
PwC Japan有限責任監査法人
東日本事業部 ディレクター
山口 千里
やまぐち ちさと
会計を軸に、国境を越えて仲間とつながる。監査という仕事で居場所を広げていく。
1980年代生まれ 富山県出身 東京都在住
中央大学商学部会計学科 卒業

01
キャリアサマリー
あらた監査法人(現PwC Japan有限責任監査法人)入社 化学・消費財部門所属
第1子出産のため休職
復職
テクノロジー・エンターテインメントアシュアランス部へ異動、マネージャー昇格
第2子出産のため休職
復職、シニアマネージャー昇格
企画管理本部へ異動、ディレクター昇格
東日本事業部(旧テクノロジー・エンターテインメントアシュアランス部)へ異動
私は富山県で育ち、中学2年生までを過ごしました。当時の私は、たとえ自分の考えが周囲と異なっていても、それを主張すると居場所を失ってしまうかもしれないという不安があり、違和感があっても周囲に合わせながら過ごしていました。環境に合わせてきたこの経験が、後に「居場所」について考える原点になったと感じています。
その後、家族の転勤で米国ミシガン州に渡り、約4年半、現地校に通いました。異文化や語学の壁に直面する中で、ネイティブのアメリカ人の輪に自然に馴染むことは容易ではありませんでしたが、言葉だけではないつながりを求めて、学校のスポーツクラブ活動には積極的に参加しました。そこで、言葉よりもまず共通の何かに一緒に取り組むことで、周りの人々とつながりが生まれ、居場所をつくることを体験しました。
現地のハイスクールを卒業後、大学進学のタイミングで帰国しました。大学では公認会計士を目指し、勉強仲間やゼミでの活動を通じて、同じことに魅力を感じ、同じ目標を目指す共通の仲間と出会うことができました。公認会計士という資格は、私にとって単なる専門性ではなく、居場所や人とのつながりをつくるベースとなっています。
公認会計士の世界では、専門分野やバックグラウンドの異なる幅広い人々と出会うことができると感じています。専門性を軸として、国内外に仲間を作ることができ、多様な仲間と協働できる監査法人という環境に、大きなやりがいと楽しさを感じています。
02
監査法人に入社することを選択したきっかけ
私が公認会計士を志したのは17歳のときです。中学2年生の時に渡米したため、在米期間が長い級友と比べると、語学力には、並大抵の努力では埋めきれない差があると感じ、彼らと同じ土俵で戦う自信は持てませんでした。このため、大学進学および就職は米国ではなく日本で行いたいと考えるようになりました。
米国には日本人駐在員の子どもを対象にした帰国子女向けの専門塾がありました。日本の高校のカリキュラムに追いつくための講座のほか、英語力を強化する講座もありましたが、進路相談も行うことができ、私はその塾の先生に公認会計士を薦められました。経済やビジネスに強い関心を持っていたことが主な理由です。資格との掛け算で差別化を図りたいと考えていた私にとって、この助言は響きました。語学力そのものに強い自信がなくても、異文化環境での経験を通じて、相手のバックグラウンドを理解しながら関係性を築く国際力は自分の強みになります。
公認会計士を目指すため、中央大学商学部に進学、経理研究所に入り、2年生の春に日商簿記1級に合格しました。2年生から本格的に公認会計士試験の受験勉強を始め、3年生で短答式と論文1科目、4年生秋に論文4科目に合格しました。
3か月という短い就活期間であらた監査法人(現PwC Japan有限責任監査法人)への就職を決めましたが、自分の海外経験を活かすことができる環境であり、就職活動中に出会った方々から受ける印象が良かったこともあり、決断しました。入社して実際に働いていく中で、そのときの自分の直感が正しかったことを確信しました。

03
監査法人での仕事の内容、特徴、キャリアパス
最初の配属は化学・消費財部門で、担当先の企業は日本の上場会社と外資系企業の日本法人が半々でした。両者から学びを得ることができる環境でキャリアがスタートし、充実した日々を過ごしました。特に外資系企業の日本法人担当の業務では、外国人の方とのやり取りが中心で、本社側との交渉の中で語学力を活かせるという満足感がありました。また、クライアントだけでなく、世界各国のPwCネットワークのスタッフと話す機会も多く、会計・監査においては世界共通の考え方があることも知ることができました。
入社から6年後に第1子を妊娠し、産休・育休を取得しました。復職後、現場の主査として1つのプロジェクトをやり遂げ、充実感を味わっていたところ、テクノロジーやエンターテインメントを主とする業種の上場会社や、その子会社に対して会計監査を提供するテクノロジー・エンターテインメントアシュアランス部への異動という新たなオファーがありました。テクノロジー業界を希望して手を挙げていたわけではなく、業界に縛られずに新しいことがしたい、チャレンジしたい、ということを周囲に話していたところ、偶然にもその機会に巡り合えることができました。
新しいことにチャレンジすることを決意し、さまざまな経験を積んでいた中で、第2子を妊娠し、再び産休・育休を取得しました。復職後にシニアマネージャーに昇格、3年後にディレクターに昇格し、法人全体の経営企画や経営管理に関わる業務を担う企画管理本部に異動になりました。この部門には2年間在籍しましたが、これまで現場目線だった視野から、法人全体や社会の中における監査法人の役割を考えるきっかけとなる仕事に多く携わりました。今後の将来を考えるにあたってのかけがえのない経験となっています。現在は東日本事業部に所属し、テクノロジー業界のグローバル企業の監査やIPO業務を担当しています。
今までのキャリアの中で、多様な人との出会いや、尊敬できる先輩・仲間との関係が、自分の価値観や働き方に影響を与えています。その中で、仕事においては、「One of them」にならず、自分のアイデンティティを持つことを常に意識していて、「やりたいことをやる」「やっていることを楽しむ」という姿勢を大切にしています。
04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
最大の強みは国際力だと思っています。語学力とコミュニケーション力を掛け合わせた総合力という意味で、国際力という言葉を使っています。語学力は自分よりも長けている方が多くいらっしゃいますが、異なる文化の方とコミュニケーションをとるには、語学力以上に相手の文化的な背景やその人自身への理解、敬意などが必要になります。米国での経験や、今までの業務の中で多様な方々と工夫しながらコミュニケーションを取ってきた経験が活かせていると思います。
海外のPwCのメンバーとのコミュニケーションはとても楽しいです。PwCという共通項でつながり、数日仕事を一緒にしただけで意気投合できる点はグローバルファームの良いところですが、そういったチームビルディングの中でも国際力を磨くことができていると思います。
もう1点、私自身の強みを挙げるとしたら、あまのじゃくなところかもしれません。難しいと言われれば言われるほどチャレンジしてみたくなり、どうやったらできるかを考えることがモチベーションになります。そして、ひとたびチャレンジしたら、結果が出るまで頑張ります。
また、負けず嫌いな性格ではあるので、自分が不得意な土俵ではなるべく戦わないようにしています。経験を積み重ねる中で、特定の領域でNo.1でなくても、複数のスキルを掛け合わせることで自分の希少価値が高まることを知りました。私にとっては「会計(公認会計士の資格) × 国際力(語学とコミュニケーション)」がその掛け算であり、その強みを大切にしています。

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仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
私は人を頼ることが苦手な方で、それは弱点でもあるという自覚がありました。しかし、経験を積んでいく中で、助けてくれる人が周りにいるのだ、助けを求めていいのだ、と気付くことができたことは私の中で大きな出来事でした。
前例のない判断を迫られる監査を担当した際、クライアントから多くのご指摘をいただく中で、対応に行き詰まってしまったことがありました。そんな時、周囲の方々がサポートしてくださり、無事に解決に至りました。
私は何事も他人のせいにしたくないという思いが強く、自力でどうにかしないといけないと考えていました。そのため、今回のような前例のない案件においても、引き受けた以上は最後まで自分の力でやり遂げるべきだと考えて取り組みました。しかし、状況が複雑化し自分一人では解決が困難であると判断した際には、周囲の専門的な知見やサポートを得ることの重要性を改めて認識しました。
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公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
監査法人に勤務してから、自分の強みとは何かを常に模索していました。公認会計士試験の勉強が得意だったわけでもなく、海外在住経験があるものの語学力に強い自信があったわけでもありません。その中で、やりたいことを明確に持ち、目標達成に向かって一心不乱に突き進む同僚たちの成長の早さに焦りを感じることもありました。一方で、走る先を明確に見いだせない自分は、さまざまな可能性を意識して努力する形となり、成果が分散してしまっているのではないかと悩むこともありました。
そんなとき、転機となったのは「明確な目標がなくても目の前の仕事をひとつひとつ誠実にこなしていく、そういう生き方はあっていい」という先輩のひとことでした。自分の今までの経験に自信を持つことができ、焦らずに前に進んでいくことができました。
07
人生の目的と公認会計士という資格
私はPwC Japan有限責任監査法人に入社して以来、一貫して監査の仕事をしています。これはハイスクール時代の塾の恩師が、「あなたには公認会計士が向いているのではないか」と言ってくれたことが起点になっていますが、結果として監査の仕事は私の人生観に合っていると思うことが多いです。
ビジネスの中には誰かの利益が他の人の損失になるという考え方に基づくものもありますが、自分にはあまり合わないと感じています。その点、これまで私がやってきた監査の仕事は、クライアントと信頼関係を築くべく、やるべきことをやることで、結果的にクライアントおよび社会にも貢献できるような仕事であって、それが自分には合っていると思います。
公認会計士の倫理規則には誠実性、公正性の重要性が謳われていますが、私がこうありたいと思う行動指針と合致しています。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
大きな組織の経営に携わる立場に就きたいです。それは大企業の社長や大組織のトップになりたいといった意味ではなく、将来的に経営上の意思決定に関われるポジションに就きたいと思っています。
企画管理本部で法人運営業務に携わった経験から、組織運営の面白さを実感しました。組織をより良くすることを考えることが好きで、監査法人内の経営業務や事業会社の経営にも関心があります。また、経営者の方のお話は視座が広く、とても面白いと感じることが多いです。
今の私はそういったポジションに就くための十分なスキルを磨いている段階ですが、これまでシニアマネージャー、ディレクターと昇格する度に、さまざまなことに対しての見方が変わりました。これからも多様な立場での経験を積み、視座を広げていくことで、いつか経営に携わる仕事に就きたいと思っています。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
何かに突き当たったら、何を変えたら状況が変わるのかを考えることが大切だと思います。その中に自力で変えられることがあれば、小さなことでも実践してみてください。たった一つ何かを変えただけで、その状況が劇的に変わることはないかもしれませんが、何度も積み重ねていけば道は開けると思います。
また、何に突き当たっているのか分からないけれど、心がもやもやしている時は、その原因を考え抜いて言語化することも大事です。「どうしたいのか」というゴールが決まったら、逆算してできることから実践していくことで、そのもやもやは次第に解消されていくと思います。
新しいことにチャレンジしようとするときは、不安になって情報を集めすぎることもあると思いますが、行動が遅れ、チャンスを逃す可能性があります。あまり考えすぎず「いつでも方向転換できる」「やり直せる」と言い聞かせ、ぜひ自分の直感を信じて行動してみてください。


