会計士の履歴書
稲野辺 英輝

株式会社JTOWER

経営管理本部 経営管理部長

稲野辺 英輝

いなのべ ひでき

好奇心旺盛で新たな刺激を受けて成長し続ける企業内会計士。経営企画に強い、攻めのCFOになるのが将来の夢

茨城県出身 東京都在住

早稲田大学 商学部 卒業

稲野辺 英輝

01

キャリアサマリー

2013

新日本有限責任監査法人、国際部入所。グローバル展開する日系上場企業の金商法監査や外資系企業の会社法・リファーラル監査の主査業務に従事。

2016

フロンティア・マネジメント株式会社、経営コンサルティング部門入社。製造業を中心に、経営戦略策定・ハンズオンでの実行支援・営業改革プロジェクトや外資系PEファンド向けセルサイドFA業務等に従事。

2017

通信インフラ関連のベンチャー企業に入社。経営管理グループ長 兼 IPO準備室長に就任。経営企画をメインミッションとして推進しつつ、経理・財務・税務のマネジメントやIPO準備室長として、プロジェクトを推進。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

新日本有限責任監査法人の国際部で3年間の監査業務を経験。主な業務は、グローバル展開する日系自動車・電機業界の大手上場メーカーの金商法監査のコアメンバーと複数の外資系企業のリファーラル・会社法監査の現場主査業務。

将来的に「数字への強さを武器に経営・事業に携わりたい」という会計士を目指した当初の目標を背景に、そのためには「監査法人では、会計や監査全般の経験をなるべく早く習得し、若いうちに経営系のキャリアを積みたい」という思いを持っていた。そのこともあり、大学3年時の試験合格後は、非常勤での監査業務にも従事。その経験や、日頃から難易度の高い業務や主査業務に積極的に挑戦したい旨を周囲に希望していたことが功を奏し、2年目で、金商法監査では連結納税制度適用会社の税金勘定や全体取りまとめ、リファーラル・会社法監査では現場主査を経験できた。当初から目標としていた「早期に会計や監査全般の経験を習得する」という目標を一定程度達成することができた。監査法人で上を目指せばまだまだ経験すべき業務や習得すべき能力もあったと思うが、監査法人の若手が経験できる一通りの業務をこなし、経験値を積むことができたという自負もあった。3年目からは、当初から関心の高かった“経営”分野へ早期にキャリアをシフトしたい思いも強くなってきた。そのため、3年目は積極的に、様々なキャリアを積んだ会計士と会うことができる機会へ足を運び、関心の高いFASから、経営コンサル、PEファンドなどを中心に業界情報の収集や、新しい分野の知識習得に努めた。

詳細は後述するが、結果として、監査法人の次のキャリアとして経営コンサルティングファームを選択し、自身の大きなキャリア転換の1つの契機となる。

稲野辺 英輝さん

03

今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

ミドルからレイターステージのベンチャー企業で、経営管理グループ長 兼 IPO室長として、主に経営企画・財務戦略のプレイングマネージャー、IPO準備のプロジェクトマネージャー、経理・財務のレビュー業務を担う。

前職では経営コンサルティングファームで、ハンズオン型の経営戦略策定・実行支援業務に従事。コンサルティング業務を行う中で、「外部から支援するだけでなく、主体者として自身がリスクを取って事業により深く入り込みたい」という気持ちが強まっていたタイミングで、現職を紹介いただくご縁があり、現職に経営企画 マネージャーとして参画。

主なミッションは経営企画・財務戦略とIPO準備の推進。経営企画としては、中期事業計画の立案・実行、財務戦略(エクイティ及びデッド)の立案・実行、M&A投資案件・特命案件の推進、経営会議の運営等を実施。IPO準備室長としては、主幹事証券会社の選定からIPO準備プロジェクトのマネジメント・推進を担う。なお、直近では事業拡大・IPO準備の進行に伴い、経理・財務業務のレビューなど承認者としての業務領域も担う。

担う業務の幅が広く、日々多忙ではあるものの、経営コンサルティングファームと監査法人での双方の経験をフルに活かしつつ、会計士を志した際から一貫して描いてきたキャリアイメージに近い業務ができており、日々充実感を感じながら仕事ができている。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

私の強みは、会計士のバックグラウンドを持ちつつも、幅広い領域への好奇心を持ち挑戦できることや、“人”への興味・関心が強いことにあると思っている。前者に関しては、現職では経営企画や財務戦略だけでなく、IPO準備で会社組織に必要な全ての領域の仕組み構築・改善に関与したり、営業担当に同行し営業部門のソリューション提案をサポートするなど、多岐にわたる領域の業務を担うことができており、特定の業務を繰り返すというよりは、常に幅広く、刺激を感じる業務を行いたい私の志向とマッチした業務が行えていると感じている。後者に関しては、昔から人の名前を覚えるのが得意だったり、個々人のパーソナリティに興味があり、特に経営コンサル時代は、クライアント内の人間模様やカウンターパートの方々の機微を感じる場面も多く、事業会社内で働くことへの意欲が高まった。実際に現職で事業会社に転職し、経営企画として、特定の部門だけでなく様々な部署と横断的にコミュニケーションを行う機会が持てることを楽しみながら仕事ができており、外部アドバイザーとしての立場よりも、自分の性格にあった仕事ができていると思う。

稲野辺 英輝さん

05

仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

監査法人時代は、「●●ならAAさん(筆者のこと。以下同様。)に聞いて」、「AAさんがそう言うならそうなんだろう」と、クライアントや監査法人内のメンバーから、プロフェッショナルとして頼ってもらえているときに心を動かされた。

これは経営コンサルでも同様で、当初はプロジェクトに乗り気ではなかった役員の方から「AAさん、これよく考えられているね。いいよ。」とお褒めの言葉をいただき、自身が考え抜いたものをきっかけにアクション実行のために動いてもらえた際は、大きな喜びを感じることができた。このような場面は、深夜・休日返上をして働いた日々の努力が報われる瞬間であると思う。

現職でも同様に、上記のような場面では引き続き充実感を感じるが、最も達成感を感じたのは、自身がCFOとほぼ2名の少人数で推進していたエクイティファイナンス案件で、事業面でもシナジーが大きい相手先からの大型資金調達を実現することができたときだった。新聞やニュース等で取り上げられた時、会社の成長へ大きく貢献できた実感が持て、最も嬉しさを感じる瞬間であった。

共通しているのは、誰かの役に立てたという実感が持てた時に、自身の心が大きく動くということだろう。

06

公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

前職で、これまでの監査法人での経験がほとんど活きない経営コンサルティングファームに入社した当初は、再び会計士試験をゼロから勉強開始したような白地からのキャッチアップで、チャレンジングな経験であった。

特にそれを感じた場面は“思考”の部分である。監査業務では、会計基準と言うルールにいかに精通していて、それをベースに、答えが明確に定まっていない論点でもうまく根拠づけていくことが重要な点だ。一方の経営コンサルでは、決められた答えはなく、論点や仮説を自ら設定し、それを検証するアプローチも自ら作り出していく必要がある。自分では、転職前にトレーニングしてキャッチアップしていたつもりでも、ふと、監査法人時代の思考法にはまってしまっていることに気づくことも多々あった。

このチャレンジを乗り越えられたのは、「会計士であることへのプライドや自信は一旦忘れる」ことを念頭に置いて取り組むことができたのが大きかったように思う。これまでの監査法人での経験で、ある程度プライドや自信を持っていたが、入社当初は新卒の気持ちでそれを取り捨てて、“ゼロからの気持ちでキャッチアップする”姿勢で臨んだ。経営大学院でロジカルシンキングを学んだり、監査法人でスキルアップするために読む書籍とはまったくことなる領域の書籍を多く読み込んだりした。

また、経営コンサルでの業務は、仕事を進めるスピード感や成果へのこだわりやスライドを駆使したプレゼンテーションなど、監査法人での業務とは非常にギャップが大きい環境であったが、それが特に現在の経営企画及びIPO準備プロジェクトの推進の大きな糧になっていると日々実感している。

07

人生の目的と公認会計士という資格

私は昔から、何か目指すべきものがないと心配になる性格で、何かに向かって打ち込んでいる時が一番安心感・充実感を感じ、またこれからも、その時々で面白さを感じる領域に挑戦していきたいと考えている。公認会計士を目指したきっかけも、この性格が影響したのだろう。周りの大学生と同様にサークルに入りバイトをして1年間を過ごした。確かに、日々気の合うメンバーと楽しく大学生活を送ることができたが、「もっと高い目標を持って何かに打ち込みたい」という気持ちが膨らんでいき、経営に携わる上での武器とするために、大学在学中に公認会計士試験合格という目標に挑戦することを決意した。

特に監査法人を卒業してから思うことだが、会計・税務・法務・経営のベースを身につけて、さらに自身が関心のある領域を磨いてエッジを立てたり、別の領域へ得意分野を拡げたりと、公認会計士という資格は、常に何かを目標としてチャレンジしていくことを大切にしている人生において、非常に良い基盤を担っていると感じている。

稲野辺 英輝さん

08

これから成し遂げたい事、将来の夢

現職の業務は多忙ではあるが、日々楽しく、新しく自身を成長させられる業務機会に恵まれていることもあり、当面は自社の事業成長とIPOの達成のために全力を注ぎたいと考えている。特にその中では、現在の事業の重点戦略の1つである海外M&Aを入り口から交渉、投資実行までを推進することと、自身が中心メンバーとして構想中の新規事業を実現させることが、今最もチャレンジしていきたい業務である。また、IPO後は上場後ファイナンス・IRなど、今後広がる業務領域へのチャレンジを考えると楽しみなことが多い。

一方、中期的には現職でもその他の企業でも良いが、“経営企画に強みを持ったCFO”を目指していきたいと考えている。従来の日本企業では、守りに強い経理部長の延長線としての管理部長のような存在が多かったと思うが、経営企画バックグラウンドを活かして、事業成長を社長と共に推進できる“攻めのCFO”が私の目指したい姿である。

稲野辺 英輝さん

09

キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

監査法人で勤務されている方で、入社前から監査業務以外のコンサル等にも挑戦したいと思っていたり、経営コンサルティングファームへ転職されたい方も少なくないと思う。そのような方は、これまで、監査法人での経験である程度プライドや自信を持っていると思うが、私自身の経験も踏まえると、まずはそれを取り捨てて“ゼロからの気持ちでキャッチアップする”姿勢を持てるかが、重要な要素であると思う。是非、経営コンサルティングファームを経験し、経営にも強い会計士人材が増えて欲しいと思う。

また、将来像が定まらない方にとって、是非おすすめしたいのが、私が監査法人後のキャリアを決めるきっかけにもなったことであるが、興味のある業界や企業の方に直接会って話を聞いてみることである。私は、当初コーポレートファイナンス領域に関心があったため、FA業務でFASや投資銀行への転職を考えていた。しかし、それらの業界や経営コンサル業界で活躍されている方の話を直接聞く中で、「お金だけでなく、事業・経営に深く入り込みたい」と気付かされた瞬間があり、結果として現在のキャリアを歩むこととなった。なにはともあれ、フットワーク軽く動いて色々な人と会ってみることは、若手会計士として、キャリアを考える上で大切な事であると思う。