
株式会社WARC
代表取締役社長
山本 彰彦
やまもと あきひこ
挫折を糧に、リスクを力に変える。スタートアップの現場で経営を学び続ける会計士起業家
1984年5月27日生まれ(42歳) 兵庫県出身 東京都在住
神戸商科大学 商経学部 経営学科(現 兵庫県立大学 経営学部) 卒業 2008年合格

01
キャリアサマリー
新日本監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)入所
有限責任 あずさ監査法人 国際部 入所
株式会社イグニス入社。取締役CFOに就任
同社にて東証マザーズ(現 東証グロース)へ上場
株式会社WARC 設立。代表取締役に就任
【合格年次】2008年
高校時代は陸上競技の長距離ランナーで、目標は大学進学後の箱根駅伝で走ることでした。2年生までは順調にタイムが伸びていたのに、そこからの1年間伸び悩み、どこの大学からも声がかからず、という状況でした。振り返るとそんなに甘いわけないのですが、当時はスポーツ推薦をもらえると思っていたのですね。でもどうしても競技は続けたくて一般入試で箱根常連校に行ってやろう、と意気込んだのですが、学力が足りず全滅。唯一合格したのが関西の単科大学でした。ひとまずは進学を決めたものの、単科大学のため生徒数は少なく、陸上部の長距離部員は2名と駅伝メンバーが足りない状態でした。それに加えて、大学で配布される「先輩の就職先リスト」には知っている会社が2社しかなく、この大学を卒業したあとの人生はどうなるんだろうかと不安になりました。
競技で活躍している友人、一般入試で目標を持って進学した友人と比べると、自分はなんて中途半端なんだと悩んでいたところ、出会ったのが生協に置いてあった公認会計士のパンフレットでした。生協の方の手作りポップアップで「人生一発逆転!」とあり、「これだ!」と思いました。大学卒業資格以外で有名な大企業に入るライセンスがほしくて、会計士を目指しました。
ところが、実際の試験勉強は大苦戦でした。2007年に3回目の試験で科目合格し、新日本監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)大阪事務所へ入所。当時科目合格者だったため、監査業務の傍らで試験勉強を続けました。2008年に4回目にしてやっと全科目合格できました。その後、有限責任 あずさ監査法人 国際部へ移籍し、約4年の監査法人勤務を経て、2012年に創業3期目のスタートアップであるイグニスにCFOとして入社。ゼロからの管理部門構築からIPO準備を担当し、2014年に東証マザーズ(現 東証グロース)へ上場。上場後は引き続きコーポレート部門の統括、及び国内外のIRやファイナンスなどを取り仕切り、複数事業も管掌してきました。
自身のスタートアップでの経験から成長企業における管理部門体制の重要性を強く感じるようになり、すべての成長企業のコーポレートにまつわる経営課題を解決できるようなサービスを提供するため、2017年にWARCを創業しました。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
2007年、新卒でEYの大阪事務所に入所しました。当時私は科目合格者でしたが、監査法人の人材不足もあり、実務を経験しながら勉強を続けられる環境は私にとって理想的でした。EYでの1年目は、監査実務を学びながら組織の仕組みやチームでの役割について理解する期間でした。しかし、自分の中で「やっぱり東京へ出たい。日本経済の中心で成長したい」という思いが強くなり、より高度な案件に関わりたいと考えるようになりました。
今でこそWARCという会社を経営していますが、当時の私は監査法人でキャリアを築き、いずれパートナーになることを大きな目標にしていました。そこで、より専門性の高い国際部での経験を求め、有限責任 あずさ監査法人へ転職しました。東京オフィスは本当に優秀な人材が多く、会計士として成長できる環境が整っていました。国際部では主にグローバル展開している大企業の監査を担当し、企業の仕組みを一通り見ることができました。在籍最後の年度には小規模クライアントの現場責任者として、若手ながらも本質的な監査リスクを捉え、目的思考で判断する力を培うことができました。監査人として監査業務全体を体得していくには、一般的には2~3年程度かかると思います。年数は個人差がありますが、この監査全体を理解し、本質的な監査リスクを捉えられるようになるまでは、しっかりと経験を積んでいただくことが、自身の将来につながると思います。
このインタビューを読んでいる方の中には、これから公認会計士を受験する方、資格取得後の就職について悩んでいる方もいると思います。各監査法人の違いや特徴は、現段階ではなかなか分からないと思いますが、自身が公認会計士としてどんな人材になりたいか、それが実現できる場所はどこかを考えることが重要です。
少し話は逸れましたが、私なりに監査の本質を捉えられるようになったところで、今後の自身のキャリアをふと見つめ直しました。当時、ありがたいことに非常に優秀な方々に囲まれて仕事をしていました。それぞれのパーソナリティや強みも違う中で、監査法人でキャリアを突き詰めていくよりも、会計・監査の経験・知識を活かして違うことをした方が自分には合っているんじゃないかと思い始めたのです。転職エージェントを活用したり、自身で様々な企業を調べたりもしました。当時、コンサルティングファームが活発に採用をしている時代でしたので検討もしましたが、結局今と変わらないと思ってしまったんですよね。そのため、toCと呼ばれる個人向けサービスを展開する企業を中心に、今までの知見を活かせるポジションがないか探していました。そうしたときに、スタートアップ業界で活躍していた学生時代の友人の紹介で、イグニスの創業者である銭に出会いました。初めてお会いした日、イグニスが制作していたアプリを見せてもらい、「こんな面白いものがあるのか」と心が動いたのを今でも覚えています。当時まだガラケーを使っていた私は、翌日iPhoneを買ってその足でイグニスのオフィスへ向かいました。
監査法人とは違うラフな雰囲気に衝撃を覚えつつ、シンプルに楽しそうだと感じました。当時まだ社員数も一桁規模でしたが、IPOを目指していて、ぜひCFOとしてイグニスに来てくれないかという誘いを受けました。IPOとイグニスの現状にはとんでもないギャップを感じましたが、複数回にわたりコミュニケーションを重ね、最終的にイグニスに入社することを決めました。2年でIPOを実現するという目標を掲げ、2012年7月に入社しました。
初めての事業会社で最初からCFOでしたので不安もありました。CFOといいつつも、最初は1人管理部門でしたから、管理実務も資金調達も全て自身で行いました。
実際に転職してみて感じたことですが、スタートアップの現場では、意外とみんな会計に関するリテラシーがあまり高くないというものがありました。考え方として、「お金がたまるものはなんでもOK」だったんです。そのため、監査法人での経験は5年程度ではあるものの、これまでの経験がちゃんと役に立つぞという体感がありました。そこからIPO準備も進めて、無事2年後の2014年7月にIPOを実現できました。

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今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
現在、私は株式会社WARCという経営管理領域におけるハンズオンコンサルティングで、経理財務を中心とする業務代行(BPO)やIPO準備、業務改善(BPR)、ガバナンス支援、FAS業務、M&A支援など、多岐にわたるサポートを提供しています。クライアントの課題や状況に応じて、正社員人材の紹介や最短3営業日後にプロフェッショナル人材が稼働できるプロシェアリングなども行い、成長企業に寄り添うことができます。
私の役割は、会社として優先度の高い施策に時間を集中させることです。事業ごとに限られたリソースをどのように配分し、必要であれば採用や資金調達を行い、常に全体最適を考えながら意思決定をしています。監査法人時代にはこうした視点はなく、またイグニス時代は経営メンバーではありながらもミッションは明確であったため、WARCで初めてより広い視野で経営そのものを考え、組織全体を動かす経験が求められています。
今は、PL(売上、損益)だけでなく、BS(資産)経営へ変革していかないといけないと考え、取り組んでいます。会社にストックとして蓄積されるものは何か、いかに資産を残すか。ここでいう資産とは、ヒトや組織、ナレッジや仕組みなど、財務諸表としてのBSに記載されないものも含みます。
順調に進む状況下では気づかない課題も、事業環境の変化に直面すると顕在化します。人や組織という「見えない資産」をいかに増やし残していくかを考えることが、今の私にとって大きなテーマです。
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あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

WARCは成長企業の管理部門へのご支援を多角的に行っていますが、監査法人での知識と経験だけでなく、ベンチャー企業での実務経験があることが一つの強みだと思っています。WARCのコンサルティング業務では現場の実務理解が求められる場面が多いため、両方の経験があることが今の事業成長に繋がっていると自負しています。
その他の強みとしてはリスクを取れる、それに対するストレス耐性が高いことでしょうか。会社のトップという役割であれば当然かもしれませんが、立場や役割に関係なく、仕事を通じて、大なり小なりリスクを取る瞬間は必ずあります。やってみないとわからないという環境で、失敗した時は自分で責任を引き受けられること、そしてそれに耐えられる心構えがあるのは、まさにこの両方の経験によって養われたものです。
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仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
イグニス時代にIPO準備終盤で1つ大きなミスをしてしまって、それが原因で上場自体ができなくなりそうになったことがありました。自分だけでは抱えきれない(リカバリー不能な)規模感の大事件だったので、すぐに他の経営メンバーに打ち明けたのですが、開口一番「どうやったらこれを乗り越えられるだろうか」と誰一人として私を責めることなく、次の打ち手を議論しはじめたのです。内心絶望していたものの、「これで終わらせることはできないな。できることを全部やってみよう」と思い直してみんなで対応し、当初想定時期の2ヶ月遅れで無事上場することができました。今思い返しても、自分でも驚くくらい底力が出た数少ないエピソードですし、本当に仲間に恵まれたと思います。
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公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
イグニスがIPOした後に、上場企業のCFOとなった時ですね。
イグニスに入社後、やったことがないIPO準備やIRを担当し進めていました。IPO準備は上場達成という一つの区切りというか目標がありますが、IRに関してはゴールがなく、自分の存在価値を問われている感覚が強くあり、思い悩むこともありました。動きながら考えるしかない状況の中で、先輩CFOや経営者の方々に壁打ちをお願いし、自分の仮説に対してアドバイスをいただく中で、自信を少しずつ積み上げていきました。「まずやってみる」という行動原理が、自分を成長させる大きな糧となりました。
余談ですが、当時コロプラのCFOをされていた長谷部さんにも壁打ちをしていただいたことがありました。今はWARCの社外取締役に就任いただいており、さまざまな出来事が思いがけないところに繋がっていくことを実感しています。
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人生の目的と公認会計士という資格
仕事でもプライベートでも、できるだけ新しい体験を重ねることを人生の目的の一つにしています。私にとって公認会計士という資格は、自らの道を切り拓いていく中でとても重要なピースでした。
プロフェッショナルファームや監査法人には、会計や監査に造詣が深い方が多くいます。公認会計士という資格を持つことで、そういった方々の中に入り、一緒に働くことができます。私にとってはそれがターニングポイントとなり、自分の視野を広げ、キャリアの選択肢を増やすことができました。

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これから成し遂げたい事、将来の夢
私は停滞することはつまらないと感じる性格ですので、これからも、経験したことのないことに挑戦し続け、新しい体験を沢山したいと考えています。私が監査法人からスタートアップに転職したことも、その後にWARCを起業したことも、この考えが根本にあります。
今の時代、正社員で働くことが当たり前なわけではないですし、色んな形での挑戦ができる環境だと思います。WARCではそのような挑戦をサポートする環境を提供したいと思っています。ビジネスで繋がるだけでなく、その方のキャリア、人生のどこかで、何かしらで接点を持って、一緒に新しい挑戦をしたり、それをサポートしていけたらと考えています。
そして、私自身が会計士の方々のロールモデルの1人として、沢山挑戦し、さらに経験を積み、次世代の会計士の方々に還元していけるようにしたいと思っています。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
これからのキャリアを模索する皆さんには、ぜひロールモデルを探し、見つけていただきたいです。誰もが知っているビジネス界の有名な方でもいいですし、身近な方でも構いません。
さまざまな選択肢の中で、実際に道を切り拓いた人の存在は、自分自身の羅針盤となり、「こういう生き方、キャリアもあるんだ」と多くの気づきを与えてくれます。私も、そう思わされることがいまだにありますし、若い方々にとってはより刺激になると思います。
公認会計士の資格は人生の選択肢を増やす貴重なライセンスです。資格取得は努力が必要ですが、得られる経験や環境は、その後のキャリアを大きく広げてくれます。もちろん会計士の資格が唯一無二ではありませんが、自身の志向や将来の目標に照らして考えた時に、その延長線上のどこかに会計士があるのであれば、挑戦する価値は十分にあると思います。


