会計士の履歴書
朴 賢大

のびしろ会計事務所

所長

朴 賢大

ぼく よしはる

数値解析とITを武器に、クライアントの「お金」と「時間」の最大化を追求する、発明家タイプの会計士

1979年11月3日生まれ(46歳) 福岡県出身 福岡県在住

東京大学 工学部電子工学科 卒業

朴 賢大

01

キャリアサマリー

2007

新日本有限責任監査法人福岡事務所に入所。 上場会社の法定監査業務やIPO支援業務、国立大学法人監査、PPP業務に従事。 スタッフ・シニアとして8年間勤務。

2014

税理士法人恒輝に入所。 主に診療所や医療法人、介護事業所の税務顧問を補助し、所得税や法人税、相続税の申告業務に従事。1年間勤務。

2016

のびしろ会計事務所を開業。 医療法人や介護事業所を中心とした税務顧問業務、上場準備会社のIPO支援業務、社会福祉法人の会計監査業務などの業務に従事。開業して2年が経過。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

理系の大学を卒業後、田舎で研究者をする決心もつかず、何か資格をと思い、目指したのが会計士でした。帰郷して勉強した後2007年に会計士二次試験を通過し、そのまま実家のある福岡で仕事をしようと『新日本監査法人 福岡事務所』へ入所しました。福岡事務所では上場会社から会社法、銀行から大学、上場準備やDDまで、大小、種類も様々なクライアント、契約があり、なんでもやって全員で頑張る、といった様相でした。私もいちスタッフとして色々なクライアントに伺いました。もともと飽きっぽい性格だった私にとって、色々な業務に携わることができる環境は性に合っていたと思います。

監査法人で8年間を過ごし、会計人としての基礎、仕事の段取りやPCのスキル、案件協議の進め方など、これから社会で生きていく方法をたくさん教わりました。8年間はとても忙しかったですし、もう限界というほど苦しい時もありましたが、そんな思いをしたからこそ身に付いたものもあると思います。

しかし、監査法人での勤務を続けているうちに、物足りなさも感じるようになっていました。監査人という立場上、クライアントの提供する情報を事後的に検証することになりますが、今度は情報を作る側で仕事をしてみたいという思いを持つようになってきました。これが、次のキャリアとして税務業務を選択したきっかけだったと思います。

8年目の12月に、情報を作る環境を求めて税理士法人へ転職しました。100%税務業務に携わる環境が望ましかったので、会計士・税理士事務所ではなく、税理士事務所を選択しました。特につてもありませんでしたので、ハローワークに通ったりして探しました。何度か採用を断られることもありましたが、なんとか次の職場を得ることができました。

税理士法人には1年余り在籍し、諸税申告、月次訪問を経験しました。私の進言を受けて実際にクライアントのお金が動いていきます。それを数字に表現する段になって、思っていた以上の責任の重さを感じ、また、前よりも良くなったと感謝されることに達成感を感じました。もっと期待に応えようと、提供する数字の精度や有用性にこだわって試行錯誤を繰り返すようになり、日中業務から帰宅して家族と過ごした後、子供が寝静まってからパソコンに向かって資料を工夫したりプログラムを作成したりと作業していました。労働時間は長かったですが、やりたいことに取り組むことは何より楽しかったので苦ではなかったです。

試行錯誤を繰り返すうちに、提供する情報は、どれだけ効率よく「時間」を使い、どれだけ多く「お金」を残すか、を端的に測定するものであるべきだと考えるようになりました。タブレットを使った日次決算報告や事業計画とライフプラン、間をつなぐ役員報酬をまとめた提案など、積極的にIT機器の活用や数値解析、シミュレーションモデルの作成などに着手しました。当時はサラリーマンでしたので、自費でタブレットやスキャナー、ソフトを買って試していました。

お金の研究は税理士事務所でできましたが、時間の効率利用に関する研究は税理士事務所では難しく、どこかフィールドがないかと模索していました。ちょうどその折、『九州大学医療経営・管理学専攻の大学院』で学生募集をしていましたので、九州大学の看板を借りて時間の効率利用に関する研究の機会を得ようと応募しました。大学院は昼間に授業があり、税理士法人勤務との両立は難しかったので、入学を契機に税理士法人を退職し、会計事務所を開業しました。

朴 賢大さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

現在、開業して2年が経過しました。
大学院に通うことがきっかけで始めた会計事務所でしたが、税務顧問、社会福祉法人の会計監査、上場準備会社のJSOX支援、投資ファンドや他の会計士の監査のお手伝いなどしながら生計を立てることができています。

会計事務所では“お金と時間がうまれる会計”を目標として、顧問先の経理・財務関連の時間効率最大化、資金最大化を実現する仕事を心がけています。ITを活用してスマートフォンで完結する丸投げ記帳の仕組みの構築や、税と社会保障、家族構成を加味した人生のキャッシュ・フロー最大化をシミュレーションするプログラムの開発が特徴的なサービスだと考えております。

大学院では、病院での外来患者さんの待ち時間を減らすことを目的に、病院内に制約理論ベースの業務管理システムを構築・運用する研究を行いました。各職員がタブレットやスマートフォンを持ち、端末から同期された業務情報にアクセスし、ホスト側が全体最適を基準に指示する優先順位に基づいて業務を行うという仕組みです。大学院に入学することで研究フィールドである病院も紹介いただき、実際に開発したシステムの運用にこぎつけ、時間の効率利用に関する研究の一歩を踏み出すことができました。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

私独自の強みは、公認会計士として監査法人で積んだ経験と、電子工学出身であることだと思います。
会計という“結果”の立場を理解しながら、数値解析や統計学の基礎、プログラムの初歩や情報機器の使い方をある程度理解することで、“結果”につながる過程を定量化できることが現在の仕事に生きていると思います。

キャッシュ・フロー最大化プログラムと言うと大変立派なものかのように聞こえますが、きっかけは「来年の役員報酬、いくらにしたらいいかな」というお客様からの問い合わせでした。最初の回答は、翌事業年度に限った2案の比較でした。退職金も考慮するために、翌事業年度だった計算を退職までの事業年度に伸ばし、2案じゃわからないということで、案を数千通りに増やして極大値を求められるようにし、今の形になりました。院長と奥様の役員報酬を変えれば、社会保険はこうなって、法人税はこうなって、所得税はこうなって、退職金原資はこうなって、最後に残るお金はこうなる、という理屈はわかっていますので、この理屈をプログラムで定量化していきました。

また、医院開業には立地や新患数、リピート率、単価、人員配置、診察時間など様々な成功要因があると言われていますが、その中でどの因子が最も強く利益に貢献するのかははっきりと答えられませんでしたので、多変量解析を使って定量化しました。医師も理系ですので割と受けがよく、開業を目指す先生方へのアドバイスとして利用しています。

ほかには、書類をすべて入力する会計データの作り方は手間がかかるし属人的に感じ、銀行やクレジット、レジなど、すでに存在するデータベースを効率よく加工して効率よく会計データを作ることができないかと考え、クラウド会計を積極的に使うようになりましたが、中々進みませんでした。お客様に聞いてみると、原因はパソコンに触るのが面倒というご意見でしたので、スマートフォンやスキャナーを組み合わせて使うことで、お客様がパソコンや会計ソフトに触らなくても、事務所側に必要な情報がすべて集まり、帳簿や申告を完了することができるような仕組みを作りました。

朴 賢大さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

監査法人に勤務していた頃に実際の不正事例を経験しましたが、色々と考えさせられました。不正事例が決着するまでおよそ1年かかりました。通常業務が終わった後に、不正事例の調査や審査資料の作成等進めることになり、どうしても時間がかかりました。なんで自分がこんなに大変な思いをしなければならないのかと、最初は実行者への恨み節もありましたが、審査資料を何度も作り直すうちに、この人だけの問題ではなくて許した仕組みが悪いのかもしれない、という考えに至りました。当事者は憔悴の果てに病院に通っており、周りの人間は事後対応に追われ、関わった人は誰も幸せではありませんでした。このことが、数字を作る側に行こうと思うようになったきっかけの一つかもしれません。もっと前の段階で止めることが大事なことではないのか、と考えるようになりました。

また、お客様に喜んでもらった時はとてもうれしく感じます。税務やコンサルティングサービスは需給関係が直接的で、感謝がストレートに伝わってくるという点でやりがいを感じます。前よりもお金が残るようになった。融資がついて開業できるようになった。事業の先行きが見えるようになった。去年より税金が減った。記帳作業が楽になった。やることがはっきりして気持ちが楽になった。様々な理由がありますが、自分のやったことに対して感謝されることは単純にうれしいです。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

独立を決意して監査法人を退職したときは悩みました。当時は結婚して2人目の子供が生まれたばかりでした。今でこそ、退職してからも色々な仕事があることを体験しておりますが、当時はそのような確信もなく、ただ、自分の思うことをやってみたい気持ちは抑えきれずにおりました。
収入の目途も立っていない状況でしたので、周囲には反対されました。2年間かけて結果的に税理士事務所を経ることで周囲の了承を得ることができました。

いざ独立しますと、漠然とした不安感がつきまといました。第一にお金の不安がありましたし、世の中から隔離されたような、自分が必要とされていないような不安もありました。月に1日位、先のことを考えながら堂々巡りになって夜が明けることもありました。税務顧問はお客様を問わずなるべく引き受けましたし、税務署の応援、セミナーの講師など、断った仕事は無かったと思います。とにかく余っている時間をお金に変えて、社会とのつながりを持ち続けるために、何でもやるようにしていました。不安を意識しなくて済む位にがむしゃらに努力することで開業当初の不安を乗り越えました。

『BridgeConsulting』など独立支援の窓口もありますので、周囲の理解を得るためにも、このような窓口を積極的に使って収入面の不安など解消しておくことをお勧めします。

07

人生の目的と公認会計士という資格

事務所の目標として“お金と時間が生まれる会計”を掲げておりますが、人生の目的も同じです。自分も含め、自分と関わりを持つ方が、より無駄がなく効率的に、より豊かになることを目標に自分ができることをやっていきたいと思いますし、そのために役に立つと思ったことにはできる限りチャレンジしたいと考えています。

公認会計士は会計・監査の専門家として様々な会社の会計記録に触れることができ、結果からものごとを評価するための材料をたくさん得られる立場にあると思います。より少ない資源で、より大きな結果を得るためには、行動のベクトルを結果へ合わせることが大事で、結果をイメージするための教養や技術はとても大切なことだと思います。

手の届く範囲は限られていますが、私共がお手伝いすることで、お金が回らなかった事業がなんとかお金が回るようになったり、面倒な作業が減って以前より時間にゆとりが持てるようになったりと、前と比べて少し良くなったと感謝いただけることは単純にうれしいことですし、私共の存在価値だと思います。そして、今の仕事をするときに、公認会計士の資格は必要で、人生の目標を達成する上で、とてもありがたいものだと感じています。

朴 賢大さん

08

これから成し遂げたい事、将来の夢

事務所としては引き続き、“お金と時間が生まれる会計”を目標に行動したいと思います。
クラウド会計やスマートフォン、スキャナーなどのITツールを組み合わせた“1日3分”記帳丸投げプランの標準化、TV会議を使った月次面談業務の実用化、申告業務のクラウド化を行い、品質をなるべく落とさずにコストの低減を目指したいと思います。税務調査や金融機関対応など地域的な限界はありますが、誰でもどこでもサービスが受けられ、また提供できる仕組みを作ることが目標です。
また、6月には自身で初めてサインする監査報告書の提出が控えており、決算監査にしっかりと取り組みたいと思います。

ほかに、大学院で試行しました制約理論ベースの業務管理システム開発を引き続き進めたいと思います。前回試行での反省点はシステムに組み込めましたので、次はフィールド探しになります。間に合えば、今秋の『病院管理学会』や『日本医療マネジメント学会』で発表し、興味をいただけるような病院に手を挙げていただければと思っております。

もっと先のことはわかりませんが、技術の進歩が目覚ましい昨今、何でも試して吸収しながらもっと快適に過ごせるような仕組み作りを続けていきたいと思います。

朴 賢大さん

09

キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

難関試験を突破し監査法人に就職したところで、受験生の頃に思い描いていた姿と今の仕事のギャップに失望する経験をされている方もいらっしゃるかもしれません。私自身もそうでした。今となっては、仕事の段取りの仕方、エクセルやアクセスの使い方、資料の整理の仕方、目上の人との接し方など、監査法人で教えてもらった役に立っていることがとても多くあります。何度もやり直したり怒られたり理不尽に感じたり、色々納得いかないこともあると思いますが、きっと無駄なことはありません。
また、主査になってみると会社の情報が自分に集まってくるようになり、色々な数字の背景がみえてきます。その分責任と大変さはありますが、仕事の面白みは出てくると思います。

そして、会計士を必要とするフィールドは監査法人の外にも大きく広がっていることを、退職して初めて実感しました。進む方向に迷いがあるなら、次へ進んでみるのも一つの選択です。きっと何とかなります。無責任という意見もありますが、やめるほどの決断をしたのであれば、自分の選択した道を信じて必死で努力できます。頑張っていれば誰かが助けてくれます。『BridgeConsulting』のような支援団体もありますので、上手に使えばいいと思います。

最後に、独立を目指すなら、自分なりの武器を用意することが必要だと思います。私の場合はクラウド会計を使った効率的な記帳代行と数値シミュレーションによる資金最大化、ヘルスケア分野への特化でした。得意分野ややりたいことは人それぞれですので、ご自身で見つけるしかないことです。はっきりとした答えがなくて申し訳ないのですが、一つだけ言えることは、やったことのないことはたいてい上手くいくこともないので、勤務中に色々試したり、話を聞いてみることをお勧めします。
長い文章を読んで下さり、まことにありがとうございました。