
株式会社フォーデジット
CFO
冨來 美穂子
とみき みほこ
CFOが果たす役割は会社のためにできることすべて。公認会計士であることに誇りを持ちつつ“いい会社を創る”
1965年6月13日生まれ(61歳) 石川県出身 東京都在住
お茶の水女子大学 理学部物理学科 卒業 2000年合格

01
キャリアサマリー
大学卒業後、株式会社リクルートに入社。 通信事業系の事業部などで、主にシステム開発の業務に従事。
株式会社リクルートを退職し、公認会計士の試験勉強を始める。 リクルートにて約8年が経過し、このままでいいのかという、よくある迷いをずっと抱えていた私は、何か別の専門性のある仕事に従事することを考え始めた。会計に特に興味があったわけではない私は、生業にできそうな資格のなかから、何とかトライできそうな会計を消去法で選んだ感じだったように思う。今思うと直感の選択だったかもしれないが、会計士を選んで今ではよかったと思っている。 仕事の仕方や、仕事をする上でのいろいろな考え方は、リクルートでの経験が土台になっていると思う。
公認会計士2次試験に合格し、当時の朝日監査法人(現あずさ監査法人)に入所。 主に法定監査に従事。
朝日監査法人を退職し、一般事業会社に転職。 人が作った数字を見る側ではなく、事業を実感し、作る側に携わってみたいという思いのもと事業会社へ。「会計は会社の実態を現す」とは、どういうことか実感してみたかったようにも思う。 事業会社に転職し、初めて経理というものに携わった。監査していると重要性でパスということもあるが、経理は1円でもあわないと締まらない。それを重要性で片付けてしまうと、どんどん、ルーズになる。会計士と経理業務の間には大きな目にみえない壁があると感じたのも、実際に数字を作る業務に携われたからだと思う。 マンションの1室でやっていた小さい会社では、経理業務以外にも、会社登記など何でもやった。しかし、事業は生き物。大きくても小さくても、いろいろなことが起きる。やはり、それが楽しい。
いくつかのベンチャー企業を経験したのち、株式会社エスエルディーに入社。経理部長として上場準備に携わる。2015年3月にJASDAQ上場を果たした。その後、2015年6月の株主総会にて取締役に就任。会社のために何ができるかという目線をもてたことは、やはり大きな経験だったと思う。
株式会社フォーデジットに転職し、CFOに就任(現職)。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
監査法人では主に法定監査に従事した。大手クライアントを担当することにより、あるべき組織とは何か、有効な内部統制とは何か、そして会計自体に接することができた。ある意味、試験勉強だけではわからない会計の実態を学ぶことができた。
しかし、もともと事業会社にいたせいか、監査よりも事業会社に身をおきたい、作る側になりたい、事業という生き物の中で仕事がしたいという気持ちが強かった。約3年監査法人に勤務し、実際に数字を作る側として、事業を身近で感じることができる事業会社へ転職することに決めた。
今の若い方は、ちゃんとした目標や目的を持っている方が多いようだが、私はその時々の気持ちでただ動いていただけで、ちゃんとした目標など持っていなかったように思う。何か楽しいことがしたいという思いだけだった。だからこそ、楽しければ業務範囲にこだわりはなかった。それがよかったのかもしれない。会計士になったのだから会計分野かなというくらいで、会計士なんだからこれはやるとか、これはやらないという思いはなく、何でもやりたかった。
事業会社に入ってみて、会計士は机上で仕訳はきれるが、実際の経理処理はできないということを痛感した。どの伝票からどんなふうに入れればいいのかもわからなかった。いろいろ勉強になったし、刺激もあった。やはり、事業会社は生き物だと実感した。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
前述のとおり、明確な目標をちゃんと設定しないまま、ただ、自分が楽しいと思えることをその時々で追い求め、漠然とした野心だけをもち、今まで来てしまった。実際には楽しいと思えることのほうが少なかったし、辛いと思うことのほうが多かった。
事業会社で公認会計士はいったい何ができるのか。そして、会計とは会社にとって何なのか。そういうことを、なんとなく漠然と考えていたような気がする。縁あってIPOを経験させて頂き、取締役という役職にもつかせて頂いた。自分の力で何かをしてきたというより、全てがご縁であり、自分の周りにいて頂いた方のおかげだと思っている。いろいろな経験をさせて頂いた周りの環境、そしてチャンスをくださった方々に本当に感謝している。仕事というものは、きっと、そんな縁みたいなものが楽しいのだと思う。自分ひとりではできないことが、誰かと一緒にやることで、想像もつかいないような世界にひろがっていく。
現在CFOという役職ではあるが、まだまだ力不足で十分に役割が担えているとは思っていない。CFOの役割は定義しやすそうに見えるが実は曖昧で、私の中でも明確ではないし、人それぞれでもいいと思う。会社の状況によって求められるものも様々で、管理部門全般を管掌されているという方も多いかもしれないし、CEO、COOの女房役という側面もあるが、究極的には、会社のためなら何でもする仕事だと思っている。どんな仕事でも、やり方や仕事に対する考え方や環境次第で楽しくなると思うのだが、CFOも、大変だが“楽しい仕事”だし“やりがいのある仕事”だと感じている。特にCFOとして会社の全体を見れることは、自分のキャリアにとっても大きいし、やりがいがある。“自分の仕事が”という視点ではなく、“会社のために”という視点がもてることが最も大きな特徴かもしれない。
会社のために何をしたらいいのか。そもそも会社のためとはどういうことか。それを自問自答することとなる仕事かもしれない。現在の仕事というよりも、今やりたいことなのかもしれないが、“いい会社を創る”ことが自分の中でテーマになっている。“いい会社”とは、これまた定義が曖昧だ。企業をとりまくステークホルダーによっても異なる。業績が好調な会社、社会的意義のある会社、働きやすい会社、会社に行くのが楽しくなるような会社、前を向けるような会社、品格のある会社、〇〇という会社にいると自慢できる会社、業界の先駆者となる会社など色々候補があり、“いい会社”の定義はまだまだ考えきれていない。
CFOの役割には、何をすべきとか、何をしてはいけないという境界はないと思う。領域を超えてしまうことのデメリットをあげるなら、責任の所在が不明確になることだと思う。それを回避できれば、CEOの領域だから、COOの領域だからと気にすることはないと思う。ただし、やり方に気をつけなければ、不協和音のもとになるかもしれない。
これが、自分のキャリアパスとしてどうなのか、正直よくわからない。なにせ、前述の通り、明確な目標設定ができていないもので。しかし、企業という生き物の中で仕事がしたいという思いに突き動かされて、今までやってきた。そして、そういう仕事を体験する職種としては、CFOはいい仕事ではないかと思っている。
取締役やCFOという職を通して会社を大局的にみることができ、事業を行うことの大変さ、面白さ、会社を守ることの難しさを痛感してきた。その先に何を目指すにしても、その経験は役にたつと思う。私にとって、現在の仕事もある意味、通過点である。きっと、ずっと、通過点なのかもしれない。そして、今の経験はこれから必ず役に立つ。
04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
前項の通り、今の私の仕事は、“いい会社を創る”ことだと思っている。そのためには、事業を知り、人を知り、社外を知り、事業をとりまく環境を知り、自分がやったほうがよいことは何でもし、会社の組織風土は重んじても、会社や業界の既成概念にとらわれず仕事をすべきだと思っている。会社を守るためにリスクヘッジもするが、リスクをとってでも前に進めることが必要なときもある。
自分の強みは、理解力と協調性があること、そして、人に興味があるということではないかと思っている。特に突出したものがあるわけではないが、人とかかわることが好きなのは役にたっていると思う。だから、いろんな人と接して、いろんなことにチャレンジしていける。領域や定義がない仕事だから、こういう面は役にたっていると思う。そして、前述したような縁を繋いでいける。
また、会計士としての知識、経験は役にたっている。会計士の受験科目は幅が広く様々な方面に知識があるので、いろいろな視点から物事を考えられるし、様々な方面の人とそれなりに話ができる。

05
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
大きくても小さくても目標を達成したとき、そして、みんなの気持ちが一瞬でも一つになったときに、自分の気持ちが満たされるように思う。
06
公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
自分のキャリアを考えるとき、公認会計士という資格に縛られることがあったように思う。リクルートを退職してから会計士になるまでにそれなりの年月がかかったこともあり、会計士になってからは、会計とは関係ない職業を選択してはいけないような思いがあった。逆に言えば、会計の世界で生きてこれたので、それ以外に自分ができることを探さずに済んだのかもしれない。そしてまた、会計士になっていなければ、会計の世界で仕事がしたいと思ってもできなかったかもしれない。ただ、これは時間とともに解決する問題だと思っている。会計の世界でやりたいだけやって、その上で違う職業につきたい気持ちがあれば、その時は選択できると思う。いつまで次を追い求めるのかという声が聞こえてきそうですが。
もう一つ、当然のことではあるが、不正はできない。事業会社にいると悩む事象に出くわす。監査法人の時のように、正しいことを正しいというだけでは仕事にならない。いかに生きてるリアルな数字という実態あるものに理論を反映し、周りに納得してもらうかが大切になる。
事業会社にいて正しいことを主張すると、「あなたはどこの人ですか。会社の人ですか。監査法人の人ですか?」と言われることがある。当然、「会社の人」である。会社の人として、胸を張って堂々と、間違っていることは間違っていると言えば良い。こう書くと当たり前のことと思われるかもしれないが、これが言うほど簡単ではないというのが実感である。だが、自分が会計士だからという思いが背中を押してくれる。
不正や誤謬は大小の問題ではない。例え小さなことであっても間違った選択をすると、どんどんそれに飲み込まれていくのではないかと思っている。そして、いつか大きな問題になる。大きな問題にならなくとも、そのように看過していく会社の体制は、少しずつ会社を害していく。会社にとって、決していい結果をもたらさない。公認会計士であることに誇りをもって、心の支えにしているからこそ、できることがある。だからこそ、そこは譲れない。
07
人生の目的と公認会計士という資格
人生の目的。果たして自分は何のために生きているのか、そんなことを真面目に考えたりはするが、明確な目的をちゃんと持たずにきた。それは今もあまり変わらないが、それでも、少しずつ前に進んできた。そして、公認会計士になったことは、大きな人生の分岐点であった。公認会計士という資格について、今更ながら考えてみる。
・資格取得のために勉強した知識は幅広く、仕事に直接役にたつことが多くある。
・“高度な人格”を持つことを定められている資格であるが、これが、心の支えになることがある。どんな場面でも公認会計士であることを誇りに思い、悩んだときも正しい判断ができると思っている。
・公認会計士になり、監査法人を経て事業会社へと進んだ。そして、さらにその先を目指している私にとって、入り口としては最適な資格だったように思う。
公認会計士は会計監査が主な業務ではあるかもしれないが、それに限ることはない。人生の目的を幅広く考えている人にとって、その可能性を追求する入り口にはよい資格だと思う。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
今の人生の目標は、人生を楽しむこと。時間には限りがある。誰もがわかっているそんなことを、若い時はそんなに突き詰めて考えなかった。人生をいかに楽しむか、これが日々大切にしている今の私の最大のテーマである。ついつい日々の業務に忙殺されてしまいがちだが、時間を大切に、丁寧に、有効にそして楽しく使いたい。また現実にはつらいと思うことやへこむことは多いが、つらくても、へこんでも楽しいと思いたい。大変なこともいろいろあるが、それも含めて、心底、毎日楽しんでると思えることが今の夢だ。これが、なかなか難しいのだが。
あと、自由。時間の自由、選択の自由、自由にもいろいろあるが、突き詰めると、心の自由ということになるのかもしれない。自由には大きな責任を伴う。そのバランスをとりつつ、何をしたら、誰としたら、どんな環境だったら自分が楽しむことができるのかを追求したい。どうなると楽しいかは、人それぞれだと思う。私の場合、チームや会社が一丸となって目標を目指して頑張って、それを達成した時だと思う。そこには必ず自分以外の人との係わりがあり、人と一緒に何かを達成できたときの、一瞬でも気持ち通じあう感覚なのかもしれない。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
繰り返しになるが、公認会計士になったからといって、会計監査のみが選択肢ではない。もちろん、会計監査は社会的に必要な仕事であり、経験と能力が必要な高度な業務であると思う。当然のことながら、監査を極めるという選択肢も多いにある。しかしながら、公認会計士は監査しかできないわけではないし、会計という業界に限った資格でもないと思う。私のように会計に興味があったわけでもなく、何か楽しいことがしたいという思いだけで会計士になった人間もいる。公認会計士の可能性は無限だと思っている。会計という世界から飛び出して、あらゆる可能性がある。様々な自分の可能性を追求する入り口として、公認会計士を選択したことを今は良かったと思っている。
会計士、会計士受験生の方々へ、私がお伝えできることはあまりないかもしれない。ただ、いろいろ道を迷われている方、どこまで選択肢があるのかと不安に思われている方に、自分が学んだ中から何か一つアドバイスさせていただくなら、会計士の可能性は無限であり、自分の気持ち次第でどこまででも行けるということだ。キャリアの入り口としては、会計士資格は幅広い知識が習得でき、資格を武器にいろいろな環境でいろいろな経験を積むことができる、大変いい資格だと思う。


