会計士の履歴書
豊田 康一郎

株式会社経営共創基盤

共同経営者(パートナー)

豊田 康一郎

とよだ こういちろう

経営者の視点から俯瞰してクライアントを総合的に支援。ハンズオン型経営支援のスペシャリスト

1980年6月23日生まれ(46歳) 東京都出身 東京都在住

東京大学大学院 工学修士課程修了

豊田 康一郎

01

キャリアサマリー

2005

現有限責任あずさ監査法人入所。

2009

株式会社経営共創基盤(IGPI)入社。2016年10月より同社ディレクターに就任。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

私が中学生のときに、不動産鑑定士だった父が独立開業しました。父は開業当初は顧客開拓や資金繰りに大変苦労しつつも会社を潰さず、小さいながらもなんとか事業を軌道に乗せていました。そんな父の背中を見ていたので、顧客や従業員等のステークホルダーへの責任を負いながらも自らの才覚をレバレッジできる経営というものに興味を覚え、将来は経営に関する仕事がしたいと思うようになりました。今はベンチャー投資もしていますが、ベンチャー経営者などオーナ―シップを持って早期にリスクを取ることができる人は、親も会社を経営している人が多く、私もそうですが実はキャリア形成には思っている以上に親の影響が大きいと感じます。

大学では土木工学を専攻していましたが、大学3年生になって将来のキャリアとして経営者を考えたときに、「土木工学の専門性を活かして就職したとしても経営者になれるのは60代になってからだろう。それでは遅い。もっと早く経営者になるにはどうしたらいいのだろうか」と考えました。考えた結果、「経営者になるためには数字に強くならなければならない。それためのパスポート的な位置づけとして公認会計士の資格を取ろう」と思い至り、大学院在籍中に当時の公認会計士2次試験を受験し、運よく合格することができました。

そのため、大学院を卒業して監査法人に入った時点で、5年以内に促成栽培(早く育てることで価値を高める)で学べるものはすべて学び、経営領域のキャリアに進もうと決めていました。5年とした理由は、若手として一通りの仕事を回し、人を使うポジションになるのが5年目くらいというイメージだったからです。それに将来会計士のスキルを100%使っていくというのならともかく、外の業界に出るならポテンシャル採用になるので、転職するには若いほうが断然有利だと判断したからです。

促成栽培にはとにかく多くのクライアントで場数を踏むことが重要です。入所当時からマネジャーやパートナーに対して積極的に社内営業をして仕事を入れてもらいました。その甲斐あって、同期の中では最も早かったのですが、入社1年目で外資系企業のインチャージ、3年目で売上高数千億円の東証一部上場企業の全体のインチャージを担当しました。結果として、4年目のときに若手として学ぶべきことは学べたと判断し、目標としていた5年から1年繰り上げて経営領域の道に進むことを決断しました。在籍した4年間で関与企業40社、インチャージを10社担当させてもらいましたが、これは当時としてもかなり多い数だと思います。かなり珍しいケースだと思いますが、退職の際は自分が辞めても支障がないように、退職する9カ月前には監査法人に退職の意向を告げて、後任のインチャージを育成していました。

転職活動は退職の少し前から開始しました。転職活動をしていると普段はお会いできないような偉い方が、タダで普段は聞けない話をしてくれます。高級社会科見学のようなものなので、チャンスを活かして、幅広い業種の会社に話を聞きに行っていました。これは転職を考える皆さんにおススメです。

最終的にはやはり経営領域にタッチできる業種としてコンサルに絞り、IGPIの他にもいわゆる外資系の戦略コンサルティング会社の面接を受けて内定も頂いていました。結構悩んだのですが最終的にIGPIへの入社を決めたのは、チャレンジ出来る仕事の幅が格段に幅広かったことと、著作をよく読んでいたCEOの冨山や面接官の方々が非常に魅力的だったことが決め手となりました。

豊田 康一郎さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

IGPIの事業内容としては、顧客の事業面(戦略コンサルティング領域)と財務面(M&Aおよび財務アドバイザリー領域)に対して常駐型ハンズオン支援を行う一方で、自社の資金で投資活動(ファンド的領域)も行っています。大手企業から非上場の中小企業・ベンチャーまで、クライアントごとに最適なサポート体制を見極めながら成長のお手伝いをすることが特徴です。

メンバーは、公認会計士や税理士、弁護士以外に、外資系戦略コンサルティングファームや事業会社出身者など様々な分野のプロフェッショナルによって構成されています。伝統的なプロフェッショナルファームでは事業、会計、法務など各分野が切り離されていて、各自が専門分野の支援を行います。ですが、どんな規模の会社も経営者はすべての領域を見た上で責任を負っています。IGPIではプロフェッショナルが真の意味で経営者と同じ視点で併走できるようになるために、メンバー自身の専門分野だけではなく各分野を横断した経験とスキル(こういったスキルセットが必要な仕事を、IGPIではよく「総合格闘技」と表現します)を身につけることが求められます。公認会計士出身者だからといって会計や財務だけを支援するわけではなく、経営全般の総合的な視点が求められるのです。

現在の私の仕事では常に複数の案件が同時進行していて、「午前は再生フェーズにあるクライアントの経営会議に出席し、午後は投資先のベンチャーで新規市場開拓に関するディスカッションを行い、夜は社内ミーティングでIGPIがファイナンシャルアドバイザーを務めるM&Aのスキームの検討を行う」といった働き方が日常になっています。関与する仕事の幅は広く勉強すべきことが無限にありますが、私は元来飽きっぽい性格なこともあり、日々様々な挑戦があるこの仕事は結構性に合っていると感じます。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

①PDCA回し、②レジリエンス、③コミュニケーションの3点は常に意識しています。

①PDCA回し

長期的に仕事を続けていくうえで、失敗しないことはまったく重要ではなく、失敗からいかに学ぶかが重要だと思っています。プロファームの人が自分の仕事の話をすると、どうしてもセルフブランディングのために成功したケースの話が中心になりますが、チームとしては成功しても私個人としては反省点の多いプロジェクトは過去に沢山ありますし、細かいものを含めれば今でもたくさんの失敗を犯します。しかし野球で言えば全盛期のイチローも6割以上の打席は凡退していたわけで、大切なのは自分なりにPDCAを回して失敗からいかに学ぶかということだと考えています。具体的には自分を可能な限り客観視した上で、失敗の原因と明日への打ち手を言語化・形式化して次に活かすようにしています。

②レジリエンス

失敗から学ぶときは、明日の学びになるものは言語化・形式知化してアクションに移す一方で、ネガティブな感情はすぐに捨てることも重要です。ネガティブな感情は明日の成果の為に何の役にも立たないですし、長期的・継続的にパフォームすることの妨げにもなります。私の場合は、どんなに落ち込んだり怒ったりしても、一晩寝て起きると必ずネガティブな気持ちを忘れられるというスタンド能力(漫画『ジョジョと奇妙な冒険』に出てくる超能力)ばりの特殊能力があり、そこは強みになっていると思います(笑)。実際、以前IGPI社内で行った性格診断テストにおいて、受験者数十人の中で“レジリエンス(困難な状況にも対応して生き延びる力)”項目が1位だったことがありました。

仕事で失敗した後輩にも、「改善のためのアクションを決めたら明日からはそれを実行することだけ心がけて、凹んだ気持ちは寝て忘れたほうがいいよ」とアドバイスするようにしています。もちろんそれが難しいのですが、マインドセットを変えることやトレーニングでも強化は可能だと考えています。

③コミュニケーション

尊敬する大学の恩師から教わった人生訓に「強く、正しく、朗らかに」というものがあり、コミュニケーションの面で最後の「朗らかに」を大切にしています。プロといっても人間同士が仕事をしている以上、人間関係が円滑でないとパフォーマンスを発揮することはできませんので、「チーム内でのコミュニケーションの摩擦係数をゼロにする」ことを監査法人時代からの目標にしています。監査もコンサルティングも仕事自体がきついので当然悩みが出てくるのですが、悩むのは仕事の中身そのものだけにして、人間関係の悩みはゼロに近づけようというのがコンセプトです。同様に、仕事が大変なときに表情や話の内容まで暗くなると、負のスパイラルのようにパフォーマンスが落ちるので、「苦しいときこそ笑顔を忘れない」ことも大切にしています。

豊田 康一郎さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

心が動く瞬間はお客様から感謝されることに尽きます。とくに事業再生は人の人生を救う仕事なので感謝されることが多いです。その中でも、プロジェクトマネジャーとして再生を支援した会社が、見事に業績を回復したときのことは忘れられません。

あるクライアントの社長は、日本の戦略コンサル業界の黎明期を築いた伝説的なプロフェッショナルの方でした。当然ながらクライアントの社長としては大変厳しく、半分ほども年の違う私はプロジェクトマネジャーとして厳しいご指摘を頂くことも度々でした。しかしその会社が再生を果たし、社長が退任される際に、「これまでも他のコンサルを使ってきたが、組織と現場を動かすことができなかった。所詮絵に描いた餅であった。最後の手段としてIGPIに頼んだが、技術的なことはともかく、パッションが組織を動かし、見事に結果を出し、破たんの淵から生還することができた。その点については、深く感謝し、プロフェッショナルとして敬意を表する」とお褒めの言葉をいただきました。頑張って結果を出して、これほどの経歴の方から認められたことはすごく嬉しかったです。自分がこうしてIGPIで仕事を続けていられるのも、この言葉のおかげと言っても過言ではありません。

同じく再生を果たした別の会社の忘年会で取締役に手を握られて、「豊田さんは厳しかったが本当に感謝している」と言っていただいたこともありました。人の役に立てたと実感できる瞬間でした。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

特にありません。元来楽天的な性格なので物事にあまり悩むことがないのと、「自分で決めたら30点でも100点」を合言葉にその時々判断してきたので、人生後悔するということがあまりないからです。

公認会計士というのはあくまで資格ですから、あって困るものではないですし、もし本当に悩むようであれば「公認会計士なんていつでも辞めることもできる」くらいのフラットなスタンスでいたほうが心身ともに健康にお仕事ができるのではないでしょうか。

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人生の目的と公認会計士という資格

私は自分の人生の目的を、“産まれてから死ぬまでに日々感じる幸福感の積分値の最大化”と定義しています。一方で人生何が起こるかわからないですし人間はいつ死ぬかわからないので、人生の目的の達成のために、やりたいことは先送りせず、やりたくないことは極力やらないようにして、“いまを生きる”ことに注力することにしています。その意味で『アリとキリギリス』でいうと、“キリギリス”タイプですね。

お仕事の面においても、一生、知的好奇心のおもむくままにその時やりたい仕事をやっていきたいと思っています。そのためには、いざ人に請われたときにひと差し舞える準備はしておく必要があるので、そのための研鑽だけは欠かさないようにしたいです。

公認会計士の資格の強みは、何と言っても保有するスキルの水準を国家が保証してくれるがゆえに、周りの方に0.1秒で説明・証明できることです。公認会計士の資格は、将来好きな仕事に転職したいと思ったときにパスポートの役目を果たしてくれることを期待して取得しましたし、いまもその期待は変わっていません。

豊田 康一郎さん

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これから成し遂げたい事、将来の夢

先に書いたように人生何が起こるかわからないですし人間はいつ死ぬかわからないので、将来といっても向こう5年くらいまでに限定してキャリアを設計するようにしています。人生において次のステージのことは予測できても、その先のことは次のステージで見えた景色に影響を受けます。「次の次はどのステージに進み、そこでさらに何が見えるか」ということは、今の時点ではわかりません。

例えば私はIGPIで新卒採用の仕事もしているので、大学生の皆さんからキャリアの相談を受けることが多いのですが、大学生が就職活動で志望先の会社の人に「その会社に就職したらどうなるのか」を聞くことはできても、「30代の時点で自分がどうなっているか、結婚などのライフイベントで生活はどう変わるか、次にどこに転職したらよいか」ということまで誰にもわかりません。そのため、将来を設計するスパンは5年程度までとしています。あまり先回りして、「50歳になったらこれがやりたい」といったことは考えていません。

将来の夢ですが、何をやるにせよ、それがIGPIの中であれ外であれ、プロフェッショナルな経営人材を目指すということは変わりません。その中で、経営をやるのか経営参謀なのかという選択肢はあります。経営をやるなら外に出てプロ経営者になる可能性もありますし、IGPIの中で芸を磨きながら経営参謀を極めたり、投資先の経営に関与したりという道もあります。将来の夢は、そのどちらかではないでしょうか。

私が大好きな映画に、黒澤明監督の『七人の侍』という映画があります。この映画のあらすじや素晴らしさを語りだすと長くなるので割愛しますが(笑)、プロフェッショナルとしての理想は現代版『七人の侍』として、自らのスキルを活かして困っている人を助ける仕事をし続けることだと感じています。

豊田 康一郎さん

09

キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

“事業も数字もわかるプロフェッショナル経営人材”というのはIGPIに入社した日から私が目指している姿のキーワードです。未だ道半ばの修業中の身なのでアドバイスをするのは大変おこがましいのですが、この記事を読んでくださっている方で多そうな、大手の会計事務所所属の方やそれを目指している受験生の方を前提にして、今の環境でできることを書きたいと思います。

一番大切なことは、知的好奇心を持ち続けること、知的な意味でのファイティングポーズを取り続けることだと思います。“続ける”というところがポイントで、公認会計士に限らず、就職した頃はやる気満々でも濁流のような日々の業務に流されて、30代になってみるとファイティングポーズが取れていない人が多いのが現状かと思います。

その上での各論ですが、まず監査をやっている方であれば、上場しているエクセレントカンパニーの業務フローに触れることができることは大きな強みだと思います。例えば上場会社が他社を買収する際に、どう調査をして、計画を作って、意思決定して、買収後の運営をしているのかといった点は外からでは勉強ができない貴重な教材です。

同じく大手の会計事務所に所属している方であれば、グループ内で環境を変えることによって、財務DD、財務モデリング、株式価値評価、IPO業務など、外の業界に行っても普遍的に使うことのできるスキルをトップクラスの環境で学ぶことも可能です。これらは転職の際の差別化要因として上手く使えると思います。

最後に、“次のステージ”を模索している方については、とにかく関連業界で働いている先人の話を聞きに行くことが一番重要だと思います。コンサルティングの仕事でも対象業界の専門家や消費者の声を聞きに行ったりすることが多くありますが、やはり現場にいる人の生の声を聞くことはとても参考になります。あれこれ悩む前にまず行動してみることをおすすめします。