
カウンティア株式会社
代表取締役
姥貝 賢次
うばがい けんじ
フィンテックを普及させ、金融における情報格差や機会格差を是正。誰もが未来にチャレンジできる社会を作る
1980年8月17日生まれ(46歳) 長野県出身 東京都在住
早稲田大学大学院 会計研究科 卒業

01
キャリアサマリー
学生時代からフリーランスのプログラマーとして起業する。
監査法人トーマツに入社し、会計監査やシステム監査に従事する。
カウンティア株式会社を立ち上げ、財務事業を開始。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
監査法人に入社する前の話になってしまうのですが、私は、高校生のときから“PCヲタク”で、趣味でパソコンの組み立てや、プログラミングなどをしていました。やがて、自分で作ったサイトの運営で収益を得て、また、ECサイトなどの受託開発も手がけるようになり、大学卒業後はフリーランスのプログラマーとなりました。
毎日、誰とも会話をせずにパソコンの画面に向かう日々。そんな生活を続けるうちに、あるとき「このままでは社会から取り残されてしまう! 社会の一員になって、仲間と仕事がしたい!!」という思いが芽生えました。
もともと経済への高い関心があり、コンサルティング業務にも惹かれていたので、次のキャリアとして公認会計士に照準を定め、必死に勉強して、公認会計士試験に合格しました。
28歳で監査法人に入社したので、遅めの新卒サラリーマンデビューでした。上司や先輩がいる状況や、クライアントとのやりとりなど、すべてが初めてで、あらゆることが新鮮でした。
会計監査のみならず、IPO支援やトーマツベンチャーサポートの業務にも少し関わらせていただきました。元々ITが得意なこともあり、ERS(エンタープライズリスクサービス)という部署でIT監査にも従事しました。プロフェッショナルとして誇りを持って働くことができる環境に、満足していました。
振り返ると、監査法人で働く中で、社会人の作法・高い事務処理力・複雑な事象の分析能力が身につきました。また、社会的な信用も手に入れることができたと思います。
しかし、3〜4年経ったころ、日に日に「広い世界に飛び出して、クリエイティブな仕事にチャレンジしてみたい!」という思いを強めていきます。
企業の経済活動の結果から生成された財務諸表に対する監査にもやりがいを感じていましたが、自分でプロダクトを生み出し、それに対する世間の反応をキャッチし、キャッシュフローが生み出される。またそのお金を使って、次のプロダクトを開発していく……という、一連の経済活動を経験してみたくなったのです。本当にやりたいことは、「自分がビジネスの主体となって、大きなチャレンジをすることだ」と気がついたのです。
監査法人でキャリアを積むだけでは、その延長線上に自分の未来はないと気がついた以上、「早く起業というキャリアを再開させたい」と思い、独立を決意しました。
03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
現在は、カウンティア株式会社の代表をしています。
「カウンティア」という言葉は、計算するという意味の「カウント」と、未開拓領域を切り開くという意味の「フロンティア」を組み合わせた造語です。財務の未開拓領域へのチャレンジを続けたいという気持ちを込めました。
カウンティア株式会社では、「スタートアップへの財務アドバイザリー」・「システム監査」・「事業開発」という3つの事業活動を行っています。
「スタートアップへの財務アドバイザリー」は、クライアントとなるスタートアップ起業家に寄り添い、財務管理や資金調達などの財務戦略のアドバイスをしています。単に知識をお伝えするのではなく、二人三脚で財務課題を発掘し、解決に向けとことん一緒に頭を悩ませ、ともに歩んでいきます。
「システム監査」は、フィンテックやIPOなどの事業を推進する場合に発生するシステム監査やセキュリティに関する課題解決をしていきます。各種レギュレーション対応から事業管理ロードマップの整理、組織戦略の立案まで、監査やITの専門家として携わります。
「スタートアップへの財務アドバイザリー」や「システム監査」は、クライアントが増えるにつれて、各社の課題に対する理解が蓄積されていきます。この蓄積から見えるものが、社会全体の財務の課題です。この社会全体の課題に対し、最先端技術を駆使して仕組化していくのが「事業開発」という活動です。「事業開発」のみを行う企業に比べて、経営者のリアルな課題を個別に解決しつつ、社会全体に向けて作り上げた「課題解決の仕組み」をシステムとして還元できるのが弊社の強みです。
私は、ITを活用した財務事業の開発を進め、情報格差や機会格差を是正し、誰もが未来にチャレンジできる社会を作っていきたいと思っています。

04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
私の強みは、「IT」×「財務」を駆使して、ビジネスを生み出すことです。IT・財務スキルを保持しているだけでなく、試行錯誤を繰り返すことでビジネスを生み出す経験を蓄積してきました。この数々の試行錯誤から、未来志向の着想と実現可能な戦略、達成するための戦術を融合して生み出すことができるようになりました。
例えば、「IT」分野でいうと、プログラミングの知見やIT事業構築の実績、監査法人時代のIT監査経験など、すべてが現在の仕事に活かされています。中でも、1995年からITビジネスに興味を持って動向を見てきたことやIT事業の構築は、自身のキャリアを下支えしています。
ITの仕組みを直感的に理解できるので、頭の中で描いた未来にたどり着くための戦略を描き、その未来を実現するための戦略を描けるのです。
また、IT統制の技術やセキュリティに関するガバナンスの知見も私の強みです。内部統制構築で整理するビジネスプロセスには、人の手で行うプロセスとITで行うプロセスとが混在しています。ITプロセスは、ITの専門家に切り出して依頼するケースが多い中、私は自身で両方を自由自在に整理することができます。
また、産業を「財務」というツールで整理して見通すことができます。ビジネスプロセスのどこに投資を実行すると、どんな費用が発生し、結果としてどんな収益が発生するのか、利益率はどのくらいになるのか、市場規模はどの程度見込めるのか、などが「見える」ということは非常に重要です。
そして、ビジネスを生み出す「起業」。一般的に、新規事業は、10本のアイデアのうち1本当たれば良い方で、残りの9本は失敗します。その時に、なぜ失敗したのかを見極めることが重要です。そこで得た学びが、次の事業を生み出す土壌となります。
私は、ビジネスを生み出すための数々の試行錯誤を経験することにより、事業構築力を高めることができました。
「IT」×「財務」を駆使し、一つの事象を多角的に見ていくことで、ビジネスを生み出すことができるようになりました。そして、現在、最適化されていない領域を最適化するために、事業開発に取り組んでいるのです。

05
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
私の心が大きく動くのは、「実現可能な事業の未来が見えたとき」です。新しいビジネスのアイデアが湧き、事業戦略に落とし込み、それを実現する機会に巡り合ったときに、モチベーションが高まり、喜びを感じます。
新しいビジネスのアイデアは、散歩している最中や異業種の経営者と雑談している瞬間などに閃きます。今までの色々な経験が、頭の中でネットワークとして統合されていく感覚です。アイデアが湧くと、頭の中の事業構想をノートに記述したり、スライドに落とし込んだりしながら、具体的な輪郭を創造していきます。そして、新たな閃きを実現できる機会を見つけて、ビジネスパートナーに提案します。実現できそうな機会は、ビジネスアイデアと同時に浮かんでくるケースも多いです。
私は、スタートアップ企業に財務アドバイザリーを提供しています。単に財務の相談に応えるだけでなく、事業構築についてクライアント経営者と話し合い練り上げていきます。
自社の「事業構築」を進めることも楽しいですが、クライアント企業と共同で推し進めていくことも楽しいものです。戦略がうまく機能して、貢献できたときの喜びはひとしおです。
06
公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
自分がたどり着きたい未来像は、公認会計士として監査法人でキャリアを積む延長線上にはないのだということに気づいた時に悩みました。
私は、中学生の時からビル・ゲイツに憧れ、世界に影響を与えるビジネスをしたいと思っていました。しかし、公認会計士の主戦場は監査。事業を創造する役割ではありません。
私は、「ビジネスで未来を切り拓きたい」です。そして、ビジネスを実現するときには、一番醍醐味を味わえる「中心」にいたい。
これは、公認会計士という専門職を極めていくようなキャリアだけではイメージできない未来でした。これに気づいた時こそ、公認会計士の仕事をしている上で、最大の挫折を感じた瞬間でした。
しかし、公認会計士は社会から認められるプロフェッショナルであり、企業の心臓部に切り込むことができる職能を持った存在です。私はその存在価値を活かしながら、別の道を模索しようと考えたのです。
そこで、公認会計士としての在り方、自己認知の仕方について、新しい解釈をすることにしました。具体的には、公認会計士の価値を「監査や会計のスキル」ではなく、「経済社会のプロフェッショナルとして有する高い公平性と倫理観」と認識して活動することにしたのです。
高い公平性と倫理観を持つ公認会計士は、「社会的に認められた存在である」という看板を掲げることができます。これにより、経済界のさまざまな方とコンタクトがしやすくなります。資格を「看板」として使っているイメージです。
もちろん、公認会計士の持つ知見やスキルも、事業開発を行う上でプラスに働いています。大きくは以下の3点のように活かすことができています。
(1)財務という複雑な領域を、会計知識を使い、分析整理できること。
(2)事業を健全に維持するためのガバナンスを、内部統制から整理できること。
(3)会計士の高い倫理観を持ち、ビジネスを健全に発展させられること。
公認会計士という資格をどう活かすかは、自分次第だと思います。公認会計士の主たる使命の会計や監査の専門家として活かすのも本質的ですし、一方で、私のような別の解釈で活用してみるのも良い。
少なくとも現在の私の事業において、公認会計士の経験を最大限に活かしながらこれまでにない道を歩んだことはプラスに作用しています。
07
人生の目的と公認会計士という資格
公認会計士という資格は、初めて会った人に期待を抱いて頂きやすいツールです。第一印象で、公認会計士としてのスキルや知見に期待をしてもらえる機会が多いのです。こうした信頼感は、より多くのビジネス機会に出会えると感じています。
私の人生の目的は、「財務の未来を切り拓き、地球規模の経済社会で未来を作っていくこと」です。その「経済社会の未来」に寄与する事業開発を行い続けたいと考えています。
財務とはあくまで「機能」で、直接的に「産業」を作っていくものではありません。
しかし、非常に重要な「機能」とであることは間違いありません。財務に精通することで、さまざまな「産業」を切り拓き、発展させていくことができると思っています。
財務もITも国境を超えたボーダレスなビジネスに適しています。
公認会計士に対する信頼感を土台として、さまざまなビジネス機会に出会い、事業開発をとおして、国境を超えた経済社会の未来を作っていきたいと思っています。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
カウンティアは、これから一層、事業開発を突き詰めていきたいと思っています。それは、私には、ITによる財務サービスが、社会になくてはならないセクターとして進化していく「未来」が見えているからです。
先ほどもお話しましたが、財務は「機能」であって「産業」そのものではありません。気がついたらさまざまな産業に、カウンティアが関わる財務が社会実装されている……、そんな未来を私たちは実現していきたいと考えています。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
新しいチャレンジをしたいという方は、「ゼロベースで物事を考えていける能力」を身につけると良いと思います。そのために必要なことは、過去の成功体験や資格に固執しすぎないことでしょうか。
「公認会計士」は、苦労して手に入れた素晴らしいライセンスです。しかし、このライセンスにとらわれすぎて新しいチャレンジができている人は少ないように思います。資格取得といった過去の成功体験にこだわりすぎてもチャレンジは難しい。
例えば、今までの会計士を「会計士1.0」、ゼロベースで考えられる会計士を「会計士2.0」と定義してみます。「会計士1.0」が「会計士2.0」に進化するためには「公認会計士」というキャリアを一度捨てるくらいの覚悟が必要です。これまでの会計士の延長上のみで生きていても、他の会計士と劇的に差別化することは不可能です。会計士1.1や1.2にマイナーチェンジが可能でも、「会計士2.0」にバージョンアップすることはできないでしょう。
「会計士2.0」は、未来に生きる会計士像。現在キャリアを模索されている会計士の方は、「会計士試験を乗り越えられたのだから、どんな新しいチャレンジもできるはず!」という未来志向の考えに切り替えて、どんどんチャレンジをしていきましょう。会計士受験生も合格した先の未来のチャレンジを思い描いて頑張ってください。
固定観念から解き放たれた時に、誰も想像したことがなかった未来の世界にたどり着くことができると思っています。


