
freee株式会社
新規ビジネス開発事業部 新規ビジネス開発事業部長
花井 一寛
はない かずひろ
クラウド型サービスの可能性を拡げるためビジネス開発を行う。利便性の高い金融サービス事業の開発が課題
1985年8月29日生まれ(41歳) 東京都出身 東京都在住
上智大学大学院 地球環境学研究科 卒業 2008年合格

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キャリアサマリー
慶應義塾大学経済学部卒業
公認会計士試験合格
上智大学大学院地球環境学研究科修了。現PwCあらた有限責任監査法人入所。メガバンクへのUSGAAPコンバージョン業務やグローバル展開する事業会社へのトレジャリーマネジメントのアドバイスに従事
現PwCサスティナビリティ株式会社出向兼務。政府系金融機関、PEファンドへの環境社会リスク管理のアドバイス業務や、大手メーカーへのサステナビリティ戦略の立案に従事
freee株式会社入社。会計事務所向けのセールスチームにて大規模事務所を中心としてセールスおよびチーム立ち上げに従事。その後、金融機関や他社プロダクトとのアライアンス、新規事業開発を担当。2018年1月より、新規ビジネス開発事業部長
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
監査法人では、まずは監査で経験を積んでからと考える風潮でしたが、将来の業務にもアドバイザリーの方が役立つだろうと思い財務報告アドバイザリー部を希望しました。ただ、決め手になったのは新入職員向けの部門紹介でのアドバイザリー部門のパートナーの話でした。PwCの金融分野のアドバイザリーがいかに優位にあるのかということと、PwCに入所したならそのメリットを活かすべきといった話でした。そこも非常に面白かったのですが、締めの言葉で、「これだけ言っても、保守的な皆さんはどうせ監査を経験してからと思うんだろうけど、その時にはもう遅い」みたいな事を言われたのです。この言葉が癪で、まんまと急遽希望変更して配属されたのですが、諸先輩方からは話の上手いパートナーに騙されて入ってきた若手達としか見られてなかったようでした。それでも今振り返るとやはりアドバイザリー部門でよかったと思っています。
入所後は、金融機関の米国会計基準のコンバージョンをメインとしながら、やりたかった金融機関向けのサステナビリティのレポーティングやリスク管理のアドバイス業務や、企業の立場で実務に役立てられそうな業務を意識して仕事を選んできました。実務面で参考にしたのは商社のCFO育成モデルです。CFOは、会計に加えて、M&Aや資金管理を含む財務のスキルと、フロントでの事業経験が重要であるとされています。そこで、事業はできないまでも、財務やM&Aは経験できると考え、資金管理(トレジャリーマネジメント)のコンサルチームに立ち上げから加わって、勉強しながら幾つかのプロジェクトをデリバリーしたり、社内のツテを辿って他部署でM&AのDDも経験したりしました。やはり、実務的には最も役立つ学びがあった仕事でした。
監査法人生活は充実していましたが、当時、野村総研未来創発センター長だった三浦さんと日本自体のサステナビリティについてディスカッションさせて頂く機会があり、そのとき重要なものを見落としていることに気づきました。環境とか途上国とか社会が良くなればと思って取り組もうとしていたのですが、実現するための土台である日本社会について考えたことがなかったのです。今後、必要な医療やインフラコストを賄うだけの労働人口がいない日本の状況に対して、何ができるのか。それは、個人の力をもっと活かすことや、普通の中小企業の生産性を圧倒的に高めることであることに、考えが行き着きました。そのとき出会ったのが、スモールビジネスに携わるすべての人が創造的な活動にフォーカスできることをビジョンに掲げるfreee株式会社でした。
監査法人では本当に様々な部門の方と仕事させて頂き、仕事の幅広さと奥深さを教えていただき、スキルだけでなく視野も広げてくれました。言葉巧みにアドバイザリー部門に誘導してくれたパートナー含めて、恩返ししたいと思っています。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
中小企業がバックオフィスにかける時間をなくし、創造的な活動にフォーカスできるようにとのビジョンを掲げ、クラウド型の会計や人事労務ソフトを開発販売しているfreee株式会社にて、新規事業開発の責任者を務めています。圧倒的に利便性が高いオンラインの金融サービス作りがメインで、いわゆるfintechと言われるものです。ですが、金融が目的ではなく、あくまで中小企業の創造的な活動にフォーカスするために必要なサービスを作ることが使命です。パートナー企業と提携しながら、自社の資産や強みを元に他社では出来ない仕組みでサービスを作るので、業界の知識、アイデア、現場含めての自社の理解、交渉力、社内の巻き込みなどが重要です。他社からの引き合いが多い一方で実際にモノになるのはごく一部なので、見極めやリソース配分が重要になります。
今は新規事業を担当していますが、当初は会計事務所向けのセールスチームに配属されました。入社時は5人だった組織も今では100名近くいる大所帯です。入社後しばらくは、セミナー講師をしたり電話でセールスしたりする日々でしたが、圧倒的な存在感のあるセールスマネジャーがGoogleから移ってきてチームは大きく変わりました。監査法人では絶対に出会わない、セールスのプロでした。チーム作りやセールスの考え方を身をもって見せてくれたおかげで、チームは拡大し大きな成果が出ました。この時に学んだことが、今のアライアンス交渉や事業会社での基礎となっており、freeeに入ってよかった事の一つです。
その後、金融分野での事業提携が増えてきたところで、金融経験も生かせて元々やりたかった事業開発に異動させてもらいました。事業開発で一緒に働いていたどのメンバーも、今まで出会った事ないタイプで圧倒的な強みがありました。納得行くまで突き詰めて議論に付き合ってくれる上司にも恵まれ、もう一段階事業を作る上での考え方や基礎を学ぶことができました。監査法人のプロフェッショナルとは異なる、事業面での優秀なメンバーと密に働けることがキャリアパスにおいて良かったことの一つです。
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あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
サステナビリティ業務は、規制がないからニーズが生まれず仕事にならない、と良く言われたものでした。監査法人にいると、監査や税務、金融規制対応、有価証券報告書作りといった規制によって生まれるものが業務の多くを占めています。しかし、世の中のほとんどの仕事は規制があるから生まれているわけではありません。むしろ、まだ気づいていないニーズ、ウォンツを作り出すことこそ創造的で面白いです。
監査法人時代は、相手のIRや業界動向から、こんなことしたらクライアントの課題が解決できるのではないかと考えて上司に毎日のようにぶつけ、実際に顧客に提案してはそのフィードバックを元に改善していく日々でした。その中で、環境配慮型の融資商品作りや、PEファンド向けの海外ファンドからの資金調達のためのレポーティングやサステナビリティDDは、その中から実際に仕事になったものの一つでした。
freee株式会社は多数の中小企業の顧客とデータを抱えるプラットフォームとして、多くの会社から提携の話を持ちかけて頂いています。そこでは、パートナー企業の強みや課題と自社の強みと課題とをうまく組み合わせて、双方の事業が成功するアイデアを生み出し、世の中にぶつけながら改善していくことが重要です。うわべで見えない相手の現場のリアルな課題を理解しながら、新しいアイデアを思いつき実現させていくといった一連の仕事が、最も楽しい瞬間でもあります。

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仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
監査法人時代、色々なプロジェクトで心が動く瞬間はありましたが、自分を信じてくれて様々な機会を与えてくれた上司の方々には今でも感謝しています。チームに残らないと分かっているにも関わらず監査を教えてくれたマネジャーや、反対がある中でシニアにも関わらず会計士協会の専門委員に選出してくれた部門長、何も出来ない中でアサインしてくれたサステナビリティチームの方々に恩返ししたいと思っています。自分も想いのある若いメンバーに対して色んな機会を与えられるような存在になりたいです。
freee株式会社では最初に会計事務所向けのセールスに配属されましたが、本当に厳しい市場環境でした。freeeの事を好いてくれている会計事務所はほとんど存在せず、地方の大手事務所には競合企業がとっくに入り込んでいました。コールドコールしてアポを取りながら、全国出張して真摯に自社の価値を提案し、この市場を一件一件、徐々にひっくり返していくことは、個人としてもチームとしても印象に残る経験でした。もちろん、監査法人でプロジェクトを完遂した時も達成感はありました。しかし、ベンチャーで新しい市場を相手に、マネージャーから鼓舞されながらチーム一体となって案件を獲得する、目標数値を達成するといった感覚は、監査法人で経験したのとは違うものでした。
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公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
公認会計士の資格や経験が逆にキャリアを狭めるものになることには葛藤がありました。自分の中では、環境やサステナビリティの方が想いも強いし、学んでいる年数も長い。プレゼンや提案など、営業的なコミュニケーションも得意な方でした。しかし、監査法人で会計のプロジェクトで認められるほど、社内では会計の仕事が多く回ってくるし、転職する際も管理や経理のポジションが多くなります。ビジネスの基礎として選択肢を広げるために取得した会計士のスキルや資格が、逆に会計の仕事に閉じ込める要因になっている感覚がありました。
そこで、未経験でも採用可能性の高い30歳前に、事業会社かグループ内のコンサルティング会社に異動する事を意識して、仕事をしていました。また、監査法人内では評価はあまり気にせず規模の大きい花形プロジェクトを避けて、資金管理やサステナビリティといった会計以外のプロジェクトに注力するようにしました。一方で、これを認めてもらうためにも、唯一携わっていた会計のプロジェクトでは絶対的に必要とされる存在になる様に努力して、ある意味ワガママを聞いてもらっていました。今の仕事は、悩みながらチャレンジした仕事が結びついています。資金管理で得た知識や、サステナビリティの業務で社内外の様々な方と会って、提案アイデアを考える楽しさがあったからこそ、freeeでの新規事業に取り組めています。
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人生の目的と公認会計士という資格
サステナビリティな社会の実現に携わる仕事がしたいとの想いから、大学で環境経済を、大学院で環境金融を専攻しました。卒業後は、経済的に環境や社会問題を解決するような仕事をしたいと思っていましたが、漠然としていて、そんな仕事には出会えませんでした。そこで、社会課題環境に限らずどんなビジネスでも役立つスキルを獲得したいと考えたこと、また、監査法人グループにサステナビリティのコンサル会社があったことが、会計士を目指したきっかけです。PwCあらた監査法人を選んだのも、若くてフラットな雰囲気も魅力的でしたが、サステナビリティでの実績があることも重要な理由でした。
会計は色んな分野に関わるので、会計士の資格は色んな事に片足を突っ込む機会を提供してくれました。しかし、片足でなく両足突っ込まないと本質的には分かりません。今はその環境から離れて、freeeで事業に両足を置いて日本の生産性向上に取り組んでいます。会計をベースに持ちながらも事業に両足を置いているからこそ、社会を変えていっている実感があります。
私は、仕事で成しとげたいことが明確にあるのに、会計士の資格を活かすことに引っ張られがちでした。freeeでは、本当の意味で会計を土台として利用して事業を行うことが出来ていると思っています。自信を持って社会にとって意義のあることをするのが人生の目的だとすれば、少なくとも資格があれば実現できる様なものではありません。公認会計士の資格は、たまに役立ったら有難いなと思っています。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
バックオフィスからフロントへ、監査やコンサルといった外部者から事業会社へと進んできた結果、セールスや事業開発での新しい経験と新しい人々との出会い、また、事業への責任感が、自分の視野をより広げてくれました。今は社会課題を解決するような事業作りがまさに出来ているので、とにかく今の事業を成功させることが夢というか目標です。freee株式会社が社会から期待されている事は本当に大きいと感じています。その中で、数年前を振り返ると何であんなにも非効率で非合理的だったのか分からないけど、今では中小企業の世界で当たり前に存在しているような、本質的に意味のあるサービス作りをしていきたいと思っています。これが、今どうしても成し遂げたい事です。
その後はまだわかりません。今は社会課題の中でも日本の生産性向上の観点で取り組んでいます。今後も長く続けるかもしれないし、また大局的に日本や世界全体の流れを見た時に、自分の気持ちが熱くなるような”何か”に取り組むかもしれません。地方銀行との協業を通じて、素晴らしい資産がありつつも経済が衰退して支援も少ない地方を盛り上げたいとも思うし、中小企業分野に限らず金融とテクノロジーでやれる事もたくさんあると思っています。あとは、仕事としてでは無いかもしれませんが、お世話になった会計士業界のためにも役立てることがしたいと思っています。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
監査や会計以外の仕事、特に、事業作りや経営に関心があるのであれば、一旦会計士であることを忘れてキャリアを考えてみては如何でしょう。会計は既に大体学んでいるのですから、事業にに必要な営業やマーケティングや商品企画など様々な仕事を経験したら良いのでは無いでしょうか。なぜなら、一番大事なのはその分野の知識ではなく、マインド、姿勢、考え方だと思うからです。これは、ロジカルに考えても、本を読んだり授業を受けても、その仕事を本気でやっている一流の人と一緒に働かないと分かりません。
また、広い意味で同じ様な考えを持つ会計士仲間は大事です。事業側で活躍している先輩方や、監査法人を早々に辞めて関係ない仕事をしている仲間達からは刺激をもらいます。
会計士に限らないことですが、資格や専門的な経験を生かそうとしすぎると、スキルの幅が広がらずキャリアを狭めることにもなります。特にまだ若い方々には、会計は一つの武器として、次の武器を得るためのチャレンジをすることを勧めます。大先輩の受け売りですが、サッカーがやりたいならサッカーを練習しないといけない。監査はラジオ体操みたいなもので、いくらやってもサッカーは出来るようにならないよ、という言葉を若い会計士の方に贈ります。


