会計士の履歴書
久保 光雄

みらいコンサルティング株式会社

代表取締役

久保 光雄

くぼ みつお

お客様と「仕事と人生」を共創する関係を築き、日本企業の再成長に寄与していく

1947年8月28日生まれ(79歳) 福岡県・大分県出身 東京都在住

中央大学 商学部 卒業 1974年合格

久保 光雄

01

キャリアサマリー

1966年4月

日本国有鉄道 入社

1973年3月

同社 退社

1974年10月

公認会計士第二次試験合格

1974年11月

株式会社海外投資コンサルティング(旧(監)辻監査事務所) 入社 グアム駐在員(OVICON Guam、Inc.) 出向

1977年4月

辻監査事務所(3回の大合併を経て、中央青山監査法人)に帰任

1978年8月

公認会計士第三次試験合格

1987年4月

株式会社ビジネスアドバイザー(監査法人100%子会社)設立 その後、買収により中央青山PWCコンサルティング株式会社に社名変更

2007年3月

監査法人の解散方針を受け、退所

2007年4月

みらいコンサルティング株式会社 設立 現在に至る

会計士になる前は、日本国有鉄道(国鉄)の社員でした。国鉄では鉄道資材を担当していたのですが、机、いす、蛍光灯まで全部が国鉄独自の規格であったことからコストがかさんでおり、その不合理さに疑問を持っていました。原価率について国鉄監査委員会から指摘が入っていましたが、結局は国会で議論しない限りなにも変えられないので、まったく改善されせんでした。そこで個人的に、規格関連や資材合理化のための勉強を大学で始め、その一環として会計に興味を持ちました。その後、教授の勧めもあって会計士の試験を受けることに決めました。国鉄の閉鎖的な体質に嫌気がさしていたので、退社して会計士になることにしたのです。

当時の私は、国外で仕事がしたかったので、当時の辻監査事務所に入社してすぐ、自ら手を挙げてグアムへ行きました。2年半、グアムで仕事をした後、帰国して学校法人などの監査業務を行いました。

1978年に公認会計士第三次試験に合格した後、監査法人の間で優良顧客獲得競争が激化し、私も新規顧客獲得活動に従事しました。そこで上場支援なども手掛けるようになり、それが後のコンサルティング業務へとつながっていきました。

2007年に、カネボウの粉飾決算などの影響から、監査法人が解散。そこで私は独立し、かねてから力を入れてきたコンサルティングを事業の柱とする会社、みらいコンサルティングを立ち上げ、今日に至っています。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

私の会計士としての歩みに大きな影響を与えたのは、グアムで仕事をしたことです。当時はベトナム戦争の終結直後で、グアムはアメリカを目指す南ベトナム人の中継基地としてにぎわっていました。
会社勤めの立場ではありましたが、社員は自分ひとり。自らお客様を見つけ、営業をかけ、仕事をして、集金し、自分に給料を払っていましたから、ほとんど自営業です。「仕事をあげよう」と言われれば、通訳、観光ガイドなどなんでもやりました。ここでお客様の仕事や生活に入り込み、困ったことを解決するという経験を積みました。
これらが、後にコンサルティングという仕事の魅力に目覚め、独立するにあたって、非常に大きな財産となりました。

帰国後、次第に景気がよくなり、監査法人の間で顧客獲得競争が起きました。私は、大手が見逃したり、やりたがらなかったりする案件を中心に「落穂ひろい」をし、スタートアップの会社などを積極的に手掛け、上場までもっていきました。その中には、後に大企業へと成長する会社もありました。

監査を続けていると、クライアントの問題解決のヒントを見つけられるようになっていきます。それをクライアントに伝えるとともに、どうすればより成長できるかを具体的に指導することに、私はやりがいを感じるようになりました。そして、中小企業を成長に導くコンサルティング業務に没頭していきました。それが現在のキャリアにつながっています。

監査で問題を指摘することは、実は単なる入り口にすぎず、本丸はその問題をどう解決するかにあると私は考えています。会計の知識だけでは、問題解決のための支援はできません。監査の経験を深掘りし、そこから会計以外にも興味を広げていく中で、徐々に解決支援ができるようになっていきます。

監査を通じ、たくさんの企業と出会い、さまざまな業界、業種について研究するというのは、すばらしい経験です。将来的に独立を考えるなら、できれば30歳になるまでに、5年は監査を経験するといいと思います。

久保 光雄さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

現在、主に手掛けているのは企業の業績改善であり、業種や事業ごとに、数値改善のための支援を行っています。ただ、数値を改善するには、人事、文化、組織、事業モデルなどの非数値面の改革にも踏み込む必要があり、それらへの対応も重要な仕事のひとつです。数値面、非数値面の双方から問題を総合的に捉えた上で、解決に向けての支援をしています。

特に、非数値面の改善はなかなか難しく、アドバイス一つでは終わりません。時には100人、200人の社員に匿名インタビューを実施し、会社のどこに問題があるのかをリサーチしたりもします。その結果、経営陣が問題の元凶なら、トップを入れ替えるなど踏み込んだ改革も行います。

コンサルティングにおいては、お客様にとっての「全体最適・中長期的最適」を最優先としています。会計税務、人事労務、組織改革、再生再編などについてそれぞれ専門的にコンサルティングして終わりではなく、会社全体を中長期的に伸ばしていく総合コンサルティングを実践しています。

また、できるだけお客様の近くで仕事をしたいという思いから、多拠点方式をとっています。国内の主な企業・法人は、『みらいコンサルティング株式会社』と『士業法人(監査法人、税理士法人、社会保険労務士法人)』であり、国内拠点は東京のほか9カ所、海外の直営拠点は中国3拠点を含め7法人があります。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

私が代表を務めるみらいコンサルティングでは、仲間とお客様を含めたエンゲージメントを重視しており、お客様の未来に向かって共に歩み、「仕事と人生」を共創する関係になることを目指しています。
社会的に意義のある集団であり続けることを常に意識すべく、15年前に理念などをまとめた『MC WAY』を作りました。『MC WAY』は、時代に合わせて見直しを行ってきた結果、現在10訂版となっています。こうしていつも理念を高く掲げ、その旗のもとに集まる仲間とともに仕事ができることに、私は大きな喜びを感じています。そのようにして一致団結して進んでいけるのが、私たちの強みです。

また、みらいコンサルティングでは、会計だけではなく、人事労務、税務、国際ビジネスなど、複数の専門家などが一体となって、お客様の事業全体を支援します。主な取引先である中小企業が抱える問題は、資金繰りから従業員問題までとにかく多彩であり、会計士だけでは本質的な解決に導けません。みらいコンサルティングには現在、東京に100人、その他の地域に80人、海外に20人のメンバーがいます。そうして多様な分野の専門家を揃え、総合的なコンサルティングを行えることも、強みとなっています。

会社の方針であり、個人的な心情でもあるのですが、その場だけの対応はとらず、誠意を尽くして仕事をすることを大切にしています。クライアントに対し常に誠実であったから、ここまで歩んでこられたのだと考えています。

久保 光雄さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

コンサルティングを行っていく中で、短期業績の追求では真の問題は解決せず、中長期的な成長を目指す必要があると分かったのは、自分にとって大きな気づきでした。

短期業績を伸ばすための施策は付け焼き刃的な対処療法になりがちであり、根本的な治療にはならないことがほとんどです。目先の数字ばかり追いかけ、人事、労務、社風といった組織の本質を成す部分から目を背けてしまうと、本当にお客様のためになるサポートができなくなってしまいます。現在では、常に中長期的な視野を持ち、会社全体を俯瞰しながらコンサルティングをするよう意識しています。

また、ビジネスの国際支援業務において、中国、ASEAN、アメリカのスタートアップ企業と日本の新興企業を比較したときに、強い危機感を抱きました。海外では、足元(自国のマーケット)を見つつも、世界マーケットをめざしている企業が多くあります。しかし日本においては、足元を固めるだけで終わっている企業が目立ちます。海外の企業は、レッドオーシャンを避けて、世界市場でブルーオーシャンを必死に模索していますが、日本企業は、レッドオーシャンで疲弊し、ブルーオーシャンまで辿り着けていない印象です。

私が、新規上場の支援に直接取り組んだ企業は数十社ありますが、その後大きく成長しているところは、残念ながらきわめて少ないです。当初、新規上場を「単なる通過点」としていた経営者であっても、上場後は次第に保守的になり、守りの経営に徹していく……。そんな事例を数多く見てきました。その根本的な要因は、経営者の「ビジョン不足」、人間としての「哲学不足・勉強不足」、ひと財産築いたという「油断」にあると考えています。

こうした背景もあってか、世界経済の中で、日本企業の存在感は著しく下がってきています。未だ多くの企業が、アナログ時代の成功体験にとらわれ、デジタル時代の変化を軽視しているようです。また、リスクを恐れ、チャレンジを避ける風潮が日本にまん延しており、基礎開発力も落ち込んでいます。こうした状況からの脱却が急務でしょう。

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公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

監査法人時代、監査のキャリアを積む中で、クライアントの問題解決のヒントが見つかることが増えてきました。クライアントの大半は、監査で指摘された問題に対して、早急に解決すべき重要性を感じていない、または自前では解決できない、という状況でした。そうした企業に対し、自分が見つけたヒントを提供することで問題解決に結び付けたいという思いが大きくなり、実際にアドバイスや改善活動を行うようになりました。

しかし、それを知った会社の先輩社員から、ことあるごとに「会計士は余計なことをするな」と言われました。
会計士だからといって、会計だけやっておけばそれでいいのか。
会計結果の評論である監査にだけ注力すれば済むのか。
私は疑問を抱きました。そして改めて、会計士という仕事の社会的意義や役割について考えていったところ、「会計士には大いなる可能性がある」ということに気づきました。

お客様は、財務の専門家である会計士に対して、戦略的な経営パートナーとしての役割も期待します。会計士はそれに応えるため、経営に関する知識を身に付ける義務があると思います。また、会計士の仕事は、法定監査に従事するだけではありません。監査の経験を積んだ後には、さまざまな問題解決のアプローチが身につき、それが企業の成長や再生のために大いに役立ちます。それを生かさない手はありません。

こうして会計士が企業活動を全般的にサポートできるようになれば、ひいては日本の発展にも寄与できるはず。そこに思い至った時から迷いはなくなり、会計士という肩書きに囚われず、自分ができるあらゆる支援をしていこうと考えるようになりました。

07

人生の目的と公認会計士という資格

日本企業の成長および社会発展に貢献できる、最有力の位置にいる専門家が会計士であると思っています。
会計士になれば、日々の業務を通じ、数字を読んで、数字で語る能力が身につきます。多くの会社の盛衰のノウハウに触れることができます。そして、いろいろな人に出会えるチャンスがあります。これほど発展性のある仕事はなかなかありません。

ただし、会計士の資格をもてば、経済的に安定した人生を送れる時代はすでに終わっています。監査業務、会計業務、税務業務のAI化、デジタル化が進み、会計士業務は変革の真っ最中にあります。
そうした社会で、会計士に求められるのは、問題の発見や指摘に加え、自らが見つけた問題を解決する力です。

問題解決のためには、攻めのガバナンスが求められます。
近年は、会計士が監査業務を行う際、自らの責任を意識するあまり、リスク回避の発言や行動が多すぎるように感じます。そうして会計士自身の安定志向が強くなれば、時にお客様の改革的行動を抑制してしまいます。
しかし、リスクを取らずして成長は望めません。会計士はそれをよく理解した上で、日本の将来のためにも、積極的な成長戦略を提言していくべきです。

現代の日本企業は、オーバーコンプラ、オーバー保守で、自縄自縛になっているきらいがあります。閉塞感漂う日本企業に、革新の風を入れる能力のある会計士が、より活躍する時代がくるでしょう。
ひとりの会計士として私が目指すのは、お客様貢献、社会貢献を通して、自己実現を図ることです。その上で、仲間たちにも自己実現の場を提供し、それが次の世代にまで引き継がれていくなら、嬉しい限りです。

久保 光雄さん

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これから成し遂げたい事、将来の夢

今後はさらに、日本企業の再成長に寄与していきたいと考えています。
お客様とビジネスを共創し、専門家発の新規事業も数多く立ち上げて、海外にも通用する企業へと成長するための支援を行っていきます。それを続けることで、「強い日本企業」を生み出す土壌を作るのが、目標のひとつです。

みらいコンサルティングという組織の中でも、世界で活躍できる人材を育てていきたいです。
私は2012年に、アジアの仲間とともに「Reanda」という国際会計事務所を設立しました。現在は37カ国から参加があり、4000人の規模にまで成長しています。その国際舞台で、社員たちには私が若いころにしたような経験を積み、成長してほしいという思いがあります。

現在、個人的に興味があるのは、仮想通貨(暗号通貨)です。いずれは、仮想通貨の評価システムを作りたいと考えています。
また、監査業務についても、新たな試みができないか摸索中です。監査結果を点数制度にして、「この企業は65点」などと評価できる仕組みができれば、おもしろいかもしれません。こうして会計士業界に新たな風を送ることにも、取り組んでいきたいです。

久保 光雄さん

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キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

あらゆるビジネスの入り口となるのは、数字です。まずは数字を読み解くことから始まります。その役割を担うのが、会計という業務です。しかしそれが会計士のすべてではありません。入り口をくぐった先には、業務改善があり、さらにその先には、人事、文化、組織の改革があります。そこまで行きついて、本質的な問題解決ができるようになると、仕事のやりがいやおもしろみがぐっと深まります。

会社経営に携わる、国際業務に取り組むなど、会計士の活躍の場は広がっていますが、将来のキャリアを描くにあたり、そのベースとなるのは監査業務です。3年から5年、監査業務を経験して、たくさんの生きた知識やノウハウを吸収することで、コンサルティング能力をはじめとした会計以外の能力が芽吹いてきます。そうして己を磨いた上で、監査という枠を超えて、会社経営や国際業務にチャレンジするといいと思います。

今後の日本では、少子高齢化によりマーケットが縮小することは明らかです。これまで国内にしか目を向けずにやってきた企業が苦境に陥り、倒産すれば、ひいては日本全体が貧困化していくことになります。それを防ぐためにも、会計士は世界に目を向け、経営を学び、国際的に通用するような戦略を描けるようになってほしい。その上で、日本企業の再成長を支援していってください。

会計士を志している人には、受験勉強以外のところでいろいろな経験を積んでほしいと思います。海外を旅してみたり、先輩で魅力的な人がいれば会いに行ってみたり……そうして自らの人間性を磨く過程で、業界を超えた幅広い人脈ができるかもしれませんし、物事の本質を見通せる判断力が養われるかもしれません。会計士という資格だけにとらわれることなく、人間として成長することを目標に、日々を過ごしてほしいと思います。