
株式会社ブリーチ
管理部 取締役 管理部長
稲田 淳
いなだ じゅん
IPO実現に向けて推進力を発揮。業績達成責任とCFO職務を両立するバランス感覚を持つ
1982年1月18日生まれ(44歳) 埼玉県出身 神奈川県在住
早稲田大学 商学部 卒業

01
キャリアサマリー
TAC株式会社に入社、公認会計士講座で講師として勤務。
株式会社ラーニングソリューションズ(現株式会社ALMACREATIONS)に入社し、財務部長として資金調達。グループ再編プロジェクトを推進するとともに、IPO準備業務に従事。
株式会社モブキャストに入社。CFOの補佐として、IPOに係わる内部管理体制の構築等を主導。IPO後に執行役員管理部長に就任し、IR、M&A等に従事。
株式会社トランザスに入社し、管理部長に就任。2015年より執行役員、2016年より取締役としてIPO推進だけでなく、経営マネジメントに携わる。IPO後、経理・財務、人事・総務、IR・PR等のバックオフィス業務全般をマネジメントするとともに、社長代行としての役割を担う。
株式会社ブリーチに入社し、取締役管理部長に就任。
02
監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ
私の20代におけるキャリア形成は、慎重に検討して決定した結果というよりも、流れに身を任せているうちに形成されたと思っている。
私のキャリアは、会計士二次試験(現:論文式試験)合格後、多くの合格者が辿る監査法人勤務ではなく資格予備校の講師からスタートした。人に何かを分かりやすく伝える、ということは人と協同で仕事をしていく上では絶対に必要な条件で有ることから、講師という仕事に魅力を感じてはいたが、他の合格者と差がつくのではないかという懸念から講師になる機会を頂いたものの、講師はやめておこうと思っていた。しかし、勉強仲間の一人が講師になるための面接を受ける際にひょんなことから一緒に受けることになり、そのまま合格し講師として予備校に就職した。
二年目からは大手監査法人に非常勤スタッフとして実務要件を満たす範囲内で監査業務に従事させていただいた。しかし、受け入れる側も戸惑いがあったようで、毎回異なるクライアントに1日だけアサインされるようなことも多く、監査の面白さが分からないままであった。講師という仕事は魅力ある素晴らしい仕事ではあるが、それに従事するだけで本当に公認会計士としてはいいのか、という葛藤も抱えていた。
何とか修了考査等も合格し公認会計登録が可能になった頃に、 IPOコンサルティング会社に所属していた予備校の先輩からその会社の代表を紹介された。その会社は、IPOのためのコンサルティングをしつつ、クライントにCFOや管理部長のようなIPO推進責任者を紹介する会社であった。初めて代表に会ったときに、「IPOする会社のCFOに自分と関係のある会計士や税理士のような専門家集団を送り込めれば、日本経済を押さえられる」というような壮大な夢を語られ、「やれたら面白そうだ」と話したところ、それが「やる」と捉えられたのか、翌週から著名なマーケターが経営する会社に財務部長として勤務することとなった。これが私のIPO支援の最初の会社であり、IPOに進むきっかけとなった。
その会社はカリスマ的なオーナーが経営をしており、そのオーナーに依存をしない体制を整えることが必須であったがそれが当時は上手くできなかった。また、コンサルティング会社とクライアントの間に挟まれるような場合にバランスをとることができないこともしばしばあり、残念ながらIPOを実現するだけのステージまで行く支援ができなかった。
それでも何とかできるのではないか、という気持ちで勤務はしていたが、このまま在籍しても価値を付加できないと考え、退職を決断した。退職の挨拶にIPOコンサルティング会社に行ったとき、その会社のクライアントではなかったが、たまたまIPOに向けて経験のあるスタッフを求めている公認会計士のCFOがいて、その日中に返事をすればまだ応募に間に合うということを聞いた。そこで、その公認会計士に会ったことも何かの縁と思い、会社の概要も分からないままではあったが、とりあえずやってみようと思い、それに応募した。その夜にはじめて先方の方に会って採用が決まり、IPOを志向する会社への入社が決まった。その会社が株式会社モブキャストである。
株式会社モブキャストでは、上場準備の全業務と資金調達やIR業務等、ベンチャー企業のCFOとして最低限必要な経験をさせてもらった。IPO達成後に、当時のCFOから「自分もCFOとしてのキャリアを積んだ方がいい」というアドバイスを頂き、自分で一からIPOに向けて携われる会社として株式会社トランザスに転職をした。そのアドバイスがあったからこそ今の自分がいると思っている。

03
今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス
現在は、株式会社トランザスの取締役経営管理部長として、経理・財務・税務、人事・総務、広報、IR等守りの部分であるバックオフィス業務や対外的な会社のアピールやニュース配信全てをマネジメントしているが、これらの中の一部には自ら作業するものも含まれている。ただし、それ以外にも当社が製造業であるため、品質管理業務の一部や在庫管理業務も担当している。また、小さい組織であるため、新たに生じた業務については担当を最初からつけられないことや部門間で漏れてしまう業務もあり、そのような場合には自分がまず担当するケースが多い。そのため、プレイングマネージャー的な要素がかなりあると思っている。
それ以外にも、当社の場合、海外展開の拠点としてシンガポールに子会社を設けており、代表取締役がそちらに在住して陣頭指揮をとっている関係で、日本を不在にしていることが多い。そのような場合には、組織構成や人員配置等の組織に関連する事項や顧客との対応は私に判断や対応が任されるケースや、特命事項を代表取締役の代わりとして遂行することが多い。そのため、管理部長からステップアップしてCFOの役割を担ってはいるが、現在は国内の業績達成責任も負っているため、COO的な役割もこなしていると実感している。
04
あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性
元々、これといった強みを持っていたわけではないが、IPOを志向するベンチャー企業に入社し、可能な限り少人数で業務を完結するという方針を掲げるCFOや取締役の下にいた経験と、私自身が自分でまずはやってみるという性格であるため、自ら課題を見つけて解決していくという実務的な部分は身に付いたと思っている。また、IPOでは全社的なプロジェクトとして推進されていくため、他部署の協力を得なければならないケースも多々あり、部門横断的にコミュニケーションをとりながら推進する方法も自分なりに見つけられたと考えている。
そのため、自分一人で完結できるものはもちろんではあるが、どんな分野であれ大抵の課題については、周囲の協力を得ながら解決していけると認識している。たとえ、違う業種に入っていったとしてもある程度はどの業務でもバリューを発揮できるのではないかと自負している。
このような考え方があるので、代表取締役とも対等に話ができている。株式会社トランザスは、オーナー会社であり、創業者である代表取締役は海外事業を推進する立場であるため、どうしても日本の状況をつぶさに観察して指示を出せないことやコンプライアンスやコーポレート・ガバナンスと相容れない指示を出すこともある。代表取締役が事業の構想や遂行の中心的役割を果たすため、やりたいことを実現するための方策を一緒に考えることや代表取締役を盛り上げることが大事ではあるが、一線を越えないことも同じくらい大事であり、超えそうな場合には職責をかけてでも止めるという判断ができている。

05
仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間
IPOを仕事の中心においているため、携わった全社がIPOを実現できればいいが、当然、できた会社もあれば、残念ながら私の実力不足で上手に導くことができなかった会社もある。
IPOに向けた内部管理体制や業績管理体制の整備は、どのような会社であれ、今後の業績拡大に向けて必要な体制整備の一環であるし、業績拡大にも寄与すると認識している。しかし、バランスを上手く取りながら進めないとそれらは上手く機能しないし、ヒト・モノ・カネ・時間という限られた資源を無駄に投入していたかのような印象を後々持たれることもある。会社と一丸となってIPO支援をやってきたはずなのに、公認会計士が会社を駄目にしたというような批判をされた際には、悔しかったし、改めて勉強するきっかけをもらった。
また、私が全社的プロジェクトとして自らが主導してIPOを実現できて、経営陣、スタッフと東証の鐘を叩けた時には本当に嬉しかった。一人でやらなければならない業務もあったが、一体感を持って進めてきた業務も多く、全員で成し遂げたという達成感は大きかった。また、証券会社の中にはIPOまでたどり着くのは絶対に無理だろうと言ってきたところもあったが、その中でやり遂げることができたのは、大きな自信にもつながった。
06
公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか
公認会計士という資格がなかったとしても私が携わる業務や役割は遂行できるし、担えると思っている。しかし、公認会計士という資格があったからこそチャンスが多く巡ってきたのだろうし、20代のうちは公認会計士であるということに価値を見出されていたのだと思う。監査経験もろくになく、会計知識についてもブラッシュアップされていない状況でIPOの支援に入っていった当初は、何も価値を提供できていないことで深く悩み、公認会計士を名乗らない時期もあった。実際には、少ない会計知識の中でも、原則を知っていることが強みであり、その会社の会計処理や業務フローに意見を言える部分もあった。そのため、ちょっとずつ改善をしていくうちに自信を取り戻すことができたし、価値を提供できていると実感できた。
また、業績に連動する会計処理について、経営者の方針と監査法人側の考え方が異なる場合、監査法人側の考え方を推測することができるのでバランスをとることには苦労した。これまでの実績等から経営者が望ましいと思っている会計処理もある一方で、リスクを考えると別の会計処理も考えられる中でどちらを採るべきか、別の言い方をすると経営者か監査法人のどちらを説得すべきかという点である。当たり前のことかもしれないが、今では、どうしたら会社を正しく利害関係者が理解できるかという、原理原則に立ち戻って考えるようにしている。何事も原理原則に立ち戻ることで整理できることや解決できることもあり、その考え方を大事にしている。
07
人生の目的と公認会計士という資格
公認会計士という資格があるからこそ、これまで様々な経験を積むことができたし、キャリアを形成することができたと思う。そして何よりも自信を持つことができた。慢心・過信につながらないように自制は必要ではあるが。
最終的には、公認会計士という資格にこだわらずに、もう少し踏み込んだ言い方をすれば肩書きに頼らなくても生きていけるようになりたいとも思っている。尊敬する公認会計士の先輩方を見ていると、公認会計士という資格に拘束されている訳ではなく、それを上手に使いながら仕事をされているし、尊敬する経営者の方は、IT分野で活躍していたかと思えば、デザインに対する考察が鋭くそちらの方面に進出したり、最近では、ヘルスケア分野で事業を創出し地方自治体とも連携したりと、幅広い業務を難なくこなしている。そのような諸先輩方を見ていると、本当に人生そして仕事を楽しんでおられると心より思う。会計・財務・税務はもちろんではあるが、それ以外にも多方面に知識を広げ経験を積んでいくことにより、どのような分野であれ依頼された業務に対してきちんと価値を提供できるようにしていきたい。また将来的には、自分の興味が湧く分野で仕事をしていくことができるように願っている。それが公認会計士の仕事に関わるのかどうかは今後次第ではあるが、最終的には肩書きに頼らなくても生きていけるように、脱公認会計士を目指せればいいと思う。

08
これから成し遂げたい事、将来の夢
私はこれまでのキャリアで、様々な人からチャンスをもらい、典型的な日本人なのかもしれないが、「YES」と多くの場面で言っていたことで色々と上手くいったと自負しているが、最初にIPOという業務に携わらせていただけたことはラッキーであった。
公認会計士試験を合格された方であれば、会計・法律・経営と事業を運営する上で必要な知識を一通り勉強してきているであろうし、監査法人に行っていれば他社事例も多く見ている。さらに、その知識を活かした経験、チームで何かをやり遂げるという経験やパソコンスキルも含めて多くのスキルを身につけたり学んだりしていると思っている。
IPOに関連した業務は、このような公認会計士が持っている知識・経験・スキルと相性が抜群に良いと認識しているし、自分もその恩恵に預かったと思う。まだまだ自分自身がスキルアップをして経営者として勉強しなければならないことは自覚をしているが、ゆくゆくは自分がもらったチャンスや身につけた経験やスキル、周りの人たち、特に若手世代の公認会計士に還元できたら嬉しい。そのため、将来はベンチャー企業のCFOに就任した公認会計士をサポートして、多くの公認会計士が上場会社のCFOとして日本経済を牽引していく手助けをできたら幸いである。

09
キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス
キャリア形成でも書かせていただいたが、私の初期のキャリア形成は慎重に何かを考えて決定したというよりも、とりあえずやってみてから考えるという流れに身を任せる形で築いてきた。これを良しとするかどうかは、人によっても違うと思うし、もちろん確固たるやりたいことがある人にとっては駄目な考え方であると思う。ただ、今は何をするのか漠然としか見えていないというのであれば、流れ(チャンス)に乗っかることも大事だと言いたい。
仕事で考えると分かりやすいと思うが、基本的に仕事は解決できる人や完結できる人に優先的に回ってくるわけであって、そもそも無理だろうなと思われている人には教育や指導という特別の意思がない限りは分担されない。それと同じで、チャンスというのもつかみ取れる人にしかやはり回ってこないし、後戻りのきかないものだと認識している。
立ち止まってじっくりと考えることも大事ではあるが、そのチャンスに乗っかることで仕事自体や一緒に働くメンバーに関して何か楽しそう、面白そう、もしくはわくわくしそうな感情がちょっとでも湧くのであれば、それには乗っかってみることも大事だと思う。昔よりも転職に寛容な社会であるし、これからよりそのような風潮が強くなるのではないかと考えると、例え失敗したとしても挽回することはいくらでも可能である。しかし一方で、チャンスはそう数多くは来ないし、待ってはくれない。いつでもチャンスというボールが来たときに、バットを振る準備をしておいて欲しい。


