会計士の履歴書
樽見 伸二

株式会社global bridge HOLDINGS

取締役

樽見 伸二

たるみ しんじ

豊富なIPO経験とCFO経験を持つ社会福祉事業の専門家。誰からも信頼される人柄で組織を統率

1982年11月15日生まれ(43歳) 東京都出身 東京都在住

立命館大学 経営学部 卒業

樽見 伸二

01

キャリアサマリー

2004

大学4年生で新日本有限責任監査法人東京事務所に入所。建設業監査に携わり、企業会計ナビEYの執筆活動を行う。

2011

サクセスホールディングス株式会社(現ライクキッズネクスト株式会社)のIPOプロジェクトマネージャーとして入社。同社を大証JASDAQ上場→東証2部上場→東証1部上場させ、執行役員管理部長に就任。

2016

PwCあらた有限責任監査法人IPOソリューション部に入所し、IPOコンサルタントとして活躍。

2017

IPOコンサルタントして樽見伸二公認会計士事務所を設立。IPOコンサル業務を行いながら、㈱global bridge HOLDINGSの取締役に就任。IPOコンサルだけではなく経営に広く携わる公認会計士として活動中。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

東京に来た理由。そして新日本監査法人に入った理由

会計士試験に合格した当時は就職難の時代でした。関西の監査法人説明会が先にあったので、とりあえず某監査法人の面接に行くと、公開模試の成績順に座らされて、席が足りなくて入れない人は「採る気がないから」と帰らされたことが衝撃的でした。関西がこのような閉塞的な雰囲気があったということと、もともと地元が関東だったので、「関西より東京のほうがいいだろう」と東京へ行くことにしました。

大学は立命館に通っていて、そこで仲良くなった先輩が新日本で働いていました。新日本の評判を聞くと「イイと思うよ~」というので、その一言で新日本の東京事務所に入所することにしました。新日本では、国内部に配属され、建設業から小売業まで国内業種を一通り経験することができたと思います。ただ、会計監査の経験だけだとつまらないので、企業会計ナビという法人の会計サイトの執筆活動もしたりしていました。

キャリアチェンジのきっかけ

キャリア選択の転機は、自分の2期上の先輩がマネージャーになった時でした。2年後に果たして自分はマネージャーに昇格することができるのだろうかと考えるきっかけになりました。マネージャーになれるだけの他の公認会計士と差別化できるものが、自分にはあるのだろうかと。監査法人は公認会計士の集まりなので、公認会計士という資格があるだけでは優位性は保てません。考えていく中で、幸いなことに私の場合は大学生で合格して監査法人に入っていたので、他の人よりも若いことがアドバンテージなのだと気が付きました。それで「まだ若いから、どう転んでもたぶん何とかなるだろう」ということで転職を決意しました。

もともと大きな目標があったわけでないので、「何をするか?」を考えることから転職活動が始まりました。自分の中では、公認会計士が活躍できるフィールドは“海外”、“M&A”、“デリューデリ”、“IPO”の4つのイメージがあり、その中から選択することにしました。

自己分析すると、そもそも英語は大嫌い、M&Aもピンと来ない。といっても、デューデリはかなり大変ですぐに飽きると聞いていたのでやりたくない。消去法で最後に残ったのがIPOでした。いろいろな分野で広く経験を積めそうだしカッコよさそうだからという理由で、“IPO”が経験できる事業会社を目指すことにしました。

サクセスを知ったきっかけは、日本公認会計士協会のキャリアナビに“IPOプロジェクトマネージャー募集”と掲載されていたのを目にしたことでした。募集内容を調べてみると保育園の会社でした。保育業界は今後も成長が見込まれる成長産業で、魅力を感じました。当時のCFOの方が面接してくださったのですが、その方も公認会計士でなんとなく馬が合いました。他の会社も何社か受けましたが、「成長産業だし、上司の人と馬が合う」ということが決め手となりサクセスに入社することにしました。

樽見 伸二さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

現在は、自分の個人事務所でIPOコンサルタントとしてコンサル業務を行うとともに、㈱global bridge HOLDINGSの取締役を務めています。

IPOコンサルタントの仕事内容を一言でいうと“経営企画”で、会社経営にかかわることはほぼすべてやっています。資本政策や役員体制、中期経営計画、主幹事証券対応など、上場に向けての全ての業務に提案やアドバイスを行っています。IPOは、サクセス、PwCあらた、㈱global bridge HOLDINGSで何度も成功させた実績があり、これまでの自分の経験や失敗を活かせる仕事なので、天職だと思っています(笑)。今も、数社のクライアントにIPOコンサルタントとして参加させていただいています。

取締役を務めている㈱global bridge HOLDINGSは、保育事業を主に行っている会社です。取締役として入社する前から、IPOコンサルタントとして上場計画や資本政策といった幅広い経営コンサルを行い、同社を東証に上場させることに成功しました。

実は関与した当時は、社内に上場計画や資本政策を立案する余裕が無く、かつ、会社の成長ストーリーにマッチした上場市場の選択ができていなかったため、上場計画が立ち往生していました。一方で東証関係者から、「いま、TOKYO PRO Marketという新しい株式市場を発展させたいと思っている。特に、社会的意義の高い会社に上場して欲しい」という声を頂いていました。そこで、プロマーケット市場での上場計画・資本政策を立案し、会社にとって最善の形で上場することができました。東証関係者も保育という社会的意義の高い会社が上場したので、関係した皆さんが喜ぶIPOを成功させることができたと思います。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

IPO経験・CFO経験・社会福祉事業経験・会計士経験が、自分の強みだと思います。今の会社では、人がやらない仕事をすべて引き受けているので、今までの経験と知識を総動員して仕事に取り組んでいます。

初めて入った事業会社はサクセスホールディングス(現:ライクキッズネクスト株式会社。保育事業)という会社で、入社したときはまだ若く28歳でした。監査法人では建設業会計ばかりでIPO経験がなかったのですが、若かったので素直に「分からないです」と言えたのがよかったです。

当時はIPO不況の時代で、年間30社程度しか上場できない冬の時代でした。そのせいで証券会社引受部も暇だったのか、いくら質問しても嫌がらずに本気で指導してくれたのが幸いでした。証券会社の担当者が厳しい人だったので、こちらが根ほり葉ほり聞いた以上に向こうから指導されることが多く、鍛えてもらうことができました。特に、サクセスは2012年にJASDAQへ上場し、翌2013年に東証二部へ上場、翌2014年に東証一部へ最短で上場しました。たった3年で3回も上場を経験できたことになります。若いうちに、しかも短期間に上場の全ての経験を積めたことが、大きな力となっていると思います。

また、サクセス時代に出会った上場関係者とも、今現在も一緒に仕事をしているケースが多いです。やはりお互いに信頼関係が構築できている関係なので、すごく成果が出やすいです。このように、これまでの人脈も大きな力となって今があると思います。

樽見 伸二さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

私自身の性格は、「意外と世の中なんとでもなる」と思っていて、そんなに情熱があるほうではないので、あまり心が大きく動くことは無いです(笑)。そのせいか、たんたんと傍観者的に見ている場面が多い気がします。なので、この質問が一番難しいですね。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

事業会社での最大な悩みは“嫉妬”

事業会社には、自分より年上で経験も長くて、でも年収は新しく入ってきた公認会計士よりも低いという人がいるので、どうしても嫉妬されます。会計士が事業会社に転職するなら、誰もが乗り越えないといけない部分だと思います。

普通ならこの悩みを乗り越えるために、頭が良さそうにしたり、理論武装を強化したりして、どうしても“コンサルタント”的な対応をしてしまうケースが多いと思います。しかし、実際はそのようなことをすると失敗する可能性が高いと思います。というのも、嫉妬は感情論で生まれてきているので、理屈や理論的な対応をすると、「偉そうに!」とマイナスの感情が高まってしまう恐れがあるからです。

ではどうしたらよいかというと、プライドは持たずに、純粋に仲良くなろうとすることが一番だと思います。事業会社では、基本的には毎日同じ職場・同じ同僚と仕事をすることになります。時間数にすると、家族以上の時間を職場の同僚と過ごすわけです。長い時間をともに過ごすので、その人となりは自ずと相手が感じ取り、感じたものがその人の評価へとつながります。そういう意味では、同僚に対しては家族以上に気を使う必要があるのです。プライドは持たず、家族と接する以上に気を遣えば、必ず事業会社で成功すると思います。

必ずしも全員に好かれる必要は無い

といっても全員に好かれるようにしていたわけではありません。交渉事では対立したり嫌われたりする場面も出てきます。その場合は、誰に好かれて、誰に嫌われるかを明確に分別する必要があります。

具体的にいうと、サクセスでは監査法人対応や証券会社対応といった対外的な業務での嫌われ役を私が担い、当時の上司の会計士(CFO)が最終的な調整役を担っていました。交渉の場では厳しい条件や指摘をする“嫌われ役”がどうしても必要なのですが、嫌われ役だけが交渉しても上手く話はまとまりません。なので、私が嫌われるような厳しいことを言って、上司の会計士(CFO)が上手く落としどころを調整するという、あうんの呼吸で交渉事をまとめていきました。

社内で出世するには

社内でうまく溶け込めたら、次はいかに早く出世するかという問題があります。「早く出世するには社内営業をかけろ」とよく言っています。

総務とか経理とかバックヤードにいる人は、新しい仕事が来ると「この仕事は他の部署でやってください」とはねのけてしまう人が多いように見えます。バックヤードは営業と違ってノルマが無く、今ある仕事をそつなくこなすことに主眼が置かれがちなのです。

自分の場合は「なんでもやります。それもやります」と言って、社内で仕事をもらってきます。するとどういうことが起きるかというと、仕事が増えると必ず新しい部下が入ってくる。部下が増えると、必然的に課長とか役職がついてどんどん出世する。営業に例えると分かりやすいのですが、外から仕事を取ってくれば出世しますよね。それと同じで、社内でも仕事を取ってきた人が管理しないといけないから、仕事を取ってきた人に部下や権限が集中して、結果的に出世することができると思います。

会計士もバックヤードの世界と接しているので、新しく仕事を取りたがらない癖があります。早く出世したければ、社内営業をして新しい仕事を積み重ねる。そうすれば、未来が開けてくると確信しています。

これはサクセスにいた時の経験なのですが、最初はIPOプロジェクトマネージャーだったのですが、「総務もやってほしい」といわれ、兼任で総務課長になりました。その後、財務課長がやめると言われたので財務課長を引き受けて、IPOマネージャー“兼”総務課長“兼”財務課長に。その次システム課でシステムを管理する人が不在だったので「俺がやりますよ」って引き受けました。そうして気付いたら管理部門の半数以上は私の部下になっていて、社内でのCFO候補は私しかいない状況になり、当時の管理部門では最年少だった私がCFOに就くことになりました。

07

人生の目的と公認会計士という資格

人生の成功には柔軟性が重要で、会計士という資格があるから柔軟に生きることができると思っています。

例えば、サラリーマンなどの勤め人が何を恐れているかというと、やはりクビになることだろうと思います。日本は終身雇用で公務員が“なりたい職業トップ10”に入る保守的な価値観に支配され、リスクを恐れて何もしない方が多いと思います。そのような保守的な価値観・環境に支配されて狭い世界で生きていくことを前提に人生を設計するから、自分の立場を守るために虚勢をはったり、ブラック企業に勤め続けて体調を崩したり、新しい変化を拒む方が多いのだと思います。

ですが、会計士なら多様な選択肢が生まれます。たとえば、コンサルや監査法人、事業会社への勤務だけではなく、独立もできます。自分の人生に見合った人生を選択することができると思います。また、会計士という資格に、“経験”という武器を得ることができれば、高いシナジー効果を得ることができると思います。私の場合は、IPOやCFOの経験と実績が良いシナジー効果となって、公認会計士としての価値を高めることができたと思っています。

樽見 伸二さん

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これから成し遂げたい事、将来の夢

いま私が関与している会社全てを“東証1部上場企業”に成長させることが一番の成し遂げたい事ですね。

あとは、実は人見知りなところがあって、信頼できる仲間と一緒に仕事をするのが趣味になっています。仲間と仕事をするにあたっては、適材適所のところに仕事を投げることを心がけています。例えば、人事労務計算は私の先輩が代表を務めている汐留パートナーズに任せていて、任せられることは信頼できる外部に任せるようにしている。

将来はPCPさんとか汐留パートナーズとかで顧問をやりながら、気心が知れた人同士で、わいわいキャッキャといいながら、死ぬ間際まで働いていたいと思っています(笑)。

樽見 伸二さん

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キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

若いうちに受かった人ほど、とりあえず何でもやってみたほうがいいと思います。監査法人には、「せっかく安定企業に入ったし、ちゃんとした給料も出るし、最近は働き方改革もしてるし」と色々理由を付けて、転職を踏みとどまっている人がいます。ですが若いうちに受かった人ほど、監査法人にいればいるほど、アドバンテージを自分で殺していることに気づいて欲しいです。なんとなく気が付いたら35歳のマネージャーになっている。そうなったら、監査法人の中では普通の公認会計士で、何ら特色も無く埋もれて、ただオジサン会計士に劣化するのを待つだけです。

もし、「海外に行きたい」、「IPOをやりたい」、「CFOになりたい」と目標を持っている人で、そのような職につくチャンスがあったなら、深く考えずにその場で進むことです。少しでも若いうちにやりたいことにチャレンジすることが、成功へのステップです。

監査法人では、「明確な目標が無いから、とりあえずTOIECで750点以上を目指そう」とダラダラと勉強している方が多いと思いますが、私個人はお勧めしません。というのも、明確な目標なく英語を勉強した方で、海外ビジネスを展開した人、あるいは英語を話せるスキルを身に着けた方を見たことが無いからです。“英語”を“ビジネス”で活用しなければ、いくら英語を勉強しても一般教養、あるいは趣味の世界で終わってしまいます。であるならば、「とりあえずTOEICをやる」という目標は時間の無駄ということになります。

とりあえずやってみて、仮に失敗しても、公認会計士の場合は大丈夫です。何ら心配ありません。仮に監査法人をやめたとしても、監査法人への復帰、税理士法人、コンサルティングファーム、事業会社、独立など、たくさんのリカバリー選択肢が会計士にはあります。また、公認会計士はリスク無く多様な選択肢が用意されています。例えば、監査法人内での外部出向や海外転勤などです。これらの制度を使えば、監査法人に居ながらも多様なキャリア形成が可能となります。逆に、たくさんの選択肢があるにもかかわらず、いつまでも失敗をリカバリーできない公認会計士というのは、その個人の行いや個人の判断に帰属するものです。

私個人の経験では、成功している方で共通しているのは“深く考えずに、まずチャレンジしている”ことだと思います。監査法人でなんとなく業務をこなしていると、貴重な時間とチャンスが流れて行ってしまいます。“何もやらないことがリスク”と理解して、まずは、身近なチャンスに“手を挙げてみる”ことからチャレンジしてみてください。そうすればあなたの成功の道筋が見えるはずです。