
KMTパートナーズ株式会社 他
代表取締役
桂 真理子
かつら まりこ
上場経験を持つ会計士・監査役・経営者として女性会計士のキャリア支援に尽力
1977年2月20日生まれ(49歳) 岡山県出身 大阪府在住
大阪大学 経済学部 経済学科 卒業

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キャリアサマリー
有限責任監査法人トーマツ入所 大阪事務所監査部門にて法定監査及び上場支援業務に従事
産休及び育休取得(2011年9月トーマツ退所)
株式会社ナサホーム 常勤監査役就任
株式会社プロディライト 常勤監査役就任(現在は非常勤)
株式会社プロディライト 東証グロース上場(証券コード5580)
KMTパートナーズ株式会社 設立 代表取締役就任(現任)
株式会社万代リテールホールディングス・株式会社万代 社外監査役就任(現任)
1977年、岡山県新見市で生まれました。父は税務署OBの税理士で、母は元公務員の主婦です。母には「働き続けたいなら、資格を取るのがいいよ」と言われ、父から仕事の話も聞いていました。高校1年生の文理選択のとき、担任の先生から「公認会計士というスペシャリスト職があるよ、『会社のお医者さん』だって」と聞いて、単純にカッコイイと思い、会計士を志望しました。大学時代に専門学校に通って資格を取得し、大学を卒業した1999年の秋に監査法人トーマツに入所しました。
トーマツでは監査業務に従事しました。産休育休を経て、第二子が2歳半のとき、子育てに専念するためにトーマツを退職。そして、日本公認会計士協会 近畿会の広報部の活動にボランティアとして携わることに。担当したのは、小中学校を訪問して会計の授業を行う「ハロー!会計」プロジェクトの講師です。そこで知り合った方に、「上場準備会社の常勤監査役をやってみない?」と声を掛けられて、現場に復帰。そこからご縁がつながり、プロディライトの上場を常勤監査役として支援させていただきました。上場直前はかなりバタバタしていて、文化祭の前日のような状態が続いていましたが、何とかチームで乗り切ることができました。上場セレモニーは感無量でしたね。
そして、2024年4月、新会社「KMTパートナーズ」を立ち上げました。会計士の夫も合流して、会社経営を共同で行いつつ、複数の企業の社外監査役を務め、女性会計士向けのキャリア支援事業も進めています。
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監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
トーマツに入社したのは1999年です。入社当時は、とにかく監査調書を素早く仕上げることを心掛けていました。とにかく仕事を早く仕上げて、同期で一番になりたかった。子どもの頃から負けず嫌いでしたね。周りが1時間掛かることを30分で終わらせたりと、取り組むこと全てにおいて、人よりも成果を上げることを心掛けていました。
目の前の仕事に全力で取り組んでいると、徐々に周囲からの信頼が得られるようになりました。チームのメンバーから「黒ちゃん(私の旧姓は「黒杭」です)が来てくれたから良かった」と言われるのがやりがいでした。自分の仕事が早く終われば、周りの手助けができる。チーム全体が円滑に回って、感謝されるのが嬉しかった。私にとって仕事は、個人プレーではなくチームプレーだと、そのときから身体に刷り込まれています。
また、クライアント企業の経営者や経理の方とのコミュニケーションの中で、学んだことも多かったです。あるクライアントの経理部長は、数字を見るだけで会計上の間違いに気づいたり、事業の課題を指摘していました。こちらからの指摘を真摯に受け止めていただきながら、疑問が生じると徹底的に議論を重ねてくれました。10年後、20年後の会社がどうあるべきか、会社の未来を常に考えているスタンスからは、多くのことを学びました。私は目の前の数字を追うことに必死になっていたので、視界が一気に広がりましたね。他にも多くの方との出会いを通じて、会計士として見えている世界が、徐々に拡がっていきました。
監査法人から、企業の常勤監査役に転じてからは、さらに世界が拡がりました。数字を評価する側ではなく、数字を見せる側に立ち、ビジネスモデルを言語化したり、中期経営計画を策定する。その実行を監査役が担う訳ではありませんが、執行する皆さんがスムーズに進められるように環境を整備したり、アドバイスを行うことでサポートは充分にできると気づきました。企業の成長を社外と社内の双方から支援することができた経験は、大きな財産になっています。

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今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
常勤監査役として、プロディライトの上場に伴走した後、多くの相談を受けるようになりました。日本公認会計士協会 近畿会の広報部長としても活動しているので、多くの方に名前を知ってもらっていることも影響していると思います。これまでに歩んできたキャリアの集大成として、今の仕事に取り組んでいます。
活動内容は大きく3つです。1つ目が社外非常勤監査役として、上場後もプロディライトに関わり、関西地場の小売業・万代の社外監査役も務めています。上場準備を通じて得られた経験だけでなく、会計士としてのスキルと知見の全てを、これからは多くの会社で還元していきたいです。ただし、私自身が社外監査役を受けられるクライアントの社数は限られています。きっちりとコミットできるのは3社が限界。そこで私が受けきれない案件では、他の会計士を紹介していたのですが、ビジネスにした方が、より多くのクライアントを支援できると気づいたのです。
そこで始めたのが、2つ目の活動の「女性会計士のキャリア支援事業」です。フルタイムでの勤務を必ずしも求められない常勤監査役の仕事は、子育てと両立が可能。私自身の経験からも、週3~4日でフレックス勤務可、の案件であれば、小さなお子様の子育てをしながら、業務を遂行することもできます。キャリアに悩んでいる、多くの女性会計士に無理なく続けられる常勤監査役や社外役員などの仕事を提供することで、彼女らの人生を支援していきたいのです。
3つ目の活動は、「KMTパートナーズ」の経営です。トーマツで知り合った夫も、2024年10月から合流しました。事業内容の詳細はこれから決めていきますが、おそらく監査や上場準備などの会計周りの支援業務案件を、仲間を増やしながら受けていくことになると思います。自分自身でも会社を経営することによって、会計士としての活動の幅を拡げていきたいですね。
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あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
自身の強みはなんといっても人脈が広い事です。監査法人や公認会計士協会だけでなく、日本監査役協会やベンチャー監査役協会の活動を通じて、多くの会計士や監査役の知り合いがいます。また、上場準備を通じてIPO業界にも多くの信頼できる知り合いがいます。お声がけいただいたイベントやゴルフに顔を出していると、「どこにでも現れるやん(笑)」と言われるくらい、多くの方と繋がっていることが私の強みであり、これが女性会計士のキャリア支援事業に結びついています。
また、自分自身では、「見えないものを言語化する力」に長けていると感じています。上場準備のために常勤監査役として複数社に関わったのですが、果たせなかったことが二度ありました。悔しくて悔しくて、これ以上の失敗はキャリアとしても許されない。三度目の正直、ということで、知恵を振り絞って、「上場できる可能性が高い会社」を言語化しました。社長の資質、事業やマーケットの成長の可能性、扱っている商材、売上や利益の現状の数字、社内の働く環境・カルチャーの5つの指標を数値化して、徹底的に分析。それぞれ10点満点で、7.2点以上だったら上場できるという「桂真理子メソッド」を編み出したのです。プロディライトは7.2点を上回っていて、無事に上場を果たすことができたので、他の会計士に上場準備案件を紹介する際にも、「桂真理子メソッド」を活用しています。
成長するのか、衰退するのか。企業の未来を直感で判断することにも長けていると感じています。何となく、ですが、嗅ぎ分けることができるのです。監査法人時代に、新規の監査クライアントの会社ホームページを見ただけで、「おどろおどろしい何か」を感じた会社がありました。「この会社は気持ちが悪い何かを感じるから、気をつけなアカン」と伝えていたら、やはり不正が起きました。社長や社員の話を聞いて、違和感を感じた会社で、その後の成長が止まってしまったケースも何度かありました。この直感は年齢と経験を重ねるごとに研ぎ澄まされてきているように感じています。このような「危険察知能力」は、社外監査役としての強みになっています。

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仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
上場準備会社の常勤監査役を務めていた際に、「この仕事は“ママの会計士”に向いている!」と感じました。法定事項を守れば、勤務形態や業務内容を自身の裁量でフレキシブルに決められるので、子育てと無理なく両立することができました。クライアントにとっても、短い時間で成果を出してくれる女性の会計士は、ありがたいと思ってもらえたはずです。双方がWin-Winになるので、「これだ!」と思いました。出産や子育てが理由で、監査法人を退職した方のセカンドキャリアとしては、非常に適していると感じましたね。
また、「常勤監査役」の仕事は、自らの視野を広げることにもつながりました。特に「会社は人でできている」ということに気づいたのは大きかったですね。それまでは数字を見ることが仕事でしたが、事業を回して、その数字を作っているのはあくまで「人」。たとえば、役員の中でも自分の意見を曲げない人がいたり、稟議書1枚をとっても、そこには人の意思が反映されている。経営は、数字で全てが語れる合理的な世界ではない。だからこそ、面白いですし、会計士の仕事は飽きない。「人」が介在する意味のある役割だと思いますし、今後はより多くの人たちに、会計士の仕事の魅力を伝えていきたいですね。
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公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
トーマツで監査をしていたときのことです。新任のパートナーに、あるクライアントの「ロケーション別 科目別 在庫金額」を訊ねられたときに、答えることができませんでした。在庫残高は把握していたのですが、全国の工場や倉庫の設置場所ごとにある在庫が、製品なのか、仕掛品なのか、原材料なのか、物量と在庫金額のイメージが全く掴めていませんでした。パートナーからは、「そのような浅い理解で、経営のアドバイスなんかできるわけないやろ」と叱責され、目の前の数字しか見ていなかった自分に幻滅。全力で仕事に向き合ってきたつもりだったのですが、本質を捉えようとしなかった現実を目の当たりにして、心が折れかけましたね。
そこからは数字を単に見るだけではなく、その向こう側にある事業活動や社員の日々の努力に、想いを巡らせるようになりました。経営者との打ち合わせに臨むスタンスも変わっていったと思います。そして、出産・育児を挟み、自分のキャリアについて深く内省しました。上場準備会社の常勤監査役として実践の場に復帰してからは、「数字を見る」のではなく、「数字を見せる」立場になって、あのときのパートナーの叱責の意味を、心の底から理解ができるようになりました。
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人生の目的と公認会計士という資格
人生の目的はみな、「幸せに生きる」ことだと思います。私は、父と母の経験に基づいたアドバイスを受けて、女の子が無理なく一生働くんだったら、スペシャルな資格を取った方がいいと考え、会計士を志しました。監査法人で7年間キャリアを積んだ後、出産と育児で9年に渡って仕事を離れましたが、会計士の資格があったことで、常勤監査役という責任ある立場で仕事に復帰することができました。その後も子供や家族との時間を大切にしながら、やりがいのある仕事を続けることができましたし、多くの方との出会いにも恵まれました。今、幸せに生きることができているのは父母のおかげなので、本当に感謝しています。同じように私も子供たちに幸せに生きるための何かを残せたらいいなと思っています。さらにライフワークである「ハロー!会計」を通じて、日本中の子供たちにも幸せに生きるためのヒントを伝えていきたいです。
さらに、公認会計士という資格は、人生の可能性を最大化できる仕事だと思っています。そして、女性の会計士が、もっともっと活躍できる世の中にしたい。女性に限らずですが、会計士には頑張り屋さんが多いし、真面目だし、高い能力を持った人もたくさんいます。みんながより活躍できる手伝いがしたい。私は女性として生まれて育ってきたので、特に女性会計士の可能性を最大化していきたいですね。

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これから成し遂げたい事、将来の夢
自分自身も、会計士としてもっともっとステップアップしたいと思っています。監査役として、上場前後の会社の支援を行ってきましたが、より大きな規模の会社にも携わっていきたいですね。既に大きな成長を遂げた会社の監査役を経験することで、視野をより広げていきたい。加えて、夫と立ち上げた会社の経営を通じて、事業の成長に「当事者」として携わることもできる。会計士・監査役・経営者。3つの立場での経験や知見を世の中に伝えることによって、多くの会計士のキャリア支援にもつなげていきたいと考えています。
40歳を前にして「将来の夢」として掲げたのは、45歳までに企業の上場に携わり、55歳までに関西で一番有名な女性会計士になることでした。後者は既に達成しつつあるので(笑)、次は還暦までに『ママは公認会計士』を出版して、ドラマ化したいです。時代の追い風も感じながら「女性会計士のキャリア支援事業」を成長させることで、目的を達成したいと考えています。会計士の仕事の可能性や素晴らしさ、そして何より人生が面白くなる仕事であることを、もっともっと多くの人に伝えていきたいと思っています。

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キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
人と違うことをやるのが大事です。同じことをやっても、差別化はできないですし、再現性のないキャリアにこそ価値があります。独自の路線で実績を積み上げることで、新たなチャンスも舞い込んで来る。私自身は、「ハロー!会計」に飛び込んだことが、上場準備会社の常勤監査役へのキャリアにもつながりました。他にも、依頼を受けたYouTubeに出演したり、会計雑誌のコラムを連載したり、頼まれたことで面白そうと感じることはチャレンジするようにしています。結果として、どんな経験でも、個人としての独自性につながると感じています。
女性の会計士の皆さんに対しては、「社外監査役※」のキャリアを目指してほしいですね。企業にとって重要なポジションであるがゆえに、自身の知識と経験をフル動員するやりがいを感じられますし、強い正義感も求められます。そして、それ以上に企業の成長を応援する気持ちが大切です。企業の成長を見守るスタンスは、まさに会社のお母さん。子育て経験は必ず生きてきます。監査役として経験を積むことによって、企業を見る視点が拡がりますし、今後の自分にとって必要なことが見えてくるはずです。
※取締役監査等委員も含む


