
株式会社ファーストリテイリング
社長室 グループ執行役員
内田 博之
うちだ ひろゆき
公認会計士という資格を1つのツールとしてどう活用できるかで、将来の可能性は大きく広がる
1973年10月10日生まれ(53歳) 神奈川県出身 東京都在住
明治大学商学部 卒業 1996年合格

01
キャリアサマリー
日本合同ファイナンス株式会社(現株式会社ジャフコ)入社 国内ベンチャー投資部門に配属
公認会計士2次試験合格
主計部に異動。経理業務、税務申告業務などに従事
公認会計士登録
米国子会社(カリフォルニア州パロアルト)にControllerとして異動
日本国内バイアウト(企業買収)投資部門に異動
株式会社ファーストリテイリング入社 グループ事業開発部(当時)に配属
グループ執行役員(現職)
父が株式上場のコンサルタントとして独立して仕事をしていたことから、高校生の頃に父の仕事を通じて公認会計士の仕事を漠然と知り、興味を持ったのが公認会計士を志したきっかけです。しかし、監査の仕事が具体的にどのようなものか、当時は全く理解をしていませんでした。大学は商学部を選択し、大学入学後、半年ほど経ってから2次試験の受験勉強を始めました。また、ゼミは公認会計士試験の試験委員もされた森川八洲男先生のゼミに入りましたので、大学時代は財務会計や会計士試験に関連する科目ばかり勉強していました。もう一度大学生をやり直せるのであれば、もう少し幅広く色々なことを勉強し、経験する大学生生活を送ってみたいと思います。
ただ、公認会計士の受験勉強を始めた当初から2次試験に合格して監査法人に就職することだけを考えていたわけではなく、公認会計士という資格、資格取得の過程で得られた知識で何か別にできることはないか、考えていました。
大学3年生の頃、試験科目の経営学を勉強する中で、ベンチャーキャピタルのことを知り、エクイティ資金の提供を通じてベンチャー企業の成長をサポートする、という仕事に興味を持ちました。更に、父の仕事を通じてベンチャーキャピタルの話に直に触れる機会があったり、たまたまゼミの先輩がベンチャーキャピタルに就職したりと、ベンチャーキャピタルのことを具体的に知る機会も得られ、この業界を志すことにしました。
また、当時(1990年代中頃)は第3次ベンチャーブームと言われ、ベンチャー企業が非常に注目を浴びるようになっていた時期でもあります。なお、2006年に入社して今でも籍を置くファーストリテイリングは1994年に広島証券取引所に上場しており、当時、注目されている1社でした。もっとも、当時、ファーストリテイリングで働くことになるとは全く想像もしていませんでした。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
大学を卒業後、新卒でベンチャーキャピタルのジャフコに入社しました。そのため、これまで監査法人での勤務経験はありません。
大学4年次に受験勉強の傍ら就職活動をし、就職が決まった一方で、2次試験も合格するつもりで勉強していたものの、その年は不合格でした。既に就職が決まっていたことから受験勉強をやめる事も考えましたが、大学時代に取り組んだことの成果が得られないままやめてしまうと一生後悔するだろうと思い、次の年に必ず合格するという覚悟を持って再チャレンジし、社会人1年目で合格しました。私が合格した1996年度の2次試験は合格率6.6%と合格率が低い上に監査法人への就職が厳しい年で、監査法人に就職できず一般企業に入社した同期が多くいました。その後、監査法人の採用が好転した後、一般企業に就職した知人の多くは監査法人に転職していましたが、私自身はもともと希望の仕事に就いていたこともあり、監査法人への転職は考えませんでした。
ジャフコには1996年4月から2005年末まで約10年間在籍しました。在籍期間中、ベンチャー・中堅企業への投資業務、経理業務、米国の子会社の管理業務、バイアウト(買収)投資業務と、幅広い業務を経験させて頂きました。
ジャフコでは自分の仕事は自分で作ることが当たり前で、自立したプロフェッショナルとして仕事をすることを新入社員でも求められました。そのような環境で社会人のスタートを切れたことは非常に良かったと思います。
公認会計士という資格の視点からジャフコでの仕事を振り返ると、投資先企業のデューディリジェンスや分析を行う際には財務会計、契約交渉や投資ストラクチャーの立案などでは会社法の知識が大いに役立ちました。経理業務では、監査を受ける立場でしたが、監査対応を通じて監査業務を会計士がどのように進めていくのか、ある程度理解することができました。
また、海外子会社の管理業務については1年だけであったものの、1つの法人全体を管理することで、全体を俯瞰し本来あるべき姿とのギャップ(課題)を発見し、それを解決していくという仕事の仕方、ものの見方を身につけることができました。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
ユニクロ、ジーユー、セオリーなどのアパレルブランドを展開するファーストリテイリングには2006年1月に入社し、約14年在籍しています。現在、弊社は売上2兆2905億円、事業利益2651億円(2019年8月期実績)、8ブランド、約3600店舗を20以上の国と地域で展開する企業に成長していますが、入社直前(2005年8月期)の売上高は3,839億円、海外展開はまだスタートしたばかりの状況でした。
転職をしたきっかけは、ジャフコで2003年から担当していたバイアウト投資の仕事を通じて感じた問題意識からです。
投資案件推進の過程で、デューディリジェンス、買収後の事業計画の作成、バリュエーション、買収ストラクチャーの立案、契約交渉など、公認会計士としての強みを生かすことができる場面が多く、非常に楽しく仕事が出来た一方で、バイアウト投資では投資先の経営にも関与することが多いものの、投資先の価値の向上に貢献することができていない、またはそれをする上でそもそも経営者としての能力が足りていないと感じるようになりました。
事業会社で買収や提携を推進した上で経営に深く関与し、それを通じて経営者としての仕事ができるようになりたいと考え、事業会社でM&Aをする道を模索しました。また、もう少し広いフィールド(海外)で仕事をしたいとの想いもありました。
当時、ファーストリテイリングは2010年に売上高1兆円を達成し、世界一のアパレル小売企業になることを目標に掲げ、その目標達成の柱の1つとしてM&Aを掲げていました。ジャフコに在籍していた当時から小売業に関心があったこと、私自身、学生の頃から服が好きだったこともあり、好きな業界、好きなものを扱い、自分の専門性を活かすことができればこれほど楽しいことはないと考えました。
ファーストリテイリングに入社した当時は事業ポートフォリオを増やすための買収案件、特に海外での買収案件を積極的に探していたため、買収先の探索、案件組成、実行が仕事の中心でした。現在は買収案件の検討、実行よりも、ユニクロをはじめとする既存事業の更なる成長や変革を目的とした出資等を伴う戦略的提携、進出国の事業展開で協力して頂けるような有力者との関係構築などを中心とし、様々なプロジェクトの推進を責任者として担っています。
なお、弊社はアパレル小売業ですが、服の素材開発、デザイン、生産、物流、店舗運営、オンライン販売など業務は多岐にわたり、お付き合いする会社も様々です。パートナーシップの組成も様々な分野の企業と行っています。また、進出先も20の国と地域を超え、プロジェクトは日本国内に限りません。推進するプロジェクトはどれも同じものはなく、過去の経験を活かしつつも毎回知らないことを学び、新しいチャレンジをする必要があります。
04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
私の強みは、仕事や自分自身を客観視しながら、あるべき姿を考え、その実現に向けた道筋をつけること、また、それを実現まで持っていく実行力です。
常に、「どうあるべきか?それをいつまでに実現するか?」を考え、そこから逆算して物事を進めています。また、それをする上で大切なのは、最後までやりきることです。買収案件は大小含めかなりの数がありますが、最終的に実現するものはごく僅かです。このように言うと、仕事の成果を出す場面は非常に限られるように見えますが、「やらない」という判断をすることも成果として考えています。1つ1つの機会について、丁寧に最終結論を出すまでやりきることを意識して仕事をしています。

05
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
プロジェクト推進の仕事をしていると、最終的にそのプロジェクトが成約すること、買収であれば実行できる買収案件を成約まで持っていくことが仕事の成果と考えるのが普通だと思います。
ファーストリテイリングに入社した当時、積極的に様々な買収案件の検討をしていたものの、一方で成約に至る案件はそれほど多くはなく、なかなか成果を出せていないと考えていました。
ある時、社内研修の場で「成果を出す」というテーマで議論をしていた際、この点を悩みとして話をしたところ、弊社社長の柳井から、「やらないという結論を出すことも成果じゃないですか」と指摘され、はっとさせられました。
上記4にも書きましたが、何か形にすることばかりが成果なのではなく、最後までやりきった上で正しい判断をすることが、仕事で成果を出す上で重要であることに気がつきました。
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公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
冒頭にある通り、もともと監査業務に従事したいという強い思いで公認会計士を志したわけではありませんが、監査経験が無いまま公認会計士と名乗ることに対する悩みはありました。また、3次試験の受験勉強では監査実務を知らないことで相当苦労し、やはり監査実務を一度経験すべきではないか、と考えたこともありました。
しかし、自分が仕事としてやりたいことは何か、それをやる上で監査業務を経験することが必然か?と考えると、それはそうではないなとの結論に至り、その後はこの点で悩むことは無くなりました。
07
人生の目的と公認会計士という資格
人生をかけて、どのような使命や志を達成するのか、ということが仕事をしていくうえで重要と思っています。これまで、ジャフコ、ファーストリテイリングという異なる業種の2社で仕事をしてきていますが、根底の部分では会計やファイナンスの知識、経験を活かし、自分が所属する会社の成長に貢献したい、更にはそれを通じて社会に役に立たちたい、という想いを持って仕事をしてきています。
直接、公認会計士であることを表明して仕事をする場面は殆どありませんが、資格を取得、維持する過程で得られた専門知識、仕事の実践を通じて得られた経験や視点、自分自身の強みなどを活かしてどのような貢献が出来るのか?ということを自問自答しながら、一プロフェッショナルとして仕事をしていきたいと思います。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
現在担当している社内でのミッション、個別具体的な仕事を通じて成し遂げたいことはいろいろとあり、まだまだ道半ばです。40代半ばになりましたが、やりきったという感覚はまだありません。
組織に所属しながら自分自身が成し遂げたいことや将来の夢を実現するためには、自分自身が成し遂げたいことと、所属する組織のミッションやビジョンが一致していることが非常に重要だと思います。
ファーストリテイリングは、良い服を世界中のあらゆる人にお届けすることで人々の日常生活をより豊かにすることをミッションにしています。このミッションを果たすために、会社として何をしていかなければいけないのか、その中で自分自身がやるべきことは何か、ということを日頃考えて仕事をしています。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
私は、資格はその分野で必要となる最低限の専門知識水準をクリアしていることの証明に過ぎない、と考えています。一方で、その証明ができるからこそ、説明なしで入っていける領域があるのは資格を持っていることの利点だと思います。
従って、公認会計士という資格を取得すること以前に、ビジネスパーソンとして自分が何を成し遂げたいのか、それを実現するために公認会計士という資格を1つのツールとしてどのように活用できるのか、といった視点で考えると、将来の可能性は大きく広がるのではないかと思います。
弊社でも公認会計士が20名所属し、国内外問わず、また経理業務に限らず、様々なフィールドで数字を通して課題やチャンスを発見し、そこから大きな成長や業務の改善につなげていくような活躍をしています。公認会計士という資格の活かし方は、人それぞれ、無限にあると思います。

