
Global Gateway Advisors Pte. Ltd.
クロスボーダーM&Aアドバイザリー部門 アシスタントマネージャー
桜井 和哉
さくらい かずや
数字で世界をつなぐ、挑戦のゲートウェイ
1994年5月17日生まれ(32歳) 福井県出身 シンガポール在住
中央大学商学部会計学科 2016年合格

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キャリアサマリー
福井商業高校出身で、高校時代に簿記の学習に早くから触れたことをきっかけに、大学進学と同時に公認会計士を志した。数字を通じて物事を整理し、努力が成果に直結する世界に魅力を感じたことが、その原点である。
2016年度に公認会計士試験に合格し、2017年に有限責任 あずさ監査法人へ入所。当時は「就職氷河期」と呼ばれる時期はすでに終わっていたが、大手監査法人の不祥事が発覚した直後でもあり、一部で厳しい雰囲気が残っていることを肌で感じた。 国際監査事業部に所属し、金融商品取引法監査やIFRS導入支援、IPO支援、内部統制監査など幅広い業務を経験。四半期対応を含めて一通りの監査ロールを担い、上場企業のインチャージも任された。 年数を重ねるにつれて監査そのものへのモチベーションは低下していった。コロナ禍の収束を機に「リスクをとるなら若いうちに」という判断が背中を押し、海外転職を模索。縁あって2023年よりGlobal Gateway Advisors Pte. Ltd.に参画した。現在はシンガポールを拠点に、クロスボーダーM&Aを中心とした日系・現地ローカル企業向けの財務・税務デューデリジェンス、ファイナンシャルアドバイザリー、バリュエーション、業務ソーシング、契約交渉、クロージング、PMIなどを一気通貫で担っている。異なる文化や商習慣に直面し、時には二重帳簿や非公式手数料など現地特有の慣行に向き合うこともあるが、それこそが現地に身を置くからこそ味わえる醍醐味である。
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監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
有限責任 あずさ監査法人では、国際監査事業部に所属し、IFRS導入支援やIFRS適用企業に対する金融商品取引法・会社法監査、内部統制監査などに従事した。また、IPO監査業務にも関わり、上場準備企業に対して監査実務を提供する中で、監査に求められる要件や期待値への理解を深めた。 当時担当したのは、数万人規模の大企業である。表面的には整っていても内部では多様な意見が飛び交い、正論をぶつけても簡単には組織は動かない。その現実を20代前半で体験できたことは大きな財産であった。質問票が厳格に管理され、10年前のやりとりを引用して回答が返ってくるような場面もあり、机上の勉強では得られない「人を動かす力」を磨く機会となった。先輩の姿を見て学んだのは、正論を言いつつも、必要に応じて複数のルートを使って情報を取りにいく柔軟さである。この経験を通じて、ロジカルシンキングやヒアリング力を実践的に身につけた。特に「どのように質問するか」で得られる情報が変わることを体感し、傾聴力と応対力を鍛えることができた。これはまさにトライ&エラーの繰り返しであり、実務を通じて徐々に習得していったスキルである。 また、法人内のリクルート活動にも関与し、採用の難しさや人材を見極める責任の重さを実感した。面接や候補者との対話を通じて、相手の意図を引き出すための質問力や、限られた情報から適切に判断する力を磨くことができたのも、この時期の重要な学びである。 監査法人での経験は、たとえその後のキャリアを別の分野に進めたとしても決して無駄にはならない。組織を理解し、人を動かし、ロジックを組み立てて説明する力は、あらゆる場面で応用可能な普遍的スキルである。一方で、監査という職業は「誤りを見つければ見つけるほどクライアントから嫌がられる」という構造的な矛盾を抱えていた。努力がポジティブに評価されにくく、「自分は何のためにこの仕事をしているのか」という疑問を抱くようになった。そうした思いから、企業の挑戦や成長に直接関わる分野で力を発揮したいと考えるようになり、M&Aアドバイザリーへの転身を決断した。

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今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
現在はGlobal Gateway Advisors Pte. Ltd.において、シンガポールを拠点にクロスボーダーM&A案件を初期のソーシングからクロージング、PMIまで包括的に支援している。案件ごとにFA(ファイナンシャルアドバイザー)、デューデリジェンス実施者、評価担当者、PMIリードなど複数の役割を担いながら、日系企業および現地企業の双方をサポートしている。
業務の哲学として大切にしているのは「三現主義(現場・現物・現実)」である。近年、現地に人員を置かず、デスクトップで資料だけを眺めてDDレポートを作成する“なんちゃってクロスボーダー”の事例が増えている。中には担当者が現場に行ったこともなく、経営陣と一度も対話せずに数百ページのレポートを提出するケースすらある。数十億円単位の意思決定を行う買い手企業にとって、こうした形だけの支援は大きなリスクであり、クロスボーダー業務の信頼性を損なうものだ。
私はそのような手法に強い危機感を覚えており、必ず現地に足を運び、経営者や従業員と直接対話することを重視している。文化や言語、働き方の違いを肌で感じ、それを評価やレポートに落とし込むことで、クライアントの意思決定に資する本質的な情報を提供できると考えている。
さらに、報告は最終的に日本語で完結させることにこだわっている。依頼主が日本企業である以上、情報を正確かつ納得感のある形で届ける責任があるからだ。現場で得た情報を自分の目と耳で確かめ、日本語で伝える――この一貫性こそがGlobal Gateway Advisorsの強みであり、自らのプロとしての矜持でもある。
キャリアパスの観点から言えば、近年は海外でキャリアを築くことを志向する公認会計士が増えている。特に、現地に居住しながら業務に直接従事する経験は、日本国内では得難い最新の市場感覚、商習慣、言語的・文化的な理解を身につける貴重な機会である。これらは日系企業から高い信頼を得るための基盤にもなる。国内にとどまっていては触れられない知見や人脈を、現地で生活し働くことによってこそ獲得できる。これからキャリアを模索する会計士にとって、現地に根差した経験は長期的な差別化要素となり得るだろう。
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あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
私の強みは、困難な状況でも諦めず、粘り強く物事を前に進める実行力である。クロスボーダーM&Aの現場では、予定通りに進まないことや、文化・言語のギャップから生じる摩擦が日常的に起こる。その中で必要なのは、一度決めた責任を途中で投げ出さず、状況に応じて工夫を重ね、解決策を見出し続ける姿勢だと考えている。
例えば、タイで担当した「片道切符DD」と呼ばれる案件では、対象会社の経理体制が脆弱でBSの貸借が合わず、オフィスの賃料さえ払えない状況だった。さらに、現地スタッフがタイ語しか話せず英語での意思疎通が困難であったり、帰国予定のフライトがシステム障害で飛ばなかったりというトラブルまで重なった。それでも現場に足を運び、差し押さえ寸前のオフィスから必要な資料を一つひとつ確実に押さえ、最後まで責任をもって報告をやり遂げた。この経験は、忍耐と行動力を両輪として進めていくことの大切さを改めて実感させるものだった。
また、私は「同じ方向を向いて仕事をしたい」という価値観を大切にしている。日本語で行われる会議では、参加者全員が母語という高度な言語能力を駆使しているにもかかわらず、細部へのこだわりや枝葉末節の議論に時間を費やし、結局「この会議は何のためだったのか」と振り返ってしまうことが少なくない。一方で、海外の現場では第二言語同士の限られた単語でのやりとりであっても、“One hundred dollars. That’s it.” といったシンプルな確認で十分に意思が通じ、全員が同じ目的に向かって動き出す。言葉としては不完全でも、方向性が一致していることの方がはるかに価値があると実感している。
この「粘り強くやり遂げる力」と「同じ方向を向く意識」を基盤に、M&Aの現場で日本企業と現地企業をつなぐ橋渡し役を担っている。単なる取引成立ではなく、統合後の持続的な価値創出を見据え、最後まで責任をもって関わり続けることが、私の使命であると考えている。

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仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
クロスボーダーM&Aに携わる中で最も心が動いたのは、プロジェクトが実際にクロージングに至った瞬間である。特に、海外進出の経験がなかった企業がシンガポールでの案件を成約させたときには、自分自身が交渉の窓口を担ったという実感とともに、言葉にできないほどの達成感を味わった。監査法人時代にも達成感を得る場面はあったが、「自分がいなければ成立しなかったかもしれない」と思えるほどの手応えは、このM&Aの仕事ならではの醍醐味である。
一方で、M&Aの現場はすべてが順調に進むわけではない。交渉が破談に終わることも少なくなく、直前まで「いけそうだ」と思っていた案件が一瞬で消えてしまうこともある。なぜ失敗したのか答え合わせができないまま終わることも多く、そのたびに悔しさと無力感に襲われる。成功したときの喜びと、破談したときの落胆―その振れ幅の大きさは、まさに「0か100か」のM&Aの世界の厳しさであり、同時に大きな魅力でもあると感じている。
特に印象に残っているのは、売り手側のFAとして交渉をリードした案件である。買い手とのやりとりでは、わずかな言葉や条件の違いが全体を左右する緊張感がある。監査時代は重要性で切捨てていた、単なる数字の10億円が、今はクライアントの挑戦を左右する、重みのある現実の10億円として目の前に立ちはだかる。ひとつの判断を誤れば案件そのものが吹き飛んでしまうという恐怖と常に隣り合わせだった。最終的にクロージングに至ったときには、監査時代に見ていた取締役会資料が、自分の仕事を通じて「投資を決める判断」に直結していることを肌で実感し、これまでの経験が一つにつながった感覚があった。
M&Aの現場では、自分が知らない事情や当事者の判断によって物事が覆ることもある。しかし、だからこそ自らが関わったプロジェクトがゴールまで走り切った瞬間の感情は何にも代えがたい。成功と失敗の両方を経験しながら、その振れ幅に振り回される感情こそが、いま自分がこの仕事に本気で向き合っている証だと強く実感している。
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公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
監査法人時代に最も悩んだのは、努力すればするほどクライアントに負担を強いるという監査特有の矛盾した構造に直面したことである。経験の浅い頃は、見つけた誤りをどう伝えるか分からず、正しいことをしているはずなのに、相手から警戒や不快感を示されることが多かった。努力に比例して喜びが返ってこないことに葛藤を覚え、「自分は何のためにこの仕事をしているのか」という問いが頭を離れなかった。
もちろん監査が好きで取り組む人にとってはやりがいがあるのかもしれないが、自分はそうではなかった。20代の自分には視座を高く持つ余裕もなく、パートナーになれば違う景色が見えたかもしれないとは思うものの、当時はどうしてもそうは考えられなかった。
「どう乗り越えたか」という問いに対する正直な答えは、「乗り越えられなかった」である。監査の枠組みそのものを変えることは不可能だと悟った。だからこそ、発想を転換し、自分がフィールドを変えるしかないと考えた。転職という選択を通じて新しい環境に身を置き、自分のキャリアを切り開く道を選んだのである。そうして選んだのが、クライアントと同じ方向を向いて、共に挑戦し成長できるアドバイザリーの道だった。悩みを「完全に乗り越えた」とは言えない。ただし、監査での葛藤は決して無駄ではなかった。その経験があったからこそ、自らのキャリアを見直し、前向きに力を発揮できる場へと踏み出すことができたのだ。そしていまの自分の覚悟や価値観を形づくった大切な礎となっている。
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人生の目的と公認会計士という資格
私の人生の目的を一言で表すなら、「将来の子どもたちに、今よりも良い社会を残すこと」である。その実現において、公認会計士という資格は大きな力を持つ。会計士資格は世界中で信頼の証とされ、特に日本の公認会計士試験は難易度が高く、その専門性と厳格さは国際的にも評価されている。この資格を持つことで、海外でも「信用できるプロフェッショナル」として受け入れられる基盤がある。だからこそ、私はこの資格を最大限に活かし、人口減少や国力低下が避けられない日本において、日本の企業や若い世代が積極的に世界に挑戦できる場を広げていきたい。
私が果たすべき役割は、日本と世界をつなぐ「Gateway(玄関口)」を数多く創出し、その挑戦を現実のものに導くことである。海外に行くことは、多くの人にとって依然として大きなハードルだ。言語や文化の違い、生活環境の変化、失敗への恐怖などが障壁となる。しかし、挑戦しても戻れる、挑戦を支える仕組みがあるということを示すことができれば、その一歩を踏み出す人は確実に増えるはずだ。
公認会計士としての知識と経験を土台に、挑戦を可能にするGatewayを築くこと。それこそが私の人生の目的と、会計士としての使命を重ね合わせた答えである。

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これから成し遂げたい事、将来の夢
これから成し遂げたいことは、若い世代がもっと気軽に海外へ挑戦できる社会をつくることである。現在の日本ではパスポート保有率がわずか16〜17%程度にとどまっており、先進国の中でも極めて低い数値である。つまり、多くの人にとって「海外に出る」という選択肢自体が日常から遠く、挑戦のイメージを描きにくいのが現実だ。この状況を変え、海外に挑戦することが自然で当たり前の社会にしていきたい。
そのために私が大切にしたいのは、多様な挑戦の入り口を整えることである。挑戦の形が一つしかないと、どうしてもハードルが高くなる。長期の留学や駐在だけが選択肢ではなく、短期で海外に触れる機会や、日本にいながら国際案件に参加できる仕組みなど、段階的に挑戦できる道を用意することが重要だと考えている。だが「まずは行ってみる」「やってみる」と思える選択肢が複数あれば、その一歩はぐっと踏み出しやすくなるはずだ。
また、挑戦しても戻れる道があるという安心感を与えることも欠かせない。海外で失敗しても日本でキャリアを築ける、あるいは再び挑戦できる仕組みがあれば、恐怖心は和らぐ。そうした心理的ハードルを下げる取り組みを社会全体で広げていくことも、私の果たすべき役割だと思っている。
私は公認会計士としての知識と経験を土台に、こうした環境を整え、若い世代が自然に海外に挑戦できる未来を築いていきたい。その先に描くのは、挑戦することが特別ではなく当たり前になる社会である。日本社会に新しい選択肢と可能性をもたらすこと―それが私の将来の夢であり、これからのキャリアの道しるべとして歩みを進めていきたい。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
グローバルで活躍する会計士を「特別な人の物語」と感じる人も多いかもしれない。しかし、魔法のような近道はない。最初から完璧である必要はなく、未完成な自分のままでも勇気を持って飛び込むことが大切だ。精神面では「諦めないこと」が何より重要であり、その積み重ねが挑戦を現実に変える力になる。
グローバルな舞台では、流暢な英語を話せなくても、会計士としての専門性や数字を読み解く力こそが最大の武器になる。相手に通じる言葉は拙くても、ロジックと誠実さがあれば必ず信頼は築ける。挑戦を先送りする理由はいくらでも見つけられるが、実際に一歩を踏み出した瞬間から、見える景色は大きく変わる。
具体的なアクション例
• TOEICや英検などを活用し、まずは語学力を強化する
• 英文会計資料や監査レポート(例:10-K)を読み、会計英語に慣れる
• 英文メールやレポートを書く習慣をつけ、ChatGPTなどの生成AIを活用して英語表現を添削してもらう
• 履歴書(レジュメ)に加えて、カバーレターを必ず用意し、自分の経験や強みを語れるようにする(海外案件では特に重要視される)
• LinkedInを使って情報収集やネットワーキングを行い、海外会計士のキャリア事例に触れる
• 社内で英語を使う案件や外資系クライアントに積極的に立候補する
• USCPAやIFRS関連の短期講座を調べて受講し、専門性を広げる
• 会計英語の単語を毎日10個覚えるなど、小さな習慣を積み重ねる
• キャリア目標を明文化し、逆算した行動プランを立てる
• 既に海外で活躍している人に面談を申し込み、リアルな声を聞く
これらはすべて「今すぐにでも始められること」ばかりである。挑戦は魔法のように一足飛びで叶うものではない。しかし、諦めずに小さな行動を続けることでしか、未来は切り開けない。迷いながらでも挑戦を続ける勇気こそが、会計士としてのキャリアを広げる最も確かな武器になるのだ。


