
株式会社日本人材機構
創生事業本部 マネージャー
佐藤 祐司
さとう ゆうじ
経営人材の紹介会社で自らも業務サポートにあたる。地域の将来を担う地方企業に新しい風を吹き込む
1970年代生まれ 千葉県出身 千葉県在住
千葉大学大学院 自然科学研究科デザイン科学専攻 卒業

01
キャリアサマリー
中央青山監査法人に入所。
PwCあらた有限責任監査法人に入所。J-REITを中心とした資産運用業界への証明業務
株式会社スピアヘッド・アドバイザーズに入社。地方企業の事業計画策定支援、財務や事業のデューデリジェンス
株式会社日本人材機構に入社。地方企業への経営人材の紹介、業務サポート
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
監査法人に入所する少し前、廃校となった旧池尻中学校舎が複合施設IID 世田谷ものづくり学校へとリノベーションされていく中、その現場事務所でアルバイトをしていた。その時、不動産がその運用の仕方次第で、まったく違ったかたちで上手く活用されていくのを目の当たりにした。2001年のJ-REIT市場誕生を機に、不動産がその運用による将来収益で評価されるようになってきている。そんな話を聞いたこともあり、J-REITの監査をしたくて資産運用業界の監査を担当する部署への配属を希望した。
監査法人での最初の試練は、信託銀行での内部統制の証明業務だった。初日に現場に連れて行ってくれた上司は他の業務に忙しく、その後はひとり。多種多様で膨大な金融商品の取引担当者に話を聞きながら、帳票の山に埋もれていた。この上司が忙しく取り組んでいたのがJ-REITの監査だった。ぜひそのチームに入れてほしいと志願し、次の期から監査法人を辞めるまで取り組んだ。2008年のリーマン・ショックを挟んでの10年間で様々な論点が噴出し、ひとつの取引の取り扱いについて数時間議論し続けることもあった。
他にも資産運用業界の企業を担当し続けることで、それぞれの企業の経営者がどの時期にどのような決断をするかによって、大きく明暗が分かれていくことを目の当たりにした。そうした中で、企業の経営にもっと近づいて仕事がしたいと考えるようになった。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
監査法人から転職し、事業計画策定支援の仕事をする中で、プロジェクトを進める上でのキーパーソンの重要性を認識させられることが度々あった。新規事業の立ち上げに情熱をみせる経営者のもとに人材や資金があつまる場面や、滞留するプロジェクトに新たな風を吹き込む推進者が加わることでスムーズにものごとが動きだす場面。
そんな中で地方企業への経営人材の紹介を行う、今の仕事に出会った。地方企業の経営者が進もうとしている将来の姿を一緒になって考える。そして、それを実現するために必要となるリソースを検討し、その補充のお手伝いをする。
経営者と候補者、お互いが理解し合って共にやって行こうという状況をつくるには、会社の状況をよくみて、候補者のできることをよく聴くことが必要になる。この両面を果たすため、事業会社の経営経験者、エグゼクティブのエージェントなど多様なバックグラウンドを持つ社内のメンバーと協力しながら取り組んでいる。
案件によっては、自分自身がクライアント企業に入り込んで業務サポートをすることもある。営業部門の予算策定について、他社事例を含めた内部統制の観点からのアドバイスで納得感のある計画に導いたり、設備投資の検討プロセスについて、将来キャッシュ・フローとの関係で議論を深めて効果的な投資へ軌道修正したり。会計士の目線から企業運営に意見できるところ、すべきところはとても多い。外部の人材を採ったことのない地方企業に、新たな風を入れるきっかけになると感じている。
04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
建築家になることを目指していた学生時代、講義で出される課題には飽き足らず、いわゆるコンペへの応募に明け暮れた。例えば、公共施設の基本設計段階での公募コンペや、面白いところでは『小堀遠州の家』というお題で、歴史上の人物がもし現代に家をつくるとしたらどんなものとなるかを考えるアイデアコンペなど。先輩後輩含め色々なメンバーと組んでは、数多くの提案をつくった。
いつも何かお題が頭にあって、それに応えるアイデアの幅を広げるために色々な人の話を聞きに行ったり、様々な建築を訪れたり、本を読んだりという日々を過ごした。建築に関わる者はどこに行ってもみるべきものがある、と先達から言われることが多かったが、これは今の仕事でもまったく同じ。
地方企業の将来の姿を考えるとき、もちろんそれぞれに特有の課題がある。しかし、その企業のことだけをみていても解決策を導くことはできない。いつも色々なところにアンテナを張って、情報収集に余念がないようにしておきたい。
会計士としての思考過程も役立っている。新たな取引に当るとき、既存の会計基準にない取引であれば似ているものから類推して処理を考える。この流れが身に付いていることで、より柔軟に考えを巡らせることができる。

05
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
仕事をする一番のモチベーションは、その仕事でなければ交わることのない人々と出会い、一緒に何かをつくり上げていく感覚を味わうこと。これは、監査でもコンサルでも人材紹介でも同じ。チームの仲間はもちろん、クライアントを含めた皆で本気で議論して何かが進んだとき、心が動く。
情けない話だが、ふとしたときに思い出すのは失敗の経験かもしれない。なぜこのタイミングでこんな話が出てくるのか、という場面には大きなことから小さなことまで何だかんだと立ち会ってきた。
中でも一番これは不味いなと思った瞬間は、よりによって深夜に訪れた。詳しい内容をここでは紹介することはできないが、このときは本当にチームの仲間に助けられた。彼らと一緒に議論することができたから正しい決断が出来たと思う。すぐにその事実をクライアントに説明すると、彼らはほとんど迷いなくその考えを受け入れてくれた。むしろ、このタイミングでも言ってくれてありがとうございます、という対応をしてくれた。そのおかげで、その後の巻き返しもスムーズに行うことができた。
ひとつの目標に、クライアントも含め皆で向かっている、という実感を持った経験だった。もちろん二度とこんなことはないようにと日々精進している。
06
公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
会計士が何をできる人かは、ほとんど知られていない。でもなぜか会計士だというだけで信頼感を得られることもある。一方で、細かなことに煩いのだろうとみられることもある。そのため今の仕事では、会計士であることを相手に伝えないこともある。
とは言え、会計士という仕事で得たものに頼って働いている訳で、それは何かと考えるとアフォーダンスという言葉が思い付く。建築やデザインの世界では、“人をある行動へと結びつけるために必要なヒントを示す事”という意味で使われる。例えば、人が椅子に座りたくなるのは、アフォーダンスを生むかたちをしているから。元々はギブソンという心理学者の言葉だ。
繰延税金の監査で将来計画をみるとき、どうやって準備してもらうか。外部の人材を採ったことのない経営者に、どうやってその活用を考えてもらうか。必要性ばかりを訴えては、いくら提案してもアフォーダンスを生まない。自発的な行動を導くには、どう相手が自分事として考えるようにするかというもうひとつの問題があって、その両方が重なったときにはじめてうまくいく。
まずは自分がどれだけ自分事と考えられるかが大切だし、相手が何のために行動するのかを理解することも必要だ。相手によっても、取り組む課題によっても対応は変わる。これからも悩みながらになるが、アフォーダンスを生む提案をしていきたい。
07
人生の目的と公認会計士という資格
旅行に行ったり、美術館を巡ったりするのが好きだ。これと同列で語るのは少し違うかもしれないが、仕事でも異質な環境に入り込み、新しいものに触れて行きたいという想いがある。そこにあって会計士であることは、大きなアドバンテージだと思う。
監査クライアントの海外での公募増資に向けて証明業務を担当したときのこと。まだ世に出る前の目論見書について、発行会社、証券会社、弁護士と丸一日ずっと会議室にこもってページ毎に確認し、各専門分野の観点から意見をぶつけ合う。会計士という専門家だからこそこの場に居合わすことができると感じた象徴的な場面だった。
PwC時代には、アジア各国のスタッフが香港に集まって取り組む社内プロジェクトに参加した。数ヶ月間一緒に働き遊ぶ中で、それぞれの国の文化や考え方を体感することができた。日本では失われつつあるハングリーな気持ちを感じる機会でもあった。
そこからは仕事も立場も変わってはいるが、地方企業に業務サポートに行ったり、公官庁のプロジェクトに参加したり、会計士になったことをテコに色々な経験をすることができている。ここからもっと選択肢を広げていけるように、会計士であることをうまく活用していきたい。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
鹿児島にある『マルヤガーデンズ』という商業施設をご存知だろうか。独立した店の集合体であるデパートメントストアではなく、お店やそこを訪れる人すべてが有機的につながり合うユナイトメントストアとして、つねに新しい何かを生み出す可能性を秘めた場所となることをコンセプトにしている。会計士の方が開業時の経営者として、地域の資産となるようにとつくられた。これができる前と後では、まったく別の街になったという市民の方もいる。
漠然としたイメージとなってしまうが、こういった存在をつくり出したい。
例えば、今の仕事で関わる地方の企業や銀行では、温泉街の旅館での管理業務の集約や、フィンテックで不要になった支店の統合が起きている。人口減少が進む中、この流れはもっと進むはずで、更なる一石を投じることで何かをつくり出すことができるかもしれない。また、副業兼業が当たり前になる中、いくつかの企業で同時に仕事をすることで、これらを結び付けて何かをつくり出すことができるかもしれない。
いずれにしても一人では何もできないので、これまでご一緒させて頂いた方々、今後関わることになる方々と協力して取り組んでいきたい。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
今の仕事で、東京から地方に移って活躍する人から、東京の友人達の中でのプレゼンスが上がったという話をよく聞く。同じような環境で働く仲間では話すこともマンネリ化してくるが、そこにまったく違う話題を提供できるので重宝されるらしい。
自分自身も、建築士だらけの学生時代の友人達に会計の話をしたり、会計に関わる仕事をしている人が多い監査法人の元同僚に人材紹介の話をしたりするのは面白いし、逆に改めて違った観点からの話を聞くことが仕事の役に立つこともある。これは、少しずつ道を変えてきたからこその役得だと思う。それぞれのタイミングできっかけはあったけれど、後から考えてみれば最後は強く興味を持ったものに思い切って挑戦してみたということでしかない。それでも、新しい環境に飛び込んでみると、そこでは思ってもいない展開が待っていて、それを楽しんでいる。昔よくやっていた、細かな目的地は決めずにバックパックだけを持って旅行に出ていく感覚に近いのかもしれない。
新しい動きをしてみることで選択肢が広がっていく。まずは、自分が興味を持つことになる何かに出会えるように、どんなことでもいいからいつもと違った動きをしてみてはどうだろうか。


