会計士の履歴書
門澤 慎

株式会社プルータス・マネジメントアドバイザリー

代表取締役社長

門澤 慎

もんざわ しん

クライアントに対して付加価値を提供するための「強み」を発揮するには、「足し算」ではなく「掛け算」が重要

1979年10月7日生まれ(47歳) 大阪府出身 千葉県在住

慶應義塾大学経済学部 卒業 2008年合格

門澤 慎

01

キャリアサマリー

2006年4月

マツダ株式会社入社(経理部会計グループ)

2008年1月

監査法人A&Aパートナーズ入社

2011年10月

株式会社企業情報パートナーズ入社

2012年7月

株式会社プルータス・コンサルティング入社

2013年4月

有限責任監査法人トーマツ入社

2014年4月

株式会社プルータス・コンサルティング入社

2017年1月

株式会社プルータス・マネジメントアドバイザリー設立

2017年6月

日総工産株式会社 社外取締役就任(東証1部上場)

2019年6月

株式会社GENDA社外監査役就任

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

私は子供のころ法曹関係の仕事に就きたいと考えていたようです。小学校6年生の卒業文集をみると、将来の夢は「最高裁判所長官になること」と書いてあります。このような高尚な夢を持って中学受験をして中高一貫校に入学しましたが、これがいけませんでした。とにかく自由な学校で、校則が(たぶん)なく、学校から勉強を強制されることもない環境で6年間遊び惚けてしまいました。そのような自由な環境に溺れる中で幼少の思いも忘れてしまい、また特にこんな職業に就きたいという気持ちも芽生えないまま何となく経済学部に入りました。
大学ではしばらくは地下鉄工事のバイトなどをしながら特に何も考えずに過ごしていましたが、ある時「簿記」は潰しがきくという話を聞き、予備校の簿記講座に申し込み簿記検定2級を受けてみましたが、見事に撃沈。まさか簿記検定2級に落ちるとは思っておらずショックを受けましたが、再度受けるのも恥ずかしく、何かないかということで周囲を見渡したところ中高時代の友達が何人も会計士の勉強をしていたので、自分もそのルートにのってこのまま会計士を目指してしまおう、と思ったのが、会計士を目指したきっかけです。確か大学3年生の時です。その後、簿記1級は取りましたが、まだ簿記2級は落ちたままです。
大学卒業後、デニーズでコックのバイトをし、そしてマツダに入社後も働きながら公認会計士試験の勉強を続け、何とか大量合格世代の2008年に公認会計士二次試験に合格できました。マツダでは2年弱の経験でしたが、広島本社の単体決算チームに配属され、伝票整理からBS勘定科目担当業務、フォードとのネッティング取引取りまとめ業務や開示業務を担当させてもらいました。公認会計士の勉強を続けながら自動車メーカーの経理実務も経験できたことはとても貴重な経験で、マツダや当時の上司・同僚には本当に感謝しています。
監査法人時代は、上場準備会社から上場会社まで幅広く経験させてもらい、最終的には上場会社のインチャージも経験させてもらいました。またコンサルティング業務として財務DDも数件経験させてもらいました。このDD業務がM&A業務との最初の関わりです。財務DD業務はM&Aという大きなプロジェクトの中での業務であったため非常に刺激的に感じましたが、一方でM&Aの交渉やビジネスの検討にはなかなか関わることができず、その点に少しつまらなさを感じていました。そしてその思いが徐々に大きくなり、また自費で慶應丸の内キャンパスのM&A講座を受講したことでもっとM&Aの世界を幅広く見てみたいと思ったことがきっかけで、監査法人を退職しM&Aの世界に飛び込む決意をしました。以後、企業情報パートナーズ、有限責任監査法人トーマツ、株式会社プルータス・コンサルティング、そして株式会社プルータス・マネジメントアドバイザリーで、一貫してM&Aアドバイザリー業務、資本政策業務、株式価値算定業務に従事してきました。企業情報パートナーズではM&A業務のイロハを教えてもらうとともに提案機会を得るべく、日々テレアポをしてました。このテレアポ業務はこれまで全く縁がなかった業務なので当時はとてもきつかったですが、ここで経験することでその後テレアポをすることに(そこまで)苦ではなくなったので、このタイミングで経験ができてよかったと思っています。有限責任監査法人トーマツでは財務DD業務や組織再編に係る会計・税務のアドバイス業務を経験させてもらいました。ここで組織再編に係る会計・税務の勉強をしっかりとさせてもらいました。組織再編に係る会計・税務の領域は公認会計士試験や監査法人だけの経験ではなかなか身に着かない領域で、トーマツでこの領域をしっかりと勉強できた知識は今もとても役に立っています。プルータス・コンサルティングでは、株式価値算定、TOBのアドバイザリー業務、裁判の鑑定書作成業務、財務DD業務、M&Aアドバイザリー業務等を担当していました。プルータス・コンサルティングは独立系最大の公正価値評価会社で様々な案件が舞い込んでくるので、日々、数多くの案件と格闘することで経験値を大きく上げることができたと思っています。今の自分の軸を作ってくれた会社と言っても過言ではないです。
プルータス・コンサルティングでの仕事内容は満足していましたが、一方で昨今社会問題となっている事業承継問題にも関心を持ち、色々な人と話し自分なりに調べてみました。すると通常のM&Aはアドバイザーがついて交渉することが一般で世界中でもそうなっているのに、事業承継型のM&Aはなぜか仲介がメインであることに気づきました。そのため事業承継の領域にもしっかりとしたアドバイザー型のM&Aを普及させたいという思いが強くなり、その業務に特化すべくプルータス・マネジメントアドバイザリーを設立しました。

門澤 慎さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

現在は、株式会社プルータス・マネジメントアドバイザリーという会社で代表取締役社長として働いています。この会社はM&Aアドバイザリー業務(ファイナンシャルアドバイザリー業務)を主業務としており、現在10数名の規模です。弊社の特徴は、(一般的なM&Aの世界では当たり前なんですが)仲介ではなく、売り手もしくは買い手のどちらかとアドバイザリー契約を締結してアドバイスを提供するアドバイザー型のM&Aアドバイザリー会社として、特に事業承継型M&A(親族外事業承継)とベンチャー企業のM&Aエグジットをサポートしています。
現在、我が国では事業承継問題が社会問題化し、深刻な状況となっています。その中でM&Aによる第三者承継に注目が集まり、一気に事業承継型M&Aの市場が活性化しました。本来なら後継者がおらず良い会社であるにも関わらず後継者難により清算しかないという状況になった会社を存続・成長させることが可能となるため、それ自体は非常に意義のある(日本経済にとっても)ことだと考えています。一方で、欧米や日本でも上場会社同士の一般的なM&Aでは、売り手と買い手それぞれに分かれてしっかりとアドバイザーがついて交渉を行いますが、事業承継の世界では何故かM&Aが仲介によって行われるのが一般的となってしまっているのが現状です。
仲介行為は利益相反行為なので、本来は会社の売買のように金額が多額、さらに「価値」の考え方が複雑かつ専門的で、また従業員等、各方面のステークホルダーに大きな影響を与える取引においては適切ではありません。そしてM&Aは財務・法務・税務面の専門的な知識が必要なのでM&Aアドバイザリー業務は誰でもができる業務ではないはずです。それが現状では仲介が一般化してしまい、また誰でもがM&Aアドバイザーを名乗りM&Aアドバイザリー業務(もどき)をしています。この点、中小企業庁もこの現状を危惧し、2020年5月に「中小M&Aガイドライン」を策定し、利益相反問題やM&Aアドバイザーの専門性ついて注意喚起をしています。
弊社は仲介ではなく、売り手または買い手のアドバイザーとして、しっかりとした専門性を武器に、事業承継型M&A(親族外事業承継)やベンチャー企業のM&Aエグジットをサポートしております。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

私の独自の強みはどうでしょう(笑)。公認会計士の資格を軸とした「掛け算」かな、と思います。「財務会計・税務(公認会計士)」×「ファイナンス(資本政策・株式価値算定)」×「交渉力・コミュニケーション(アドバイザリー)」×「各種法制度(会社法・金商法・取引所規則)」でしょうか。M&Aアドバイザリー業務は総合格闘技なので、財務会計・税務だけでは武器が足りません。そのためM&Aアドバイザリー業務に必要なスキルを求めてきた結果、このような感じになりました。公認会計士は意外とファイナンスに弱いです。しかし会社の価値算定や、資本政策の検討においてファイナンス力は必須です。この点、ファイナンス関連業務をプルータス・コンサルティング時代にみっちりと経験できたのは大きな財産となっています。
個人的にクライアントに対して何かしらの付加価値を提供するための「強み」を発揮するには、「足し算」ではなく「掛け算」だと思っています。ある領域だけを深く掘ることも(もちろん)重要ですが、クライアントの悩みは複合的かつ多岐に渡り、またそれが絡み合っています。そのため専門家としてクライアントに対して付加価値を提供するには、色々な強みを併せ持っている専門家のほうがクライアントに感謝されるでしょう。

門澤 慎さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

M&Aアドバイザリー業務は、一つ一つが刺激的でドラマがあるのでこれっていう事例を挙げるのが難しいです。M&Aでは案件ごとに様々な問題が発生しますが、その問題をチームで知恵を絞り、行動し、解決していく、ということを繰り返して案件を進めていきます。やっている最中はとても大変なんですが、しっかりと会社を売却することができた時、満足いく条件で会社を買収することができた時に、顧客からプルータス・マネジメントアドバイザリーに頼んでよかった、と言われた時は、この仕事をやっていてよかったと思えます。この達成感は他の仕事では中々味わうことができないM&Aアドバイザー業務の醍醐味なのではないかと思います。この達成感を実感することで、次の案件もしっかりと頑張ろうという気持ちが湧いてきます。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

公認会計士という仕事での悩みは特にありませんでしたが、日ごろ、自分は公認会計士だということを意識せずに仕事をしています。公認会計士を意識しすぎることで、自分の「掛け算」の領域が狭くなってしまう気がしたので、あくまで自分の強みの一つのパーツ程度の意識でいます。これは個人的に感じていることですが、(日本の公認会計士は試験が難しいということもあるかと思いますが)公認会計士は、自分は公認会計士だ、という意識が強すぎるのではないか、と思う時があります。その意識が強すぎると物事を検討する時の視点が財務・会計面に寄りすぎて狭くなります。財務・会計の専門家ではありますが、あくまでそこは強みの一つとして意識したほうが自身の視野は広がるでしょう。

07

人生の目的と公認会計士という資格

公認会計士という資格は非常に強い資格です。公認会計士で食いっぱぐれました、という人は見たことがありません。ということはなんだかんだで生きていけるということでしょう。そのため新たな挑戦をする際にも他の人たちよりもリスクが取れるはずです。
リスクを取れる環境を作り出すことができる公認会計士という資格は、自分の人生におけるリスク許容度を高めてくれています。私の周りでも監査法人から独立して伸び伸びと仕事をしている会計士がたくさんいます。最近だとこのコロナ禍の中、飲食店を個人で買収してその経営をしている会計士もいます。ちょっと特殊な例かもしれませんが(笑)、このように自分がやりたい仕事に果敢に挑戦することができる資格だと思います。せっかくリスクを取れる会計士なので私も色々と挑戦していきたいと思っています。

08

これから成し遂げたい事、将来の夢

まずは今の会社を大きくして、あるべき事業承継型M&A(親族外事業承継)の形をこれまで以上に推進していきたいと思っています。またベンチャーのM&Aエグジットの市場も活性化させたいです。
また個人的にはどこかのタイミングでアカデミックな世界に挑戦したいと思っています。アカデミックな世界でも、あるべきことをしっかりと発信していきたいと考えています。

門澤 慎さん

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キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

公認会計士を持っている時点で、他の人よりもリスクが取れます。やりたいこと、目指したいことがあれば、失敗を恐れずどんどん挑戦したほうがいいです。そしてその経験が自身の強みの掛け算となり、結果的に自身の付加価値を大きく高めてくれるはずでしょう。