会計士の履歴書
渡邉 淳

渡邉淳事務所

代表

渡邉 淳

わたなべ あつし

監査・上場審査・コンサル・CFOと様々な立場でIPOを経験。「豊かな人生」に向けて、仕事と学びと遊びをバランスよく。

1972年3月16日生まれ(54歳) 千葉県出身 東京都在住

東京工業高等専門学校卒業、東京大学EMP修了 1997年合格

渡邉 淳

01

キャリアサマリー

1992年4月

富士通株式会社に入社、配属は移動通信端末開発部(エンジニア職)

1995年5月

富士通株式会社を退職し、公認会計士資格試験勉強をスタート

1997年10月

公認会計士第二次試験に合格、青山監査法人(現 PwCあらた有限責任監査法人)に入社

2003年7月

監査法人から野村證券株式会社へ出向 引受審査部に配属され株式上場(IPO)審査業務等に従事(2年間)

2006年4月

株式会社ラルクに入社、IPOコンサルティング業務に従事

2008年5月

同社取締役就任 (2011年8月より株式会社エランのIPOプロジェクトを支援)

2014年5月

株式会社エラン取締役CFOに就任 (2014年11月 東証マザーズ上場、2015年11月 東証一部市場変更)

2018年3月

株式会社エラン取締役を退任、翌月に公認会計士渡邉淳事務所設立(現任) (その他、いくつかの企業<上場企業及び上場準備企業>の社外役員を兼務)

高専(工業高等専門学校)出身、キャリアのスタートは、電機メーカーのエンジニア職。

職業選択をやり直そうとメーカーを退職し、2年間の会計士試験受験期間を経て監査法人に就職。

監査法人にてIPO関連業務に面白さを見出し、監査法人内での証券会社への出向者公募に応募。証券会社において自らIPO審査業務に携わったことでIPOに関する知識・経験を高め、監査法人退職後は、IPOコンサルタントとして活動。

IPOコンサルタントとしての支援先(IPO準備会社)の1社である株式会社エランに転職し、同社取締役CFOとしてマザーズ上場と東証一部市場変更を達成。上場後4回目の株主総会にて、一つの役割を終えたと判断し任期満了退任。

現在を充電期間と位置づけ、次の進路は模索中。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

監査法人には8年半勤務しました。会計監査のほか、連結決算早期化コンサルティング、株式上場(IPO)支援という2つのタイプのコンサルティング業務をじっくり経験させてもらいました。連結決算早期化コンサルティング業務は、連結子会社が100社以上ある企業グループの決算発表までの日数を40日前後から25日くらいに縮めるプロジェクトに2件(2社)関与させてもらいました。一つ目のプロジェクトでは親会社での連結手続きの早期化を、二つ目のプロジェクトでは子会社の個別決算の早期化を担当しましたが、いずれも決算早期化を困難にしている阻害要因を発見し、その見つけた難題を解決させていくという取り組みでした。連結ベースでの財務報告全体への影響というゴールを意識した上で重要性がないような連結仕訳を省略したり、簡便的な方法を考え出したりするというお仕事でしたので、物事の本質を意識すること、ゴールから逆算して考えることなどいろいろな学びを得ることができました。IPO支援業務は、監査法人が本格関与するかどうかの入り口にあたるショートレビュー業務、アドバイザリー契約に基づきIPOに向けての指導・アドバイスを行う業務、開示書類や申請書類の作成支援業務などに関わることでIPOに関するベースの知識を得ることができました。
IPOというジャンルは、成功した場合にその企業だけでなく、監査法人や金融機関、株主など関係者とも皆で喜び合えるとても前向きな領域だと感じ、自分自身の進路としてもよいのではないかと感じていました。そのタイミングで、野村證券でIPO審査をする部署への出向者の監査法人内公募があったため、ぜひ行かせてもらいたいと志願して出向させていただきました。この出向によって、自らが審査担当者として証券会社における上場審査を経験できたことはとても大きな財産になりました。それまで監査法人の立場でIPO業務に携わってきましたが、会計処理や財務諸表を中心とする申請書類づくりが中心でした。IPO審査をする立場になって気づかされたのは、監査法人が主体的に関わっているのはIPOの領域の中での一部分だけだということでした。財務諸表は監査法人が見ているから正しいのが当然とされ、会社の沿革から株主の状況、過去からの資本政策、事業の内容や将来性(事業計画の策定根拠の妥当性)、コンプライアンスまわりなど、非常に広い範囲を徹底的に確認します。監査法人が証券会社からはどのように見られているのかを知ることもできました(監査法人は、財務諸表監査の専門家であり、IPOの全体を指導することを期待もされていない。IPOの全体を指導できるのは証券会社)。
その後のIPOコンサルタントとしての活動、上場準備会社CFOとしての活動においても、審査をする側にいた経験が本当に役に立ちました。「これをやってしまうと上場審査でこういう質問が来ますが対応できますか?」、「これくらいまで体制を整えないと審査で問題視されてしまいますのでしっかりやりましょう」のようなやりとりについて自信をもってできるのは監査法人での経験に加え、出向先(証券会社)でも鍛えていただいたお陰だと感謝しています。このあたりで自分の進路はIPOで行こうと決めました。

渡邉 淳さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

監査法人を退職し、株式上場(IPO)コンサルタントとして活動しました。知れば知るほどIPOは奥が深く、証券会社や監査法人の指導だけでは上場準備がスムーズにいかない会社を上手にサポートすることができれば経営者だけでなく多くの関係者から喜ばれるとてもやり甲斐のある仕事だと思いました。IPOコンサルタントとして8年間活動しましたが、支援する会社によって苦戦している論点はバラバラでしたので、これまでの経験を用いて対応していく中で、さらにIPOに関する経験を高めることができたと思っています。
その後は、株式会社エランの取締役CFOとなり、事業会社の中でIPOプロジェクトを任されました(株式会社エラン:病院や介護施設に入院・入所している方に入院・入所生活に必要な身の回り等のレンタルサービスを行う会社)。エランではマザーズ上場(IPO)と東証一部市場変更を経験することができました。IPOと市場変更も大きな成果だと思いますが、小さいながらも上場企業の経営管理部門全般を管掌するという重責を担うことができたことはよかったです。上場企業とはいえ、さほど大きな企業規模ではありませんでしたので、経理・財務のほか、総務・人事・経営企画・IRなど事業側以外すべてが自分の管掌でした。総務や人事などは会計士としての知識や経験だけでは対応できません。特に、人事の奥深さや難しさについて身をもって知ることができ、企業は「人」が支えていると心底思えたのは、大きな財産だと思っています。
今現在は、個人で活動しています。ハードワークが続いていましたので、今は充電期間と位置づけ、勉強や遊びなど仕事以外の時間を優先することにしています。複数の会社の社外役員を務めているほか、たまにという頻度ですが、上場会社や上場準備会社への経営指導的な業務を行っています。ベンチャー企業数社への投資も行っています。
また、ベンチャー経営者へのアドバイス・壁打ち相手のようなことや、個人(CFO仲間、会計士の知人や後輩・若手)からのキャリア相談への対応などにも時間を使うようにしています。この手の活動はお仕事としてではなく(無報酬)、どちらかというとボランティアもしくは趣味のような位置づけです。自分の経験(IPOの経験、CFOの経験、苦労話など)や人生観などの考え方、人的ネットワークなどを提供する(減るものではありませんので)ことが他の方の役に立つ(喜ばれる)のは私としても嬉しいことです。このような「他者への貢献」活動をすることは、私にとっても学びや気づきをいただけることもありますので、一生続けていきたいと思っています。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

様々な立場で株式上場(IPO)に携わってきたことです。IPOの審査項目は、企業経営全般というとても広い領域です。それを、監査法人、証券会社、支援コンサル、社外役員と様々な立場でやってきた方はこの業界にもほとんどいらっしゃらないのではないかと思います。それぞれの「立場」を自分で経験しているからこそ、わかることがありますし、その時々にお世話になったネットワーク(というか友人知人ですが)もありますのでこのあたりを必要とする会社や経営者もしくは後輩会計士などがおられれば提供していきたいと思っています。
それと、エランにおけるCFO経験においては、IPOという事象もですがその後(アフターIPO)もそこそこ誇れることかなと思っています。私が責任者を務めていた3年間、公表した業績予想はすべて達成、法定開示書類や適時開示書類について訂正報告書の類は一つも出しませんでした(当り前と思う方もいるかもしれませんが簡単ではありません)。もちろん、業績面については私個人の手柄ではありませんし、開示についても優秀な部下がいたお陰ではありますが、どのような数字を公表するか、何をどう開示するかについて多くの判断や検討を自ら行った結果ですのでここでお伝えさせていただきました。

渡邉 淳さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

大きく印象に残っている瞬間としては、エランのマザーズ上場日です。2014年11月のことですが、2011年秋に株式上場(IPO)プロジェクトを立ち上げた時に計画していたのが約3年後の2014年9月の上場でした。当初はコンサルとして支援し、途中からはCFOとしてIPOプロジェクトの責任者として活動しました。約3年間のプロジェクトでしたが順風満帆ではなくいくつものピンチを乗り越えて迎えた上場日でしたので、上場日当日を迎えた時に「あぁよかった」と胸をなでおろしたこと、エランの櫻井社長と「なんとかお約束を果たせました」と話したことを覚えています。IPO準備は、ちょっとしたことでも上場延期や断念になることをこれまでの経験で怖いほど見てきましたので、一つずつ丁寧に論点に向き合い続けた結果、予定より2か月ずれてしまいましたがほぼ当初計画どおりに実現することができました。これは私自身にとっても大きな自信にもなりました。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

迷ったということでは、エランへの転職です。同社の櫻井社長からいただいたお話でしたが、とても難しい決断でした。
株式上場(IPO)コンサルタントという職業は奥が深く、大きなやり甲斐がある仕事でした。仕事内容にも不満はなく、職場環境としても良かったのでそれまでの事業会社からのお誘いなどは全てお断りをしていました。事業会社に転職をするということは、それまでコツコツ築き上げてきたIPO業界における人脈や業界からの信頼のようなものを捨てることになるのではないか、それはあまりに勿体ないのではないかと思っていました。とはいうものの、外部からではなく、会社の中からIPOを経験することや事業会社の経営サイドの仕事に対する関心が全く無かったわけではありませんでした。エランは、事業内容に大きな社会性があり(これからの高齢化社会に不可欠なサービスとなっていく)、成長性もありました。また、櫻井社長の性格や考え方、櫻井社長が集めたメンバーも魅力的でした。転職することを全く考えていなかったという状況でしたが、エランであれば行ってみたいという気持ちもあり、この時ばかりは思いっきり迷いました。
しばらく決断できずにいたのですが、櫻井社長からのあるひと言で決断をしました。「エランに飛び込むことが渡邉さんにとって正解かどうかは私もわからないよ。ただ、来てくれればぜったいに楽しくなるから」と。「ぜったい楽しくなる」を信じて飛び込んでみることしました。飛び込んでみた結果、ピンチの連続でもの凄く大変な目に逢いましたが(笑)、楽しくなるというのも本当でした。
なお、転職前に迷い心配していたことには続きがあります。その後、監査法人勤務、証券会社勤務、IPOコンサルタントをやっていたときの交友関係は懸念したほどには失われませんでした。転職をきっかけに関係が途絶えてしまった方も沢山いるのですが、勤務先や仕事内容などがいくら変化しても、そのままよい関係を続けてくださる友人知人もたくさんおり、それも私の大きな財産だと考えています。

07

人生の目的と公認会計士という資格

公認会計士になっていなければ、私の人生は全く別の人生になっていましたので、この資格には本当に感謝しています。エンジニア職を辞めて、全く別の進路へのキャリアチェンジをするためには難関資格への挑戦がよいのではないかと思い、難関資格の中から選んだのが公認会計士資格でした。
公認会計士資格は、チャンスを広げてくれるという点においてとても優れた資格だと思います。監査法人に入れば、すぐに上場企業の管理職レベルと仕事をする機会が得られますし、その他の職場においても資格をお持ちでない方よりも高いレベルの仕事を任せられると思います。どの資格も同じことだとは思いますが、資格を持つだけで何かを成し遂げることはできませんが、その後の人生を生き抜くための発射台にはなってくれると思います。
また、公認会計士同士のネットワークもこの資格の魅力といえると思います。会計士は、監査法人だけでなく様々なフィールドで活躍しています。私の周りにも様々な進路に進んだ友人知人がおり、皆さん大活躍されています。各々得意分野が異なりますので、私も困った時に助けてもらったり、良い刺激をいただいたりすることができ、会計士になってよかったと思います。

渡邉 淳さん

08

これから成し遂げたい事、将来の夢

会計士になったあたりから、「豊かな人生」を送るというテーマを軸にずっと生きてきました。そのためには経済力も必要ですが、健康や家族友人等との人間関係、自由な時間の確保などをバランスよく身に着けていく必要があり、いまだに模索中です。
前職エランを離れた直後には、四国に行ってお遍路巡りをやってきました。車での移動ですが88カ所の霊場(お寺)をまわってきました。お遍路巡りをやるのは定年後のリタイア世代の方がほとんどのため、40台半ばの私がやるのは場違いな感じでしたが、道中で出会ったシニアの方との会話などからこれからの人生のヒントを色々いただきました。ある方から「ワインを学ぶと人生が豊かになる」と聞き、ワインの勉強もしました(ワインエキスパートという資格を取得)。また、昨年は、自分に決定的に欠けていた教養全般やアカデミアでの最先端の研究テーマを学ぶため、東京大学EMPという社会人向けプログラムを受講しました。
向上心を持ち続けていたいので満足はしないことにしていますが、少しずつ「豊かな人生」に近づけているのかなとも思います。将来の夢をはっきり描けてはいないのですが、自分だけではなく周囲の方を喜ばせる、幸せにするようなことができたらよいなと思っています。

渡邉 淳さん

09

キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

時代も変わってきていますし、私のキャリアは特殊ですので再現性もないと思いますが、「考え方」をお伝えすることで何かお役に立てればと思います。

キャリアを決めるのはとにかく自分

同僚(先輩や同期など)の様子を探ったり、人材紹介会社からの話を鵜呑みにしたりと主体性なくキャリアを考えている方もおられるようです。あなたのキャリア選択の失敗の責任を取ってくれる人は誰もいません。有益な情報が何もしないで届くわけもありません。もし誰かに相談するのであれば、適切な相手(ポジショントークをしない人でかつ成功している人)を選ぶ必要があります。ご自身でベストと思われる判断をし、あとはその決めたことに邁進するだけだと思います。

しっかり目の前の仕事をする、手を抜かない、焦らない

短い勤務経験なのに「今の職場で学ぶことは何もなくなった」、「今の仕事を続けることはマイナス」というようなお話をされる方がいますが、わずか数年間でそのような状況になるわけはなく、まだまだ身につけられることがあるのにそれに気づいていない残念な発言に聞こえます。しっかり仕事をしていればそこでの評価や人間関係は転職をしたとしても何かしらの形で残りますが、雑な仕事をしている人は転職をする都度、評価や人間関係がリセットされていきます(良い評判がその後も残るのが理想ですが、悪評だけが残っている方もおられます)。

プラス思考・自責思考

成功者はとにかくプラス思考です。上手くいかなくても失敗ではなく、学びと受け止めます。私も若い頃はかなりのマイナス思考派でしたが、プラス思考に切り替えてから人生がかなり好転しました。今は、思った通りにならないことがあっても、なかば強引に「きっとこれでよかったんだろう」と片づける癖がついています。また、他人のせいにすることをやめ、上手くいかないときは全て自分が悪かったと思うようにしています(上手くいったときは他人のお陰と感謝します)。

学び続ける、読書(多読)をする

会計士としての専門性を高める学習ももちろん必要ですが、私はそれ以外の学びのほうが大切なのではないかと思っています。
学ぶ方法はいろいろありますが、特に読書は有効です。どんなテーマでも、深く学びたいことがあればそのジャンルの書籍を5冊くらい一気に流し読みすると、全員が言っていること(=本質・まず外さない主張)と特定の人だけが言っていること(=各論・偏った主張)を短期間で俯瞰できます。どの時代でも引き出しが多い人、新しい知識や情報を持っている人が求められますので、学び続ける必要があります。

オリジナリティを磨く、「平均」・「平凡」・「普通」から外れる

多数の方が進む人気の進路というのがあったとしても、それが本当によいのかを考えるべきです。同じようなスキルや経験がある会計士が沢山いるとなった場合、たとえば、採用をする側の目線に立つと、そのような人材はいつでも採れる面白くない会計士ということになります。ウリになる個性や特徴をまずは一つ、その後は複数身に着けていくことを意識するとよいと思います。ユニークな人材は代わりがいませんので覚えてもらえます。私も、「高専出身(元エンジニア)」、「IPO審査する側の経験がある」、「株式上場(IPO)コンサルとしても経験実績豊富」、「CFOとしてIPOを経験(東証一部も)」、「社外役員としてIPOを経験」、「ワイン好き(エキスパート資格保有)」、「東京大学EMP修了」などの特徴?のお陰で面白い存在として見ていただけています。皆がやることが正解とは限らず、誰もやらないことをやったほうがよい時もあると思います。

最後までお読みいただきどうも有難うございました。