会計士の履歴書
篠木 良枝

株式会社マクアケ

常勤監査役

篠木 良枝

しのき よしえ

監査役は子どもの成長を見守る母親的存在。事業推進を助けるとともにブレーキ役も果たす

1970年代生まれ 大阪府出身 東京都在住

京都大学 法学部 卒業

篠木 良枝

01

キャリアサマリー

1999

吹田市役所入所

2003

新日本有限責任監査法人大阪事務所入所

2017

株式会社マクアケに常勤監査役として就任

大阪で生まれ、大阪で育ちました。大学生の頃は公務員志望のため行政法の岡村周一教授のゼミを選択しました。岡村先生は行政機関の方とお仕事をされる機会が多く、女性が働きやすい職場として公務員を強く勧められており、ゼミの女性は全員公務員になりました。就職したのが地元の地方自治体だったので、周りの方にかわいがっていただいたのですが、在職中に軽い気持ちで始めた簿記と原価計算の授業が面白く自分に合っているなと思い、しばらく働きながら公認会計士試験の勉強をしていました。体力が持たなくなったので退職して勉強に専念し、合格後新日本有限責任監査法人大阪事務所に入所しました。ちなみに、公務員を勧めてくださった岡村先生ですが、公認会計士試験に合格したことを報告したらとても喜んでくださいました(笑)。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

新日本有限責任監査法人の大阪事務所では監査のイロハを全て教えていただきました。とても和やかな雰囲気で仲がよい部門に配属となり、面倒見の良い先輩がたくさんいました。監査の基本は全て大阪事務所時代に学び、東京ほど規模が大きくないことからIPOや学校法人の監査などいろんな業務を経験できました。

夫の転勤に伴い新日本有限責任監査法人の東京事務所に異動してからも周りの方には本当に恵まれ、初めての東京にすぐなじむことができました。メーカー、販売会社、IT企業と様々なクライアントを担当させていただき、気が付けば監査業務に10年従事していたので別の業務をやってみたくなり、法人内でナレッジ本部に異動しました。ナレッジ本部では、業種別ナレッジの情報収集、社内向けの発信、書籍の編集など今までの業務とは違った経験をさせていただき充実した3年半を過ごせました。監査法人勤務も14年目となり、このまま監査法人に残るか、外に出てみるか迷っていたときに、新聞で次のような趣旨のことが書かれている記事を読みました。“会社で誰の指示を受けることもなく、自分のやりたいようにやるためにはトップになるしかない。しかし、トップになるのは会社でたった一人である。もちろんその一人になるために競争することは素晴らしいことだが、そのためには自分には興味がない仕事でもやらざるを得ないこともある。一方で、自分のやりたい仕事をやるために転職したり、起業したりといった、仕事の内容を優先してキャリアを形成することも、トップを目指すことと同じようにキャリア選択としてアリなのではないか。”背中を押してもらった気がして、別のキャリアに進んでみようと思いました。

篠木 良枝さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

ご縁があって、今は株式会社マクアケで常勤監査役に従事しています。会計士としてのキャリアを生かせる仕事ということで監査役を紹介いただきました。監査役になろうと思って転職したわけではなく、会計士として監査法人で働いた経験を生かせる仕事は何だろうかと考えて、色々な仕事を紹介いただいた中から選択しました。
振り返ってみると、絶対にこうなりたいからこの道を選択したということがあまりなく、その時々に興味のあることを選択し目標を立てて達成する、ということの繰り返しだったと思います。直感でいいな、と思ったことを選んだ結果今がある、という感じでしょうか。

株式会社マクアケも、マクアケで働く方々も好きなので、楽しく仕事をしています。監査役については、会計監査人監査と監査役監査は監査という共通点があるので、監査業務と監査調書の作成は通じるところがあり公認会計士には向いていると思います。会計監査人監査では数字を中心に見ていますが、監査役監査は取締役の業務執行の監査、会社の監督が業務なため、会社のビジネス自体や法的な論点などもっと会社を全体的に見ています。常勤なので、毎日会社で会議に同席したり、社員の話を聞いたりして、会計監査よりも多面的な情報が入ってきます。一つの会社にいるよりも、もっとたくさんの会社を見たいという方には物足りないかもしれませんが、一つの会社にじっくり向き合うことが私には合っていると思います。
ただ、監査役には大きな責任とリスクもあるため、一般的に監査役就任に当たっては、慎重に判断されたほうがいいと思います。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

世の中には、いろんな意見を持つ人がおり、誰かが絶対的に正しいということはなく各意見には正しい点が含まれています。世の中の人は目的が同じわけではないため意見の合意はとても難しいのだと思いますが、会社であれば会社をもっと強くしたい、良くしたいという高い目標が全員で一致していれば、意見の合意は可能なはずです。私は素直な心と広い視野を持つことを仕事だけでなく、生活においても常に心がけています。先入観なくいろんな人とコミュニケーションを取り、必要に応じて的確な指摘や助言を経営層に行うことで健全で効率的な経営ができる一助になれば、と思っています。

株式会社マクアケは志を高く持ち、目標達成に向けて一丸となっている会社であり、その一員であることを嬉しく思います。バランスが取れている、信頼できると言っていただくことが多いことが、私の監査役としての強みでしょうか。大きなエンジンを持つ車には高性能のブレーキが必要となるように、事業を進めるに当たって発生する様々な事象に対してうまくコントロールできるブレーキ役となれればと思います。

篠木 良枝さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

心を動かす、その結果人を動かすのは結局、理屈ではなくて、目標に対する一途な思いやひたむきさなのだと思います。リーダーシップを持っている方、共通の目標を掲げてその目標に向かって周りを鼓舞できる方には心が動かされますし、そんなリーダーについていきたいと感じるはずです。リーダーシップがない組織では大きな目標は達成できないのだから、リーダーシップを持っている方はもっと大事にされて評価されるべきでしょう。

みんなの前に立って、リーダーシップを発揮して引っ張っていくということは、私は正直苦手なのですが、リーダーシップの発揮はそれだけではないと思います。全体の目標を達成するために、いろんな人の意見を聞いたり、目標達成に障害となっている事項を取り除くための提案をしたり、困っている人を助けたり、といったこともリーダーシップの発揮だと思います。

監査法人の東京事務所で働いていたときに妊娠、出産したのですが、妊娠中私はつわりがひどく体調が悪化してしまいました。監査現場のインチャージを担当していたのですが、往査もままならない状態になってしまった時に、そのクライアントを担当していないマネージャーの方が担当を名乗り出て、一緒に働いて私をフォローしてくださいました。その方のためなら全力で仕事を頑張ろうと思いましたし、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。苦しいときを助けてくださった方のことはきっと一生感謝しますし、元気になったら今よりももっと貢献しようと思うはずです。そういったリーダーシップの発揮もあるでしょう。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

公認会計士という仕事に関連して、というよりは仕事そのものに関連してということになるかもしれませんが、仕事と家庭の両立については悩みました。監査法人勤務は激務ですし、子どもが生まれると今までの生活は一変し子育てにはとても手がかかります。もちろん子育ては母親だけが責任を負うべきものではなく、男性の育児参加や、子育て支援の必要性が叫ばれて久しいですが、現実には公認会計士の女性のパートナーは公認会計士だったり、忙しい仕事の人が多かったり、母親の負担は過大になりがちです。

子育てや介護など複数のタスクを抱えながら働く人でも働きやすい環境にするために、やるべきことを集中して行い、やった方がいいという程度のことはやらないという思い切った省力化、ITによる自動化を強力に進める柔軟な勤務体制を認めるなど、働き方改革が必要です。この改革は進みつつありますが、受け入れるスピード感は組織の風土とトップの姿勢により差が大きいようです。職場環境が変わるまで待てないということであれば、自ら外に飛び出すことも選択肢に入れていいのではないでしょうか。外の世界に飛び出してチャレンジした結果、失敗してもやり直すチャンスは公認会計士にはいくらでもあります。

また、ずっとトップギアで働く必要もないと思います。今はギアチェンジして抑え目に働いて、時期を待つこともいいのではないでしょうか。公認会計士の方は真面目な方が多いので、いつも頑張ることが当然と自分に厳しくなりがちですが、子育てをしてみると自分の思い通りにはならないことだらけで、かくあるべしと思っていると何もできていない気がしてストレスがたまることに気づきました。寿命も延びており、学びなおすこともできるので、もっと長い目で自分の成長を考えてもいいのではないでしょうか。

07

人生の目的と公認会計士という資格

近い将来の目的としては、仕事ではマクアケの成長を見守っていくこと、プライベートでは子どもの成長を見守っていくことです。監査役協会の研修で講師の方が、あるべき監査役監査としていいことをおっしゃっていました。「会社の全体を見ているのは、経営トップと監査役。監査役は、普段は黙っていても良い。ここぞという時に、会社を良くする信念と情熱を持って行動すれば会社は強く大きくなれる。」

リスクのない事業はないため、会社が成長するためにはリスクを取って経営判断を行う必要があります。直接意思決定を行うのは経営者ですが、事実認定に基づく意思決定が合理的か、会社の利益を第一に考えているか、手続きに問題がないかを監査するのは監査役です。ビジネスの全体を見て、コーポレートガバナンスが有効で合理的な経営判断が行われているときは何もする必要はありませんが、経営判断が会社のためにならないと思うときには意見を述べる、指摘することが監査役監査である、ということだと理解しています。

公認会計士として監査法人で経験した財務及び会計に関する相当程度の知見があったからこそ監査役に就任したのであり、公認会計士になっていなかったら今の自分はなかったでしょう。

子どもの成長を見守ることは、監査役監査と似ているところがあるなと思っています。親は子どもの話を聞き、性格を知って、様々な経験をする機会を与え、いろいろな可能性を示すことはできます。ただ、親が子どもを自分の思い通りにしたり、全ての困難を事前に防いだりすることはできません。親ができることは、子ども自身が決断しなければならないときに判断材料を与えたり、話を聞いたりするだけです。親ができることは陰で子どもを見守ること。でもきちんと見守ってもらった子どもはいつか素敵に成長してくれると信じています。監査役の業務も会社を陰で見守ること、そして会社も強く成長するはずです。

篠木 良枝さん

08

これから成し遂げたい事、将来の夢

人と人を結びつけることが好きで、友達が必要としている人を紹介することをよくしています。自分でもなぜかよくわからないのですが、好きな人が喜んでくれて人の輪が広がると嬉しい、ただそれだけです。遠い将来、人と人を結びつけることが仕事になったら良いかもしれません。好きでやっているので、仕事でなくても全くかまわないのですが。今のところ、それくらいしか思いつきません。近い将来の目的が果たされたら、夢も出てくるかもしれませんね。

篠木 良枝さん

09

キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

私も含め、公認会計士試験に合格したらとりあえず監査法人へ、という方が多いのではないでしょうか。試験に合格したら絶対にこれがやりたい、こういう仕事をしたいという明確な志望がある方以外は、それでいいのではないかと思います。監査法人では、経営者の作成した財務諸表の適正性について、監査人が自ら入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明することを目的として、監査契約の締結、監査計画の策定、内部統制の評価、リスクアプローチに従った監査手続の実施、監査調書の作成、審査の受審と業務が明確でシステム化されているため、自然にどんな仕事でも求められる基礎力が身につくと思うからです。その上で、興味のあることが出てきたら迷わず外に出ることもいいですし、監査法人でのキャリアを極めることも素晴らしいことだと思います。

公認会計士の業務は、人工知能(AI)に取って代わられなくなってしまう、というようなことが言われますが、業務のIT化は間違いなく進む一方、計画・評価・リスクアプローチ・文書化・レビューといった監査業務の進め方は普遍的なものであり、人が組織にいる限り無くならないものだと思います。
外に出たら今まで得た知識の+αのインプットが必要になることは避けられないですが、この流れの速い時代に、いったん得た知識のままずっとやっていける仕事は少ないでしょうし、既存の知識とは違ったインプットを行うことは面白いと思います。知識、経験の幅の広い人はお話をしていても非常に魅力的です。新しいことを始めるのに慎重になることは当然なのですが、心配しすぎなくても公認会計士はいろんなところで求められていることを実感しています。