
ユニ・チャーム株式会社
経理財務本部 連結決算グループ 連結決算グループ マネージャー
三浦 務
みうら つとむ
新興国では仕訳もコミュニケーションツールの一つ。海外で急成長を遂げる事業会社で課題解決に取り組む
1979年2月12日生まれ(47歳) 埼玉県出身 東京都在住
中央大学 商学部会計学科 卒業

01
キャリアサマリー
大学卒業後、広告業界の会社に入社し、伝票入力から経費精算や勘定明細、金商法開示、子会社決算書等の経理業務を経験。公認会計士を目指し勉強を始め、受験に専念するため、退職。公認会計士試験合格後、大手監査法人に入社し、金商法等の法定監査やIFRS監査を中心に、日用品メーカーや食品会社、IT、美容関係、不動産等、様々な会社に関与。退職後、現職であるユニ・チャーム株式会社に入社し、経理財務本部に所属、決算業務を中心にしつつ、IFRS導入やERPの導入、PMI等、様々な業務に携わっています。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
監査法人では、IPO業務に関わりたいと思い、そうした業務を中心とした部署に配属頂いたのですが、市況の兼ね合いもあり、なかなかそうした仕事に関わる機会がありませんでした。一方で、監査では、継続企業の前提の検討が必要になるような会社に複数関与する機会がありました。周囲からは、そんな企業には関わりたくない等の意見を多く聞いたものの、関わってわかったのですが、支援者がいるか、今後、業績の改善が見込めるような技術があるか等により、企業は生き続けられることを学ぶことができました。加えて、当たり前ですが、そこで働いている人もいて、その家族もいます。形式にとらわれ過ぎないことを学べたことは、恵まれたのではないかと思います。
また、縁あって、IFRS関係の仕事に関わらせて頂く機会がありました。まだ、日本電波工業さんが任意適用するかしないかという頃からでしたので、IFRSの知識を先取りすることができた面はあるかと思います。当時は、IFRSの分厚い基準書を広げていると、興味なさそうな同僚も多かったですが、IFRS適用会社が100社も超えた現在を考えると、機会を頂いた方々に感謝しています。
時々、大きな企業の監査をしている方々が、監査は同じことの繰り返しでつまらない、という理由でその後のキャリアを考える話を聞きますが、私の場合は全く異なります。私自身、監査がつまらない、と感じたことはあまりありませんし、むしろ、監査人としての立場だから、見えるものもあると思っていました。一方で、J-SOXや四半期決算導入以降、監査法人にいても、関与できる企業数が減ってきたため、見えるものが減ってきたような印象を持っていました。加えて、関与先企業の監査人交代や東日本大震災以降、仕事が減ったことにより、当時、もっといろんなことができると思っていた監査法人で、できることが減ったような印象を持ったのが1つです。もう1つが、IFRS業務です。私が関わっていたIFRS業務は、海外へのレポーティングを伴っていたので、ビジネス英語レベルで英語ができないと、できることが限られてしまうことです。もっと若かったり、独身だったら、一念発起して海外留学といった選択肢もあったのかもしれませんが、仕事をしながら海外に行く機会のある事業会社への転職を考え、日系の製造業の会社への転職を考えました。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
現在の業務としては、連結決算(制度会計)のとりまとめを中心に、グループの経理基盤整備や海外子会社を中心とする経理業務支援等を行っています。メディア等でも海外で成長している企業として取り扱われる反面、経理機能の整備が成長速度に追いつき切れておらず、また、進出している国に新興国が多いことから、新興国特有な課題対応をすることもあります。そのため、経理業務ではあるものの、ルーチン的な業務もありますが、どちらかというと、課題解決型的な業務の方が多い気がします。
メンバーにより差はありますが、私の場合、これまで、毎年3回程度、海外子会社に行く機会がありました。先進国に関してはTV会議や電話会議で解決できるケースも多い一方で、新興国に関しては実際に現地へ行く機会の方が多く、業務面だけでなく、出張先の国のことを学ぶことができるのは、新興国への進出が多いこの会社ならではと思います。母国語でない英語同士のコミュニケーションになることが多く、また、通訳の方が入る機会があっても、会計用語はうまく訳せないこともあるため、言語だけでのコミュニケーションでは意思疎通が難しい時もありますが、論点によっては、仕訳を書きながらコミュニケーションすることで意思疎通できたこともあり、会計というツールのすごさを実感したこともありました。
入社してからのキャリアパスとしては、一貫して制度会計を中心とした決算業務ですが、兼務として、IFRS導入プロジェクトに継続関与させて頂き、2017年5月にIFRS適用を達成することができました。一緒に進めて頂いた方々、喧々諤々な議論もしたアドバイザリーの方々、社内の協力者の方々の協力には、大変感謝しています。また、他に、海外買収案件に関与させて頂きました。非常に難しい案件で、体力的にも精神的にも大変なことが多かったですが、非常に得ることが大きかったと感じています。
経理業務といっても、PMI業務として、買収した子会社の本社へのレポーティング整備等もあり、これもなかなか大変でした。子会社の決算早期化等、子会社の方に必要性等の理解を得るのはなかなか難しいケースもありましたが、そこでの頑張りが時間の経過とともに信頼関係になるのは、うれしく思います。
他に、ERPの導入プロジェクトに関与させて頂きました。インターフェースが多かったこともあり、非常に難しいものでした。初めてITのアドバイザリーの方とお仕事をさせて頂いたのですが、IT・会計双方の視点から議論させて頂くことで解決できた部分もあり、体力的にも大変なプロジェクトでしたが、自分自身としても、得ることも多かったように思います。
04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
自分で意識したことはあまりありませんが、言われるのは、大きく2つです。
1つは、監査法人時代に言われたのですが、多少大変なクライアントでもやっていけるコミュニケーション能力があるという点です。1社目の会社で監査対応もやっていたせいか、資料を出し渋るクライアントの方の立場が理解しやすかったり、監査人側・クライアント側の考えの違いが理解しやすかったのかもしれません、
もう1つは、現職の会社でよく言われる、リスク感度の高さだそうです。意識していませんが、いろんな取引や事象が起きた際に、後手にならないように、事前検討をしているだけなのですが、周りからはそう見えるようです。

05
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
ユニ・チャームでは、プロジェクトものの関与もありましたが、一貫して経理業務をやっています。多くの人は、経理業務はルーチン的な業務で、あまり達成感を感じることがないと感じるかもしれません。でも、私の場合は、目に見える達成感を感じたものが2つありました。1つは、関わらせて頂いた買収案件が決まった時、もう1つは、IFRS適用が決まった時で、どちらもとても小さな記事ですが、新聞に載ったことです。
06
公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
監査法人時代に悩んだのは、言葉の壁です。IFRS業務に関わらせて頂いたので、USCPA(米国公認会計士)の方と一緒にお仕事させて頂く機会がありました。日本基準とIFRSの基準間差異は理解して成長できるのですが、リファード業務なので、ビジネス英語のレポーティングはネイティブレベルの人が担当し、関わるチャンスがありませんでした。5年・10年続けても、こうした仕事の重要部分は、自分には回ってこないなと悩んだ時期があります。監査法人を辞める理由の1つに繋がってくるのですが、監査法人の中ではその壁に乗り越えられなかったため、語学力の成長が見込めると思った、今の会社に転職しています。社会人経由で公認会計士になっているので、年齢の問題もあり、若かったら、海外留学も考えたかもしれません。
一方、ユニ・チャームに転職してからは、公認会計士だからということで求められる、会計知識や判断があります。端的に言うと、知らないことを許されない空気と言うとわかりやすいでしょうか?私だけではないと思いますが、当たったことのない論点や新規論点等、よく調べてみないとわからないことが出てきます。稀に、即答を求めてくる人もいるので、なかなか難しいところです。知識面については、開示等に携わっているのもあり、新基準へのキャッチアップ等、監査法人にいた頃と変わらず、努力は求められています。
07
人生の目的と公認会計士という資格
就職氷河期に社会に出ていることもあり、社会人として働いていくには、漠然と専門性を持つことは重要ではないかと考えていました。大手監査法人時代は、周りも公認会計士ばかりなので、重要性をあまり感じませんでしたが、今の会社で働きだしてからは、専門性を証明するものとして、公認会計士という資格を考えるようになりました。別に会計士登録をしておく必要もないですし、周りの会計士の人たちからは、会計士登録しておく必要あるの?と言われることもありました。
ただ、海外出張した際に、公認会計士と名刺に入っていることに、信頼の高さを感じたことが大きかったです。また、社内では、公認会計士と認識されているので、いろんなテクニカルな相談がやってきます。そう考えると、公認会計士であることをオープンにした方が良いという考えになり、公認会計士としての知識を持っていることを証明するため、そして、そういう立場に居続けるためにも、公認会計士の資格保持者という意識は大切にしたいと思います。
10代のころから、何か専門知識を持って、独立でも雇われでもよいので、コンサルティングのような仕事をしたいと思っていたので、その方向性をサポートしてくれているのが、公認会計士という資格ではないでしょうか?コンサルしてないという突っ込みもありそうですけど。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
ちょうど昨年度、ユニ・チャームに入社以来目標としていた、IFRS適用が達成できました。もちろん、私個人の頑張りだけではできないことなので、協力頂いた周囲の方々へ大変感謝しています。なので、惰性で働いているわけではありませんが、直近の明確な目標というのは、探しているところです。
中長期的なところでは、時々「大手企業は」と言われるのですが、私の考えている大手企業である売上1兆円以上の企業と比べると、まだまだ経理周りに足りないものがあると思うので、それを整備して行きたいと思います。その整備ができてくると、よりマネジメントに近い仕事ができるようになってくるのではないかと考えています。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
会計士受験生に対しては、まずは、どんなにつらくてもしっかり勉強して、合格する信念を持ち続けること。「仕事を辞めて、受かる保証のない国家試験に挑戦なんて無謀だ」という友達もいました。でも、それで心が折れてしまうようでは、続かないので、折れないメンタルを持つことが大切かと思います。ただ、信念だけで合格はできないので、勉強に励んでください。もちろん、勉強は長丁場なので、適度に息抜きも必要です。
キャリアを模索する会計士に対しては、どんなことができるか、よく情報収集すること。そのためにも、ネットワークをよく広げておくことが大切かと思います。監査がつまらないという人も、おそらく、他の監査現場の話聞けば、違うと思うかもしれません。私が監査法人の中で見ただけでも、デューディリジェンスもあれば、IT監査もあります。事業会社でも、内部監査でいろんな拠点を飛び回っている人もいます。監査法人の中でできることも広いですし、監査法人の外でできることは、想像以上に広いと思います。とはいえ、最後に決めるのはご自身ですので、後悔のない判断をしてもらえればと思います。

