会計士の履歴書
末永 貴志

株式会社ディスクロージャー・プロ

代表取締役

末永 貴志

すえなが たかし

粘り強さと実行力で企業を支える、信頼の会計士

1970年代生まれ 東京都出身 東京都在住

大学卒 2000年合格

末永 貴志

01

キャリアサマリー

2000

公認会計士合格、朝日監査法人(現 有限責任 あずさ監査法人)入所

2008

ITベンチャー企業に転職

2012

独立開業し、末永公認会計士事務所をスタート

2013

決算支援やスタートアップの資金調達支援を行う株式会社CSGコンサルティングを設立

2015

上場企業向けに法定開示書類の作成支援を行う株式会社ディスクロージャー・プロを設立

2020

M&A支援を行う株式会社経営の移行を設立

学生時代(小学生~大学生)は一貫して吹奏楽を続け、全員で1つの「作品」を創り上げていく喜びと達成感を味わう。理系で研究開発等の仕事に携わる父は、いつも帰りが遅く疲れている様子だったので、そのような仕事には就きたくないとの想いから、高校3年生の時に進路を変更し大学は文系の学部を選ぶ。大学に入ってから公認会計士の資格のことを知り、資格を取れば将来生活には困らないだろうという安易な理由から会計士を目指すことを決意する。

2000年に朝日監査法人(現 有限責任 あずさ監査法人)に入社し、法定監査業務やデューデリジェンス、IPO支援等のアドバイザリー業務に従事。新人の頃に担当した仕事で多くの起業家に会っていくうちに、自分は「監査する側」よりも「監査される側」「(経営に携わる)プレーヤー側」で仕事をしたいと思うようになると同時に、経営者になることへの憧れを抱く。

監査法人時代の私は、同期の中でも1,2を争うほど残業の多い働き方をしていたが、結婚を機に将来の働き方を考えるようになり、当時担当していた大きなプロジェクトの支援が終了するタイミングで退所することを決意。その後、義父の経営する機械メーカーで社長のカバン持ちをしながら、オーナー経営者による経営を学び、また、IPO準備会社に転職して、管理部長としてバックオフィスの体制構築等を経験する。これら「監査する側」と「監査される側」の経験、そしてオーナー経営者の下で学んだ「中小企業の経営」を武器に、2012年に独立開業し、その後は起業家としての人生を歩んでいる。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

あずさ監査法人では、法定監査(財務諸表監査、内部統制監査)の他、様々なアドバイザリー支援業務に従事した。新人の頃から4年以上に渡り関与したクライアントでは、当時、グループ子会社・関連会社が100以上あり、企業買収や組織再編を頻繁に行っていたことから、連結決算に関しては相当複雑な処理を毎期検討していた。また、大型の企業買収案件の財務デューデリジェンス業務やその後のPMI(決算体制構築支援)業務、IPO準備支援業務を複数経験させて頂いた。当時の私は、優秀な上司に恵まれ、比較的年次が若い頃から重要な役割も任せて頂き、分からないことは上司に相談すれば大抵のことは教えてもらえたので、わずか数年の間で本当に多くの知識を吸収し実務経験を積むことができた。

これら監査法人勤務時に身につけた連結決算等に関する知識や財務デューデリジェンス業務の実務経験、IPO準備支援の経験、企業買収・M&Aに関する知識・支援実務経験は、その後の私のキャリア選択に大きな影響を与えることとなった。独立開業しようと思えたのも、監査法人でさまざまな業種・規模・役職の方々と話す機会があり、それなりの実務経験を積んできた自信があったからだと思う。社会人になってわずか3、4年で上場企業の役員や重役と話をする機会があるというのは監査法人に就職していたからこそ経験できたことで、他の事業会社に就職していたら経験できていなかった。また20代の頃に監査法人で激務を経験したおかげで、その後の仕事において多少忙しい時期があっても、「あの頃に比べたら、まだ楽な方だ」と思え、困難な状況を乗り越えられる忍耐力も身に付いた。このようなビジネスマンとしての基礎を教えてくれたあずさ監査法人の上司・同僚には本当に感謝している。

末永 貴志さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

現在、私は3つの事業を立ち上げ、その経営に携わっている。

① スタートアップ企業の資金調達支援や経営管理体制の構築を支援する事業

設立からわずか数年で上場する企業があるが、そのような急成長企業の多くはベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家、あるいは上場企業等から資金調達を行い、成長スピードを加速させている。私は監査法人に勤務していた頃、事業計画書に魅力があれば他者から多額の出資を集められることを知り、その後の企業成長ならびに経営者の成功を目の当たりにしていた。その知識や経験を起業家に伝え応援したいという想いから、現在は、スタートアップ企業向けに事業計画書の作成や資金調達(エクイティファイナンス)をお手伝いする仕事をしている。起業家の方から新しいビジネスモデルや事業計画を聞くたびに斬新な発想や視点にワクワクするので、今後もライフワークとして続けていくつもりである。

② 上場企業向けに法定開示書類の作成支援や連結決算支援等を行う事業

上場企業では、四半期毎に決算短信を作成・公表し、有価証券報告書・四半期報告書の開示も義務付けられている。しかし、これが上場企業の管理部門にとって大きな負担となっている。これらの書類作成は、開示に関するルールに沿って作成する必要がある上に、作成ルールが毎年のように改正されることから、専門的な知識が必要で、担当者の育成や経験者の採用に多くの上場企業が課題を抱えている。連結決算業務や法定開示書類の作成などの専門的な業務は、人に依存しやすく、ブラックボックス化・属人化しやすいことも上場企業の経営幹部を悩ませる要因となっている。そこで、ディスクロージャー実務支援大手の株式会社プロネクサスとタッグを組み、法定開示書類の作成支援に特化したBPOサービスを立ち上げた。その支援は主に監査法人で実務経験を積んだ公認会計士が担当しており、国内トップレベルの品質でアウトソーシングサービスを提供できていると自負している。

③ オーナー経営者のEXIT支援を行う事業

近年は、中小企業のオーナー社長のEXIT戦略として、上場ではなく、バイアウト(会社売却、事業売却)が選択されるケースも増えている。日本国内におけるスタートアップ企業の資金調達額は年々増加傾向にあり、スタートアップ企業への投資は税制優遇を受けられるなど、政府主導でスタートアップ企業の成長を後押ししている。このような環境変化に対応し、バイアウトして上場企業等の傘下で更なる事業成長を図りたいと考える起業家向けにM&A支援を行うサービスを立ち上げた。監査法人での実務経験と、起業家としての経験を活かし、成長企業のEXIT戦略の実現を応援したいと思っている。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

私の強みは、目標を決めたらそれを達成するまで諦めずにやり遂げる粘り強さと、新しいアイデアを形にする実行力を持っていることだと思う。

私は、監査法人勤務時代にクライアンである経営者とお会いし話をする機会を多く得る中で、起業して経営者になることに憧れを持ち、その後はそれを達成するためのキャリアを歩んできた。オーナー社長のカバン持ちをしながら、中小企業における経営の意思決定で何を優先すべきかを学び、また、ITベンチャー企業では、社員の採用・教育や人事評価、バックオフィスの体制づくりなどを経験させて頂いた。これらの学びや経験は、現在の会社経営において大いに役に立っている。

また、法定開示書類の作成支援に特化したコンサルティング会社というのは、私が起業した当時は存在せず、「ニーズは高くないのでは?」「ニッチ過ぎるので上手く行かないのでは?」という先輩経営者からの助言もあった。しかし、監査法人と事業会社の双方の実務に携わっていた私は、困っている会社が数多く存在することを確信していたので、創業メンバーが辞めても私だけは諦めずに事業化に向けて邁進し続けた。その結果、今では100社を超える上場企業から支援を依頼されるまでになった。創業期の先行き不透明だった時期に苦労を共にしてくれたメンバーには、感謝してもしきれない。

末永 貴志さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

「経理部長が退職してしまい、次の本決算を締めることができる者が誰もいない。」
「2週間以内に過去5年分の財務諸表を遡及修正し、訂正報告書を作成しなければならない。」
「年内に第三者割当増資を実施し債務超過を解消しない限り、上場廃止基準に抵触し上場廃止になってしまう。」
このような切羽詰まった状況の会社からの相談を頂くことがある。

経営者や管理部門の立場からすると、このようなスケジュールがタイトで難しい業務を請け負うことは、様々な業務上のリスクを伴い、社内メンバーを疲弊させることに繋がるので、受注に関しては慎重になるべきである。しかし、一方で、会計士としての専門スキルや経験を活かすことができ、困っている会社の助けになることは、私たち専門家にとって仕事のやりがいにも繋がる。私は、こういった相談を頂いた際には、「最悪は自分一人となってしまってもやり切ろう」という覚悟のもと、困っている会社をできる限り支援することにしている。幸い、当社の社員も協力的なので、これまで何度となくクライアントの窮地を救ってきた。

このような仕事をやり遂げると、クライアントの担当から感謝の言葉を頂けることが多い。「貴社に頼んで本当に良かった。」「自分たちだけでは到底、期日内に終わらせることはできなかった。助けて頂いて本当に感謝している。」等の御礼の言葉を頂くたびに、この仕事をやってきて良かったと心の底から思う。そして、プロフェッショナルなサービス提供を通じて、世の中の役に立っていると実感できる至福の瞬間でもある。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだのは、監査法人に入所し監査業務を数年経験した頃である。

入所して数年は学ぶことばかりで刺激の多い毎日を過ごしていたが、クライアントワークにも慣れ現場のインチャージ(主査)も任されるようになった頃から、仕事のやりがいを感じられなくなっていった。監査法人で働くマネージャーやシニアスタッフは、会計士協会のレビューや金融庁の検査があった際に困らない調書づくり等が求められ、クライアントからは価値を感じて頂けないような仕事に携わる割合が増えてくる。クライアントから報酬を受け取りながらも、法人内の審査を担当する委員、会計士協会や金融庁を向いて仕事をしているかのような錯覚に陥り、その矛盾に悩み、仕事のやりがいを見失ってしまった。

私は、監査法人に入所した当初から、クライアントの作成した書類・データを監査するより、一歩踏み込み作成に関してアドバイスし、代わりに修正後の財務諸表を作るところまで支援するケースが多く、それが楽しかった。しかし、行き過ぎた関与を上司から指摘されるようになり、やりがいを感じられる仕事をしたいという想いから転職を決意した。現在は、クライアントワークを通じて「お客様から感謝される仕事をする」ことを会社の経営目標に掲げ、公認会計士としての経験を活かせる仕事ができているので、悩みは全くない。

07

人生の目的と公認会計士という資格

「人生の豊かさは思い出の数で決まる。」
これは私が尊敬する経営者の言葉である。

私は、自分が死ぬ瞬間、十分幸せな人生を過ごせたと思って死にたいと思っている。そのためには、ビジネスでもプライベートでも、たくさんの貴重な経験をして、たくさんの思い出を作りたい。

そして、ビジネスで様々な業種・規模の会社の様々なポジションの方と会って話す機会を得るのに、公認会計士という資格はとても役に立つ。私の場合、社会人になって初めて就職したのが監査法人であった。入社して3、4年目から大手企業の管理職や役員の方々へインタビューをする機会やディスカッションする機会を得られたが、このような経験は公認会計士という資格がなければ成しえないことであったと思う。また、子会社往査や投資先調査等の目的で、日本全国、場合によっては海外の会社を訪問できるというのも貴重な経験になる。私は、幸運にも入社して3年目に1人でアメリカ合衆国カリフォルニア州にあるサンノゼ(シリコンバレー)へ出張する機会を頂けた。現地で活躍する日本人経営者とお話できただけでなく、週末はサンフランシスコまで連れて行って頂き、一緒にクラムチャウダーを食べたのは、良い思い出となり今でも鮮明に記憶に残っている。そして、起業したいと思ったのも、その頃の経験がきっかけとなっている。

若い頃の社会人経験は、現在の私にとって、とても大きな財産となっている。その貴重な経験によって視野も広がり、現在の仕事やプライベートにも活かすことができていると思う。

末永 貴志さん

08

これから成し遂げたい事、将来の夢

私はこれまで、多くの先輩経営者の方々からアドバイスを頂き、困っている時は助けて頂いた。そのようなご恩に報いるためにも、困っている会社の経営者や悩んでいる経営者に対してアドバイスを行い、ビジネスの成長を支えられるような人間になりたいと思っている。

ディスクロージャー支援の領域では、サービスの認知度を高め、より多くの企業の経営課題の解決に貢献したいと考えている。さらに、支援範囲を広げ決算から開示までワンストップでサポートできる体制構築を目指している。

M&A支援の領域では、より多くの中小企業のオーナー社長にEXITすることのメリットを伝え、その実現に向けて様々なサポートをしていきたいと考えている。士業としての専門的なアドバイスをするのは勿論のこと、起業家として経験し学んできたことも伝えていきたいと思っている。

さらに、今後は、世界で活躍できるような企業の支援にも携わりたい。そのためにも、EXIT経験者の方々と協力して、経営に関するアドバイスのみならず資金面でも支援できる体制を創っていくつもりである。そして、公認会計士の資格を持つ方も含め20代、30代の若い世代の方々が、起業して新しいビジネスにチャレンジしたいと思える環境を創り、その支援に携わりたいと考えている。

末永 貴志さん

09

キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

多くの人は豊かな人生を送りたいと願って成功を追い求めるが、そもそも豊かさとは何か、成功とは何かを考えている人は少ないと思う。どんなにお金をたくさん稼いで高級車に乗って、高級な腕時計を身に着けている方でも、プライベートでは、家族とゆっくり過ごす時間を持てない、心から信頼しあえる仲間がいない等、決して幸せそうに見えない生活をしていることがある。一方で、いつも誰かと楽しそうに過ごし、幸福感が周囲に伝わってくるような方もいる。

キャリアを模索している会計士の方は、あなたにとっての「本当の豊かさは何か?」「成功とは何か?」をまず考えてみて欲しい。そして、人生の中で多くの時間を費やす仕事においてやりがいを感じられないのであれば、自分にとってやりがいを感じられる仕事を探すことをお勧めする。それは、もしかしたら監査法人内にもそのような仕事・ポジションはあるかもしれない。単に「給料が少し良くなる」「残業時間を減らせる」という理由だけで転職しても、長続きはしないと思う。そして、起業するという選択肢についても、是非、考えてみて欲しい。会計士としてのキャリアを積んできた方のポテンシャルは無限にあると私は思う。会計の分野のみならず、様々なビジネスを立ち上げ成功されている方々がいることをぜひ知ってもらいたい。

会計士を目指す受験生は、とにかく1年でも早く試験に受かることを優先してもらいたい。そして、最初は大手の監査法人に就職して、一通りの実務を経験することを私はお勧めする。やはり大手の監査法人は研修制度なども充実しており、優秀な上司・同僚に恵まれ、自己成長に繋がる機会が多いからである。監査法人で一通りの経験を積めば、その後のキャリアについては幅広い選択肢を持てる。1度きりの人生を悔いなく過ごせるよう、やりがいを感じられる仕事を選んでいただきたい。