
管理会計ラボ株式会社
代表取締役
梅澤 真由美
うめざわ まゆみ
みずからの管理会計実務の経験を活かし、管理会計を活かせる日本の会社を増やす
1970年代生まれ 静岡県出身 東京都在住
京都大学大学院 農学研究科 卒業 2002年合格

01
キャリアサマリー
公認会計士試験合格。監査法人トーマツ東京事務所入所。 4年間国内監査を経験。
日本マクドナルド株式会社入社。 5年間で内部監査、JSOX、経理、予算管理など経営管理業務を幅広く経験。
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社入社。 5年間、アジア小売部門のファイナンス(経営企画)マネージャーとして上海進出などリード。
ボンド大学ビジネススクール修了(MBA)
管理会計ラボ株式会社設立、代表取締役就任。現在に至る。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
4年間国内監査部門に所属しました。
IPOを含む小規模企業から大企業までさまざまなクライアントを担当することができました。当時は女性が少なかったため、服飾関係など多店舗展開小売業にアサインしていただくことが多かったです。発売前の商品を見せてもらったり、事務所勤務の日は「市場と競合の理解」と称して銀座を自主的に視察して回ったり(笑)。
その後勤務した事業会社2社はどちらも多店舗展開業でしたので、監査法人時代に多くの同業種の会社から学べたことは、のちに大きな強みになりました。当時は意図なく「楽しくていいな」くらいの気持ちだったのですが、何かに特化するとこういう展開も結果的にありうるのだと実感しています。というよりも、自分が無理なく興味を持てる分野に収まっていくものかもしれないですね、キャリアって。
英語での仕事や外資系企業に触れられたのも、今振り返ると大きな収穫でした。IFRS適用の外資系企業を担当するチャンスがありました。このとき、英語での仕事を初めて経験し、「外国人と一緒に仕事するのって面白い」、「英語で仕事するのってかっこいい」と、ミーハーな感想を持ちました。
また、経理の方が、自分の担当部分が終わったら周りを手伝わずにさっさと帰宅していく姿を見て、日本企業との違いにカルチャーショックを受けつつ、自由で独立している姿にあこがれました。監査を通じて、外資系企業に対してポジティブな印象を持ったのも、のちに自分が外資系企業に転職する下地になった気がします。
当時の監査法人内ではTOEICスコアアップへの報奨制度が充実していたので、お金欲しさに毎回同期と受験していました(笑)。1-2年程度続けると、スコアも伸び英語力が上がったので、のちに転職するときにこのスコアが大変役に立ちました。
このように監査法人勤務は勉強になるし楽しいし本当にいいことばかりでした。ただ、会計士「補」がとれるころ、お客さん側の視点に興味をもち、「自分で実際に手を動かしてみたい」と思うようになりました。クライアントにいろいろ助言してもなかなか動いてくれない。それはなぜなのだろう?ならば、自分が実際に中に入って自分で物事を動かしてみたいと思い、企業内会計士としての道を歩むことになりました。
当時、まだ企業内会計士はごくわずかでしたので、パートナーには「せっかく会計士になったのに」と止めていただきましたが、監査法人をやめたのを後悔したことはありません。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
企業内会計士を10年やったのちに、独立して2年が経ちます。管理会計と経理実務という、事業会社にいたからこそできる2つの分野に特化しています。逆に、王道の監査と税務は私の乏しい経験では非効率なので手を出さないと決めています。
ビジネススクールで起業を専攻していたので、学んだことを自社の経営戦略にフル活用しています。ちなみに、社名の「管理会計ラボ」は、社名を名乗っただけで専門分野が伝わるようにというマーケティング目的で付けました。公認会計士業界は、まだまだいろんなビジネスが考えられるブルーオーシャンだと感じています。
管理会計に着目したのは、「管理会計を活かせる日本の会社を増やしたい!」との思いからです。海外では管理会計の取り組みが進んでいますが、日本の企業は「会計を活用して業績を上げる」という発想も、それを支える仕組みも弱い状況です。外資系企業で働き、海外MBAを取得する中で、このことを痛感しました。日本企業のすばらしい事業力をさらに活かせるよう、そして自分の管理会計実務の経験を活かせるよう、管理会計を主軸に据えています。
当社のサービス形態は、セミナー講師、書籍や雑誌の執筆、企業内研修、コンサルティングです。2才の双子の育児と両立しやすいよう、自分自身の仕事は、時間や場所の制限が少ない形態の比重がとくに高くなるよう調整しています。コンサルティングもオンラインやメールなど対面ではない方法も多く取り入れています。
独立と一言で言っても、「分野」と「サービス形態」の掛け算の分だけ、多様です。この計算式を上手に組み立てることで、自分の状況にあった「独立」が選択肢に入れられるのは、会計士の強みだと思います。
04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
「人たらし」と「戦略家」です。
人の話を聞くのが好きで、新しい人と会うのも億劫ではないので、営業などでとても役に立ちました。たくさんの方が紹介など弊社を支援くださっているのも本当にありがたいと感じています。その分、周囲の方々のお役に立てることはないかアンテナを常に張るようにしています。
また、自社の今後の戦略についていろいろ考えるのが好きなのも、事業を行う上では大きな強みだと思います。実は、管理会計に特化すると決めたときに、「それは難しい」と助言をくれた方も多くいました。このように自分とは違う視点から助言をいただけるのも、やはり「人たらし」ゆえで、本当にありがたいですよね。それをもとに、さらに戦略を練り直し「管理会計『実務』」に振り切ったおかげで、弊社は順調に成長を続けています。今後の展開に向けてさらにいろいろ戦略を考えて実践する日々は、「リケジョ」の私には実験のようで楽しくてしょうがありません。
大事なのは、自分の強みが本当に強みであることを確認することだと感じています。似合う服と好きな服は違うように、自分が思う弱み・強みと本当の弱み・強みは、別モノです。思い込みや独りよがりにならないよう、私の場合は、「ストレングスファインダー」(海外で開発された才能診断ツール)を使って実証しています。上記二つ「人たらし(社交性)」と「戦略家(戦略性)」はもちろん含まれています。また、結果に出てきたそれ以外の強み3つも、意思決定をするときにはいつも参考にしています。

05
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
事業会社の管理職時代に、チームメンバーの家族から「梅澤さんが上司になってよかった」と言われたことですね。
残業が減って早く帰ってくるようになったこと、休暇を取ると決めた日にはちゃんと休めて家族との約束を守れるようになったことを、その家族の方がとても喜んでくださいました。同時に、ご本人の表情が明るくなったとも言ってくれました。ご本人からも同様のことをいっていただきましたが、それ以上に家族からいってもらえたことのほうが、私にはうれしかったです。
当たり前ですが、仕事は生活の一部に過ぎません。ですが、仕事が生活に与える影響は大きく、それも本人だけでなく家族にまで影響します。残業が減って、いわゆるライフワークバランスが改善したのは、業務の必要性にかられて取り組んだ結果でした。
ただ、会社としての取り組みがこれほどまでに人の幸せにつながるとは想像していなかったので、とても衝撃を受けた出来事でした。同時に、自分の専門性を活かすことで、人を幸せにすることができることに気が付きました。
これは、私にとって、自分が働く意義を見出した原体験になっています。管理職や役員という立場、そして起業は、責任は重大ですが、自分の意思決定範囲が広がるため、自分の仕事を通じてより多くの人を幸せにできる可能性が高まります。
06
公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
監査法人の新人時代は、財務諸表論や監査論の本質的理解が甘く、わからないことだらけでかなり苦労しました。
私は大学院まで理系の勉強をしていた「リケジョ」なので、会計については専門学校で1年間集中して勉強しました。なんとか試験には合格したものの知識が付け焼き刃だったので、同期が「どうやって合格したんだ?」と悪口をいいながらも、本気で心配して書籍を紹介したり説明してくれたりと世話をしてくれるほどでした。
実務や補習所を通じて2年がたったころ、ようやく人並みになった気がします。その間、前述のとおり、ビジネスの理解やコミュニケーションといった会計以外の部分で監査チームには貢献しようと心がけていました。とはいえ、会計の理解が薄いというのは会計士としてはやはり致命的なので、この点ではかなりつらい時間を過ごしました。
しかしながら、セミナー講師として会計知識が少ない方にお話しすることが多い今、自分が大変苦労した経験がとても役に立っています。会計が分からない苦しみ、とくに周囲の人が会計を分かっている中での「おいてきぼり感」は半端ないので、その気持ちに心から共感できます。また、会計が面白いと感じてもらえるように、感覚的にわかってもらえるように、日常の話や話題のビジネスの話を例に出す工夫が自然にできます。
今は講師として「わかりやすい」と好評を得ることができるのは当時悩んだ経験があるからこそで、この経験は宝だと思っています。そう思えるまでに、十年以上かかりましたが。
07
人生の目的と公認会計士という資格
会計士になったのは、「人生の保険」になるかもしれない、という打算が大きかったのが正直なところです。ですので、会計士歴16年目の今にいたるまで、会計士であることは、どちらかというと「目的」というより、「手段」といったほうが私にはしっくりきます。
また、私にとっては、「会計士」であることは、属性のひとつであり、女性であること、妻であること、母であること、リケジョであることと同じです。すべて、自分の「#タグ」のひとつにすぎない。事業会社での仕事は、会計士である必要がなかったので、ある意味「会計士ではない」10年間を過ごしたことが、考え方に影響しているのかもしれません。
自分の価値観として、「会計士であることがすべて」にはしたくないと思っています。例えば、会計士であることを理由に、非専門分野へのチャレンジをしないということは、避けたいと思っています。企業内会計士への転身もそうですし、管理会計への特化もそうですが、ときに「会計士らしくない」「会計士としては珍しい」といわれる選択をする「逆バリ」戦略を心がけています。
一方で、手段としての会計士というカードはとても絶大な効果があることを最大限活用したいとも思っています。私たちは、国が認めた「会計語の通訳」ですから、社会に大きな影響を与えることができるし、その信頼度たるや絶大です。例えば、一般に難しいとされる書籍の出版も、会計士であるおかげで私も書籍を出版して執筆で収入を得ることができています。また、お会いしたい方がいても、業界の誰かがつながっていて紹介してくれたりすることもありますし、「会計士です」と相手に名乗ると怪しいとは思われないようです(笑)。
「せっかく自分が頑張って会計士になったのだから、その元をとろう」という気持ちが、私はとても強いのだと思います。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
GNH(Gross National Happiness、国民総幸福量)と、GNP(国民総生産、Gross National Product)の両方への貢献です。
自分の仕事を通じて、たくさんの人が幸せになることと、企業の業績がよくなることの両方を達成していきたいです。私は欲張りなので、事業の成功だけでは満足できません。世の中のひとが、自分にとって大事なものを大事にしつつ、両方を追い求めることができる、そんな日本や世界をつくっていきたい。キャリアを重ねてきた今、本気でそう思っています。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
「自分と向き合う時間をとること」と、「自分のチェックリストを持つこと」ですね。
よく、「人に会っていろいろ話を聞きましょう」といいますよね。加えて、自分と向き合う時間も同じくらい大事だと私は感じています。いい話を聞いてインプットしたとしても、すべてを実行、つまりアウトプットすることはできません。そこで、どれを実行するのかを決める、そのためにどれが自分に適しているのかを考える。他人から自分に落とし込む「プロセス」をきちんと踏む時間を意識的に用意するのは大事だと思います。内部統制と同じで、インプット→プロセス→アウトプットを押さえて、「自分向上」業務プロセスを自分の中に整備し、運用するイメージです(笑)。
考えるといいましたが、イメージがわかない場合は、心が動いたことをメモするだけでもいいと思います。私は、見かけた面白いものを写真にとったり、思いついたことを音声入力したりと、“Evernote”に記録しまくっています。時間があるときに見てみると、自分が好きなことに傾向があることがわかるので、過去の自分からの「タイムカプセル」のように面白いです。とくに、旅行と読書は好きでずっと続けていますが、インプットの宝庫でもあり気分転換にもなるので、おすすめです。
「自分のチェックリスト」も役にたつと思います。例えば、忙しかったり、気持ちが落ち込んだりしたときに、改善に役立つことをリストアップしています。「5分でやる気がでることリスト」「2時間でできる気分転換リスト」「1万円のごほうびリスト」「日帰りできる行きたい場所リスト」などたくさんのリストを私は持っています。折れない自分でいることは、働くうえでもっとも大事なことだと考えており、自分で回復する手段を整理してあるのです。
チェックリストにしてあるのは、精神的または身体的に追い詰められているときは、何をしようかとゼロから考えるのも難しいと経験から学んだからです。パッと見て、リストから選ぶやり方が向いています。つまり、チェックリスト形式にすることで、属人性の排除と時間短縮が可能になります。チェックリストは、開示チェックなど監査だけではなく、いろいろな活用の仕方があるのです。
会計士試験の勉強経験や会計士としての実務経験を活かして、生活や仕事を楽しむ方が増えてくださったら、仲間としてとてもうれしいです。

