会計士の履歴書
林田 絵美

株式会社キズキ

経営企画部/ビジネスカレッジ事業部 マネージャー

林田 絵美

はやしだ えみ

「会計士としてどんなキャリアを積むべきか」より先に「自分としてどんなキャリアを積みたいか」を決めるための判断軸を持つ

1992年6月29日生まれ(34歳) 埼玉県出身 東京都在住

早稲田大学政治経済学部 卒業 2013年合格

林田 絵美

01

キャリアサマリー

2013年11月

公認会計士論文式本試験 合格

2015年3月

早稲田大学政治経済学部 卒業

2015年4月

PwCあらた有限責任監査法人 金融部門 財務報告アドバイザリー部 入社

2018年6月

同監査法人退社

2018年8月

マイクロファイナンスを学びに、カンボジア現地NGO「Khemara Cambodia」へインターン

2018年9月

株式会社キズキ 経営企画部 入社

2019年4月

うつや発達障害の方のためのキャリア支援事業『キズキビジネスカレッジ』を新規立ち上げ

2020年2月

在職中・休職中の方向けの新サービス(キズキ就職転職ゼミ)開始

2020年6月

キズキビジネスカレッジ2拠点目オープン

2020年12月

キズキビジネスカレッジにて新サービス(定着支援事業)開始

3年間の監査法人時代の後に、教育福祉系スタートアップ株式会社キズキで新規事業を立ち上げました。現在は同事業のマネージャーを行いながら経営企画を兼務し、全社のオペレーション改善・KPI管理等の仕組み作り・新規事業立ち上げ等を行っております。

◆『ザコい自分は公認会計士を目指すしかない』と覚悟した高校時代

私はあまり器用に世の中を渡れるタイプではなかったので、中高時代は学校生活や人間関係で躓く事が沢山ありました。特に高校生の頃は自分の未来にかなり悲観的になっており、「どこでも/誰とでも上手くやってけるタイプではない自分」が、今後くいっぱぐれず生きてくには、それなりの準備が必要だと焦っていました。取り敢えず、もし1つの会社で上手く行かなくても別の会社で仕事についたり、独立したりできるように、「手に職をつけられる資格」を取りたいと思いました。

またそれとは別に、何か「生きづらさ抱える人」のニーズに応える仕事がしたいと思っていました。当時はかなり漠然としていましたが、「ビジネス」でそこに携わりたいという意向はあり、ビジネスを学びたいと思っていました。

このような経緯から最終的に、「公認会計士になろう」という結論にたどり着きました。

◆会計士試験勉強の大学時代

大学1年~3年の約2年半、東京CPA会計学院で勉強していました。勉強法のコツは特にありませんが、基本的には「答練で結果を出していく事」「悪かった結果は追求する事」「良かった結果に油断しない事」に拘っていた気がします。

◆合格後の大学生活

色々なバイトをして、色々な国に行きました。特にロンドンでは、ソーシャルインパクトボンドとよばれる社会的投資のスキームを開発した「Social Finance」というNPOや、PwC Londonの社会的起業家支援を視察させて頂きました。例えばPwCの支援先のレストラン「Brigade」では、ホームレス等の方を対象として、料理やホスピタリティなどのスキルや自信の獲得を通じて就労支援を行っていました。本当に刺激的な経験でした。

また、「『生きづらさ抱える人』のニーズに応える仕事がしたい」という気持ちは続いていたので、他の会計士の方たちと一緒に「プロボノ」という形で、様々な社会課題解決に取り組むNPOと関わる機会を頂きました。プロボノは監査法人入社後も続けていました。

合格後の過ごし方はよく相談を受けますし、私も悩みました。ただ結果的には、この1年間で色々な世界を見て、人と会って、経験を積めた事が、今のキャリアに生きています。働き始めると忙しさでどうしても視野が狭くなりがちになりますからね。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

監査法人時代

2014年12月からPwCあらた有限責任監査法人金融部門 財務報告アドバイザリー部で学生非常勤をし、翌年4月に正式入社しました。大手金融機関で次の業務に関わっていました:
・会計基準コンバージョン
・内部統制や業務プロセスの検証/改善提案
・海外現地での決算支援
・組織再編プロジェクト
一番印象的なのは、最後の「組織再編プロジェクト」で、コンサル・Tax・Dealsなど、監査法人以外の方も幅広く関わる大規模なプロジェクトのPMO業務でした。仕事のスピード感や求められる成果物がそれまでの業務と全然違い、色々と追いつかずに超優秀な上司には涙が出るほど迷惑かけました。でも本当に鍛えられた1年間でした。最終的に転職しましたが、ファーストキャリアは監査法人で良かったと今でも思います。

転機となった「発達障害の診断」

転機となったのが、監査法人入社1年後に、発達障害(ADHD)の診断を受けたことです。仕事でのミスの連続で、罪悪感で精神的に追い込まれ受診しました。自分の欠点を全て分かった上で選んだ「公認会計士」という職業だったので、「これでもダメだったか」という悔しい気持ちでいっぱいでした。ただ診断を受けたこと自体は、それまでの人生で「なんか人と違うぞ」と感じていた要因が徐々に解明されていったり、発達障害用の薬の服薬で仕事がやりやすくなったりしたので、結果的にポジティブな出来事でした。

『うつや発達障害の方』のニーズに応える仕事がしたい

それ以降、障害の事や、脳・メンタルの事をひたすら勉強しました。その過程で、自分と同じ様に、社会人になるまで自身が発達障害である事を知らず、メンタル不調などの二次障害により精神科を受診し、初めて自分の障害を知る方が一定数存在する事も知りました。ずっと抱えていた「『生きづらさ抱える人』のニーズに応える仕事がしたい」という気持ちがより具体的に、「『うつや発達障害の方』のニーズに応える仕事がしたい」となりました。
そんな頃に会ったのが株式会社キズキ代表の安田です。安田のSNS投稿がきっかけで会い、「発達障害の方のための会計士の予備校を作りたい」と漠然と考えている事を話しました。その時に安田から「うつや発達障害の方のためのビジネススクール」の構想を聞きました。何度か会って話すうちに、一緒にこの事業を創りたいと思う様になりました。目標は「『うつや発達障害の方』のニーズに応えるサービスを作りたい」となりました。
そして、当時関わってたプロジェクトが終わるタイミングでPwCを退職し、2か月後にキズキに入社しました。

林田 絵美さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

うつや発達障害の方のためのビジネスカレッジを立ち上げた

2018年9月に入社し、2019年4月にうつや発達障害の方が様々なビジネススキルを学び直し、自分に合ったスキルや働き方、働き先を見つけるサポートをする事業「キズキビジネスカレッジ」を立ち上げました。
キズキビジネスカレッジではうつや発達障害が要因となって離職に至ってしまった方が、会計・英語・マーケティング・プログラミング等のスキルを身に着けながら、自分に合った働き方・働き先を見つけていくことをサポートしています。国の障害福祉サービスの枠組みを使っており、利用者は最低0円で支援を受けられます。
(事業詳細はキズキビジネスカレッジのホームページをご覧ください:https://kizuki.or.jp/kbc/)
当事者や企業のニーズをヒアリングし、サービス内容を練り、クラウドファンディングで立ち上げ資金を集め、物件準備し、社員を採用し、行政への申請をし、ホームページを準備し・・など、ゼロからのスタートでした。立ち上げてもうすぐ2年になる今でも、事業は作り続けている感覚だし、まだまだこれからだと思っています。それでもこの1年間でRPAプログラマー、アナリスト、システムエンジニア、ホワイトハッカー、大手税理士法人の事務アシスタント等、キズキビジネスカレッジから多様なキャリアの就職者を輩出することができたのは大きな一歩です。

現在の仕事内容

まずキズキビジネスカレッジに関する事は全て関わっています。毎日20人前後の利用者が通う支援現場に入っています。新しく相談に来る方と面談をしたり、会計講座をやったり、キャリアの相談に乗ったり、就職先の企業開拓や面接同行を行ったり、生活に困っている方を必要な支援機関や制度につないだり等、現場ワークは本当に多岐にわたります。利用者や企業のニーズに応じてサービス内容は日々改善していきます。既存サービスで答えられないニーズに対して、新しい事業を考えたりもします。
一方で、マーケティング、売上管理や収益改善、採用・人事、各種KPIの設定と管理、オペレーション構築など、一般的な事業経営でやるような事もやっています。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

理想像を描く力があるところです。
日々、色々な課題があっても、それに見慣れてしまうとつい「まあこんなもんだよね」「仕方ないよね」と思いがちだと思います。また「本当はこれが理想的だ」と分かっていても、そこに対する課題の多さがゆえに見て見ぬふりをすることもあるでしょう。例えば、障害があるとキャリアの選択肢が狭まってしまう事に対しても、「そんなの障害者なんだからしょうがいないよね」と言う人もいます。あるいは、福祉現場でアナログで非効率な業務や属人的な業務が増えても「福祉現場ってそういうもんだよね」という人もいます。
ただ、自分の理想像では、障害があっても例えばプログラマーになる実力がある人はその仕事につけたほうがいいし、福祉現場であっても効率的なオペレーションは実現できるし実現できた方が良いと考えています。そういう理想を描いてずっと向かい続ける所が自分の強みかと思います。
一方で、例えば「会計士試験の答練で点数をあげたい」位だったら自分一人で頑張ればいい話ですが、「事業」や「会社」というレベルになってくると、理想像を伝えたり、人の意見を聞きながら理想像を見直したりしながら、理想像への合意形成をしていく事が大事だと、この事業を通じて学びました。

林田 絵美さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

事業を立ち上げてから半年ちょっと経った頃、色々と苦しい事が続きました。詳しくは書きませんが一言でいうと自分のマネジメント力や経営力不足により多くの課題を生みました。
全員を巻き込みながら一つずつ課題を潰していくしかなかったのですが、突然何かと厳しくなったり、新しいルールや仕組みを作ったりなど次々と変化を迫られスタッフも疲弊します。リーダーとして本当にダメだと思ったし、周りもそう思っていると思ったし、このままの状況だと皆キズキビジネスカレッジから離れていくかもしれないと心の中でずっと思っていました。
ただスタッフの口から出たのは「林田さんが諦めないから自分も頑張れます」といった言葉でした。その時のスタッフの頼もしい声や行動には大きく心が動かされました。
その頃のスタッフは、(ご自身の起業という前向きな理由で退職した社員を除き)皆さん今でもキズキビジネスカレッジで活躍しており、昇進してリーダーポジションについているスタッフもいます。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

公認会計士“らしい”キャリアを歩まないと勿体無いのか?

監査法人に入って最初からアドバイザリー部署を選んだ時、
「最初からアドバイザリー?会計士だったら最初は監査を経験すべきでしょ」と仰る会計士の方は結構いました。一方で、
「アドバイザリーに興味があるなら最初からやったほうがいい」
と仰る方もいました。

また転職を考えている最中は、
「最低でも5年くらい監査法人で経験積まないと会計士として一人前になれないよ」
「監査法人経験3年くらいでベンチャー飛び込んでも何も付加価値だせないよ」
「会計士の仕事を“捨てて”までやりたいことなの?」
などと仰る方も結構いました。一方で、
「いやいや若いんだからやりたい事はどんどんチャレンジしていきなよ!」
と仰る方もいました。

何が正解か分からなくなり、「自分は何か浅はかは判断をしようとしているのでは」と悩む事もありました。

ただその都度、最終的に思ったのが、自分が会計士である事によって、逆にキャリアの選択肢が狭まる結果になるのは避けたいな、という事でした。
「会計士としてどんなキャリアを積むべきか」より先に「自分としてどんなキャリアを積みたいか」を決めるための判断軸を持とうと思いました。
多分「(会計士として)やったほうが望ましいこと」というものから探そうとすると、「最初はまず監査をやったほうが良い」「コンサルやりたいなら最初からやるべきだ」「若いうちは一つの事に集中するべき」「若いからこそ色々なものに挑戦したほうが良い」など、いろんな意見がありすぎて混乱するのだと思いました。
それぞれの人の意見はあくまでその人たちの判断軸で出した正解であって、自分にとっての正解を出すには、まずは自分にあった判断軸を探すための参考でしかないはずでした。もちろん「会計士らしいキャリア」を否定するわけではなく、自分が「会計士らしいキャリアを積みたい」と思うのであればそれが正解なんだと思います。ただ自分の場合は、「『生きづらさ抱える人』のニーズに応える仕事がしたい」が自分にとっての判断軸で、そう考えると、それが会計士らしいキャリアなのかどうかは関係ない事に気付きました。だから今の自分のキャリアには最終的に迷いなく進むことができました。

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人生の目的と公認会計士という資格

「生きづらさ抱える人」のニーズに応える仕事がしたい、そこにビジネスとして関わっていきたい、という考えは高校時代に抱いて以来、今も変わっていません。この先の人生でもずっと目的になっていくのではないかと思います。その目的に向けて、公認会計士試験でビジネスに関する基礎的な知識を体系的に得られた事は、何か打開策を考えたり、新しい知識を習得したりして、成長していくうえでのベースとなっていると思います。

林田 絵美さん

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これから成し遂げたい事、将来の夢

障害を含め、何か生きづらさを抱えている方が自己効力感をもって人生を築く事ができるために、必要なサービスを創って広げていきたいです。そのために、もっと拠点展開を進めていきたいし、新規事業も形にしていきたいです。自分自身ももっと、そうしたニーズについて生の声を聴いて学んでいかなきゃいけないと思っています。またそこに向けてキズキで働く1人1人が付加価値を出せるように、判断材料となる情報の可視化を進めたり、非効率な業務は削減したりしていきたいです。
個人的な目標としては、もっと経営力を上げたいです(笑)。キズキ入社当初は、まずはキズキビジネスカレッジを形にしていく事にすべての時間を使っていましたが、今は全社のマーケティング・オペレーション・他の新規事業などに関わるようになってきています。監査法人時代も学びになったことはたくさんありましたが、事業をする主体となってるからこそ分かってきたことも本当に多いです。自分にとって今が人生のチャンスなので、存分に成長したいと思います。

林田 絵美さん

09

キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

多分自分にとって100%理想的なキャリアがどこかに既に用意されてる事なんて稀で、理想的なキャリアを実現されてるように見える人も、何かを取る代わりに何かは捨てたり、理想的じゃない状態から自分で理想的な状態になるように働きかけたりすることはされているのかなと思います。なので「理想に当てはまるキャリアがみつからない」と悩んでいる方は、まずはそれに比較的近い領域でできることがないか探してみると良いと思います。
あるいは、そもそも「理想が分からない」というかたは、今はキャリアチェンジのタイミングではないのかもしれません。理想って持とうと思ってすぐに持てるものじゃないので、「理想をもつ」ことが目的化すると結構苦しいです。取り敢えず今の場所で日々粛々と仕事しながら、ゆっくり考えていくのもありだと思います。
個人的にオススメなアクションは、普段から「多様な世界に触れること」です。違う業界の人と会ってみたり、違う国に行ってみたり、美術など違う価値観に触れてみたり等ですね。同じ生活ばかり繰り返しているとつい価値観が偏ったり、その価値観の中で「当たり前」とされることに縛られたりしやすくなるのかなと思います。
ただ上記で書いたことも含め、周りからのアドバイスはその人にとっての理想であって、必ずしもあなたにとっての理想ではない。あくまでご自身の判断軸でたどり着いた理想を信じてくださいね。一緒に頑張りましょう。