
株式会社プレースホルダ
取締役CFO
植西 祐介
うえにし ゆうすけ
小さな意思決定の中に大きな意思決定への連続がある
1985年2月23日生まれ(41歳) 埼玉県出身 東京都在住
一橋大学 商学部 卒業

01
キャリアサマリー
住友化学株式会社 入社
新日本有限責任監査法人 入社
同グループ内EYアドバイザリー株式会社へ転籍
株式会社ボストン・コンサルティング・グループ 入社
株式会社プレースホルダ 入社
新卒入社の住友化学は、私自身が派手・目立つことが好きではなく、地道に支えることや縁の下の力持ちとして役に立てる仕事を探していて、その中で日常生活や産業のあらゆる場面で使われる化学製品を作る会社を選んだというのがきっかけでした。実際に入ってみると、会社自体もそこで働く人も堅実で誠実な人が多くて期待通りの環境ではあったのですが、数年仕事をする中でどうしても物足りなさやダイナミックでない毎日の生活にジレンマ部分を感じてしまう時もありました。
そんな中、愛媛への工場転勤のタイミングが契機で、本社時代も企画・業績管理として管理会計は触れていましたが、初めて経理・財務会計を知ることとなり、その専門性や領域の深さに魅力を感じ、一念発起して公認会計士の勉強をゼロから通信教育にて開始しました。会社から帰って寮に籠って机に向かう生活を1年半続けるというかなりストイックな生活をしていたのですが、運を引き寄せる力も味方し試験にも1発合格できました。
試験合格後、新日本監査法人に転職し、メーカーを中心に国内監査業務に従事しました。国内監査を選んだ理由は、これまで化学業界しか知らなかった自分が、日本の様々な基幹産業に対して、財務会計面から理解を深めることが今後の事業会社に戻った時の大きな財産になると考えたからです。前職での実務要件も満たしていたので1年で会計士開業登録も終わり、その後に同EYグループ内のEYアドバイザリーでのコンサルティング業務を希望して転籍しました。ここでコンサルティング業務を初めて触れ、ボストン・コンサルティング・グループ(以下BCG)へ行くきっかけとなります。
BCGでは言葉では語り尽つくせないほどの経験を積みました。たった2年弱程度の短い期間ではありましたが、大局的に考えるということ、本当の意味での論理的思考を学んだこと、一人一人がプロ意識を持って徹底的にチームパフォーマンスを最大化させること、いかなる状況・いかなる立場であっても考えることを常に諦めないこと、などを教えて頂き、感謝してもし尽く尽せないくらいです。
これまでを振り返ってみると、重厚長大・伝統的な大企業での経営企画・事業管理の経験、監査法人での監査・財務経験、戦略コンサルティングファームでの各種プロジェクト経験、とハイブリッドなキャリアになりました。それぞれの領域では自分よりも何倍も優れた重鎮の方々がいますが、これらの視点を多面的に組み合わせて仕事を出来できる人は少なく、これを自分の強みとして今後のキャリア生活として生かしていきたいです。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
新日本監査法人では、素材メーカー・食品メーカー・外食産業・商社等のクライアントの財務監査・内部統制監査を行っていました。財務監査も好きですが、個人的に最も好きだったのは、内部統制監査で工場や営業所に往査してのヒアリング・ウォークスルー業務でした。前職時代に工場勤務していたこともあり、元々現場プロセスを重視する人間だったことと、会社から遠くなりがちな監査人が、会社経営を最も直に感じられる瞬間を味わえたからです。
失礼な話を承知で言いますが、そもそも新日本は3年で辞めようと考えて入所しました。私の元々のキャリアの始まりは事業会社であり、事業がダイナミックに動いていく流れの中心に常にいたいという情熱は変わっていなかったのですが、死に物狂いで掴んだ会計士試験合格というチャンスを生かして、会計士たる貴重な経験を得ないと絶対勿体ないなと思い、どの会社でも良いので上場企業の一連の財務・監査を理解することと、監査人としてインチャージ経験を積みたいと考えていました。
監査法人の後のステージも入所時に明確に決めていて、コンサルティングファームか事業会社の経営企画に入ろうと思っていました。結果、EYアドバイザリーに転籍しBCGに転職しコンサルティングの道に進むのですが、事業会社にそのまま戻らなかった理由としては、監査ではそれを通じて経営を知るということまでできますが、動かす・サポートするという経験まではできないので、事業会社に戻る前にもっとトップ目線での経営を知る業種・会社に行きたいと思ったからでした。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
現在は、プレースホルダというデジタル知育テーマパークを展開する会社のCFOとしての役割を担っています。弊社はまだアーリー~ミドルステージの会社ですし、私が入社した時期もシード~アーリーくらいの若いステージの時でしたので、CFOといいつつFinanceとしての役割は2~3割程度です。実際には、コーポレート業務全般を担当しており、経営企画・法務・財務経理・人事労務・SCM・知財・総務などの全領域で実務も含めて行っている一方、事業開発/営業/交渉担当としてフロントに出る場面などもあります。
ステージの若いベンチャー企業によくあるのですが、非常に多面的な視野と能力が求められる会社かなと思います。右脳と左脳の使い分けと、意思決定の迅速さと丁寧なリスク把握力のバランス、を常に意識して仕事しています。個人的には、こういうステージのCFOかCOOというのは、ボードメンバーの能力/得意分野のバランスの中で自分の立ち位置を決める必要があると思っており、弊社の現状においては、中長期的なリスクを評価していく人・しっかりと論理的に考えを巡らせる人・意思決定を早くクリアに行う人・想いやビジョンをもう一段形に変えていける人、が必要と感じており、それを自身が埋めようと立ち位置を決めています。
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あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
スキル・経験という意味では、大企業での経営企画・事業管理の経験、監査法人での監査・財務経験、戦略コンサルティングファームでの経験、のハイブリッドということになりますが、強みなのかは分かりませんが、常に意識しているのは「小さなことでも常に頭を回すことを忘れず、脳みそが溶けるほど考える」ことだと思っています。
経営サイドとして職務をしているとどうしても些細なことは放任したりしがちですが、私の場合は、むしろ小さな意思決定の中に大きな意思決定への連続があると信じています。細部に神は宿ると言いますが、意思決定量としては小さなものの方が圧倒的に数が多くケースバリュエーションも多く、それを一つ一つ丁寧に考えを巡らせロジックを通し、時には超速で意思決定をする、ということを繰り返していけば必然と質の高い決断が日常場面でもでき、その延長線上にあるより大きな決断を小さな決断と同じ判断軸でできるようになるということです。
なのでメンバーから小さな相談を受けるときなども、できるだけ一緒に考えることを放棄せず、その思考過程を伝え・見える化することで将来的な質の向上を意識しています。コーポレート部門のチームメンバーは私の議論に付き合わされることも多いので慣れていないと結構大変だとは思います(笑)。

05
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
価値観自体が大きく動いたという経験は最近は少ないですが、現在の仕事で言うと、テーマパークという大きなモノづくりをしていて、そこにでき上がったものに対して実際に家族が楽しんでくれている姿を店舗で見られるだけでも純粋に嬉しいと感じます。今の会社で働く理由の一つに、自分の子どもも含めて子ども達に何かきっかけとなるものを一つでも多く与えたいという思いがあります。ですので、それが多少のインパクトを与えられれば素晴らしいことだと思って毎日仕事に取り組んでいます。会計士の仕事をしている時はエンドユーザーまで考えることは少ないので、今はそのシンプルな喜びを肌で感じられることには日々感謝しています。
06
公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
クライアントとの距離の遠さが一番の悩みでした。私自身が本来は現場重視の人間なので、監査を行っているときは財務数値だけを見て正しいか正しくないかの意見を言うこと自体、会社のためになっているのだろうかと深く悩んでいました。専門性の高い仕事をしていることには誇りを持って業務遂行していましたが、財務経理部門とのコミュニケーションがメインなので、会社の中でも経営現場から遠い位置にいる部署の人たちと話していて、更にその裏にいる監査人はどれだけ離れているのかという遠さにジレンマを感じていました。
これ自体は監査人としての職務の性質なので構造的に克服できない問題であり、私個人としても完全に克服できた訳ではありません。ただ、個人としてクライアントとコミュニケーションを取る際は、できるだけ数値結果だけではなく内部プロセス・効率化の視点を持って意見を言うようにしていました。財務数値の修正事項への意見を言うとき、数値を修正してもらうだけではなく、なぜそれが間違っていてプロセス上のどこで起こったかまでも追加ヒアリングし、それを翌期にも発生しないようにどう解決すればいいのかを議論するという部分まで昇華させようとしていました。
今、事業会社に戻ってから改めて強く感じることは、経理財務部門も会社を支える一つの重要な部門の一つであるということです。ですので、経理財務部門とのコミュニケーションを通して会計機能を強化していくことで会社の成長の一助を担うことができると再確認できたことは、監査法人時代に感じていたジレンマの解消にもつながりました。
07
人生の目的と公認会計士という資格
私自身、純粋な会計士としての経験が2~3年程度ですので偉そうなことは言えない立場ですが、会計士は素晴らしい資格だと信じています。事業会社から始まったキャリアだからこそ、会計士という資格を仕事も続けながら取るための大変な苦労もしましたし、資格取得後での選択肢の広がりも実際に痛感しました。限りある人生のリソースを、勉強というたった一つの目的に費やす経験も、一生に1度もない人が大半ですし、それ自体が素晴らしいことだと思います。
そういう意味で、私が感じる会計士の意味は、「現状の環境から外の世界に目を向けて自分の選択肢を広げる大切さ」、「努力をすることと成果を得ることのシンプルな対価関係の世界を知ること」でした。要は、何かを得たいならば努力をする必要があって、行動と努力をすれば得られるけれども、何もしないならば何も得られない、ということを教えてくれました。さらに加えるならば、専門性を高めることの楽しさを知ったことも大切なインサイトで、ある領域に突き詰めた時に初めて得られる独特の感覚や景色があるのだとも感じました。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
まず現時点では、今の会社を成長させ、より多くの子ども達に新しい体験を得られる機会を提供することで、20~30年後の仕事や社会の在り方を変えるための手助けをしたいです。それと、会社のメンバーが自信・誇りを持って働けるような制度や環境作りをしていきたいと思っています。
また、より長期的な視点で考えると、コーポレート業務や部門の在り方自体にイノベーションを起こすための行動をしていきたいです。ホワイトカラーの仕事はパフォーマンスに対して給与が高いというギャップは昔から存在しますが、この構造自体が今は破壊されつつあるなと感じます。経理や人事労務領域では急速にAI/ロボティクスが進んでおり、一つの領域での中途半端な専門性では通用しない世界になっています。そうすると個人個人のソリューションとしては、①圧倒的専門性を磨くか、②専門性を一部持ちつつも領域を圧倒的に広げるか、の二択だと感じます。
個人的には、②の方が進むべき方向性としてはやりやすいと感じており、なぜなら、大体の管理業務の仕事はベースとなる思考法や意識を横展開すればある程度のパフォーマンスを出せるからです。例えば、事業企画としてビジネススキームの枠組みを進める時と、購買/SCM担当として仕入先交渉をする場面は原則的には似通っており、経済性/価格ロジックや心理的交渉術を用いて検討するというスキル・思考法は共通で、単に部署や立場が違うだけです。人事労務として評価制度を作る時と、経営企画として予算計画を作る時も、大元を辿ればミッション・コアバリューを理解して、それを制度に落とし込むか事業計画に落としむかの違いしかなく、目的や大上段からトップダウンで考える力があればどちらもできます。
こういった発揮の仕方は、私自身は様々な立場、部署での経験があるから多少実現できている話なのですが、個人個人が経験をしないと実現できないということでもないので、組織ノウハウとして意識的に作り出せる仕掛け・仕組み作りを今後していく必要性があると感じています。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
純粋な会計士経験も少ないので偉そうなことは言えませんが…。
会計士の仕事柄の“あるある“かも知れませんが、複数クライアントを担当に持つことも多いので、何か特定の製品やサービスのファンになるという傾向になりにくいような気がします。つまり、キャリア選定方法としても、職務内容やポジションベースで考えることが多く、「FASやM&Aをやりたい」「CFOになりたい」「監査法人に残ってパートナーになりたい」「独立したい」というような考え方が主流ではないかと思います。
ただ、私としては今後の会計士のバリューを高めていくためには、会社自体や製品・サービスを好きになることが大切だと思っています。会計士は転職市場でそれなりに価値もありますし、仕事に困ることが少ない分、逆に一つの会社にコミットメントする必然性が構造的に小さくなります。ただ、好きな会社に思いっきりコミットメントした時にだけ得られる特別な新しい世界や視野があるというのは事業会社の経験から感じることですし、それ自体が好循環を生み出し、次のキャリアをさらに高めるきっかけになると思います。
思い切って外の世界に出てみるのは大切なことなので、キャリアプランも大事ですが自分の好きなもの・夢中になれるもの探しも、次のステージ選びの軸の一つとして考えてみて良いかと思います。


