会計士の履歴書
市原 達大

アイセールス株式会社

コーポレート事業部 取締役CFO

市原 達大

いちはらたつひろ

正義に根差す道徳感は、困難な状況において正しい道を示してくれる、羅針盤のような役割を果たしてくれる

1987年11月19日生まれ(38歳) 愛知県出身 東京都在住

東京工業大学工学部建築学科 2011年合格

市原 達大

01

キャリアサマリー

2010年3月

東京工業大学工学部建築学科 卒業

2011年11月

公認会計士論文式試験 合格

2012

有限責任監査法人トーマツ 入社

2015

公認会計士登録 東京監査事業部にて、主に上場企業の会計監査、アドバイザリー業務等に従事。海外子会社の会計監査人統一、売上数千億円の東証一部クライアント獲得プロジェクトの主要メンバーとして契約獲得を主導し、その後の初度監査の立上まで一気通貫で担当

2019

アイセールス株式会社(https://eye-sales.com/)に管理部長CFOとして入社 ※旧Marketing−Robotics株式会社

2019年12月

同社 取締役CFOに就任 CFOの役割を、Chief Finance/Feeling(財務/感情)Officerと定義し、上場準備や資金調達の傍ら、全速力で走り続ける組織の感情的な基盤作りに奔走している

リーマンショック直後の大学4年だった私が、就職活動を経て東京工業大学工学部建築学科を卒業し、決意したのは公認会計士になること。建築学科で鉄骨構造の耐震を研究していた生活とは一変、1年半の猛勉強を経て公認会計士試験に合格。その後、有限責任監査法人トーマツに入社した。

思えば、あまり新規案件を見かけない監査法人という業界で、新規案件ばかりを担当してきた。海外子会社の監査人統一プロジェクトのために、1人マレーシアに派遣された事もある。

責任感ややりがいの大きい職業で、上司・同僚・後輩にもとても恵まれていたと思う。最後の1年はマネジャー昇進もできて将来への視野も広がっていた。ただ欲をいえば、監査は必ず第三者的な立ち位置での仕事になるという事と、このまま既にあるレールを上がっていく人生で良いのかという自問自答。このまま監査を続けてトーマツの幹部を目指すのか、悩んだ末、スタートアップ企業のCFOとして、自分の30代を懸けてチャレンジしてみたいと考え、転職を決意した。

今後の野望は、日本をもう一度強い国にすること。産まれ育った母国のことを、いつまでも誇れる状態にしたい。前職のトーマツ時代にも、デロイトのやり方をただただ踏襲する事しかできない経験をして、疑問を抱いてきた。導入する側の文化などにも配慮なく、「これが正しい」とひとつの答えしか認められない事が、何よりやるせなかった。子供たちに託せる未来を作るためにも、会計士、そしてCFOという仕事に誇りを持って今の仕事に向かっている。

02

監査法人における経験およびその後のキャリア選択のきっかけ

阪神大震災の原体験と公認会計士の道

軸となっている出来事として大きかったのは、小学生の時にTVで見た阪神大震災の映像です。日本製は強い、壊れない、安心安全だと言われて育ってきたのに、日本製の建物が簡単にぐしゃぐしゃと崩れていく様子は、子供ながらに本当にショックで、将来はどんな災害が起こっても絶対に壊れない強い建物を作ろうと心に決めました。それで東京工業大学の建築学科に進学したのですが、様々な人と出会う中で「日本を強くする方法は他の方法でも可能だ」とふと考えたのです。もっとたくさんの困っている人を助けるという軸と、自分の得意で好きなことを生かすという2つの軸で考えた時に辿り着いたのが、公認会計士という道でした。

トーマツ入社、そして転職市場への興味

トーマツに入社して配属されたのは、一番激務だと言われているチームでした。
クライアント企業に資料を依頼するのですが、期日通りに出てきたことはほぼなく、毎日催促をしてようやく出てくる。頭も体も精神も使う仕事で、全部が鍛えられましたね。大変だった中でも、新規の案件や大きな案件を扱えることはとても良い経験になりました。その頃から、新しい分野に挑戦することへの苦手意識はなく、むしろ得意な方だったのだと思います。

30歳間近になって、昇進や幹部を目指す道が見えてきた頃、一度転職市場で自分の価値調査をやってみようと思ったのです。その上で残ると決めたら、より当時の監査法人での仕事に没頭できると思って。転職市場で様々な企業の話を聞くと、想像以上に興味をそそられる世界が広がっていたので結果的にアイセールスのCFOに挑戦しようと決意しました。

スタートアップベンチャーへ入社した理由

次のキャリアとしてアイセールスを選んだ理由は2つ。

一つ目は、今の日本に欠けている営業力・交渉力の向上に真正面から対峙しているから。
トーマツではデロイト本部で決められた方法が、ほぼそのまま日本にも適用されます。もちろんそれが効率的ですし、正しい方法の一つであることも理解しているのですが、なんとなく違和感を感じていました。日本だってもっと意見を主張していいし、世界基準にも反映されればいいのにな、と。
同じように、日本の交渉力がないことで生じている違和感って世の中には沢山あると思うんです。
例えば日本車の数倍の価格の海外高級車が、日本車の数倍頑丈なのか?そうとは限らないですよね。世界で最上品質を誇ると言っても過言ではないものが、明らかに安価で売られている。これも、日本の交渉力がないことで国家のポジションが対外的に低くなり、それに伴い経済的地位までも低くなってしまっている一例です。

さらに、日本は他の先進国に比べてビジネスシーンでのデジタル化も遅れています。こういったネガティブな積み重ねが日本人の自分自身に対する誇りを少しずつ失わせているんじゃないかと思っていました。

そんな中、転職市場で出会ったアイセールスが現在掲げている社会的意義は「正しい営業開化」。古くから日本を支えてきた企業に対して、正しい価値で正しく販売する力を向上させるための伴走支援をしています。
しかも大企業向けではなく、どちらかというとデジタル化されていない老舗中小企業に力を入れて支援している。自分の感じていたこととつながる部分があるなと感じました。

元々社会インフラ志向の強い私が転職市場で検討していた医療分野やエネルギー分野と同じくらい、この社会課題を解決することによってポジティブなインパクトが世の中に起こるぞってワクワクしました。そしてとても重要なことなのに、あまり認知がされてない事も社会的問題ですし、やりがいがあるぞ、と思いましたね。

もう一つの理由は、アイセールスがまだまだ発展途上の組織だったこと。他の受けていた企業はすでに完成された組織だったし、そういう安全なところで決められたことを安全にやりたいのだったら別にトーマツのままで良いわけです。未完成の組織で、CFOとして上場を目指していくのって面白いんじゃないかな、と考えたのでアイセールスに決めて入社し、今に至ります。

市原 達大さん

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今現在の仕事の内容、特徴、キャリアパス

現在はスタートアップであるアイセールス株式会社の取締役CFOとしてバックオフィス業務のほとんど全部に関わっています。資金調達や知財特許はもちろん、契約書の作成から締結・保管や備品管理まで幅広く担当することが多いです。ファイナンスに関わるのは業務の中でもほんの一部なので、監査法人に在籍したままだったら絶対にやらないこともたくさんありますね。

今後のキャリアパスというか、実現したいことは、近年中に上場した後はスタートアップのCFOを集めて切磋琢磨しあえる「スタートアップCFO道場」のような場を作れたら良いなと思っています。
自分たちと同じように、日本のために頑張っている未来ある企業に投資をして、その投資先のCFOにコーチングをして間接的に応援していくことに興味を持っています。自分がしてもらって良かったことを後世に引き継いでいきたい。そうやって時代を紡いでいくことが大切だと考えています。

04

あなた独自の強みと今現在の仕事との関係性

正義感は、自分の強みだと思っています。
もちろん正しさは人それぞれ違うので、私の考える正しさが相手にとって必ずしも同じわけではないこともありますが、自分に対しての正義は貫いていくつもりです。
基盤となっているのは「ノブレス・オブリージュ」という考え方です。フランス語で、高貴な者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるという、高次元の道徳観を指します。
今の仕事ではそれがすごく求められている感覚はあります。前職での知識が全て活かせるわけではないし、もちろん初めてのことがほとんど。だから一から勉強することも盛り沢山で、そんな中でも不確実性を伴う判断を数多く行なっていく必要があります。正義に根差す道徳感は、困難な状況において正しい道を示してくれる、羅針盤のような役割を果たしてくれるのです。会社のメンバーは私を信じて会社の中心的な役割を預けてくれているので、それに応えたい一心で職務に臨んでいます。

市原 達大さん

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仕事をしている中で、心が大きく動いた瞬間

若手の成長と会社の成長

社員数も30人前後と少なくて、席もフリーアドレス制なので、社内の誰とでもよくコミュニケーションを取るのですが、若手社員の成長を感じられた瞬間は心が動きます。背景含めて成長の過程を深く知っている場合は一緒になってお祝いしますし、そこまで知らなかった場合でも、最近良い顔してるね、と声をかけた時の嬉しそうな顔だったり、その良い表情に至った経緯を聞いたりするのも好きですね。

一人一人の成長を間近で見ることができるのはこの規模の会社の良さだと思いますし、それぞれの成長を認めて祝い合う文化があるので結果として会社自体が大きく成長しています。毎朝の朝礼で、お互いにありがとうを伝え合う「サンキューコーナー」も時間が足りないくらい挙手があるし、自社にはこんな素晴らしい顧客がいるよ!を紹介する顧客紹介コーナーも盛り上がっているし、とても良い雰囲気ですね。そういう意味では、毎日心が大きく動いているのかもしれません。

二兎追って二兎を得る、家庭と仕事の好循環

あとは、プライベートなことにはなりますが、仕事と家庭を両立することも、人生において大切なことだと考えています。今の会社は、家庭と仕事の両立について大前提を外してくれる会社なんです。
最初からわかっていたことですが、やっぱりスタートアップのCFOは業務量が多い。仕事に集中するためには、妻や子供の理解が必要不可欠なんですね。それを転職する前にも家族に伝えて覚悟してもらっていました。

家族に理解してもらった結果、仕事に集中することができて、会社として大きな成果を出すことができています。その原因が何か思い返した時、妻が自分のことを信じてくれたことがスタートだったと改めて身に染みたんです。だから仕事がうまくいくと妻に「いつもありがとう」と伝えたくなるし行動でも示したくなる。そうすると家庭の雰囲気も良くなりますし、家族のためもさらに結果を出そうと思えます。
家族が仕事を応援してくれるから、仕事の話を家庭内で話すことにも支障がなくなり、話すことによって更に仕事への理解が深まって、パパかっこいいね、仕事頑張ってねって言ってもらえるから結果仕事に没頭できています。
そもそも仕事と家庭は対立するものではなく、同じサイクルの中にあってグルグル回っているものなんだ、と最近気づきました。仕事を犠牲にして家庭に時間を使うっていう発想ではなく、家庭をしっかり大事にするからこそ仕事も大事にできる、仕事を大事にしているからこそ家庭も大事にできるっていうそういう価値観が自分の中で生まれたのは、今の仕事を始めてからですね。

あとは、上場したらこの欄に上場した時のことを書きたいですね!(笑)

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公認会計士という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

自分の軸がブレることがないので、仕事上で悩むことはほとんどありません。常に「シンプルであること」を優先的に心がけていることも悩まない理由の一つだと思います。

この記事を読んでいる人の中で、博士の愛した数式という小説をご存知の方はいらっしゃいますか?本の中で、「e^iπ = -1」って数式が登場するんですが、すごく長ったらしい証明をして導き出した答えが-1っていうシンプルな数字になるんですよね。読んだのは学生の頃だったと思いますが、これを見た時に本当に美しいなって感動しました。正しいことは基本的にはシンプルであるべき、という美意識を大事にしています。

もちろん辛い時もありますが、乗り越えるためには、何のために辛いのか先を見据える中長期の視点が大事かなと思っています。ただ辛いだけで乗り越えた先に何もなかったら疲れてしまうと思うんですけど、自分にとっての学びになったりするのであれば意味があるのではないでしょうか。私も、今は上場っていうひとつの壁を越えようともがいているっているのがわかっているから、辛いことがあっても乗り越えてやるぞって燃えています。

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人生の目的と公認会計士という資格

人生の目的は、世界に対して正しい方向に大きなインパクトを残す貢献をすることです。

大きな目的を達成するためにはゼネラリスト・スペシャリスト、両方のアプローチ方法がありますが、私は公認会計士の資格を取得し、スペシャリストとして達成する方法を選択しました。
その理由は、会計事務所である家業の影響もあるかもしれないし、震災の被害を見て安全を守るには専門性が必要になると子供の頃から思っていたからかもしれません。ですから自分が正のインパクトを起こす時には、専門性を持った切り口でアプローチをしたいという思いがありました。
その上で公認会計士という資格は、財務会計とかファイナンスにおいてプロフェッショナルである証明にはなりますし、ある意味パスポートのような役割をしてくれていると感じます。人生の目的を果たすために、私にとっての入学条件が、公認会計士であったとも言えますね。

市原 達大さん

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これから成し遂げたい事、将来の夢

まずは、アイセールス社の上場をみんなで成し遂げたいですね!

その先の、上場後の夢がいくつかあります。
先日、株主企業の方と話をする機会があって上場はゴールじゃなくてスタートだ、とお言葉をいただきました。その会社は、ずっと携わってきた主となる事業に加え、上場を機に再スタートしていろんな事業を立ち上げて取り組んでいるみたいです。
上場企業、という肩書きも、社会貢献をするパスポートみたいなものだとも思っています。もちろん非上場でも大きいことはできますが、上場していると広く一般にお金を公募で集めることが非上場よりも簡単にできますから、可能性はより広がっていきますよね。

まずはアイセールスが営業をDX化させて日本の販売力を底上げしていくこと、社会に果たすべきその役割をより加速度的に大きくしていきたいと思っています。

あとは、今はいろんな会社から投資をいただいている立場ですが、今後は自分たちを見て刺激を受けてくれる企業が現れるようなことがあれば嬉しいですね。その企業が考える正のインパクトをより促進するような仕掛けだったり仕組みだったりを一緒につくっていけるサポートをしたいと考えています。そして自分たちの投資先も上場していくとより世界が良くなっていく気がします。

市原 達大さん

09

キャリアを模索する会計士、会計士受験生へのアドバイス

CFOを目指すなら、経理担当者以外ともコミュニケーションを取りましょう!

監査法人に就職すると、普段接する人たちって企業の経理担当だけなんですよね。もしCFOを目指すならば、是非クライアントの、財務経理以外の方ともコミュニケーションを取ってみてください。

先述しましたが、CFOの業務でファイナンスに関することはほんの一部です。経理の事しか知らずにCFOになったら100%うまくいきません。
人事でも、事務でも、マーケティング担当でも、どんな人でもいいからコミュニケーションを取った方がいいですね。望ましいのは営業担当者からよく話を聞くことです。
経理が把握している数字ってそれもすごく長いトンネルを経て出てきた行動の最終結果でしかないので、数字を見てもなぜその結果になったのかの理由まではわからない。結果だけをいくら突き詰めても会社は引っ張っていけないんですよ。会社は生きている人間が動かしている生き物なので、何によってその数字が生まれ、どんな出来事があってその数字に着地したのかの経緯がとても大切になってきます。
だから、もしこの記事を読んでいる方の中でCFOに興味がある方がいれば、ぜひいろんな人とコミュニケーションを取って、数字の裏側の生きている部分を感じて欲しいです。

あともう一つ

楽しい仕事がしたいなら、好き嫌いに対して正直になりましょう!

何か物事を選択する時に得意・苦手や、成功しそう・失敗しそうの選択軸で選んでしまう人って多いのではないでしょうか。それって学校教育のせいもあるかなとは思うんですけど、テストの成績が良くて先生に褒められることが全てになってしまうと、正解することがいいことで失敗することはよくないことだって思い込んでしまいますよね。みんな褒められることは好きだから、「得意なこと」が「褒められるから好きなこと」にすり替わってしまっていると思うんですよ。

もし仕事が楽しくないと思っているのならば、それは得意だけど好きではないことをやっている場合が多いと思います。得意だけど、お金は満足しているけど、あんまり意味が見出せないから本当は楽しくないんじゃないでしょうか。好き嫌いの軸に正直になるというのはすごく大きな解決策のひとつだと思います。