
株式会社PTP
管理グループ 取締役CFO
武本 柄徳
たけもと へいとく
売上拡大にも積極的に貢献。“アシストができるゴールキーパー”のようなベンチャー企業CFOが理想像
1982年8月5日生まれ(44歳) 兵庫県出身 東京都在住
関西学院大学 商学部 卒業

01
キャリアサマリー
【会計士を目指す】
「将来なにしたいの?」という問いに答えを持てなかった大学1年の冬。中学からエスカレーターで大学まで進んだ私にとって、大学から知り合う友人たちは目標を持っていて輝いて見えました。友人たちは、大学を選ぶ時にある程度自分と向き合った経験があったからです。
明確な答えがすぐに見つかるとは思っていなかったのですが、じっとしていられず、とにかく一歩踏み出したいという思いだけがありました。サラリーマンにはむいていない自覚があったので、とりあえず何か資格を取ろうと決めたのです。
いくつかの資格を探しているうちに、“経済界のお医者さん”というフレーズで紹介されていた会計士に心が惹かれました。ただ、当時所属していた体育会バスケ部の退部と引換のチャレンジだったので、相当の覚悟と決意を持ってのスタートでした。二回目のチャレンジで二次試験合格。大学在学中の2014年12月から新日本監査法人の大阪事務所でキャリアをスタートさせました。
【監査法人・大阪時代】
配属された部門では、入所間もないころから特定のクライアントだけではなく、企業の規模を問わず、多数のクライアントの会計監査業務・IPO支援・アドバイザリー業務を経験することができました。一年目からとにかくやみくもに頑張りました。あの頃の働き方はもう二度とできないだろうし、やりたくないですが、今の私を支えている大切な経験です。
上場会社の主査の役割を、それまでの慣習に捕らわれずに思い切って二年目の私に任せて下さったことは、感謝してもしきれないです。その経験は、今の私の仕事におけるすべての基礎になっています。社会人になって最初の数年の経験の密度は重要だと実感しています。
【監査法人・東京時代】
2011年7月から東京事務所に異動し、リーディングカンパニーの一つである自動車会社の監査チームでどっぷり5年間を過ごしました。
数十人のチームでのマネージャー経験やグローバルな監査経験は、誰でも味わえるわけではない貴重な経験でした。大きなチームになると、会計や監査の論点検討だけではなく、チーム運営上の事柄も多数あります。そこで楽しさを感じられたことで、新たな自分を発見することができました。
同時に、マネージャーとしての業務はやりがいがあったものの、会計・監査の専門家としてのキャリアに疑問を感じ出した時期でもありました。昇格試験では、キャリアに疑問を持ったままの私が昇格するはずがありません。暗い気持ちの中で自身を見つめ返すと、いつの間にか昇格のために仕事をするようになっているなと気付きました。昇格にビクビクして言いたいことも言えない働き方がしたくないから、資格取得を目指し会計士になったのに、いつの間にか一番なりたくなかった自分になっていたのです。原点に立ち返ろう、自分の好きなこと・やりたいことに向き合おう、と腹をくくり、まずは今の環境から飛び出そうという思いだけで退職を決意しました。
【コンサルへの挑戦と収穫】
2016年4月にPwCコンサルティングへ入社しました。転職活動を進める中で自分が本当に進みたい道は何だろうと深く悩んだ上でコンサルティングファームへの転職を決断しました。深く悩みましたが、今振り返ると、コンサルタントへの憧れが一番の決め手だったんだろうな、と思います。
入社後、決算支援業務のプロジェクトという会計士の得意分野にアサインされました。クライアントさんのために頑張るぞ、という意気込みとは裏腹に、空回りを繰り返す歯がゆい日々でした。課題を解決するロジカルな思考・プロジェクトマネジメントのスキル・生産性を追求する仕事のやり方、すべて私が求めていたことで、かつ監査法人時代から意識していたことでした。しかし、それらを主戦場として活躍するコンサルタントの方々とは比べ物にならないほど、自分のレベルは低かったのです。ただ、その中でも仕事のやり方や思考プロセスを身をもって学べたことは大きな収穫でした。
また、独立性が強く求められる監査業務より、コンサル業務はクライアントさんと同じ立場で仕事ができると思っての転職でしたが、現実は想像とは少し違いました。あくまで、クライアントさんにとっては、外部の人ということに変わりはないのです。
初めてのプロジェクトがなんとか終了し、次こそは今回の反省を活かしてコンサルスキルをマスターしてやるぞ、という意気込みと、外部からのサポートではなくクライアント側の人間としてチャレンジしてみたいな、という思いも持ち始めたのもこの頃でした。ただ、今の実力と経験のまま大企業に入ってしまうと、大組織の力学の中でフルスイングできない、とも感じており、今の自分にはベンチャーへチャレンジすることが合っているのかもしれないな、とぼんやりですが感じ始めていました。
【突然の出会い】
まだコンサルタントとしてチャレンジを続けるつもりだったのですが、出会いは突然やってきました。ベンチャーへの興味を飲み会の場で知人に何気なく話したところ、その数日後に、「CFOを探しているベンチャーキャピタルの人がいるので興味があれば会ってみないか?」と連絡が入りました。転職についてそこまで深く考えていないタイミングではありましたが、迷うよりもまずは一度会って話を聞いてみようというぐらいの軽い気持ちで会うことにしました。
ベンチャーキャピタルの方から話を聞くだけのはずだった会合の場に、社長も急遽合流し、社長と初対面を果たしました。あまりの展開の速さにびっくりしましたが数日後にはPTPで働こうと決意を固めました。
理由は大きく二つあります。一つは、TVに関するサービスを行うビジネスだったのでイメージしやすく、かつ、わくわくするような夢を感じられたからです。すなわち、会社の成長について私自身も同じテンションで夢を語ることができるからです。もう一つは私に「CFO未経験者であるからこそ来てほしい」と語った社長の言葉でした。豊かな経験は利点ばかりが注目されがちですが、一方でクリエイティブな発想を邪魔することもあります。他にはないビジネスだからこそ、クリエイティブな発想が重要と考えていたのです。まさに私のやりたいことを求められていると強く感じられたので、新たなチャレンジを決意しました。
入社してから時が経ち、様々なベンチャーの情報も入ってきますが、あの時に潔く決断してよかったな、と感じています。現時点の私にとっては、これ以上魅力的で、なおかつ、マッチする会社はないと今でも感じています。これからも固定概念を持たないスタイルで会社の成長に全力を注いでいきます。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
監査法人時代の経験は、マインドセット、スキルの二つに分けられます。
マインドセットとしては、監査の特性であるプロフェッショナル、独立性、チームプレーという点において、様々なことを学びました。これらは今も仕事の基礎として活かされています。まず、プロフェッショナルの点においては、自ら疑問を感じ、その解決にオーナーシップをもって本気で取り組み、人を感動させる成果を出すことを心がけて業務に励んでいました。この考え方の基となったのは上司の「完璧な会社はない。必ず何か改善できることはある」という言葉です。過去と同じことをやることで安心してしまったり、現状が正しいと安易に受け入れたりすることで思考停止になってしまっては、自ら疑問を感じる力は伸びません。例えば、一日一つ以上の検出事項を出す、という目標を掲げてやっていました。ある事実を簡単に受け入れるのではなく、何かを探し求めれば、意外に発見できるものです。その経験は、今でも固定概念を持たずに色々なアングルから疑問を持つことに活かされています。また、過去調書と同じものは作らない、という目標も掲げてやっていました。正直、時間はかかりましたが、クリエイティブな思考プロセスは養われ、現在にも活かされています。
独立性という点においては、客観的に率直に意見を述べることができるようになりました。年上で、社会的地位も上の方々をカウンターパートとして日々コミュニケーションを行いますので、足ががくがく震えるシチュエーションも多くありました。それでも会計士としての役割を再認識し毅然と意見を述べてきた経験は、誰しもが味わえるものではなく自信にもつながりました。それが取締役かつCFOである現在のキャリアに活かされています。
チームプレーという点においては、目的意識を持ち全体最適を常に意識すること、チームが円滑になるのであれば多少の自己犠牲は全く抵抗がなくなりました。いわゆる、三遊間のボールを拾いまくる、私の仕事のスタンスとして大切な要素であり、CFOの役割として活きています。
監査法人時代に培ったスキルでは、会計監査の知識、内部統制の理解、要所を心得たレビュースキル、ビッグデータ分析、大組織の方々の思考プロセスや意思決定プロセスに共感できること、上場会社に必要な制度の理解などがその後のキャリアに非常に役立っています。数十人の大きなチームにマネージャーとして属していたので、チーム運営のノウハウや経験も積み上げることができました。
補足ですが、早いうちからパワーポイントの作成スキルやプレゼンにチャレンジしておけばよかったと感じています。事業会社に入ると、何かを説明したり報告したり改革を提案したりする際には、ロジカルな資料作りは意外と求められます。私はコンサル時代に経験していたので、なんとか助かったと感じていますが、できれば監査法人時代に経験できればよかったなと感じています。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
経理、財務、人事、法務、経営企画等々のバックオフィス全般を統括しています。営業戦略やマーケティングについても、バックオフィスでできることはすべて関与しています。大組織では個別に部門があることがほとんどですが、小さなベンチャーの場合は、専任の担当を置くほどの規模もありませんし、余力もありません。そのため、すべて引き受けて、少ない人数で分担して取り組んでいます。
また、私の理想のCFO像としての役割を担当部門のメンバーに伝える際に、“アシストができるゴールキーパー”と題し、三つの視点で説明しています。一つ目は、打たれたシュートを確実にはじき返すミスのない業務遂行。二つ目は、打たれるシュート自体を減らすリスクマネジメント。この二つは、バックオフィスの役割としてよく語られる内容と大差ないと思います。特徴的な三つ目は、点が取れるようにアシストパスまで送り、売上に貢献する積極性です。お客様の前に立ち売上を上げることは営業の仕事ですし、営業が売るサービスの開発はエンジニアの仕事ですが、バックオフィスからもできる支援は少なくありません。会社のビジネスに深く関与し、バックオフィスからできる貢献はなんでもやる。これこそが私の理想的なCFO像です。
04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
キャラクターとして、以下が強みであり、私の好きなことです。
・目的に強くコミットし、高いオーナーシップで完遂する力
・三遊間に落ちそうなボールは、すべて拾う守備範囲の広さ
・立場や年齢に関係なく率直に意見を述べられる図々しさとコミュニケーション力
・なんでも笑いに変えるポジティブさ
ソフトスキルとしては、以下が強みだと考えています。
・ものごとを立証する思考プロセスと勘所
・業務プロセス構築に関するリスクの捉え方と統制のデザイン方法
・課題を発見する力と解決するロジカルな思考
・プロジェクトマネジメントのスキル
・生産性を追求する仕事のやり方
知識等のハードスキルは目的達成に必要であれば習得すればいいし、それでも足りないところは他から補えばいいと考えているので、大事なのはキャラクターとソフトスキルだと考えています。私の強みは、ベンチャー企業のCFOというポジション、現在の社長含め会社が求めているCFOへの期待とマッチしているため、とてもやりがいをもって取り組んでいます。

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仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
いくつか思いつく瞬間がありますが、一番思い出に残っているエピソードを紹介します。
初めて監査業務で主査を任された頃です。担当させていただいていたクライアントさんで、全社的な協力が得られず、なかなか対応が進まない問題がありました。試行錯誤を繰り返していたのですが、現場レベルではなかなか埒があかない状況が続きました。そしていよいよ、これ以上遅れると監査報告にも影響してしまうという局面をむかえてしまいました。クライアントさんのトップに危機的な状況であることを伝えて、動いてもらわなければいけない状況です。トップに直談判してなんとか乗り越えたのですが、訴えたのは若造である私で、しかもトップに“噛みつく”勢いで訴えました。かなり勇気を振り絞りましたが、クライアントさんの現場の方々の期待もあったので、強い思いを自分の言葉に込めることができました。
結果として、クライアントさんからの信頼を感じられるようになり、それだけでなく他社と比較して高いと言われていた監査報酬は「必要経費です」とおっしゃっていただけるようになり、さらには「当社にとっては不可欠な存在」と会計士冥利につきる言葉までかけていただけるようになりました。感動でしたね。クライアントさんのために監査業務に励むことは間違っていない、と自信を持てた瞬間でした。
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公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
会計・監査の専門家として働き続けるべきなのか、深く悩みました。当然なのですが、監査法人にいると専門家としての能力が強く求められます。それが自分の好きなことならよかったのですが、むしろ逆ではないかと感じ出したのです。
しかし、当時は、いわゆる“ロールモデル”通りにキャリアパスを進むことこそが正しいと思い込んでいたので、なぜモヤモヤしているのかわからず悩みました。モヤモヤし出すと自信もなくなっていくもので、自分の意見を発信することに臆病になり、自分の殻に閉じこもって一人で悩むことが多くなるという悪循環に陥っていました。
長い期間沈んでいましたが、まったく違うコミュニティに飛び込み、様々な価値観に触れ、自分の意見を通して見えてきた正直な自分自身を再発見したときに、「乗り越えた」という感覚を得ることができました。他人の意見や世間体ではなく、打算的でもない、自分自身の好き嫌いに正直に向き合えたとき、モヤモヤが吹き飛び、楽になったのを覚えています。
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人生の目的と公認会計士という資格
難しい質問ですね。人生の目的、と問われても……、楽しむことですかね。
私の場合、公認会計士という資格は社会への入り口でした。社会人になった当初は、資格だけは持っているものの何もできない状態でしたので、資格がすべてでした。
その後、監査法人でキャリアを積むうちに、周りが全て会計士という状態に慣れてきてしまい、資格ということを意識しなくなりました。資格を持っていることの強みを感じるようになったのは監査法人を離れた後でした。資格の強みは感じることができましたが、それを最大限活用して監査法人で勤めあげることや、独立するというキャリアは選びませんでした。心の底から楽しいと感じ続けることができなくなってしまったからです。そのため、資格はあくまで強みの一つとして位置づけ、自分が心底楽しめる今のキャリアを選択しました。
現在は、公認会計士という資格を、「数字に強く勉強好きですよ」というアピールが肩書一つでできる便利なもの、といった程度で捉えています。また、CFOとして様々な専門家の方々とコミュニケーションすることがありますが、資格を持っていることでフェアに話がスタートできる点も資格という肩書の威力かな、とも感じています。

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これから成し遂げたい事、将来の夢
これから成し遂げたいことは、現在の会社で、IPOを経て、B2C事業を立ち上げ、全世帯に弊社の製品・サービスであるSPIDERを普及させることです。一人当たり利益が1億円超えるような経営ができたらすごいな、とこっそり夢見ています。
そのあとは、考えていません。現在の目標にコミットしまくるのが自分の強みですしね。転職したてのころは不安でしたが、今はなくなりました。世の中に一つくらいは自分を必要としてくれる仕事やポジションがどこかにあるだろうからそのときに考えればいいだけ、と思えるようになったからです。今を大事にし続けられれば、経営にチャレンジし続けることもできるだろうし、監査もできるだろうし、会計士業界にも貢献ができると考えています。ただ、生涯現役だけは貫きたいですね。

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キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
好きと嫌いを知ること、そして、そのことに正直になることが重要だと感じています。他人にどう思われるか、世間体的にどうなのかではなく、自分自身が好きなのか、嫌いなのかという視点で考えることを繰り返してみてください。好きなことより、嫌いなことを挙げる方が簡単なので、嫌いなことを知ることから始め、消去法的に取り組んでもいいでしょう。格好悪くても、人に引かれることを気にする必要はありません。自分の好きなこと、嫌いなことを知り、正直に受け入れることが大事なのです。そうすれば、自分が目指したい道、いるべき場所、逆に、やるべきではないこと、不幸になる仕事が自然と明らかになると思います。
さらに、極端なことでも恥ずかしがらずに口に出すことも意識するといいと思います。変わったやつ、と思われることに躊躇せずに他人に自分の好きなことを伝えるようにしてください。そうすれば、生き生きとできる仕事やポジションが向こうの方から舞い込んでくるはずです。
広い世の中で一つくらい、自分が好きなことができて、嫌いなことは受け止めてくれて、一人の人として必要とされる仕事やポジションがあるはずです。心配しないで!前向きに、前向きに。


