会計士の履歴書
小松 義尊

スタークス株式会社

取締役CFO

小松 義尊

こまつ よしたか

AかBかといった二者択一した考えではなく、一見矛盾するようなAとBを両立させる考え方が重要

1973年10月19日生まれ(53歳) 静岡県出身 東京都在住

慶應義塾大学 商学部商学科 卒業 2001年合格

小松 義尊

01

キャリアサマリー

2001年10月

新日本監査法人入社

2006年7月

EYTAS(アーンスト・アンド・ヤング トランザクション・アドバイザリーサービス株式会社)入社

2010年7月

株式会社AGSコンサルティング入社

2018年7月

スタークス株式会社入社

私の父は税理士として静岡県沼津市で独立開業しており、父の会計事務所の上の階に家族で住み、常に父の働く背中を見て育つ環境だった。そんな父の姿に憧れ、会計士を目指すのだが、高校から大学卒業までフェンシング中心の生活を送っていた私は、大学を卒業して、ゼロから公認会計士を勉強する身になった。同級生達が大手商社、マスコミなど華やかな社会人生活を謳歌する一方、無職、無収入での公認会計士受験生活が始まった。辛い受験時代だった。

会計士二次試験合格後の2001年10月、ファーストキャリアとして当時急成長していた監査法人トーマツ(静岡事務所)と新日本監査法人(東京事務所)で悩んだ。

静岡の急成長事務所での経験も魅力的だったが、クライアント数・スタッフ数共に圧倒的な規模の東京で切磋琢磨する環境を選んだ。

最初の数年は、職業的会計人として会計・監査の基礎を叩き込む事が重要かと思い、国内監査部を希望し、希望どおりに配属された。ちなみに、最初に配属された監査チームは、人間として魅力的な方が多く、今も仲が良い。20年近く経った現在でも、年2回くらいのペースで飲み会・ゴルフ・カラオケ等で交流させていただき、家族ぐるみのお付き合いをさせていただいている。

2004年、入所してから3年が経過し、三次試験に合格したタイミングで次のキャリアを考えた。

国内監査部で集中して実務経験を積ませていただくと同時に、三次試験の勉強を通じて専門知識を習得できたと考え、次の目標を模索するようになった。

将来の独立開業を見据えて、独立系の会計事務所への転職なども検討していたが、タイミング良く監査法人内部で魅力的なプロジェクトのメンバー募集をしていたので、迷わず応募した。

監査クライアントであるメガバンクがニューヨークの証券取引所に上場を目指し、US-SOXを導入支援するプロジェクトだった。

幸いにも、プロジェクトメンバーに選考され、ハードで刺激的なプロジェクトを約1年経験した。

プロジェクト終了後は何をしようかなと考えていたら、今度は監査法人でM&A専門会社を立ち上げる話を聞き、こちらも面白そうだと思い参画させていただいた。

2005年当時、日本でもM&Aの案件数が徐々に増えてきて、各監査法人グループがM&Aのアドバイザリー業務(FAS業務)に力を入れていく方針だった。

当時は、今ほどM&A支援のノウハウがビック4以外に拡散されていなかったので、ビック4では仕事が溢れており、一定規模以下のフィーの案件は無条件にお断りをしていた。今考えてみるとバブルだった。

ちなみに、今でも鮮明に覚えているが、最初の仕事は、某PEファンドへの投資案件のデュー・ディリジェンスだった。調査報告書のレビューと請求書発行以外の業務は全て任せていただいた。2週間弱のタイトなスケジュールで現地調査から調査報告書まで仕上げて、調査報告書を納品したその日に請求書発行・売上確定した。その後1週間休暇をいただき、沖縄でスキューバーダイビングを満喫した。

ここで初めてM&Aの世界を知り、そのスピード感とダイナミズムを感じて、興奮し、仕事に没頭した。

2008年リーマン・ショックを経て、M&Aのキャリアも4年。経験もスキルも習熟してきた折、監査法人の同期でAGSコンサルティングに勤務している友人から一緒にIPOの仕事をやろうと誘われた。

実は2001年に監査法人に入所した時、ITベンチャーブームでサイバーエージェント・GMOなど同世代のITベンチャー社長が活躍している時期で、IPOに対する憧れを抱いていた。

AGSコンサルティングは当時、スタッフ数約80人。ベンチャーを含む中堅企業へ税務・M&A・再生・IPOなどの会計・税務サービスを幅広く提供していて、独立開業を視野に入れた経験を積める魅力的な職場に感じた。そして2010年7月転職。

しかし、転職した2010年当時は、まだリーマン・ショックの影響が残っており、第一希望だったIPO支援部署に配属されるも、蓋(フタ)を開けてみると、IPO支援の仕事が全くない状況だった。

当時は売上を作るために、あらゆる業務に取り組んだ。税務顧問・会社再生・内部統制構築支援・開示支援などおよそ公認会計士の守備範囲と考えられる業務をほぼ全て経験させていただいた。この数年間はどのようにしたら売上目標に到達できるかもがき苦しんだが、人間としてもビジネスパーソンとしても大きく成長できた4年間であったと感謝している。

その後IPO市場も徐々に活気を取り戻し、IPO業務の受注も増え始め、なんとかIPO支援業務中心に売上を作れるようになった。AGSに入社して4年の歳月が経過していた。

IPO以外にも様々な業務を経験させていただいたからこそ、自分はIPO支援業務が天職だと心から思えた。

「成長著しい顧客に対し良い仕事をして報酬を頂き、顧客にも感謝される」。これ以上嬉しい事はない。自分はこのIPO支援を人生の軸にしていきたいと強く思った。

そして2018年7月〜の現在は、会社の内部から当事者として組織を成長させるために、ベンチャー企業のCFOとしてのキャリアを歩んでいるところだ。なぜ、コンサルからベンチャーCFOに転職したのかは後述する。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

ファーストキャリアの監査法人時代から現職に至るまで、3回の転職を経験して現在4社目である。キャリア選択のきっかけは<キャリアサマリー>をご参照いただければと思うが、過去3社でどのような経験をしたのか列挙する。

①新日本監査法人時代<2001年~2005年(5年間)>
・国内監査部スタッフ・インチャージ(製造業・建設業・国内卸売業)
・メガバンクUS-SOX導入支援

②EYTAS(アーンスト・アンド・ヤング トランザクション・アドバイザリー・サービス)時代<2006年~2009年(4年間)>
・財務デュー・ディリジェンス
・バリエーション(株価算定業務)
・不正調査業務
・組織再編スキーム構築

③AGSコンサルティング時代<2010年~2018年(8年間)>
・税務顧問
・M&Aアドバイザリー
・事業再生
・開示支援(有価証券報告書・決算短信作成支援)
・IPO支援(資本政策・組織体制構築支援も含む)
・経営コンサルティング

小松 義尊さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

2018年7月からスタークスにジョインし、現在CFOの役割を担っている。
スタークスはリアル×ITで「社会課題の解決」に挑むベンチャーで、現状2つの事業を運営している。
1つは物流システムを開発運営する事業。もう1つはLINEを使った顧客対応システムを開発運営する事業。
CFOといっても成長途上のベンチャーかつ複数事業を運営しているので、守備範囲は広い。
資金調達、金融機関対応、監査法人・証券会社対応、法務、採用・育成、組織づくり等々。
自分の守備範囲を自分で線引しないつもりでやっている。
経営チームの他のメンバーが担当しない業務は全て引き受ける覚悟を持っている。
今は、スタークスを成長させて、社会への影響力を強める事を自己のミッションとして日々働いている。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

自分自身の強みは何か?自分の認識と他者からの認識に乖離がないか、同僚や家族に聞いてみた。
複数の専門領域と変化に対する対応力(常にアップデートする姿勢)であるとのフィードバックが多かった。私も、そうであると思う。
私自身、会計士としてもビジネスパーソンとしても特定領域を極めてはいない。まずは、特定領域に一定程度の時間を投下して、トップ数%の人材を目指す。そして次に、異なる領域において同じ時間を投下して、その分野でもトップ数%の人材を目指す。
そうすると掛け合わせで1万人に数人程度の希少な人材になるチャンスがある。複数の分野の掛け算で勝負する事を意識してキャリア形成をしてきた。
このように考えた原体験は、高校時代にある。中学までは地元の公立小学校・中学校で学び、勉強・運動は(かなり)できるほうだった(と自分で思っている)。しかし県立の進学高である沼津東高校理数科に進学すると、静岡県東部地域から優秀な人材が集まり3年間固定クラスで濃密な付き合いをした。この時に初めて無知の知を知ることができた。逆立ちしても敵わない相手が世の中にいるんだな。自分はどうやって戦っていくか考え抜いた。これが今のキャリア形成に繋がっている。
ちなみに、スタークスという社名は、様々な才能を有する人材(スター)がそれぞれの強みを掛け合わせて(掛け合わせのX)シナジーを生むという意味を込めて<スタークス>としたとジョイン前に代表の上ノ山から聞いた。素晴らしい考え方だと感動した。

小松 義尊さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

ビジネスパーソンとして働くなかで心が動く事はシンプル。
「いい仕事をして適正な報酬を頂く。それが顧客・社会への貢献に繋がり感謝される」。
これがビジネスを行う上での醍醐味だと思っている。

1つだけ心が大きく動いた瞬間の具体例をあげるとすると、前職の顧客がIPO準備を中断した時の事である。
大手証券会社からのご紹介で、現オーナーが一代で年商100億円超の規模まで作りあげた食品関連会社に対してIPO準備の支援をさせていただいていた。関与して半年くらい経過後、諸事情を勘案してIPOの準備を中断する決定をした。
IPO準備は中断するので、ストップすべきプロジェクトも沢山あったが、急成長してきた組織を強化するための組織づくりは必要であると考えた。そこで、組織ルールの作成と後継者の育成プログラムを提案して、受注をいただいた。IPO準備の中断など顧客の状況が変わっても、違った角度から価値のある提案ができ、それに価値を感じていただき受注に至った体験は何度体験しても充実感・幸福感を味わえる。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

公認会計士という資格に関連して深く悩んだ事は、直近15年くらいは思い当たらない。
監査法人勤務時代は、監査の二面性に矛盾を感じ葛藤した時はあった。
(監査の二面性:会計監査は社会的基盤であり真の顧客は一般投資家である。他方、監査対象会社から監査報酬を受領し、彼らへの価値貢献を行うべき。つまり真の顧客と報酬を受領する相手が異なるという二面性がある)。
しかし、上司からこの言葉を頂きストンと腹落ちした。
「AかBかといった二者択一した考えではなく、一見矛盾するようなAとBを両立させる考え方が重要」。
この考え方は今でも「(orではなく)Andの視点」としており、会社の人事評価においても、このスタンスを大切にしている。

07

人生の目的と公認会計士という資格

人生の目的は、「生を受けてから人生最後の瞬間までに感じる幸せの量を最大化する事」だと思っている。
そして今まで幸せに感じた事を思い出すと、仕事や知人を通じて素晴らしい出会いをいただき、その交流の中で幸せを感じる事が多いと思う。
"我逢人" 「我 人と逢うなり 人と逢うことを大切に」。

この人生の目的に照らすと、公認会計士の資格は、大きくプラスに働いている。
例えば、職業的専門家としての実務経験を積んだからこそ出会いのチャンスをいただいたり、出会いの中で「公認会計士」を名乗ることにより社会的信用が与えられ、取り引きにプラスに働いたり。

諸先輩方が会計士というコミュニティーに権威と社会的信用を築いてくださり、自分はそのコニュニティーに属する事で、諸先輩方が築いてくださった便益を享受させていただいていると痛感する。

小松 義尊さん

08

これから成し遂げたい事、将来の夢

スタークス代表の上ノ山との出会いは今から約4年前の2016年。まだスタークスの社員が10名も満たない0→1フェーズ。このフェーズで、上ノ山と二人で将来の事業計画を作成するのが私の仕事だった。
当時は「良い仕事をして適正な報酬を頂く。それが社会・顧客への貢献に繋がり感謝される」というビジネスパーソンとしての理想をイメージ通りに体現できてきた頃だった。年齢も40歳を超え、年齢を重ねると共に、お客さまからの信頼もいただける様になり、思い通りの人生になっていると人生の春を謳歌していた。
一方で、「私もコンサルとしての一定の結果は出したが、人生まだ折り返していない。人生100年時代。何か新しいコトにチャレンジしたい」。正直そんな気持ちが芽生えてきた時期でもあった。
当時のスタークスの第一印象としては、メンバーのみんながキラキラしており、なんだか一緒にいて気持ちがいい。オフィスでも、「いらっしゃいませ。もう担当を呼ばれましたか?」と笑顔で迎えていただき、帰りは「あれ、髪切ったんですね」などと声を掛けていただく。仕事に来ているのに、毎回訪問するのが楽しみになるという新しい感覚を覚えた。
当時は、まだ物流の自社サービスである『クラウドロジ』をローンチしておらず、他社のサービスの販売総代理をメインにしたビジネスを展開していた段階。しかし、既に上ノ山の頭の中に現在のメイン事業の一つのクラウドロジの構想が既に出来上がっており、その自社サービスに対する熱い想いを聴き、コンサルとはまた違った、まだ見ぬ未来へのワクワク感が止まらなかった。
じわりじわりとスタークスのファンになっていき、「機会があればスタークスのみんなと一緒にコトを成し遂げたい」という感情が大きくなっていった。
そんななか、上ノ山からスタークスへのジョインの誘いをいただき転職を決めた。

小松 義尊さん

09

キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

人生の最後の瞬間に、やらなくて後悔したことがある人は9割、やって後悔した人は1割と聞いた。
(だれがどんな調査をしたかは不明ですが。。。)

アクションを起こすかどうか迷っている人に1つだけ質問するなら、「今アクションを起こさないことを人生最後の瞬間に後悔しないと思いますか?」。

アクションを起こさない理由を探している人は、逆にアクションを起こし、チャレンジしたい気持ちもあるということ。複雑に考えず、シンプルに自分は本当に(魂レベルで)それをやりたいのか?と問うと良い。魂レベルからやりたいと思うなら、いかなる障害も(時間は掛かるかもしれないが)乗り越える事がきっとできると思うし、失敗したとしても後悔しなければ良いのではないか。
人生は自分で選択し、その選択に対する責任を取れば良い。人生の主人公は自分なのだから。