
会計事務所Backbone
所長
浦 隆行
うら たかゆき
会計事務所勤務の経験を生かして独立開業。経営者心理を理解してクライアントにとって最適な助言を心がける
1982年3月15日生まれ(44歳) 石川県出身 愛知県在住
石川県立羽咋工業高等学校 卒業

01
キャリアサマリー
自動車メーカーの機械保全課にて生産機械のメンテナンス業務に従事。
同社退職 公認会計士試験勉強を開始。
名古屋市中区丸の内の会計事務所 野田公認会計士事務所に入所。 (同事務所連携監査法人である監査法人A&Aパートナーズにて非常勤として監査業務に従事)
会計事務所Backbone設立し独立開業。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
高校を卒業し、そのまま自動車メーカーの現場に就職した。業務的には生産機械のメンテナンス業務だが、基本的には同じことの繰り返しで、最初は覚えることがありおもしろいが、そのうち一定のことができるようになると飽きが来る。飽きが来ると自分の人生がこのままで本当にいいのかという不安を感じるようになり、漠然となにか別のことをしたいと思うようになった。しかし、そもそも学歴のない私が製造業現場以外の転職など難しいと思い、単純に資格を取ろうと思ったのだ。司法試験は高卒の場合は一次試験(一般教育科目、外国語)からで、工業高校で授業中はマンガを読み、あとは部活しかしていなかった私には無理難題としか言いようがない。そのころ流行っていた村上龍氏の『13歳のハローワーク』で初めて公認会計士という資格を知った。なんと高卒でも本試験から受けることができること、そして、なんとなくカッコいいという不純な動機で受験を決意した。
試験勉強を開始し何度も後悔した。試験勉強というものをしたことがない私にとってはまさに地獄だったからだ。蓄えの貯金が生活費で底をつきそうになり、親戚にも助けてもらいながら、何とか受験までこぎつけた。しかし試験合格発表当日も合格できると思っておらず、某宅配業者のアルバイトで荷物を配達していたところ、配達中に電話が鳴り専門学校講師より「合格しているぞ」という連絡がきた。その日にアルバイト先に退職を願い出て就職活動を開始したが、監査業務自体に特段興味が無かったことや、大手監査法人の面接を受けたが採用していただけなかったこともあり、会計事務所に就職することにした。
会計事務所では税務業務を日常的に行いながら、連携監査法人で上場企業の監査業務に従事させてもらった。しかし監査業務も税務業務も4~5年くらいすれば、また飽きが来てしまった。それでも既にもういい大人だったので、経済的なこともありそのまま続けていたが、最終的に自分の思う通りにやりたいと思い、独立開業を決めた。
今考えると、深く考えずに選択してきたキャリアだったがそれがうまく繋がってきたのだと思う。「よく独立を決めたね」と言われることがあるが、私としてはそんなに重い決断をしたという認識はない。大事なことは、なんとなくでも自分がそうしたいと思った時にそのように動いて、それをやりきることだと思っている。ここまで来られたのは当然自分自身の力だけではなく、周りの方々の助けがあったからだということは間違いない。そういった助けを得られたのは、与えられた仕事を誠実に遂行してきたからだったと思う。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
現在は会計事務所を独立開業し、所長として働いている。といっても従業員はいないので、フリーランスである。税務顧問は数件だが、基本的にクラウド会計専門の税務顧問で、税務書類作成、税務代理申告などの従前のサービスを提供している。そのほか税務セカンドオピニオン、金融機関借入に関するリスケジューリングや資金調達のサポートといった財務コンサルティング及び社外取締役などが現在の仕事内容である。
税務顧問業務については今までやってきたことなので問題なくこなせるが、AIやフィンテックといった技術により、書類作成、代理申告といった業務は今後、価値は下がっていくことが明らかである。したがって基本的には低単価で大量にこなす体制の構築が必要であると考えている。しかし、税務顧問業務はクライアントとの接点がとても深く、重要な仕事だと認識している。これほど会社の重要情報である財務情報を詳細まで把握させていただける仕事が他にあるだろうか。また会社代表者にこれほど簡単にアクセスできる仕事があるだろうか。それにも関わらず、会計事務所は本当の意味において経営者にとって有用なサービスをほとんど提供できていないというのが現状であると思う。理由としては書類作成や税務代理に多くの時間が割かれているからだろう。こういった現状を変えることができる技術がどんどん出てきているので、これからの会計事務所業務は大きく変わっていくはずである。
財務コンサルティングや社外取締役については、今までやってきたことのない仕事で不安も多いが、新鮮でやりがいもあり、公認会計士として行ってきた様々な業務が基盤となっていることを感じることができる。中小企業においては会社代表者である社長が営業、人事、労務、財務といったことをほとんど一人で行っており、こういった業務に対して主体的に当事者として関係していくことが会計事務所の本来の役割ではないかと思う。
04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
私は公認会計士試験に合格した当初から、会計事務所で税務業務に携わる傍ら、監査法人で東証1部上場会社の監査業務やIPO準備会社のサポートといった業務に携わることができるという特殊な環境で働くことができた。そのため、様々な段階の会社の状況を見ることができ、オーナー経営者ともコミュニケーションをとって仕事をするといった経験も多く積むことができた。日本の企業のほとんどは中小企業であり、そこにはオーナー経営者が数多く存在しているはずである。正論だけでは経営などできないし、泥臭いことをやっていかないといけない。それを理解してあげて最も適切な対応をするということが出来なければ、クライアントの満足は得られない。独立して従業員という立場ではなくなり、よりそういった認識が強くなった。正論を言うだけではなく、そういった対応をできる会計事務所が必要であり、そういった会計事務所を目指していく。
また経営者が目指す方向や状況に沿った助言をすることを心がけている。IPOを目指さないのであれば、過度な内部統制構築や企業会計基準の厳密な適用も必要ではないし、重要なステークホルダーは金融機関になり、節税や事業承継のための株式移転も重要な要素になってくる。こういったバランスを考えた決算の組み方など、アドバイスに心がけることができるのも私がそういった環境で働くことができたからであると思う。
性格的にはこうでなければならないといった固定観念や執着といったことがほとんどない。こういった性格なので、AIにより会計事務所の仕事がなくなると言われても、その方が良いのではないかとさえ思ってしまう。大事なのはクライアントである経営者の煩わしさが無くなることであり、会計税務業務を必ずしも私たちが行う必要はないと思う。会計事務所の業務はそれこそ何十年とそれほど大きく変わっていないと思う。従前の会計記帳や書類作成、税務代理申告といった業務はなくなり、本来私たちが行うべき仕事を考えるべきときが来たのだと思う。

05
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
性格的にそれほど感動するタイプではなく、またそれほど人と深く関わってこなかったのでそういった場面は少ないが、オーナー経営者と仕事をしているとその人の人生が見えることがある。家族への思いだったり、多くの悩みだったり。志半ばにご病気で亡くなられた方もいらっしゃった。そういったときにいつも、もっと自分は何か出来たのではないのか、もっといろいろとしてあげられることがあるのではないかと思うことがある。頭の中ではあれこれと考えるのだが、日頃の業務の忙しさを理由に実行できていないのが現状である。
そんな中でも仕事を続けていれば、経営者に「ありがとう」と言われることもあった。経営者は常に様々なプレッシャーにさらされており、相談できる相手も多くなく、最終的な判断と責任は自分である。そういった方々の何かの役に立てたと思える瞬間はやはりうれしいと思った。例えば資金繰りに苦しんでいる会社では新たな資金調達や借入金のリスケジューリングに成功すれば、それだけでも経営者は別の事に頭を使えるようになり、生き生きとすることがある。自分の役割はそういったことであるのだと思う。
06
公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
当初より会計事務所での勤務ということで、公認会計士の本来の業務である会計監査について、それほど深く関わっていないため、これについて悩んだことはない。ただ、士業が国家資格認定を受けていることが前提である以上、職業倫理的な問題によりクライアントに対してクライアントが望むサービス提供を必ずしも行えない場合がある。例えば、経営者が望む取引や会計処理税務処理が会計基準や法人税法などに反する場合はこれを指摘し指導しなければならない。場合によってはこれがクライアントの不満となる場合がある。すなわちクライアントの思うサービスと私たちの実際のサービス提供の間にギャップが生じることがしばしばある。特に会計監査業務においては第三者的立場からの投資者保護を目的としておりながら監査対象会社から報酬を得るというシステムであり、ギャップは大きいと思う。
こういったギャップを解決するためには、経営者とのコミュニケーションと専門的知識の十分さが必要であると考える。会計基準にしても税法にしても解釈の余地が残されている部分が多く、経営者がどういった意図を持っているのかを見極めたうえで、会計基準または税法の趣旨に照らし合わせてみると問題がないと判断できる部分も多いと思う。こういった努力を行わずに保身だけを考えるのであれば、クライアントとのギャップはいつまで経っても埋まらないだろうと思う。最も重要なことはクライアントから信頼されて、一緒に考えてあげられることだと思う。
07
人生の目的と公認会計士という資格
公認会計士には信念があってなりたいと思ったわけではないが、今は選んで良かったと本当に思っている。この資格があるから、比較的若い時期でもたくさんの経営者とお会いすることができたし、その方々の悩みの相談を受けることができる。そこから学ぶことはとても大きかったと思う。また公認会計士であることで信頼していただき、お仕事を頂けることもある。そういった意味では公認会計士は“入口”としてはとても有用であると思う。ただし、そこからは「あなたは何ができるのですか」といったことが問われる。それは専門的知識の豊富さかもしれないし、さまざまな経験かもしれない。
AIが発展していくと、「あなたは何ができるのですか」という問いはさらに重要な意味を持ってくるはずである。資格にこだわるのではなく、クライアントが、あるいは世の中が私に対して何を求めているのか、本質的なところを考えていかなければいけないと思う。
私自身は世界を変えるような発想も実行力もないが、これを可能とする起業家はいるはずである。また、自身の人生の目的を事業という形で達成しようとしている人もいる。こういった方々をサポートしていくのが今の私の役割であると思っている。そう思うのは公認会計士という資格で仕事をしてきた結果かもしれない。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
独立開業をしたことで、少しは経営者の気持ちが分かるようにはなったと思うが、まだまだフリーランスであり、従業員の雇用や投資などがあるわけでもなく、どこか公認会計士という資格に頼って安心している部分もある。リスクを負って初めて経営者の気持ちが分かるのだと思う。そういう状況になって、初めて経営者からの相談を受けることができるようになるはずであり、そこを目指していきたい。
顧客基盤が無ければ自分がやりたいと思うサービスの提供先もないので、まずは自分の会計事務所を拡大していきたい。その中で色々な方々と出会い、私がサポートすることでその方々の夢が叶えられていければ、とてもうれしいだろうと思う。
会計事務所業界は様々な外部要因によって今が転換点にあるのだと思うので、本質的に「会計事務所は何ができるのか」を考え、これを実行できる組織を作ることが今の目標である。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
監査法人での勤務は公認会計士という資格を取る以上、一度は経験しておくべきだとは思う。私は非常勤での勤務ではあったが、その経験が今も生かされていることは間違いない。また監査法人がどういった考え方をするのかも上場準備会社をクライアントにする場合には役に立つと思う。
監査業務中は自らの業務遂行で手一杯になってしまい、会社がどういった事業を行っているのか、どういうところが強みなのか、どういった課題を抱えているのかなど、監査に直接的には関係がないことを深く考える暇がないと思うが、そういった観点で会社を見ることが後のキャリアに繋がると思う。
ただし、会計事務所独立開業を考えるのであれば、それほど長く監査法人にいる必要はないと思う。会計事務所のクライアントのほとんどは未上場のオーナー企業であり、経営者の主観点は会計基準に沿った会計ではなく、税務戦略と金融機関対応であり、これは監査法人では基本的に学べることは多くないからである。また監査法人のリスク管理などの勘所と会計事務所の勘所には差があるため、会計事務所のこの肌感覚を早めに身に着けておくべきであると思う。
監査法人の場合はその仕組み上、クライアントとの距離が遠くなり、クライアントのために仕事をしているという感覚も得られにくいと思う。この点、会計事務所においてはクライアントとは密接であり、クライアントのために仕事をしているという実感を得られはずである。そういった監査法人での悩みを抱えている方であれば、会計事務所をお勧めする。


