
株式会社マイクロアド
取締役CFO
太田 悠介
おおた ゆうすけ
起業家そしてベンチャー企業CFO。会計士が憧れる二大職業で成功をおさめたストイックな会計士
1983年生まれ(42歳) 山梨県出身 東京都在住
横浜国立大学 工学部 卒業

01
キャリアサマリー
監査法人トーマツ金融部門に入所。
SCS Global Consulting中華圏統括に就任。
株式会社マイクロアド(MicroAd,Inc.)取締役CFOに就任。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
経営者と近い仕事をしたい。そう思い、当時トーマツのトータルサービス部への配属を希望していたのだが、金融グループに配属された。配属されてみると、金融・IT・英語を勉強できる恵まれた環境だった。クライアントがADR(米国預託証券)で上場していたこともあり、英語を勉強する機会にも恵まれた。
クライアントは銀行など金融機関が多かった。銀行のビジネスの中で貸出業務が主要ビジエスであり、顧客が返済可能なのか審査(この審査を『自己査定』という)をする専門の部署がある。監査では銀行が実施した審査が合っているかどうか確かめる作業を行う。他の勘定科目を担当するよりも面白いはずなので「自分にやらせてください」と上司に申し出て、監査を担当させてもらった。自己査定業務の監査では、優秀な銀行員たちが考えた計算方法や分析手法を知ることができたし、間接的ではあるが幅広い業種をみることができたので、とても参考になった。
リーマンショックがあったときも金融業界の危機をいち早く知ることができた。アメリカを含めた先進国の経済が崩れていくのも目の当たりにした。先進国が崩壊していく一方でアジアは活気があり、そのポテンシャルに魅力を感じた。「これからアジアが来る。その場に行って肌で感じたい」という思いが強く湧き上がった。そして、すぐにアジアに行こうと決意した。監査法人では短期駐在という選択肢はあったが、期限無しの長期で行くためには長い間待たなければならなかった。それでは遅すぎる。まだ三次試験の合格発表も出ていなかったが、3年半でトーマツをやめて単身アジアに渡った。
一番近い中国から入り、上海、深圳、香港、タイという具合にアジア各地を半年かけて渡り歩いた。語学を勉強しながら市場調査をしたり、現地の社長とアポをとって直接話を聞いたりしているうちに、前職であるSCS Global Consultingの社長に出会った。「アジアでこういうことがやりたい」と話すと、「そういうことなら中華圏で自由にやってみたらいい」と誘われて、中国で新規に会社を立ち上げることになり一人でビジネスを開始した。いろいろなことがあったものの、顧客へ会計税務を中心としたトータルサービスを約5年間提供し、関連会社も含め50名規模になった。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
現在の仕事はCFO業務なのでバックオフィス全般管理と経営をやっている。経営者のうち営業系はビジネスを作り形にしていく。CFOはそれ以外のすべて担当というイメージ。上場に向けた体制づくり、監査法人対応、各銀行とのコミュニケーション、IPO資料作成、バックオフィス系の管理、投資管理、海外展開や収益管理も自分が担当している。
この会社に入って見えた課題の一つが、組織の規模に応じた効率的な体制作りだった。従業員数が200人を超えていたにもかかわらず、少人数の頃と同じシステムを使い続けていたので、非効率な作業が多く行われていた。そこで業務の棚卸しをして、業務整理と同時にシステムも変更し管理の仕組を整えた。
監査法人での監査経験、SCSでの海外でのマネジメント経験は、現職のCFO業務に生かされている。特に監査経験は上場に際して非常に役に立った。また、監査法人での体系だった考え方やリスク分析手法は有益で、今もありがたく思っている。
CFOの仕事をしていると、会社の業務詳細を見ようと思えばいくらでも見ることができる。だが自分が専門家ではない部分が大量にあるなかで、どこまで専門外の知識を知るか、アップデートしていくべきかは常に意識している。また200人、300人と組織として大きくなっていくなかで、組織規模に合わせた社内機能やシステムを意識しながらやっていく必要があると感じている。
04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
変な風に聞こえるかもしれないが、人からどう思われているか気にしないところが強みだ。やることを決めたら、あとは当たり前のことを当たり前にやり続ける。迷わず継続して積み重ねていくことができる。また、社会人になってからも必要な学習は欠かさないようにしていて、どんなことに対しても自分なりに意見を持てるようにしている。学習して実務で実践して改善点を次に活かしていく。知る、わかる、できる、の繰り返しだと思う。
もう一つの強みは、自分を客観的に見ることができるところだ。「“太田悠介”という人格を、どういう風に操縦したらどういう風に見えるのか」というふうに自分を俯瞰的に見る感覚がある。みんなを見ていると、自分のことを主観的に思いすぎているからいろいろなことを間違えるのかなと感じる。
ゴールを決めている人は多くて、そう決めたのならそれに向かっていけばいいのだが、上手くゴールにたどり着けない人を見かける。ゴールの場所を検索して複数の経路が出てきたら、その中から1つを選んで適切に実行すればゴールにたどり着く。選んだことをやればいいだけのはずなのだが、シンプルなことなのにそれができていない。選択肢の中から1つを選んだはずなのに急に途中でやめて他の経路を選ぶ人や、元に戻る人もいて、そんなことをしていれば当たり前だがゴールには辿りつかない。また現在地や目印をそもそも勘違いしている場合もある。経路のスタート地点であるA点はゴールまでかなり遠いのに、楽観視して近いと考えて間違えている場合もある。このような場合も現在地が違っているのだから、決めたルートを進んでもゴールにたどり着けない。そもそも客観性があれば現在地を間違えることは少ない。
ゴールを決めてどうするかやり方を決めたら、あとはやればいい。当たり前のことを当たり前にやればいい。自分の場合はこのようなシンプルな考えなので途中で迷うことがない。

05
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
自分としては仕事が好きなので、仕事は楽しかったという印象しかない。特にSCSでコンサルティングをしていたときに会社買収を最後までしっかりクロージングできたときはうれしかった。自分が提供したサービスが完結して全員がハッピーという結果で終わったのでいい形で終われたと思う。やはり、Win-Winで案件が始まり終わり、その当事者として関与できると気持ちいい。
今の会社では、上場に向かって準備を進めていくのが面白い。上場については外から見ていることはあったが自分自身が上場させた経験がないので、新しいことをやるのが純粋に楽しい。また、今の会社の将来を想像しながらその時々の準備を進めていくことも楽しい。
組織として会社を大きくするということはどういうことなのか。それを体現することは、今の会社でやりたいことの一つでもあった。会社が大きくなるために、どうやれば会社の付加価値が上がるのだろうと常に考えている。売上が100憶や200憶のときと1,000億円になったときでは見える景色が違うだろうから、その時点で経営者がどういう経営をしなければならないのかについても考えている。その時点になったときに足りないものは何なのか先々を考えて自分で一つずつ準備をしておくと、その景色が見えたときに当然のように動くことができる。当然のファインプレーというか、そういう感覚。そういうことを考えながら仕事を進めているので、常に仕事が楽しく感じる。
06
公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
深く悩んだことはない。問題は行動しないと解決しない。考えていてもしょうがないのだから、なにか問題があれば解決法を考えてすぐ行動に移すようにしている。
何か問題に当たって悩んでいる人は、問題解決のためにどうしたらよいのかを考えて行動したらいいのではないか。それを「これって本当はやりたくないのかも」とか「好きではない」とか悩み続けているのなら、それはあなたにとって必要なことではないかもしれないのだからやめたらいいと思う。やりたいことならやればいい。そうすれば悩まずに済むと思う。
たとえば「私はあまり働きたくない。でも生活費として手取りで500万円が必要だから、その金額がもらえるまでは働く。稼ぐ手段としては、資格を持っているから資格を生かした仕事で稼ぐ」と決めたとする。あとはそのための手段を考えてやればいい。500万円を稼ぐために何時間くらい働くのかを決めて、自分の時間をマネジメントする。自分で決めたことだけやるのなら全然苦しくないだろう。苦しくなるのは途中で目標を見失って、決めた以外のことをやっているからかもしれない。
苦しんでいる人にはいい人もいい話も寄ってこないだろう。そんな人に、「あの人に相談したら面白いことが起きるかも」と相談しに来る人は少ない。逆に「私500万円だけ稼ぐために仕事やっているので、こういうふうに仕事を効率化して、早く帰って自分の時間で好きなことをしています」という人のほうが、「面白い。どうやって効率化しているのか方法を教えてもらいたい」と思っていい考え方を持った人たちが集まってくるものだ。
07
人生の目的と公認会計士という資格
公認会計士という資格は、一言でいうとセーフティネット。2020年くらいまでは一般的に考えて、仕事を選ばなければ、生活に必要な収入を得られる資格だと考えている。なので、そこまでは自由にやってもいいんじゃないかと思う。
現時点の目的は、組織として会社を大きくするということを体現したい。自分が一から作ってない会社で、200人、300人と大きくなっていく過程で会社にはどういうことが起きるのか、またどうやればもっと効率よく大きくなるのかということを、経営者として意思決定しながら体現できている。
また、この会社を通じて新しい産業を作りたいという考えがあり、今まさにそれをやろうとしているところだ。金融業、製造業、人材紹介業などいろいろな○○業がある中で、データプラットフォーム事業には属するカテゴリがない。あえてカテゴリ分けするなら“その他IT”に含まれるのだろうが、そういう産業として区分されない新しいビジネスを作ってもいいのではないかと思っている。この組織にいるからこそ、そういうことができる。
人生の目的といっても、金持ちになりたいということはあまり考えたことがない。仮に世界中に別荘があってプライベートジェットで行けるようになりたいという夢があれば100億円ぐらい稼げないと実現できないけど、そうでなければお金は持ってもそんなに大量に使うことはない。あくまで、お金はツール。
無職生活を送ったからこそわかるのだが、サービスを受けるだけの側になるのは本当につまらないし、今後もそうなりたくない。例えば100億円持っていれば欲しい物はいつでも買えるし、いつでも行きたいところに行ける。だが自分だけ世の中に対して生み出しているものが何もなくて、ただサービスを受けるだけ。食べたい物を食べて旅行会社を使うけど、金を払ってサービスと交換しているだけ。それで自分が満たされるのかというと満たされないし、面白いとは個人的には思えない。一方的な関係ではなくて、やはり相互関係でいたい。人と接しながら自分の能力を生かして何かをするということは、常にやり続けたいと思っている。
世界中どこに行っても「久しぶり!」と言いながらバカ話しながら飲める環境が個人的には趣味なので、フィールドを日本に限らずに環境づくりはしていきたいと思っている。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
今も将来も、やはり参謀として経営者をやり続けたい。ただ、同じ経営者といっても、CFOの場合は他の経営者とは立場が違うと思う。個人的には、経営者として会社に対して熱くなることもあるが、熱くなりすぎてもいけないという思いがある。
企業の付加価値を高めるためには、社内にいながら冷めた目で事業を見る感覚を持つことが重要と考えていて、なるべく客観的に見るようにしている。全員が営業上がりで結果が出ればいいという感じでやるよりは、数字をもとに「こういうやり方もある」と客観的に言える人がいたほうが、企業の付加価値は高まる。それができるのがCFOという存在なのだろうと思っている。ほかの執行役員や取締役は管轄部門を持っている中で、現状自分は売上部門を持っていないのでそういう客観的な目線で見ることができる。
一般的に社長は基本的にビジョナリストな人が多かったり、会社の方向性を決めたり、こういうプロダクトを世の中に発信していくと面白いのではないかと発想したりする人たちが多い。社長がやらないところやできないところを埋めつつ一緒に走るのがCFOの役割であり、会社のフェーズによって何を埋めるかは違うが、そこで付加価値が出せないCFOはいる意味がない。なので、各フェーズによって求められるCFO像も異なってくる。
ベンチャー企業の場合、社長がプロダクトを作り、それを完璧に執行する人がいて、各役員が責任部門を持って売上を作っていく構造になっているところが多い。その中で売上を持たないが会社に付加価値を出すためには、会社のことを理解しながら一定の客観的な冷たい目線を持ちながら会社にとっていいことをやっていくことが必要になる。今はちょうど従業員数が200人から300人ぐらいの規模なので、そういうフェーズを迎えている。
CFOは社長と話をする機会が多く、会社の資本構成、ビジネスとして成立するのかどうなのか、進出先でライバルになる可能性がある会社との関係性、どのぐらい市場があるのかについて一緒に議論していく。また、社長の耳に入ってきた情報を相談されることは多い。外にいる顧問の人たちには温度感がわからないが、社内で客観的な目線を持ちながら対等に話せる人があまりいないので、CFOならではの役割だと感じる。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス:XXを目指すならまずはこのアクションをしよう
将来の履歴書を書くことをお勧めする。20代の頃、自分でも3年後の履歴書を書くということはよくやっていた。今の自分と将来のなりたい自分とのギャップがわかるところがよい。自分で書くので、より客観的に自分のことが見えるからだ。
履歴書の書き方は、3年後のなりたい自分を想像してみることから始まる。「このぐらいの規模の会社で、こういう業務を歴任していて、こういうことができる状態になっている」と履歴書に書いたとする。するとそうなるためにはどういうバリューが足りないかがわかる。たとえば「前職でファイナンスの経験が必要だ」、「交渉ができるようにならなければならない」、「英語もできないといけない」ということが見えてくる。次にやるべきことが見えてくると、自然にやる気が出てくるのではないだろうか。若い人には特に一度やってもらいたい。
次にどういう仕事を選べばよいのかというと、通常の転職市場の場合、他の人が履歴書を見たときに価値があると思ってもらえることが必要で、もしそうではなかったら自分の発想自体がたいしたことがなかったり狭い考えだったりしているのかもしれない。そういう場合は1回寝かせて3日後とか1週間後にまた書いてみる。こんな人になったらすごいと納得するまで書いてみる。「会社を大きくしました」、「海外の会社と提携交渉をしました」、「会社を買収しました」などすごいと思えることを想像してみる。自分の知識の幅が狭すぎてたいした発想ができないときは、本を読んだり人に話を聞いたり勉強したほうがいい。誰か真似したいと思える人がいたらその人の真似をしてみてもいい。価値があると思える将来が描けたら、転職エージェントと一緒にディスカッションしてみるのもいいかもしれない。現在市場から求められている人物像と今後必要なSkillなど洗い出せるかもしれない。
最後は働き方のスタイルを決める。資本主義が継続する前提で、市場に何を提供できるかと考えたとき、普通の人は何も持っていないはずだから労働を提供して物と交換できる対価を入手する。お金というものを間に挟んで交換する時代から、将来的には信用と価値が直接交換される社会が来るかもしれない。だがそういう将来が来たとしても、何か交換できるものがないと市場に飛び込んでいっても何もできないので、普通の人は労働力を出すしかない。
会計士なら基本的に自分が働いて金を稼ぐことになるし、プロダクトを自分たちで持っている人はプロダクトを出せばいい。プロダクトは自分で作った商品でもいいし、クリエイティブな何かをプロダクトとして市場に発信してお金をもらう感覚でもいい。会計士のような労働なのか、自分が生み出したプロダクトを提供するのか、労働力を提供する方向でいくのか。また自分が動くのかお金のようなものに動いてもらうのかという選択肢もある。交換する媒体がビットコインになるならビットコインに何か動いてもらうこともありだし、人に動いてもらうという選択肢もある。


