
MODコンサルティング株式会社
代表取締役副社長
外山 裕之
とやま ひろゆき
再生支援企業と共に業績改善を目指す企業のドクター。数値に基づく分析力と人間力を磨き続けることが何より大切
1978年6月24日生まれ(48歳) 東京都出身 東京都在住
慶應義塾大学 経済学部 卒業

01
キャリアサマリー
会計士試験合格後中小規模の監査法人へ入所。
山田ビジネスコンサルティングへ入社。
MODコンサルティング株式会社を設立し、中小企業の事業の再生や業績改善の支援等を行っている。
大学卒業後は家業を継ぐ予定だったのが急遽状況が変わり公認会計士を目指す事を決意。公認会計士試験の予備校で、後に一緒に会社を設立することになる金子と出会う。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
監査法人における経験は4年程度。だが、その後の仕事のベースにもなる非常に大きな経験だった。
振り返ると、4年間という期間を考えると就職先が大手監査法人ではなく中小規模の監査法人であった事が良かったと思う。会計士試験合格後のキャリアについては、とにかく早く成長をして将来独立しても活躍できるだけの実力を身につけたいという理由から、監査法人ではなく事業会社かコンサルティング会社へ行きたかったのだが、私が会計士試験に合格した当時は採用の市場が厳しく断念したというのが実情である。
監査法人に行くのであれば大手よりも中小の方が早い段階で仕事を任せられるため成長スピードが早いという話を聞き入所を決意したのだが、実際に入所してみると業務はそれなりにハードだった。だが、法定監査だけでなくIPO支援からデューデリジェンス業務まで幅広い経験を積むことができた。従業員の人数が少ない分、1年目から主体的に業務に向き合わないと仕事が回らないという事もあり早い段階で監査対象会社の手続全般を見る事ができたのは非常に良かったと感じている。
また、代表の動き方を間近で見る事ができたのも後のビジネス人生では非常に役立っている。代表は監査法人のパートナーというよりもビジネスマンという印象で監査対象会社の方からも信頼されており、代表の動きを観察することでクライアントは我々に何を求めていて、そのためにはどのようなスキルが必要かという事を身近で感じる事が出来た。その後のキャリア選択のきっかけは、私が公認会計士を目指したきっかけにもつながる。詳細は後述するが、より経営者の視点に近い立場で業務を行いたいという思いから監査法人からコンサルティング会社への転職を決意した。
コンサルティング会社では事業再生支援業務が中心であったが、M&Aや事業承継にも関与する事ができ業務の幅が一気に広がった。また、新卒社員をはじめ金融機関出身者等様々なバックグラウンドを持つメンバーが多く在籍していた事から会計的な視点にとらわれない柔軟な考え方を身につける事ができたと感じている。さらに、社風としてビジネスマンとしての常識や人間力を非常に重視していたことから、若手でもしっかりとして魅力的な社員が多く、彼らの刺激を受けて人間力という面で成長させてもらえた事が現在の仕事でも大いに役立っていると実感している。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
今現在はMODコンサルティング株式会社を設立し、中小企業の事業再生支援や業績改善のための支援等を行っている。中小企業の事業再生支援という仕事は、一般的には、業績不振等の理由で銀行借入金の返済が困難になった企業の財務および事業の実態を把握(財務デューデリジェンスおよび事業デューデリジェンス)し、企業が資金的に苦しくなった要因を特定しどうすれば窮境を打破できるかを企業と一緒に考え再生計画を作成し、その計画をもって金融機関に説明し借入金の返済猶予や債務免除等の協力を得ながらクライアントが継続して事業活動を行う事ができるように支援をするという仕事である。日常生活に例えると、病気になった患者が医者の診察を受けて治療を行い元気になっていくという例に似ている事から企業のドクターという言い方をされる事もある。
弊社の特徴としては、一般的な再生支援業務の究極の目的である中小企業の業績改善という結果にこだわり、コンサルタントというよりも中小企業の社員もしくは役員等当事者に近い立場でプロフェッショナルとして仕事をするという点にある。いわゆる再生支援業務を謳っているコンサルティング会社は多く存在するが、自身が当事者的立場で業績改善の支援までを行っているコンサルティング会社は少ない。その理由の一つとして、業績改善の支援は個人の力量に大きく左右される事から規模のメリットが働きづらく、大規模なコンサルティング会社であっても組織的に行う事が難しくコンサルティング会社としての収益源にはなりづらいという点が挙げられると思う。
私自身も前職のコンサルティング会社時代に再生業務を行っていたのでその点については実感をしており、逆に小規模でも実力さえあれば十分に勝負ができると確信をして独立をしたのだが、この点について会社を設立して間もない段階からクライアントの業績改善支援業務に力を注ぐ事が出来ているのは一緒に会社を設立した代表の金子の存在が大きい。金子とは公認会計士試験の予備校で知り合ったのだが、彼は前職のコンサルティング会社時代に事業再生支援の部隊を自ら立ち上げ、場合によってはクライアントの役員という立場で事業再生の結果を出してきており、その実績を知る金融関係者の方々から会社設立当初から新規案件の引合いを頂いたため営業活動に時間を割く事なく本業に没頭することができている。
独立をした税理士や公認会計士の多くは、営業面で苦労して結局は当初やりたいと思っていた仕事とは異なる仕事をして生計を立てているという話をよく聞くが、その点私は非常に幸運であったと思う。人との出会いがその後のビジネス人生を大きく変えるという事を身をもって体験し、改めて縁の大切さを実感している。
04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
大学卒業後今までに通算で1年間程、勉強も仕事もしていない完全な無職の期間を経験しているのだが、このマイペースさは自分の課題でもある一方で自分の強みだと思う。ちなみに上記の無職期間というのは、大学卒業後公認会計士試験の勉強をはじめるまでの2か月間程度と監査法人を退職後妻と世界旅行をした期間を含む10カ月間程度の通算1年間程度であり、前者はやむを得ない感はあるものの後者は一般的な社会人の常識からは完全に外れた行動で、今でもその話をすると多くの方が驚かれる。だが、一度寄り道をしてみても存外大したことはなく、今までとは違った角度で物事を捉える事ができるようになったり、それまで常識だと思っていた事が自分の思い込みであったという事に気づき、ある種の胆力が身についたりと副産物の方が多かったと感じる。「なんとかなる」というポジティブ思考は元来の性格的な面も大きいとは思うが、無職時代の経験により周囲の動きを気にせずに自分で判断して自分で決断するという力がつき今現在の仕事でも非常に役立っていると感じる。また、他人と比較しない事で無駄なストレスを溜め込むことも少ないように感じている。
そして、会計士になってから自分を客観視して強みだと気づいた点が、人間性と合理性のバランス。数値を使った分析が武器なので合理性は当然に必要なのだが、会社は人間の集団であり必ずしも合理的な決断が結果を生み出すとは限らない。例えばリストラ等の決断もそうだと思う。また、クライアントの中小企業の社長は私の親の世代程年齢の離れた人生の大先輩ばかりであり、その様な方々と一緒に事業の再生に取り組むためには人間力は絶対に必要と感じている。この点は前職のコンサルティング会社を通じて学んだ事が大きいが信頼できないと思われたら話すら聞いてもらえないので、人間性はむしろ仕事の大前提と言える程重要であり、人間性と合理性のバランスは不可欠だと感じている。
先日、新聞のインタビュー記事で池坊の次期家元が「一見なんてことない草の『ここがいいな』を浮かび上がらせるのが生け花人」と話されていたが事業再生という仕事にも通じると思う。再生という局面にいる会社は現在でこそなんてことない会社かもしれないが、それぞれに異なるストーリーを抱えており客観的な視点で魅力となるポイントを浮かび上がらせる事が我々の仕事だと思っている。そのためにはこれまでの足跡に敬意を払い真摯に話を伺う姿勢と冷静に分析をする視点がかかせず、人間性と合理性のバランスという点は重要であると感じている。

05
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
自分の業務がクライアントの利益に少しでも繋がった事を実感したときが一番心が大きく動く瞬間だ。その結果クライアントから感謝をされればもちろん嬉しいのだが、クライアントの方の評価尺度は人により様々なので、なるべくそこには左右されないように気を付けている。特に中小企業の社長の中には、コンサルタントのモチベーションも考慮して激励の言葉をかけて頂く方も多いので、自分自身の評価軸を持つことは品質の維持という面から大切だと感じている。
クライアントの方から感謝の言葉を頂いても自分の力不足を実感しながら反省しているときもあれば、特に何も言われなくても一人で満足して内心喜んでいるときもある。業績改善に繋がりそうな事象を発見し、その結果少しでもクライアントの利益に繋がった事を自分自身で実感したときが一番嬉しい瞬間であり今後もそんな瞬間を追い求めていきたい。
06
公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
仕事の結果が出ずに深く考える事はあるが、公認会計士という仕事をしているという意識が乏しいため公認会計士という仕事に関連して深く悩んだ事はない。強いて挙げれば、仕事で新しく出会った方に公認会計士と記載された名刺を渡すと税務や会計の専門家というイメージが強すぎて入口で役務の幅を狭めていると感じた事はあったが、独立して後ろ盾がなくなると資格の力を実感する事が多く、今では信頼性の担保という点でのプラス面の方が大きいと感じている。個人的には公認会計士という資格に頼らずに生きていきたいと思っているが、現状では資格の恩恵を受けて仕事を頂いていると感じており、その点は悩みと言えるかもしれない。その悩みについてはまだ乗り越えてはいないが経営のプロフェッショナルとしての経験と実績を積むことで解決できると考えている。
07
人生の目的と公認会計士という資格
大学卒業後は家業を継ぐ予定だったのだが、大学4年の時に経営者であった父が他界し、急遽会社は叔父が継ぐ事になった。家業は代々続くいわゆる老舗と呼ばれる会社で、私自身は小さい頃から跡取りとして育てられ将来は家業を継ぐのが当然と思っていたので会社に入らないという事が決まった時は頭が真っ白になった。就職活動もほぼ終了していたのでこの時点で資格取得を選択肢の一つとして考え始めたが、税理士や公認会計士というのは仕事をお願いする方というイメージが強く自分が資格者として仕事をするという姿は想像しづらかった。
そんな状況下で公認会計士という資格を目指すきっかけの一つとなったのが外資系の大手証券会社でのインターンでの経験だ。友人から外資系の大手証券会社で新卒内定者の欠員が出たという事で採用含みのインターンの紹介を貰い、運よく数カ月間インターンとして働かせてもらう事になった。この経験は非常に大きなもので友人には今でも感謝している。大学生だった私にとっては驚く程の給料を頂きながら立派なオフィスで働く事ができるというのは刺激的で毎日楽しかったが、金融工学等の分厚い書籍が並んだ中で仕事をされている方々を見て、大学までほとんど何の勉強もしてこなかった自分がここでこの先何をしていくのだろうかとある種の違和感を覚えていたのも事実だった。
そんな中でITバブルが崩壊し社員が解雇されるという状況を目の当たりにした。このことは当時の私にとっては非常にショッキングで、会社に頼らずに生きていく事の大切さを痛感すると同時に資格を目指す決断の一つの大きなきっかけになった。とはいえ、いずれは経営者になるものだと思って生きてきた自分にとっては、公認会計士を目指すという事自体にまだ迷いがあった。大学を卒業してからも暫く悩んだが、決断の決め手となったのは2つの思いからだった。その思いとは、公認会計士になることで「父親のような中小企業の経営者の方々の心の負担を減らしたい」という思いと、「万が一将来家業の経営に携わるような機会が来た時に胸を張ってできると言える存在になりたい」という思いである。
この2つは今でも常に私の心の中にあり、事業再生という分野に魅力を感じたのも2つの思いを同時に満たせる可能性を秘めているからである。そんな事から私にとっては公認会計士という資格の取得は2つの人生の目的から考えた末の決断と言える。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
自社が経営のプロフェッショナル集団として、社員が生き生きと働き、顧客にとってはなくてはならない魅力的な存在になること。そして、自分自身は“中小企業の経営者の方々の心の負担を減らせる存在になること”と“事業会社の経営を任せられるような存在になること”という人生の2つの目的を果たすことが、これから成し遂げたい将来の夢である。
会社を経営して社員に参画してもらうとサラリーマンであった頃とはまた違った責任感や社員への思いが芽生える。単純に会社を大きくしたいというよりも、社員が生き生きと働き成長できるという事が何よりも大切だと改めて実感しており、経営のプロフェッショナル集団として小粒でもピリリと辛い会社として少しでも社会にインパクトを与えられる存在になりたいと感じている。そのためには自分自身が成長し続ける事が必須だが、その点においても人生の目的である2つのテーマを追求し続ける事が一番の近道であると思っている。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
先日、転職の相談でお会いしたある大手監査法人の在籍者が、監査法人には情熱を持って仕事をしている人がほぼおらずマイナスの空気が漂っていると話していたが、大事な事は周囲の人がどうかではなく、どんな仕事であってもまずは自分が情熱を持って仕事に取り組むことだと思う。確かに監査法人には生き生きと仕事をしている人が少ないという気もするが、資格取得のための実務要件を満たすまで我慢するという発想で仕事に臨むとその習慣が身についてしまい、何もなしえないまま気づけばビジネス人生終盤という事になりかねない。不平不満を言っていても何も解決しないので、まずは目の前の仕事に情熱をもって全力で取り組むこと、その上で自分の人生の目的と照らして必要なアクションがあればあきらめずにチャレンジし続けることの2点が重要だと思う。

