の業務を提供するようになったが、今後はより多くの会計士が監査や税務だけではなく、会計、監査の知識や経験を活かして業務改善に取り組む業務を提供するようにしていきたいと思っている。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

新しいことにチャレンジすることについては、人よりも積極的でリスクを許容できているのが強みだと思う。会計士は監査法人にいると比較的、高い給与をもらえるため、監査を面白いと思っていなくてもなかなか独立や転職に踏み出せない会計士が多い。
仕事に求めるものは人それぞれだと思うが、仕事に費やす時間は睡眠を除くと最も長い時間を費やすことになるものであるため、本当にやりたいことをやらないのはとても勿体ないことだと思う。
私は、細かい作業はあまり得意ではなかったため、税務と監査はやらないと決め独立して業務効率化、システム導入支援、上場支援といった自分が面白いと思うことだけをやってきたが、独立してから2年半で仕事はやりがいがあり、プライベートの時間も確保し、収入も監査法人時代と変わらない状況ができつつある。

また、会計士の資格に対する社会的信頼度は高く、経理、会社の仕組みを理解した経営の専門家も不足している状況であるため、やりたいことをやっても露頭に迷うようなことはないので、ぜひやりたいことがある人はチャレンジして欲しいし、私としてもより多くの会計士がチャレンジできるようにサポートしていくつもりだ。

吉居 大希さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

監査法人で働く中でチームメンバーと業務を行うことはとても有意義だったが、仕事の中で心が大きく動くということはあまりなかったと思う。
財務諸表の適正性を検証する監査業務を通じて“国民経済の健全な発展に寄与する”については非常に大事なことだと思うが、普段これを実感することは直接的にはほとんどない。
一方、組織内に入り、会社側の人間として業務を行うようになってからは、心が大きく動くようになり、そのような業務を行うべきだと思うようになった。

前述しているが、地方のベンチャー企業、中小企業では、エクセル等を含むITスキルが高い人材が少ない。会計士にとって、データ分析は日常的に行っていることで、そのスキルを提供するだけでもかなりの改善が見込める。また、業務フローや会計のルールを理解していることがシステム化を行う際にも必要となるため、システム化も会計士の得意な分野である。
とはいえ現場では、そもそも分析するためのデータが整備されていなかったり、これまでのやり方を変更しようとすると反対する人や前向きに取り組まない人が出てきたりするなど、実際に進めるのは大変だし、課題がありそうだという状態からデータ分析し、改善につながる糸口を見つけ出すのは簡単なことではなかった。

しかし、自ら必死に考え、実行できるところまで主導して進めた結果、業務改善や利益向上を行うことができた時の達成感は大きいし、経営者や担当者からも感謝され、心を大きく揺さぶられるものであるので、これからもそんな心が大きく揺さぶられる仕事を続けていきたい。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

公認会計士という仕事をしていて深く悩んだことはなかったと思うが、監査法人で監査業務を行う場合に長い間モチベーションを維持することは、個人的には非常に難しいことだと思う。
先にも述べたが、監査が果たす役割は非常に大事だと思うし必要なものだと思うが、いかんせん達成感、感謝を感じづらいためである。

ただ、監査の経験は非常に有用で、特に様々な上場会社の業務フローを1年目から見ることができるような仕事は他には無いのではないかと思うし、この経験は独立して、業務改善、上場支援等の業務を行う際には非常に役に立つ。しかし、5年程度、監査を経験すれば(私はあまりできていなかったが、当初から独立を意識して業務フローの理解等に努めていれば3年程度でも良いかも)、独立してから役に立つような新しい知識や経験が得られる場面が少なくなってくるので、将来的に独立をしたいと考えているのであれば、そう感じた時点が独立するタイミングである。

私も転職、独立する先の見えない不安感や収入の低下に対する不安感はあったが、結果としては思い切って決断して良かったと思うことしかなく、後悔したことはない。また、仮に失敗したとしても監査法人に戻ればよく、就職先がなく露頭に迷うということもまずないだろう。
そんな状況でやりたいことをやらないという選択肢は独立した今となっては無いと思っており、多くの会計士にも同じようにチャレンジして欲しい。

07

人生の目的と公認会計士という資格

私は大学時代は工学部で、周りの同級生が大学院に進学するということで大学院にも進学した。ただ、就職活動が始まる頃、研究者・技術者には向かないと思っていた私は、どんな仕事をしたいのだろうと考え始め、経済、金融に興味があるなと思ったため、一念発起して公認会計士資格の勉強を始めた。2008年に公認会計士2次試験に合格したことで監査法人に入所し、経済や金融関係の業界に入ることが出来た。

タイの日系会計事務所に転職した時も、英語スキルは勉強はしていたが会話の方は丸っきりだめな状態だったが、公認会計士の採用を募集しているということで幸いにも海外で働く機会を得ることができた。

また、独立する時にもタイミング良く、ベンチャー企業の経理部門の業務改善の話を頂き、その後も上場支援の依頼、原価計算の構築支援、会計システムリプレイスなどの業務を請けることができた。

自分が人生でやりたいと思っていることが、会計士という資格を持っていることで結果として出来ている。公認会計士という資格の持つ力なのだと思うし、本当に目指して良かったと思う。
もちろん資格を持っているだけで全てが叶うというものではなく、相応の努力は必要だ。ただ、公認会計士という資格を持っていることでできる幅や周りからの受入れられやすさは資格を持っていないよりもはるかにアドバンテージがあるように思う。

吉居 大希さん

08

これから成し遂げたい事、将来の夢

地球温暖化防止

全く公認会計士の業務と関係ないが、公認会計士の枠にとらわれる必要もないと思う。公認会計士をすっぱりと辞めて省エネコンサルティング、再生可能エネルギー発電所の建設などを行うような全くの転身をするつもりではないが、より多くの公認会計士がより多くのベンチャー企業、中小企業の支援を行うような“本業”を行いつつも、CO2削減につながるような環境投資などの活動も拡大していきたいと思っている。

環境問題については、理由は自分でも分からないのだが今の状態だとダメだと思うようになった。このまま暑くなるとどうなるのだろうか、自分や子どもの世代が日本に、地球に住み続けられるのだろうかと心配している。地球温暖化に対する危惧を示す報道は多く目にするが、いざ環境対策となると、どうしても経済性の方が優先されてしまうような現状に違和感を感じ、自らが動いていかないといけないと思っている。

資本主義経済の真ん中にいるような公認会計士としての業務と経済性を求めるのが難しい環境問題対策、どうやって両立させていくかについて、現状回答が見つかっている訳ではないが、回答を見つけるべく試行錯誤していこうと思うし、そんな枠にとらわれない会計士がもっと増えても欲しいと思っている。

吉居 大希さん

09

キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

常に本当にやりたいことは何かと考える

社会人の多くは1日の内の3分の1の時間を働くことに費やしている(会計士の場合、2分の1を費やしている人もいる。)。そんな膨大な時間を本当にやりたいこと以外に費やすのは非常にもったいない。そもそも本当にやりたいことを分かっている人はそんなに多くないと思うし、考えたところですぐに思いつくものではない。日々意識して、時間がある時はやりたいことは何なのかなと常に考える癖をつけることでいつか見えてくるものである。

目の前にあることに全力で取り組む

本当にやりたいことを見つけるまでには時間がかかるし、見つかるまでの間に何もしないとやりたいことが見つかった時に動けなかったりする。
常に目の前にあることに対して全力で取り組むことが重要だ。全力で取り組むことで周りからの評価も高くなり、結果としてより多くの経験や高い給与、周りからの信用を得ることができる。そしてその経験や貯金、信用は、本当にやりたいことが見つかった時にも活きてくるはずである。

本当にやりたいことは実行する。

私はこれまで大学院を中退し公認会計士の勉強を始め、監査法人を退職し海外で働き、独立してベンチャー企業の支援を行うなど、面白いと思うことをやってきた。そして新しいことを始める時には必ずと言ってよいほど反対する人がいる。

家族、親、上司、同僚、友達、反対する人は私のことを思って言ってくれているのだろうが、もし反対する人の意見の通りにやりたいことを辞めたとして、結果として進んだ道をその人が保証してくれるだろうか。うまくいかなかったとしてその人を責めることができるだろうか。むしろ、反対されて辞めようかなと思うようなことは本当にやりたいこととは言えないと思う。
自分の人生は自分で決めていくしかないし、責任は自分自身にある。本当にやりたいことを見つけて楽しい人生を送って欲しいと思う。
そのためにも公認会計士はとても良い資格である。