会計士の履歴書
山中 宏仁

I-GLOCAL CO., LTD

ホーチミン事務所 Director

山中 宏仁

やまなか ひろひと

公私ともにグローバルな会計士

1980年代生まれ 埼玉県出身 ホーチミン在住

早稲田大学法学部

山中 宏仁

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キャリアサマリー

ベトナムの日系会計事務所I-GLOCALでFinancial Advisory Service(FAS)および移転価格税制(TP)部門の責任者をしています。2020年からベトナム・ホーチミンに赴任しています。

I-GLOCALのFAS/TP部門では、M&Aにおけるデュー・ディリジェンスや移転価格ローカルファイル・マスターファイル作成など日本で一般的なFAS・TPサービスに加えて、買収したベトナムローカル企業のコンプライアンス改善支援などを行っています。二重帳簿など、日本ではめったに見ない課題がよく発見されるので、課題解決に向けて部門スタッフと一緒に取り組んでいます。

クライアント業務以外では、部門の予算管理、スタッフのアサイン管理、採用・人事評価、教育研修などのマネジメントを行っています。

本稿が海外でのキャリア形成や起業を考えている会計士のご参考となれば幸いです。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

2010年に監査法人トーマツに入社し、主に国内監査を担当する部署に配属いただきました。幼少期にタイに住んでいた事もあり、漠然と「将来的にはグローバルクライアントを担当し、海外駐在をしてみたいなあ」と考えていました。この頃は英語力がまったく無かったので、空き時間でTOEICの勉強をしたり、夏休みにフィリピンに語学留学をしていました。

入社4年目くらいからグローバルクライアントを担当することになり、またデロイトマレーシアへの短期派遣・アメリカの大学へ短期語学留学の機会をいただき、社内でグローバル人材として認知されるようになりました。入社8年目に2年弱のインドネシア海外赴任プログラムに選抜された事、その後に妻となるベトナム人女性と出会った事が、キャリア選択のきっかけになりました。
妻と出会った時点でインドネシアの話がほぼ決まっていたので、そのまま赴任はしたのですが、この頃から将来的にはベトナムで働きたいと思うようになりました。ベトナム人と結婚するのだから、一度はベトナムで暮らしてみるべきではないか? 日本とベトナム双方のためになるような仕事をすべきではないか? と考えていました。

帰任後はグローバル総合商社の監査チームにアサインいただき、チームメンバーにも恵まれ、充実した日々を送っていましたが、ベトナムに行きたいという思いは強くなる一方でした。妻とも話し合い、ベトナムの日系会計事務所に絞って転職活動を実施したところ、I-GLOCALが日系大手でありFAS業務にも力を入れている点、幹部メンバーがエネルギッシュに仕事をしつつも、家庭やプライベートを大切にしている点、設立は古いもののベンチャーマインドがある点などに魅力を感じました。
待遇面でも希望とマッチしたので、帰任後 1年と少しでI-GLOCALに転職しました。

山中 宏仁さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

I-GLOCALはベトナム進出する日系企業をトータルにサポートしており、会社設立~駐在員の労働許可証取得~設立後の会計税務・人事労務~税務調査対応までワンストップで対応しています。また、ベトナム労働法に対応した給与計算や人事労務管理が可能なSaaSソフトウェアを自社開発し、クライアントに提供しています。

社内にはFAS/TP部門があり、日本CPA・ベトナムCPAを含む10数名のメンバーがいわゆるFAS業務と移転価格文書化などのTP業務を実施しています。私は当部門のマネジメントを担当するとともに、FAS案件を中心に実務プロジェクトをリードしています。
その他、日系企業数社の監査役に就任し、経営執行のモニタリングを行い、またベトナム会計税務に関するレポート執筆やお客様向けセミナーなどを実施しています。

監査法人時代と大きく異なるのは、会社の経営に関与している点です。
FAS/TP部門は2022年に設立し、私は立ち上げ時のコンセプト策定、予算作成、初期メンバーの採用(外部採用および社内公募)、業務管理体制の整備など、設立プロセス全体をリードしました。部門のPL予算と人事に責任を負うため、大きなやりがいと、相応のプレッシャーを感じています。特にFASはM&A関係以外でもIFRS導入支援や内部監査などを行っており、業務範囲が広いので、所属スタッフの得意分野・やりたい事と、クライアントのニーズ・部門として深堀する領域のすり合わせには気をつかっています。

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あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

私の強みは監査法人時代に培ったロジカルシンキングと分析力にあります。
海外現地法人を含む様々な規模・業種の監査に全力で取り組んできたので、何か問題が起きた際、その問題を因数分解して対策を具体的なタスク・スケジュールに落とし込んで考える力が身につきました。

また、東南アジアで仕事をした期間が長いので、東南アジアで日系企業向けプロジェクトを実施する時の進み方・よく発生するトラブルなどを、なんとなく予測することができます。東南アジアの仕事の進み方やよくあるトラブルは、欧米や他の地域とはまた異なるのかなと思っています。
東南アジアに特化した対応力が身についており、日々の仕事に活かしています。

山中 宏仁さん

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仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

月並みですが、大きなプロジェクトを受注した時と、そのプロジェクトが無事完了した時には、大きな達成感を感じます。
当社のサービスで買収対象会社のコンプライアンス上の課題が解消され、その後に順調にベトナムでビジネスを展開している姿を見ると、この仕事をやっていて良かったと感じます。

また、FAS/TP部門のスタッフが仲良く仕事をしているところ、実務や研修を通して彼らの成長が感じられた時も、大きな達成感を感じます。

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公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

監査業務を経験した公認会計士の多くが感じる悩みかもしれませんが、制度対応のために会計監査を実施し、監査先のクライアントから監査報酬をいただくという会計監査制度の仕組みには、ある種の矛盾のようなものを感じています。年々厳格化される監査法人のマニュアルに従って、高品質の監査を実施しようとするが、それにはコスト(監査報酬)がかかるので、クライアントからはコスト低減のアイディアを強くリクエストされる といったネゴシエーションを何度も経験しました。
この矛盾に対して、自分なりの答えを出すことはせず、現在はアドバイザリー業務中心の職場で働いています。

もちろん、会計監査は資本市場の信頼性を担保するための重要業務であることは理解していますし、監査・アドバイザリーどちらが良いというものでもありません。それぞれのやりたい事にあったキャリアを選択していけば良いと思います。

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人生の目的と公認会計士という資格

幼少期から東南アジアに縁がありましたが、ベトナム人と結婚した事によって、自分のアイデンティティが固まった気がします。
ベトナムに根を張り、ベトナムに進出した/進出する日系企業を力強く後押しできる存在になりたいです。日系企業がベトナムで成功し、その成功がベトナムという国の更なる発展に貢献できれば最高です。
公認会計士という資格、監査法人でのキャリアは、日系企業を管理面からサポートすることに活用していきます。

山中 宏仁さん

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これから成し遂げたい事、将来の夢

まずは当社のFAS/TPビジネスを拡大したいです。ありがたいことに多くのお客様から引き合いを頂いているので、スタッフの採用・育成や業務管理体制を整え、セミナーなどマーケティング活動を効果的に実施すれば、より大きな成長が期待できます。

長期的な夢は特に決まっていないですが、公私ともにベトナムに根を張って生きていきたいと思っています。
私を受け入れてくれたI-GLOCALのメンバーやベトナムの家族・友人に恥ずかしくないような仕事をしていきたいですね。
I-GLOCAL自体も2003年にベトナムで創業し、既に当地では多くの日系企業にご愛顧いただく会計事務所となっていますが、ベトナムという国自体の高い経済成長を取り込み、まだまだ成長できると思っています。

近年のベトナムGDP成長率はコロナ禍の2020・2021年を除き毎年6%以上、2022年以降も高成長が予測されています(出典:IMFの統計データ https://www.imf.org/en/Countries/VNM)。

山中 宏仁さん

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キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

海外で会計士としての知見を活かして活躍する道もあります。キャリアを模索している方は、一度 海外にも目を向けてみてはいかがでしょうか?

日本と異なるマーケットやビジネスチャンスがあるので、自分のやりたい事、プライベートとの兼ね合いも考えつつ、海外でチャレンジすることも、選択肢の一つに入れてみてもらえたらと思います。具体的なキャリアとしては、会計事務所/コンサルで駐在員や日系クライアント向けのコーディネーターとして働く方が多い印象ですが、海外マーケットで通用するビジネスを作って起業する(もしくは有望なスタートアップ企業にジョインしてCFOとして活躍する)という選択肢もあります。

物流の発達やオンライン化が進んだ今の時代、海外で働くことの障壁は低くなりつつあります。また、私たちは会計士の資格を持っていますので、万が一失敗したとしても、資格を活かした再チャレンジが容易にできる環境にあります。
個人的には、ベトナムは高い経済成長余力や政治的な安定性などからビジネスチャンスが豊富であるだけでなく、日本人にとって非常に住みやすい国であることから、おススメです。
ちなみに住みやすい理由として、親日国である、食文化がヘルシーで日本人の好みに近い、医療水準の高まりや配車/各種デリバリーサービスが発達している、(ある程度お金はかかるが)外国人向けの子女教育は高水準で英語教育が充実している、日本から近く時差が少ないことなどが挙げられます。

本稿を読んでくれた方が、海外でのキャリア形成や起業に目を向けるきっかけとなれば最高です。