会計士の履歴書
山田 一也

株式会社マネーフォワード

事業戦略部 執行役員 MFクラウド事業戦略部 部長

山田 一也

やまだ かずや

ベンチャーには業務領域を限定しない柔軟な働き方が必要。全体最適の観点で会社を成長に導く

1985年5月5日生まれ(41歳) 愛知県出身 東京都在住

南山大学 経営学部経営学科 卒業 2006年合格

山田 一也

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キャリアサマリー

2006年に公認会計士試験に合格し、監査法人トーマツ名古屋事務所に入所。その後、株式会社パンカクにて執行役員CFO、株式会社Bridgeにて執行役員ベンチャーサポート事業担当を経て、2014年には株式会社マネーフォワードに入社。マネーフォワードでは、社長室長、MFクラウドサービス開発本部長を経て、現在は執行役員 MFクラウド事業戦略部長として、MFクラウド事業全体を担当。

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監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

私が公認会計士試験に合格した2006年は、翌々年に内部統制報告制度と四半期報告制度の導入を控えていたこともあり、採用マーケットは超がつくほどの売手市場で、当時の4大監査法人の求人数合計が公認会計士試験合格者数を上回るという年でした。内部統制や四半期報告といった大きな制度改定を前に一定の実務経験を積んでおきたい、また、大学在学中だったため、通学しながら仕事もできる柔軟な環境を求めて、ファーストキャリアはいずれも実現できる監査法人を選択しました。

入所した監査法人トーマツ名古屋事務所は、当時全体で400名程度の規模だったため、監査を行うセクションに配属されましたが、入所から退職までの4年半で、監査業務だけではなく、財務DDやIPO準備支援、IFRSの導入コンサルティングなどさまざまな業務を経験しました。

監査法人在籍中は、皆一律公認会計士という職場環境のなかで、どうやって自分がバリューを出して、組織に貢献できるかを考えたものです。先輩の公認会計士の方々は自分よりも人生経験豊かで、クライアントからの信頼も厚く、そんななかでどうやって自分がバリューを発揮すればいいものかと。考えた結果行き着いたのは知識量では絶対に負けないことでした。監査法人在籍期間中はとにかく勉強したのはもちろん、やれる仕事は積極的に手をあげて仕事量を増やし、仕事が終われば座学で基準や指針を読み込む、今振り返るとストイックな毎日を過ごしていました。専門家にとって知っているということはとても大事なことです。知っていることをどう活用するかが腕の見せどころではあるのですが、そのためにも多くのことを知っている必要があり、それが社内外の信頼を勝ち取るための第一歩なのです。

そして退職間際の頃には環境もかわり、監査法人内で人余りが起き、業界全体が閉塞感に包まれていました。この閉塞感を無くしていくためには、雇用の流動化、つまり監査法人から別の業界に転職する人や、監査法人に戻る人を増やしていくべきだと考え、まずは自身が率先して監査法人外にでることに決め、次のキャリアを模索していくことにしました。

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今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

経済成長のためには新しい産業を育てていく必要があります。しかしながら、2008年にリーマン・ショックが起こり、2009年のIPO数は19社と1978年以来の最低水準を記録、私が監査法人を退職した2011年は、IPO数37社と最低水準は脱したものの、依然としてIPOを含む資金調達環境は厳しいものでした。また、前述した通り、公認会計士業界には閉塞感が漂っており、雇用の流動化のためにもわかりやすいロールモデルが必要でした。

そこで、監査法人の次のキャリアとして、ベンチャー企業のCFOを選択しました。成長企業に身をおいて、会社の成長にコミットするとともに、公認会計士のキャリアパスとしてCFO人材がより増えていくことを想っていました。その後、2年間CFOとして勤めたのち、その会社は上場会社へ売却、そのとき、自身もそのまま売却先の会社へ移る選択もありましたが、まだまだベンチャー業界でやり残したことがあると感じ、別の道を進むことにしました。

次のキャリアでは、会計事務所に所属しつつ、個人としても仕事を請け負い、ベンチャーのバックオフィス体制整備を外部専門家としてサポートするという仕事をしていました。しかし、1年ほど専門家として仕事を続け、人手を介するとどうしても支援できるお客様の数に限界がでてしまう、もっとレバレッジを効かせることはできないかと思うに至りました。その点、ITの力は絶大です。よりたくさんの人や企業を変えていく力がITにはあります。自身の専門家としてのスキルとITをかけ合わせてなにかできることはないか、そう思うようになりました。

そして現在は、株式会社マネーフォワードで、執行役員MFクラウド事業戦略部長として、MFクラウド事業全体を担当しています。マネーフォワードへの入社直後は、バックオフィス部門の立ち上げ期ということもあり、労務、経理の仕組みを作りつつ、提供していたサービスが、会計サービスということもあったため、専門知識を活かして事業側にもコミットしていました。まさに、会計×ITで、多くの個人事業主や企業の生産性向上に資するサービスを提供しています。会計知識を活用して仕事をしているという点は多くの公認会計士のキャリアと同じですが、それを経理や財務といったバックオフィスではなく、サービス開発や事業開発というように、事業に活かしている点は珍しいキャリアを歩んでいるかもしれません。

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あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

ベンチャーで仕事をするにあたって大切なことは、とにかく仕事の壁を取っ払い、自身の業務領域を限定しないことです。マネーフォワードでは、入社初期の頃は、自身のスキルやこれまでの経験を活かして経理や労務も担当していましたが、同時にサービス開発にも従事していました。具体的には、クラウド型会計ソフト『MFクラウド会計・確定申告』の開発に取り組んだあと、クラウド型給与計算ソフト『MFクラウド給与』の新規開発プロジェクトで、プロダクトのコンセプト決めや、企画・仕様策定に関与しました。正直初めてサービス開発に携わったため、勝手がわからず試行錯誤でしたが、結果として、自身の専門領域だけでなく、事業開発、サービス開発と幅広いキャリアを積むことができ、部分最適ではなく広い視野をもって、全体最適の観点でコトにあたれるようになったことが自身の強みにつながっていると思います。

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仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

サービス開発に取り組んでいると心を動かされる瞬間がたくさんあります。2013年のグローバル・ウーマンズ・サミットで、DeNAの創業者でいらっしゃる南場智子さんが講演で以下のように語っておられます。
「ただ企業のトップとかリーダーではない人間から見ても、この瞬間が多い人生というのは、すごく、何て言うんでしょうか、輝いていて、彩り豊かでいいな、と感じます。どうやったらこうなるのか。やっぱり「人や自分に向かわずに、コトに向かう」。それが今日の1つのメッセージなんです。」
ここでいう、”この瞬間”というのは、DeNAではじめてサービスが生まれた瞬間のことを指しています。

私も同じように、自身の成長や成功ではなく、サービスを世に生み出しチームでそれを喜ぶ、提供しているサービスがユーザーの課題を解決する、そういった瞬間に心を大きく動かされます。これからさまざまな仕事に就くことでしょう。しかし、どんな仕事をするうえでも「人や自分に向かわずに、コトに向かう」、このメッセージを大切にしたいと思っています。

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公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

前述した通り、私が監査法人を退職した2011年は、四半期報告制度、内部統制報告制度も導入され、公認会計士試験合格者はふえたものの、想定より監査報酬は伸びず、またIPO数も低迷するなど、監査法人の経営環境は厳しいもので、一部の法人では早期退職プログラムを実施するほどでした。また、監査法人業界全体で人余りがおき、スタッフからシニアスタッフ、マネージャー、パートナーといった昇進の道も狭き門となるなど、職位的に滞留する人が増え、業界全体で閉塞感が漂っていました。

役職が上がっていかないと、同じ仕事の繰り返しがちになり経験も積めません。こういった状況を打破していくためには、監査法人で経験を積んだ人材が外に出ていき、さまざまなロールモデルを示していく必要があると感じていました。監査法人の仕事は特殊なものですが、会計に関する専門知識だけでなく、早い段階でのマネジメント経験、クライアントとのやり取りを通じたビジネスコミュニケーションスキルなど、会計監査業務以外で活かせるスキルや経験もたくさん積んできているはずです。だからこそまずは自分でそれを実践しようと考え、2011年に監査法人を退職し、次のキャリアを選択することに決めました。

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人生の目的と公認会計士という資格

何かをやりたいと思い立ったときに、それを実行に移せることを大切にしたいと思っています。そのためには、いろいろな観点で”余裕”が必要です。公認会計士という資格も、その”余裕”の一つだと私は思っています。もちろん公認会計士という資格があれば何にでもチャレンジできるわけではありません。ただ、それを持っていることでチャレンジしやすくなる側面は確実にあります。企業の成長のためにバックオフィスを整備したい、経営困難に陥っている企業を再生したい、成長企業に資金をつけたい、これらはいずれも公認会計士という資格を持つことで、実現、チャレンジしやすくなることの一つだと思っています。

過去のキャリアを振り返ってみても、公認会計士資格が絶対に必要という業務ばかりではありませんでした。ただ、転職した先であるベンチャーでも、会計事務所でも、マネーフォワードでも、それぞれ会社を成長させるために資金をつけたい、バックオフィスを整備することで本業に集中できる環境を作りたい、生産性を改善するためのサービスを世に提供したい、目的はさまざまですが、いずれもコトにあたるために、公認会計士という資格、厳密にいうと資格というよりそれを得るまでに培った知識やスキル、経験が活きたことは間違いありません。きっとこれからも、なにかコトにあたるために必要であれば公認会計士資格を使う、自分にとっての公認会計士資格はそういったものなのだと思います。

山田 一也さん

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これから成し遂げたい事、将来の夢

監査法人を退職してからの7年間は、一貫してベンチャー界隈で仕事をしてきました。この先向こう10年20年何をしようかはまだ決めていません。2017年のIPO社数は90社と、IPO環境だけでなく、未上場企業の資金調達環境も当時と比べ大きく改善しました。一方で、今の仕事を通じて、多くの企業が生産性向上に課題を抱えていたり、高齢化社会を起因とした労働人口不足や事業承継問題といった課題を抱えていたり、さまざまな課題を目の当たりにしました。今後も、「人や自分に向かわずに、コトに向かう」この考え方を大切にして、いろいろな課題と向き合い、そのなかで自分ができることを少しずつ実現していきたいと思っています。

山田 一也さん

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キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

将来やりたいことに向かい、逆算して資格試験の勉強をしたり、キャリアを積んでいったりすることはとても大事なことです。実際私もビジネスに携わるのであれば数字に強くないといけない、そういう理由で公認会計士試験の勉強を始めました。やった分だけ力になって、今も公認会計士試験の勉強で培った会計や法律に関する知識は活きています。ただ、思い切って飛び込むこともときには必要です。実際にその世界に飛び込んでみると、また見える景色は変わっていきます。

トーマツから転職したベンチャーは、その当時10名規模で管理部は誰もおらず、管理部第1号としての転職でした。実際に転職するかどうか悩んでいたとき、某ベンチャーキャピタリストの方に相談したところ、腹をくくって飛び込んでみればといわれたことを今でも覚えています。当時、そんなアーリーステージの会社に飛び込んでうまくやれる自信なんてものは当然なく、Pre-IPOくらいのステージの企業へ転職することを考えていました。でもきっとその選択は一歩一歩積み上げているつもりでも、実はただ遠回りしようとしていたのかなと、いまとなっては思います。

何かを目指してアクションを積み上げることはとても大事なことです。ただ、目の前にチャンスがあるのであれば、勇気をもってぜひ飛び込んでみてください。成功することも失敗することもあるでしょう。成功したときは、いまその状況に目一杯感謝してコトにあたってください。失敗することもあるでしょう。それでもその失敗は、きっと別のチャレンジの機会を生み出す種になるのです。