
認定NPO法人フローレンス
働き方革命事業部 CFO
横山 正宏
よこやま まさひろ
NPO法人CFOの先駆け的存在。ソーシャルセクターの社会的信用力の向上のため日夜奔走
1990年2月28日生まれ(36歳) 千葉県出身 東京都在住
早稲田大学 商学部 卒業 2012年合格

01
キャリアサマリー
大学4年生で公認会計士試験に合格。
有限責任監査法人トーマツに入社。国内上場企業の監査や内部統制コンサルなどを経験。
社会課題解決を促進する公認会計士集団Accountability for Changeの立ち上げに参画。
認定NPO法人Living in Peaceに参画。
監査法人スタッフとしては初の認定NPOの会計担当理事に就任し、“監査法人で働きながら社会を変える公認会計士”として活動。
トーマツを退職し、河野公認会計士事務所に転職。社会起業家の会計面での支援を実施。
認定NPO法人フローレンスのCFOに就任。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
いざNPOへ
監査法人トーマツには、公認会計士試験に合格した翌年の2013年2月~2017年7月までの4年半在籍していました。トーマツで仕事を始めてから2年ほど経って、大きな転機が訪れました。それは、二枚目の名刺というNPOのイベントです。その頃は、人並みに仕事はできるようになったものの、もっとやりがいのあることをやってみたいという想いが強くなっていた時期。NPOは初めてだったものの、当時から軽かったフットワークでイベントに行くと、何やら熱気が帯びた雰囲気。イベントが始まると次々とNPOの代表が出てきて、団体のプレゼンしていきました。その話がとにかく熱い!そしてワクワクする。このイベントを通じて、 「こんな熱く、かっこいい世界があるのか。ぜひNPOにチャレンジしてみたい。」と、私の脳裏にNPOが刻み込まれました。
何の因果かその数カ月後、PwCからTeach for JapanというNPOに出向していた会計士の方が、活動説明会をするとのことで、すぐに参加を決めました。活動説明会では、どのような想いを持ってPwCからTeach for Japanに出向したのか、NPOで会計士が出せる価値はどのようなものかの想いを聞くことができ、ますますNPOに関わりたいという気持ちが強まりました。説明会の後、居ても立ってもいられなくなり、お礼を兼ねてメッセージを送りました。「ありがとうございました。私もNPOに関わってみたいのですがどうすればいいですか?」と。そして、彼から「社会課題解決を目指す会計士の集まりを作るのですが、一緒に参加しませんか?」とお誘いを受けて、晴れてAccountability for Changeの立ち上げプロジェクトに参加することになりました。私がNPO関わることになった一歩目になります。
監査法人で働きながら社会を変える
その後Accountability for Changeのメンバーの紹介で、Living in Peaceという子どもの貧困の削減を目指すNPOにも関わり始めました。NPOのことは右も左もわからない状態だったのですが、Living in Peaceのメンバーは快く受け入れてくれました。私のLiving in Peaceでの役割は会計担当。今まで自分が磨いてきたスキルが社会に役に立っているのがうれしくて、のめり込んでいきました。こうしてLiving in Peaceに関わるようになってから1年ほど経ったころ、また転機が訪れます。Accountability for Changeのメンバーでもあり、Living in Peace会計担当理事だった会計士の方から、自分の後任をやってみないかとお誘いを受けました。正直迷いました。26歳の監査法人の一スタッフが、こんな良い組織の会計担当理事をやっていいものかと。悩んだ末に思い返したのは、尊敬する大学のゼミの先生の言葉でした。「悩んだ時は困難な道を選びなさい。そうすれば後悔はないから。」この言葉に後押しされる形で、会計担当理事を引き受けることにしました。
しかし、引き受けるとはいったものの、監査法人の兼業規程に引っかかるのではないかという懸念が出てきました。人事におそるおそる「無報酬のプロボノでNPOの理事になりたいのですが、どうしたらいいですか…?」と聞いてみたのですが、人事の方は明らかに頭の上にクエスチョンマーク。案の定、「調べて後日連絡します」と言われました。数日後、手順の書いたメールと一緒に送られてきたのはパートナー用の兼業申請書。今でこそ副業と騒がれていますが、2016年当時副業はそこまでメジャーではなく、監査法人のスタッフがそれ以外に何かをやるという発想はなかったようです。それでもパートナー用の兼業申請書を書き上げ、所属部署のパートナーに相談し兼業申請しました。私がとても幸運だったのは、そのパートナーが私の活動について応援するスタンスでいてくれたことです。詳細は聞けていませんが、おそらく上層部に掛け合ってくれたのはないかと思います。こんな異端な活動を応援してくれて本当に感謝しても感謝しきれません。この後無事に兼業申請は通り、Living in Peaceのモットーである「働きながら、社会を変える」にかこつけて、「監査法人で働きながら、社会を変える」をキャッチコピーにして、私のLiving in Peace会計担当理事としての活動は始まりました。
フローレンスへの参画
Living in Peaceの理事として活動する中で、「土日だけではなく本業として社会貢献に関わりたい」という想いが強まりました。監査法人でもインチャージまで経験し、自分の中ではやり切ったと思えるようになった2017年7月。監査法人トーマツを退職し、河野公認会計士事務所に転職。新規事業としてNPO向けの会計・税務支援を始めました。そんな中で、フローレンスで経理財務の人材を求めているという話を友人に聞き、直感的に「これは関わるべきだ!」と思ったため、副業的に関われないかをフローレンス・会計事務所双方に交渉。その結果、会計事務所の仕事とは別に、副業としてフローレンスに関わることになりました。
それから数ヶ月間、メインは会計事務所でNPO向けの会計税務顧問として、副業でフローレンスの財務担当として働きました。しかし、会計事務所で働く中で、会計・税務顧問としてのNPO支援に可能性を感じる一方、自分が思い描いていた支援とは違うなと思い始めました。ちょうど同じ時期に、副業として関わっていたフローレンスからフルタイムでCFOとして働いてみないかという誘いを受けました。最初聞いたときはとても驚きましたが、フローレンスに関わることでNPOセクターに大きなインパクトを与えられる可能性があるし、一番やりたいことができる環境でもあったので、思い切って飛び込んでみる決意をしました。こうして、私はフローレンスCFOとなりました。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
現在はフローレンスでCFOとして働いています。予算策定や予実管理、経理財務のディレクション、事業部への会計財務面でのサポート、代表が進める案件への参画、法務案件の対応などを行っています。ソーシャルベンチャーのバックオフィス業務をやる上で醍醐味でもあり苦労するのは、社会課題解決と財務的な視点を両立させる必要があることです。例えば、フローレンスが行っている障害児保育は普通に事業を行えば財務的に成り立ちません。国からの補助金をもらってもダメです。そこでフローレンスは2つの制度を用いて財務的に成り立つモデルとしているのです。誰かを助ける手法というのは必ずしも最初から財務的に成り立つものとは限りません。そこを成り立たせるように経営者やフロントメンバーを手助けするのが私の仕事の一つです。
ソーシャルベンチャーのバックオフィスはサッカーでいう「ボランチ」であるべきだと私は考えています。時には事業を加速させるブースターであり、時にはフロントが引っかかりそうな落とし穴を事前に塞いであげられるような存在、いわば影の司令塔。そのような存在になれれば、ソーシャルベンチャーのバックオフィスとしては成功なのではないかと思っています。
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あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
私の強みは、未開拓の分野であっても臆せず進むことができること、自分が信じたものを疑わず周りに惑わされないこと、だと思います。私は2014年後半から約4年間、“ソーシャルセクターのお金の課題を解決する”というテーマで、仕事や活動に取り組んできました。公認会計士でNPOやソーシャルベンチャーに関わっている人はほとんどいないため、取り組むことのほとんどすべてが誰もやったことがない分野だったりします。2016年3月からは監査法人でスタッフとして働きながら認定NPO Living in Peaceの会計担当理事をやったり、2017年7月からは会計面から社会起業家を支援するために会計事務所に転職したり、2018年4月からは認定NPO フローレンスのCFOをやったり。誰もやったことがないことが多いため、時に批判や否定をされますが、それに惑わされず淡々と目標に向って進んできました。
また、監査法人+プロボノ→会計事務所→NPO CFOというキャリアを歩んできているので、会計・税務・経営をまんべんなく理解・実践しており、なおかつNPOのこともわかるという強みもあります。2018年4月からフローレンスのCFOに就任しましたが、規模は異なるとはいえ色々な経験を積んできたことにより、そこまで大きなギャップなく業務に取り組めていると思います。

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仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
プロボノで関わっていたLiving in Peaceは認定NPO資格というのを持っているのですが、私が理事をやっている間に認定資格が失われてしまうので資格を更新する必要が出てきました。認定資格が切れるのは2017年7月頃だったのですが、更新には時間がかかるということもあり1年以上前の2016年3月の理事就任直後からプロジェクトを立ち上げて準備をし始めました。期限が刻一刻と迫る中、仕事が休みの土日だけを使って準備するのはとても大変で、何度か心が折れかけました。さらにはLiving in Peaceの代表に「認定が更新できなくて各所に頭を下げに行っている夢を見ました」とボソッと言われ、よりプレッシャーがかかりました。しかし歯を食いしばり、弁護士のメンバーと協力しながら認定更新に向けての準備を進めました。プロボノにもかかわらず、準備で徹夜したこともあります。
そして都庁の実地調査を経て2017年3月、認定NPO資格が更新できることになりました。プロジェクトメンバーとしては、うれしいというよりも肩の荷が下りてホッとしたという気持ちでした。認定が更新できたという連絡をメンバーにしたとき、代表からメールで「ありがとうございます」との感謝の言葉が届きました。世の中に価値を出し続けている社会起業家である代表から、このように感謝の言葉をいただけるというのはとてもうれしいことで、私としてはこの感謝の言葉で1年間の苦労は報われたように思いました。普段監査という社会に貢献していることを感じにくい職種だったからこそ、余計に感動したのかもしれません。このような経験から社会貢献のおもしろさを感じて、今では社会課題解決を本業にするに至っています。
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公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
ソーシャルセクターに関わっている公認会計士はまだ少なく、誰も経験したことがないことだらけなので、その点はすごく悩みました。特に監査法人で働きながら、Living in Peaceでプロボノを始めた当初は特に大変でした。監査法人は良くも悪くも保守的な組織なので、課題活動にはそこまで積極的な姿勢でなかったと思います。そんな中で仮に仕事ができないとなれば、必ず平日の夜や休日に行っているNPOでのプロボノ活動が原因なのではないかと思われてしまうため、平日に行う監査法人での仕事もしっかりやった上で、プロボノ活動をやることにしました。プロボノを始めた当初は「また横山が変なことをやっているよ」と否定的だった周囲の人々も、Living in Peaceの理事になったり準会員会の会報に載ったりしていくうちに、周囲から自然と認めてくれるようになりました。たとえ最初は誰からも認められていなくても、結果を残しつつ自分がやりたいということは貫き通していくことの大切さを学びました。
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人生の目的と公認会計士という資格
私の人生の目的は”仲間と協力し合いながら大きなことに取り組み、社会にインパクトを出す”ことだと考えています。これは過去を振り返ったときに、仲間と目標に向って仕事・活動しているときが、最も喜びを感じているということがわかったからです。しかし、ただ仲間と協力していればいいというわけではなく、社会的に意義のあるものに取り組むことが自分のモチベーションの源泉になっていることにも気づきました。まさにフローレンスで取り組んでいるのが人生の目的に近いものだと思います。そのような目的がある中で、仲間と協力し合うときに最も役に立てる・得意だったのが会計でした。つまり、私にとって公認会計士という資格はやりたいことをやるための手段でしかありません。なので、公認会計士という資格にそこまで誇りやこだわりはありません。

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これから成し遂げたい事、将来の夢
これから成し遂げたいことの1つ目は、ソーシャルセクターの社会的信用力を上げること。たまに「NPOってあやしくない?」と言われることがあり、とても残念な気持ちになります。この原因は、ソーシャルセクターに対する誤解があること、ソーシャルセクター側が発信や開示を十分にできていないことにあると考えています。また、ソーシャルセクターが社会に出している価値の多くを可視化することができていないため、単純な財政規模だけでソーシャルセクターは未熟だと判断されている可能性もあります。そのため、NPOの社会的価値をより精緻に出し、寄付者やその他支援者などステークホルダーとしっかり対話することによって、ソーシャルセクターの社会的な信用力を上げていきたいと考えています。
成し遂げたいことの2つ目は、ソーシャルセクターの給与水準を上げること。NPOやソーシャルベンチャーの連盟である新公益連盟の調査によると、加盟団体の平均給与は339万円。同規模の中小企業の平均給与291万円とは同程度とはいえ、優秀な人材を獲得するには十分ではないと考えています。手段はまだ検討中ですが、クラウドファンディングや精緻な予実分析によって、ソーシャルセクターが使えるお金を少しでも増やし、給与水準を上げることをやっていきたいと考えています。
成し遂げたいことの3つ目は、ソーシャルベンチャーCFOキャリアの確立。ソーシャルセクターに公認会計士はまだまだ足りていません。1つ目で紹介したように、会計人材が足りず適切な運営ができていないことにより「NPOは怪しい」と言われるケースが少なくありません。ソーシャルベンチャーCFOキャリアを確立することで、公認会計士のキャリアの中でソーシャルベンチャーCFOが当たり前になり、ソーシャルセクターに会計人材が増え、その結果ソーシャルセクターの信頼感が増していけばいいなと考えています。
上記3つのことを成し遂げるため、フローレンスでモデルケースを作ってソーシャルセクター全体に拡大させていきたいです。

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キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス:ソーシャルベンチャーCFOを目指すならまずはこのアクションをしよう
ソーシャルセクターは未開拓な部分が多いので、何かに挑戦し結果を出せばすぐにパイオニアになれます。“社会貢献”“社会課題解決”“NPO/ソーシャルベンチャー”のキーワードに興味がある人は、恐れずにNPOやソーシャルベンチャーに飛び込んでみることをオススメします。まずソーシャルビジネスとはどういったものかを体感したい場合は、NPOやソーシャルベンチャーにプロボノとして関わってみるか、社会課題解決を促進する会計士集団Accountability for Changeに話を聞きに来てください。私を含め、ソーシャルセクターに関わっているメンバーがほとんどなので、きっと適切なアドバイスができると思います。一緒にソーシャルセクターを盛り上げましょう!


