
株式会社SmartHR
取締役 監査等委員
玉木 諒
たまき りょう
経験と情熱が交差する挑戦と成長の会計士
1982年生まれ(44歳) 宮城県出身 東京都在住
京都大学文学部卒業 2007年合格

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キャリアサマリー
あらた監査法人(現 PwC Japan有限責任監査法人)入所。法定監査業務に従事。
山田ビジネスコンサルティング株式会社(現 山田コンサルティンググループ株式会社)入社。事業再生コンサルティング業務に従事。
株式会社サムライインキュベート入社。シード期のスタートアップ投資やファンドの管理・運営業務を行う。
株式会社SmartHR入社
同社 CFO(最高財務責任者)就任
同社 取締役 監査等委員就任(現任)
大学4年のときに特に何も考えずに就職活動から手を引き、休学してふらふらしてしまったところから私のキャリアははじまりました。「新卒というプラチナチケットを逃した上に、同級生よりも遅れをとってしまった」という反動と、「レールから外れている以上いまさら型にはまらなくてもいいか」という開き直りの相反する2つの原体験がその後のキャリア選択に色濃く反映されていると思います。
現職のSmartHRでは、CFOとして資金調達や管理体制の構築、コーポレート部門の立ち上げ・組織づくりなどを担った後、CFOのサクセッションを経て現職の監査等委員に就いています。
公認会計士と一口に言いつつも活躍のフィールドは多様化している今の時代において、キャリアに悩む、特に若手の会計士の皆さんにとって何かのヒントになれれば嬉しいです。
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監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
2007年に公認会計士試験に合格し、あらた監査法人(現在のPwC Japan有限責任監査法人)に入所しました。当時はJ-SOXや四半期レビューの導入により、監査業界は好景気で上昇傾向にあり、多くの会計士がファーストキャリアとして選ぶという単純な理由から監査法人を選びました。私は化学企業や製薬企業などの大手産業セクターを担当する部署に配属され、上場企業や外資系企業の監査クライアントでアソシエイトやインチャージとして経験を積みました。
その後、転職を決意するきっかけとなったのは2011年の東日本大震災でした。私が高校時代までの時期を過ごした故郷の宮城が大きな被害を受けたことを機に、仕事を通して社会の力になりたい、社会貢献に繋がる仕事をしたいと考えるようになりました。当時日本の経済の状況においても「この国は衰退の一途を辿ってしまうのではないか」という暗い雰囲気があったことから事業再生に興味を持ち、ご縁があった山田ビジネスコンサルティング(以下、YBC)に転職しました。YBCでは財務リストラクチャリングの案件をメインで担当しました。当時はの円高の影響もあり、為替リスクから苦境に陥るクライアントのプロジェクトに配属されることが多く、事業再編計画や返済計画の策定を行い、金融機関からの承認を得て、再生フェーズに進むという、監査法人時代には想像もしなかったキャリアを経験することができました。
余談ですが、実はYBCに入社する際には、仙台事業所の新設が検討されており、私は東京事業所で3か月の研修を受けた後、仙台事業所に配属される予定でした。東京で数多くの仕事を経験する中で、後に転職するまで異動の命令は下りませんでしたので、宮城への貢献の希望は叶わなかったのですが、今ではそれも私の現在に続くご縁だったのかと思っています。

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今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
YBCを辞めてから1年ほど、フリーランスとして働く期間がありました。その時の業務内容は、主に決算サポートやUS GAAPのコンバージェンス、再生案件の財務デューデリジェンスなどでした。その傍ら、当時は現在のようにスタートアップという言葉が一般的ではありませんでしたが、リーマンショックの大きな影響を乗り越えてようやく、「会社を作るにはどうしたら良いのか」や「融資と投資の違いは何か」といった新しい領域で起業したいと考える人たちからの相談を受けるようにもなりました。そのためフリーランスを続けていくという選択肢もあったのですが、当時の私はまだ30歳と若く「この先の40年間、これでいいのだろうか」というキャリアへの疑問もありました。最終的には、これまでの経験の延長ではない、新たな分野での挑戦をしてみたいと考え、ベンチャーキャピタルのサムライインキュベートという会社にご縁があり入社しました。当時は「スタートアップが1億円調達した」というだけでニュースになるほど、スタートアップにお金が集まる時代ではまだありませんでした。また、現在では会計士や投資銀行、PEファンド出身の人々が多くスタートアップへ転身されていますが、当時は財務や会計に詳しい人材がこの分野にはそこまで多くなく、比較的レアな人材でした。そのため、私がスタートアップ界隈に転身したのは非常に良いタイミングだったと思います。
実は、スタートアップの世界に進もうと思ったきっかけはもう1つあります。同じ時期に、中国でビジネスをしている中国の方とお話する機会がありました。当時の中国はまさに経済成長真っ盛りの時期で、彼らにとって「昨日より今日が良くなり、今日より明日が良くなることは当たり前」というような状況でした。そんな上昇気流の中で働く人々を非常に羨ましく感じました。一方、当時の東日本大震災後数年の日本では経済が先行き不透明な状況で、なかなか同じような経験をすることは難しい時代でしたが、急成長を志向し、これから盛り上がっていくであろうスタートアップの世界であれば同じような経験ができるのではないかと考えました。個人的には通常は一生のキャリアの中で人が目一杯働ける期間は20代〜50代くらいまでだと考えています。その貴重な時間をどこで何をして過ごすかは、年を重ねた時の人生の幸福度に大きく影響すると思っています。そのため、待遇は良いが刺激がない場所よりも、多少待遇が悪かったり不安定だったりしても、楽しくて刺激のある場所を選ぶことにしました。
その後、現在私が取締役を務める株式会社SmartHRに入社したのは、SmartHRの株主のベンチャーキャピタルからの紹介でした。投資先でCFO候補を探している会社を複数紹介していただいた中で、自分にとって馴染みのあるバックオフィスの効率化を図るサービス提供という課題にも共感しましたし、何よりも当時CEOだった宮田さんはじめマネジメント陣が作っている企業文化に強い魅力を感じSmartHRに入社を決めました。
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あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
私の強みは、強いて言うならばポジションや名誉にこだわりがほとんどなく、考えが柔軟であるところだと思います。私は、監査法人からコンサルやベンチャーキャピタルへの転職を経てきたため、「CFOに向けて虎視眈々とキャリアを歩んできたんですね!」と言われることもありますが、実際にはそんな考えはありませんでした。「WILL(やりたいこと)、CAN(できること)、MUST(求められること)の3つの円の重なる部分がなるべく大きくなるようにキャリアを描きましょう」と言われることがありますが、私は「CANとMUSTをいかに最大化するか」を重視してきました。自分が何をしたいかよりも、求められることに貢献しているという実感が私にとっては重要で、自分が最も価値を発揮できることであれば、どんな仕事でもやりたいと考えています。「こういう仕事じゃないと嫌だ」「自分の仕事じゃないからやりません」といった好き嫌いはなく、一般的には変わっていると思われるようなことや、リスクのある仕事にも抵抗なく取り組む柔軟性が私の最大の強みだと考えています。
私はSmartHRに入社してから6年間の大半をCFOとして仕事をしてきました。入社当初は比較的大きな資金調達の仕事があったものの、それが終わってしばらくはファイナンスのような大きな仕事が常にあるというわけではありませんでした。その後、入社当初は兼任と外部委託でやりくりしていた経理などのバックオフィス業務の内製化を進めて行く中で、会社を回していくためのマストな業務の体制を構築できるまでは、自分の専門外の領域でも積極的に巻き取っていました。例えば、新入社員向けの会社貸与の機器のセットアップやGoogleアカウントの作成などの情シス業務をやっていたのは今となっては貴重な経験でした。一通り業務の体制ができると次の課題は、例えば経理に詳しい人が1人いれば経理業務は回るのですが、その人が病気などで不在となると一気に業務が滞ってしまうため、属人化予防の観点から業務を「チーム化」することを進めました。そうなると次は各チームにリーダーが必要になるため、マネジメントする人を据えて、「マネジメントする人をマネジメントする」経験を積むことができました。
SmartHRは現在、関東だけでなく関西・東海・中四国・九州に拠点を持ち、1,000人規模の会社に成長して、会社のフェーズや認知度も大きく変わりました。個人的にはスタートアップのCFOの仕事は、過去の経験を直接活かせるのは1割くらいで、9割くらいはほぼ未経験の仕事だと感じています。過去の成功体験だけに固執せず、新しいことに柔軟に対応し、ミッションを達成するために努力する必要があります。そのためにも、公認会計士の資格は、仕事で必要な場合には出すべき一つの武器ですが、必要がない場合にはあえて出す必要のないものと考えています。

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仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
正直「この瞬間心が大きく動いた」というのはあまりありません。ですが、3.で過去に上昇気流の中で仕事をしたいと思ったことがあると述べましたが、それを日々の仕事の中で実感することはあります。例えば、私が入社した2017年末から2018年初頭にシリーズBの資金調達がありました。投資家に説明するための事業計画を経営陣で作ったのですが、この事業計画は当時の私たちにとって「これ、いけたらかなりすごいぞ」という非常にポジティブなものでした。そうなのですが、今当時の事業計画を振り返ってみると、実績はその計画を優に超えています。―自分たちが過去想像していた以上の場所に辿り着ける、日々予想外のことが起こり刺激的で、希望を持って仕事をしていける、自分の仕事を通じて新たなサービスが社会に広がっていっていることを実感できる―これがまさにスタートアップで働く醍醐味だと思います。
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公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
「悩んでいる暇があったら自分で調べたり人に聞いたり、アクションを起こした方がよい」というタイプなので、正直なところ過去を振り返って「あの時は大変だった」という記憶がありません。たとえば3年前を振り返ると、当時は大変だと思う瞬間はあったと思うのですが、それが今までで1番大変だったかと言われると、その後にもっと大変なことがたくさんあり、振り返ると忘れてしまっている、越えなければならない壁がどんどん高くアップデートされていく、というような感覚に近しいかもしれません。
業務的に知見がないことにぶつかったら、「悩み」になる前のタイミングで、それを知っていそうな社内・社外の方々に話を聞くことが多いです。自分たちより先のフェーズの会社にいる諸先輩方や、その道の専門家の方々にお話を伺うなど、ノウハウで解決できるところはそれで済んでしまいます。
また、個人的には「自分の悩みは、他人からすると大したことではないのかもしれない」という前提で捉えている節はあります。たとえば、家に帰って家族に自分の悩みを少し抽象化・一般化させて話し、意見を聞いてみます。すると、すぐに「こうすれば解決じゃない?」と返ってきて、あっさり解決してしまうということもあります。他人事であればストレートに解決策が言えたりするものなので、自分の悩みや課題も客観的な意見をもらえるようにすることも大事だと思います。
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人生の目的と公認会計士という資格
人生の目的と言うにはありきたりかもしれませんが、後に振り返ってみた際に、満たされたり、楽しかったり、幸せだったと感じられるように、日々を過ごすことを大切にしています。仕事はあくまでそのための手段の一つ、と捉えています。もちろん仕事の中で、大変だったり苦労したりという経験を積むことは自分の成長のためには大事ですが、現在の仕事に固執するあまり、モチベーションの上がらない業務を続けたり、合わない人間関係の中で働いたりという、自分の人生の満足度を下げてしまうような選択肢はとらないようにしています。
公認会計士という資格は、弁護士や医師と同様に、大学を卒業して社会経験がない状態で社会に出る際に「自身がどのような知識を持ち、どのような仕事が可能なのか」を相手に明確に認識してもらえる便利なツールだと思っています。人生の目標を達成するための出発点から、自己のアイデンティティを示せる点で大きな武器となるのではないでしょうか。また、監査法人の次のステップを考えている人から相談を受けることがたまにあるのですが、監査の経験に固執して視野を狭めてしまい、「監査の経験は何に活かせるのだろうか」と悩んでいる方が多いように思います。公認会計士の仕事を「監査」や「会計」の仕事と捉えるのではなく、「会社の数字に関わる仕事」と捉えれば、その範囲は非常に広範に及びます。その中で、「公認会計士の資格を持っています」と言えば、「では財務諸表が読めるのですね」とか、「管理会計の理解が早いのですね」といった具体的な評価を先んじて想像していただけるため、キャリア形成において非常に有益な資格だと思います。

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これから成し遂げたい事、将来の夢
一年という短期スパンで考えた場合でも、三年や五年、それ以上の将来を見据えた場合でも、必要なことを適切に実行することを重視したいと考えています。SmartHRは、急成長を目指している企業ですが、いわゆるスタートアップよりも規模的に大きく、社会的にも認知され始めているものの、まだ大企業とは言い難いフェーズにあります。このような狭間の時期に起きやすい特有の経営課題を、全社で一丸となって乗り越えることにより、SmartHRのサービスがユーザーから喜ばれ、今以上に社会的に評価される企業となることに貢献していきたいと考えています。SmartHRを普通の企業にはしたくなく、現状に満足するような企業にはしたくない、という強い信念があります。当社以外にも社会課題解決に挑んでいる企業は多く存在しますが、共に切磋琢磨し、よい刺激を受けながら成長を目指していきたいです。

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キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
公認会計士という資格は、どの時代においても必要とされ、社会的にも高く評価されるものだと思います。しかし、その活躍のフィールドは時代と共に変化していきます。キャリアの選択においては、過去にどうだったかだけではなく、これから先の「この業界が今後盛り上がるだろう」とか、「将来性がありそうだ」という視点が重要だと思います。スタートアップにおける事業の選択や、ベンチャーキャピタルの投資の意思決定とも似ています。そして、自らが選んだキャリアの入り口において、自分が何者かを示す際に、公認会計士の資格がその価値を発揮します。私自身は、ITスタートアップの黎明期というタイミングで前職のサムライインキュベートに入社し、現職のSmartHRで急成長期を経験できていることが良かったと思いますが、現代ではディープテックなど、他の次の領域も次々と出てきています。そういった未来志向の視点で、「この業界に飛び込むぞ!」という意気込みを持って行動することで、より充実した楽しいキャリアを築くことができるのではないでしょうか。


