
弁護士法人L&A
代表
横張 清威
よこはり きよたけ
会計士弁護士が得意とする分野を追求し、マーケットの確立を目指す
1976年6月25日生まれ(50歳) 東京都出身 非公開在住
明治大学法学部 2012年合格

01
キャリアサマリー
弁護士登録、みらい総合法律事務所入所
会計士試験合格、監査法人アヴァンティア入所
Vovan & Associes(バンコク法律事務所)パートナー就任
弁護士法人L&A設立 代表就任
弁護士と公認会計士の二足の草鞋を履いています。
会計士弁護士は、会計士→弁護士の順で資格取得することが多いのですが、私は、弁護士→会計士の順で資格取得した変わり者です。
学生時代から、バックパッカーとして東南アジアを彷徨っていたこともあり、いつか世界を股にかけて働きたいと思っていました。そのため、会計士資格を取得した後に、東南アジアでは一番肌に合ったバンコクの法律事務所の日本人パートナーに入れてもらいました。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
正直に申し上げると、私が司法試験の勉強をしている学生時代、公認会計士という資格を知りませんでした。今思えば世間知らずだったのですが、法学部の学生からすると馴染みのない資格でした。
公認会計士という資格を知ったのは、私が司法試験に合格して、司法修習を行っている最中でした。偶然、クラスメイトの中に元会計士で司法試験に合格した方がいたのです。その方から、税金の観点から弁護士法人を設立すべきか否かという話を聞き、世の中には凄い人がいるものだと感心した記憶があります。
その後ひょんなことから(後述します)会計士試験を目指すことになり、監査法人アヴァンティアに入所しました。当然のことながら、監査法人での業務は法律事務所のそれとは異なり、どれも新鮮で興味深いものでした。3年ほどで監査法人での勤務経験は終了しますが、今でも多くのメンバーととても仲が良いです。
その後、会計士弁護士のみを集めた事務所を立ち上げ、会計士弁護士というマーケットの追究を行っています。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
会計士を目指す前は、何の疑問も持たずに弁護士業務のみをこなしていました。会社から依頼された仕事の中に会計や税務の分野がある場合には、「これは顧問税理士さんに聞いて下さい」と回答していました。
もっとも、考えてみると会社は利潤の追求を目的とした集団です。そのため、どのプロジェクトにも必然的に損益計算が存在しています。このような財務的な側面について配慮しないで法律業務だけを行っていてよいのだろうかと疑問がよぎりました。
会社を司る重要な要素として、①経営、②財務、③法務の側面があると考えています。
このうち、③法務についてのみ対応していましたが、②財務についても対応できたら、より良いサービスを提供できるのではと考えたのです。
思いついたら即行動ということで、会計士試験を受けることにしました。ただ、当時はすでに弁護士として多くのクライアントを抱えていたため、弁護士業の合間に通信講座で勉強を行うことになりました。
裁判と裁判の合間に電卓を叩いて演習問題を解いていました。歩いているときも暗記物を片手にブツブツ呟いていました。ストレス発散のため缶チューハイを飲みながらブツブツ呟いて歩いていることもありました。完全に不審者です。
弁護士業をこなしながら会計士試験を受けることは大変だったのですが、何とかパスすることができました。
現在は、会計士弁護士というダブルライセンスを有する者を集めて、②財務と③法務の双方がクロスする分野の業務を追究しています。
04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
会計士試験をパスした後に監査法人アヴァンティアにて監査業務に従事しましたが、その際も法律事務所の仕事があったので非常勤扱いでした。それでも、年間半分くらいは監査法人で仕事をしていたと思います。
3年ほど監査法人と法律事務所の双方で働く状態が続いた後、法律事務所オンリーに軸足を戻しました。
このように、どちらかというと弁護士と会計士で比べると、私の場合、弁護士業務が常に中心に位置しています。会計士の資格と経験は、オプションとしての位置付けとなります。
しかし、会計士の資格と経験は、弁護士業務に非常に大きく影響を及ぼしています。たとえば、一つの資料や事実を目の当たりにしたとき、瞬時に法律的な側面と財務的な側面の双方から検討を行っています。その結果、法的には問題ないが、財務的に問題があるという結論に至ることも多くあります。また、相手の弁護士が主張している事実が、会社の内部統制プロセスの観点からあり得ない主張であると瞬時に見抜けることもあります。
このように、監査法人で培った知識と経験は、現在の弁護士業務に多大な恩恵をもたらしています。

05
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
弁護士業務は基本的にトラブルの解決であるため、非常にクライアントから感謝されることになります。
これまで数多くの事件を扱ってきたのですが、その多くは残念ながら守秘義務の観点からご紹介することができません。
公表されている事件でいうと、将棋棋士の三浦弘行九段のソフト不正疑惑騒動に関与したことがあります。この事件を簡単に説明しますと、三浦九段が対局中に自身のスマホ等を通じてソフトの指し手を見たのではないかという疑惑をかけられたものの、そのような事実はないと証明した事件になります。
将棋のプロとして活躍するためには、日本で将棋連盟に加入せざるを得ません。日本以外にもプロとして活躍できる囲碁とはこの点が異なります。そのため、日本の将棋界でソフト不正疑惑をかけられたままであると、今後のプロとしての生活に多大な支障を来たしてしまう、一生の問題となるのです。
一方で、不正を行っていないことを証明することは、「悪魔の証明」であり極めて困難です。また、裁判によって解決することになると、疑惑の解消まで何年もかかってしまいます。
何度も深夜に及ぶまで協議を行い、試行錯誤した結果、第三者委員会を通じて証明するという方法に漕ぎつけ、比較的短期間に疑惑が間違いであったことを世間に知らせることができました。
このように、クライアントの一生にかかわる問題に携わることができ、感謝をされるという弁護士業には、今でも非常にやりがいを感じています。
06
公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
監査業務はクライアントから報酬をもらいつつ、クライアントが作成した決算書等の問題点を指摘するという側面があります。そのため、利害関係がない税務署のような組織と比べると、追及が甘いのではないかと指摘されることがあります。
一方で、弁護士業は、クライアントから報酬をもらうものの、クライアントの主張を全面的に押し出せばよいのだから、このようなジレンマが存在しないと言われることがあります。
しかし、実際に双方の業務を行ってみると、それほど変わりはないと感じています。
弁護士業でも、クライアントが違法なことをしようとしていればストップをかけます。また、間違った対応を取ろうとしていても同様です。専門家としての立場から、クライアントの利益保全を図っているということになります。
一方で、監査業務でも、クライアントが誤った決算などを行おうとしているときに、クライアントの意向を尊重して適正意見を書こうとはしません。そこは、監査業務のプロとしてストップをかけますし、そのことがクライアントの利益に資すると考えているのです。
このように、一定のルールの枠内でクライアントの利益を守ろうとしているという点で、両者は共通していると考えています。
07
人生の目的と公認会計士という資格
私は、既に述べたとおり弁護士業に軸足を置いています。けれども、公認会計士という資格を取得したことで、その後のキャリアプランが大きく変わったと実感しています。平たく言えば、会計士同士の親近感が増したと感じています。
社会では、多くの人が会計士の資格を持って活躍しています。監査法人のみならず、コンサルや事業会社にも、会計士資格を持っている方は多くいます。そのような方と名刺交換した際に、会計士同士であると打ち解けるスピードが遥かに違います。
これは小さなことではありません。日本に限らず世界中でも会計士の方は活躍しています。その際に、目に見えない会計士という共通項は、自分の今後の行動に大きく影響を与えると考えています。
もちろん、会計税務という専門知識も仕事の助けとなるのですが、それ以上に人脈の広がりという点で私の人生に影響を与えるだろうと考えています

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
現在、会計士弁護士というマーケットを確立しようと努めています。会計士弁護士は、日本に100~200名程度いると言われているのですが、その多くが法律事務所内に散在している状態です。
また、多くの会社は会計士弁護士という存在を知りません。
一方で、会計士弁護士が得意とする分野は、世の中に大きく横たわっています。この分野の追究を行うことを現在の目的としています。たとえば、M&Aや民事再生などは、法律と会計が大きく交差する分野です。その他、収益認識基準と契約書の関連性や、税制改正に伴う新しい資本政策対応など、様々な分野で会計と法律の双方の知識が要求される分野は存在します。
なお、私はVovan & Associesというタイの法律事務所のパートナーに就任していることからも窺えるように、海外での業務展開も積極的に行おうと考えています。
ちなみに、法律は各国で大きく内容が異なるのですが、会計はIFRSをベースにして概ね共通しています。そのため、個人的には、法律よりも会計の方が世界を股にかけた仕事をしやすいと実感しています。
まだまだ道半ばですが、同じ志を有した者が参集してくれることを期待しています。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
公認会計士という資格は、どの会社においても必須である「財務」に関する知識を高度な次元で身に着けていることを証明するための手段となります。平たくいうと、非常に「ツブシが効く」資格です。
上場会社の経理部や経営企画部に入ることもできますし、役員になることもできます。また、自ら会計事務所を設立することもできますし、独立したてで売上に不安があれば監査法人でアルバイトすることもできます。さらに、IFRSとのコンバージェンスの影響により、海外においてもさほどストレスなく会計業務を行うことができます。
正直に言えば、活用の幅という観点では、弁護士資格を上回っています。
AIに取って代わられるなどと危惧している方もいるかと思いますが、「財務」が利益追求という普遍的なプロセスにおいて、必須となる専門知識であることに変化はありません。自信を持って会計士試験に臨んで欲しいと思います。


