会計士の履歴書
横井 智哉

株式会社ブリヂストン

グループ業績管理ユニット→グローバル連結業績管理部 

横井 智哉

よこい ともや

事業会社で会計士ならではの強みを発揮。“企業内会計士”というキャリアをより魅力的な選択肢として浸透させる

1986年6月21日生まれ(40歳) 愛知県出身 東京都在住

中央大学 法学部 法律学科 卒業 2009年合格

横井 智哉

01

キャリアサマリー

2009年3月

中央大学法学部法律学科卒業

2009年11月

公認会計士試験合格

2009年12月

有限責任監査法人トーマツ入所 名古屋事務所配属

2013年9月

公認会計士登録

2015年6月

有限責任監査法人トーマツ退職

2015年7月

株式会社ブリヂストン入社 ブリヂストンタイヤジャパン株式会社出向 財務企画部 所属

2018年6月

株式会社ブリヂストン 管理会計部 所属

高校までは愛知、大学は東京(多摩ですが)、最初の就職先は愛知、今は東京と、愛知と東京を行ったり来たりしています。

元々公認会計士という資格は名前しか知らない程度で、学問としては法律に興味があり、大学のゼミでも民事訴訟法を専攻していました。就職活動の時期に自分の今後を真剣に考えた際に、専門能力の汎用性・潜在性に強い魅力を感じ、心機一転公認会計士を目指しました。とはいえ法律の基本的な考え方は現在一般事業会社で働く上でも役に立つことが多く、回り道でしたが良い選択をできたと思っています。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

公認会計士としての最初のキャリアは監査法人トーマツの名古屋事務所でした。
当時の名古屋事務所は会計士等が全体で400人程度の中規模拠点であり、比較的幅広い業務に携わることができたと振り返っています。
監査法人での経験のベースとなったのは製造業クライアントに対する監査業務でした。中部地方という地域柄か、自動車関連産業を筆頭にモノづくりというベーシックな業態のクライアントとお仕事をする機会が多く、自分の中でのいわばモデルケースについて、製造業を基準に構築することができました。
それ以外に当時の所属部門では、監査をしながらIPO支援や財務デューデリジェンス業務の補助にアサインしてもらえることが度々あり、監査以外の観点から財務情報を分析・評価できる機会にも恵まれていたように思います。
会社法監査の主査業務を1事業年度終えた頃にトーマツを退職し、現在の勤務先であるブリヂストンに転職しました。
当時トーマツに入社してから約5年半経っており、監査法人の中で少なくとも経験しておきたかった業務を概ね経験することができたという、「とりあえず1周した」感が自分自身の中にありました。
自分の会計士としての色付けをどう行っていくかを考えたとき、他のプロフェッショナルファームやスタートアップ企業に転職したり、あるいは独立開業したりする同僚が多い中、浸透しつつあった上場企業の企業内会計士という選択肢を選びました。アドバイザーという立場でなく、当事者として地に足をつけて事業を推進する働き方に魅力を感じました。

横井 智哉さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

私が現在所属するグループ業績管理ユニットという部署は、ブリヂストンの連結ベースでの管理会計に関するとりまとめ部隊です。

文字通り世界中のグループ会社とコミュニケーションを取りながら予算編成・管理を行い、経営層に全社及び各事業部門の業績を報告し、改善・成長に向けた財務面からの提言を行っています。

特徴としては、経営層との距離が近いこと挙げられます。手前味噌で恐縮ですが、長い歴史を持つ大手企業で働くとなると、大きい組織の中の末端の一人として淡々と働くようなイメージがあるかもしれません。たしかに独立開業と比べるとそういった側面は多いとは思いますが、自分自身の作成した資料がそのまま経営層への報告や取締役会に用いられ、CFOに直接報告を行う機会もあります。当然時流の変化に応じた迅速な対応が求められます。私たちの報告内容が事業部門の今後に大きな影響を及ぼすこともあります。
グループ売上高約3兆6千億円、従業員約14万人が担う大所帯のビジネスが動いていくダイナミズムを肌で感じることができます。

なお、現在の部署は2つ目であり、入社当時は国内の販売会社に出向し、会計業務全般に携わっていました。予算管理以外にもチャネルや商品別の採算、社内カンパニーの業績評価など、よりミクロで現場目線の業務を経験することができました。お金以外の物差しの重要性を体感できたように感じています。

今後のキャリアパスとしては、トーマツやブリヂストンでの経験で得た財務の知識をベースに、財務ゼネラリストとしてスキルアップして当社グループに貢献していきたいと考えています。現所属の後は、海外グループ会社への駐在や本社財務関連領域(経営企画や資金・IR)等でさらに幅広く経験を積み、経営者目線を踏まえた財務スキルを培っていきたいと思います。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

独自の強みというとなかなか挙げるのは難しいですが、複眼的であることだと考えています。
大学では法律を学び現在法曹界で活躍する多様な人材と交流することができました。
監査法人では様々な規模・業種の企業、学校法人あるいは財団法人に対する監査に加え、IPO支援・財務デューデリジェンス業務を経験しました。
現在所属する一般事業会社では、川下の販売部門で現場目線での財務関連業務に携わったのち、今は川上のコーポレート部門で経営層へ向けた財務関連業務を担っています。

また、これらと並行して公認会計協会の組織内会計士ネットワークを通じて多様な会計士の働き方、プロフェッショナリズムを知ることができました。
このような機会を通じて得たそれぞれの観点が、今の仕事のアウトプットにおいても下支えになっているように思います。

シンプルな例ですが、既存の規定・要領やマニュアルの類があるとして、果たしてそれがあるべきものか、これまでの経験に照らしてモレなくダブりのない内容か、自然と考えるようにしています。客観的ないわば「セカンドオピニオン」を常に考えることができているのは、様々な経験を通じて現在進行形で蓄積できている財産があってこそだと思います。
特にこのような観点は、新卒入社が大勢を占める一般事業会社ではある意味貴重でもあり、見解に説得力を持たせる上で貢献できる機会は多いように感じています。

横井 智哉さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

月並みですが、信頼を現に言葉として受け取ったときです。公認会計士の携わる仕事は、大なり小なり相手方(監査法人にとっては監査クライアント、一般事業会社の財務部門にとっては営業などの他部門等)と時には対立する局面があり、常に歓迎されるわけではありません。むしろ歓迎される方が少ないかもしれません。直接的に相手にとってメリットがある提案をできない場合もあります。独立性・公正性が強く求められる公認会計士の仕事だからこそ、クライアントと強い信頼関係を築くというのは簡単ではないと思います。

そんな立ち位置だからこそ、クライアントから言葉に出して信頼関係を示してもらえることは、本当に幸せなことです。
受注当初からずっとお仕事をさせてもらっていた監査法人時代のあるクライアントの方から、「横井さんは同じ釜の飯を食った戦友のようなものだから」と言ってもらえたことがありました。立ち位置は違っても同じ目標に向かって協働できていたのだなと実感することができ、監査法人としてとても有難い瞬間でした。

また、急成長するビジネスを担う営業部門の方と膝詰めで打合せを繰り返し、少しずつビジネスの採算可視化を進めた中で、「こういう当たり前のことを当たり前に説明し、ちゃんと推進してくれる方に初めて出会えた」と言ってもらえたことも、単純に嬉しかったです。セールスパーソンとしての本業に忙しいであろう中何度も時間を割いてもらい、その意義を最終的にちゃんと腹落ちしてもらえたということは、財務部門としても本懐でした。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

異論はあるかと思いますが、「ゼネラルスペシャリスト」にはなれないということです。
公認会計士という資格には、監査という独占業務はあるものの、それにとどまらない幅広い可能性があります。他の資格に比べても特にキャリアパスの自由度が高いと思います。それゆえに、自分自身がキャリアを積み公認会計士として色を付けていく中で、専門領域の取捨選択はどうしても避けられないです。一般事業会社で働くことを選んだ私の場合は、ビジネスそのものに向き合う時間が増えた代わりに、会計監査六法を眺める機会が減ったなとは感じています。

とはいえ今のキャリアパスを後悔しておりませんし、無駄があったとも思っていません。大事なことは、色々な選択肢がある中で、それを切り替える際は自分の中で悔いがないと言い切れるようになってから、切り替えることだと考えます。切り替えること自体に消極的になるということではなく、ちゃんと向き合い主体性をもつということです。

公認会計士のキャリアであれば、最初はとりあえず監査法人という方が多いと思います。そこでなんとなくステップアップしていくのではなく、毎日現場やオフィスで仕事をする中で、何をしているときに一番「探求心」を発揮するか、一番時間を忘れて仕事をしているのはどういうときか、ときには振り返ってみるとよいと思います。まわりがこうしているから、ではもったいないです。

07

人生の目的と公認会計士という資格

私が働き始めた2009年は公認会計士業界的には氷河期の始まりの年でした。世界中でリーマン・ショックの影響が本格的に波及し世界経済が停滞・悪化基調にあったことに加え、監査法人ではJ-SOX対応という大波が一段落して人余り感が徐々に出てきた頃です。2009年度の公認会計士試験合格者は前年の3分の2以下であり、バブルがはじけてしまったのだなと感じていました。公認会計士試験に合格したのに就職できずバイトをしながら就職活動中、なんて方もいたようです。私自身も論文試験の直前には受験勉強する一方、大手監査法人の説明会・面接予約のために自宅のパソコン前で待機した記憶があります。苦労して就職しました。

そんなこともあってか、20代のうちは自分がどのようにどのような会計士になりたいか結論を出すのではなく、選択肢や視野を広げるように努めていました。30代の今は、その中で得た経験や諸先輩方の会計士像を、自分自身の目標を徐々に具体化していきたいです。

管理会計業界で私が好きな言葉に「Rolling Forecast」というものがあります。状況の変化に応じて目標を適宜見直していき、目標に拘束されすぎない柔軟な成長を意図したものです。ビジネスに直接関わる公認会計士として「国民経済の健全な発展」に貢献する、という自分の中での軸はぶれないようにしつつ、それを実践するための働き方を日々の経験を通じて柔軟に実践していきたいと思います。

横井 智哉さん

08

これから成し遂げたい事、将来の夢

私が現在属している自動車業界は、「CASE」(Connected、Autonomous、Shared、Electric)というキーワードに代表されるように、大きなターニングポイントを迎えています。業界の勢力図が激変する可能性があり、当然タイヤも対岸の火事ではありません。そのような潮流の中生き残るべく、当社もビジネスモデルの変革に向けて日々様々な試行錯誤をしています。業界の過渡期に身を投じることができたのは幸運ですし、まずは当社の今後の成長に、財務面から少しでも貢献できればと考えています。

当面は現在の部署において経営層や事業部門に全体最適のための分析やレポーティングを行う中で、知識の裏付けや客観性を確保した提言など、会計士ならではの強みを発揮していきたいです。
また、そのように大手企業で働く公認会計士として成果を残すことで、公認会計士のキャリアパスとして「企業内会計士」がより一般的に、より魅力的な選択肢として浸透していけば幸いです。

横井 智哉さん

09

キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

キャリアを模索する会計士の方へ

選択肢は多いです。働き方も多様ですし、当然正解はありません。どうしてもこの業界はスーパービジネスパーソンの華々しい活躍ばかりが目に入るかもしれませんが、それが全てではないですし、様々なフィールドで働き経験を積みながら最終的に自分なりのゴールが見えてくればよいと思います。

ですから、動けるうちはとりあえず臆せず動いてみてください。「模索」するのであれば、できれば締め切りを設けてください。その方がアクションの主体性が増すと思います。どのようなアクションであれ、公認会計士という資格は常に後ろ盾になってくれます。そうして動き続け様々な観点を身に着けた公認会計士ほど、ビジネスで通用する「国民経済の健全な発展に寄与する」会計士であることができるのではないかなと考えています。

会計士受験生の方へ

私の場合は、某予備校に受講料を振り込んでから、公認会計士試験に合格し、実務経験を経て修了考査を受け、最終的に公認会計士登録が完了するまで、約6年間でした。長い道のりです。プレッシャーを感じ過ぎず、知識の拡充に100%時間を割ける貴重な時期を楽しんでください。

そして、公認会計士という資格は、本当に一生ものだと思います。数字というものは、英語なんか目じゃないくらい共通化されたコミュニケーションツールです。そのプロフェッショナルである公認会計士は、これから先も活躍の場は広がり続けると確信しています。安心して勉強に打ち込んでください。